「甘いもの=むし歯になる」は間違っている…歯科医が警告する「むし歯になりやすい意外な食べ物」の正体
プレジデントオンライン / 2024年11月26日 16時15分
※本稿は、前田一義『歯を磨いてもむし歯は防げない』(青春新書インテリジェンス)の一部を再編集したものです。
■「甘いもの=むし歯リスクが高い」は間違い
むし歯リスクを減らすために甘いものは控えめにする
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使う甘味料や調理法で、むし歯リスクは減らせる
むし歯菌のエサは糖です。ただし、「甘いもの」=「むし歯リスクが高い」とは限りません。糖には砂糖、果糖、乳糖など、いろいろな種類があります。砂糖はショ糖ともいい、サトウキビやテンサイなどから採ったものです。果糖は果物やハチミツなどに含まれる糖、乳糖は牛乳をはじめ哺乳類の乳に含まれる糖です。野菜や芋類にも糖が含まれ、たとえばシイタケはトレハロース、加熱したサツマイモは麦芽糖という糖を含みます。
このうち最もむし歯菌のエサになりやすいのは、砂糖です。だから、私はお子さんのおやつとして砂糖の入ったものは与えず、蒸(ふ)かし芋や果物などを与えるようにお伝えしています(精製された砂糖がよくない、黒糖等の糖は身体にいいという人がいますが、むし歯に関しては同じくハイリスクです)。
むし歯リスクがゼロの糖もあります。キシリトールやステビア、エリスリトールなどです。キシリトールはイチゴやカリフラワー、ラズベリーなどに含まれます。ステビアは南アフリカ原産のキク科の植物の名前で、ここから抽出した糖です。また日本ではあまり馴染(なじ)みがありませんが、エリスリトールもむし歯リスクがゼロの糖です。エリストールは果物やキノコのほか、醤油、味噌、日本酒などの発酵食品に含まれます。
トウモロコシから抽出したもので、日本でも「ラカントS」の名前で、シロップや顆粒状(かりゅうじょう)のものが販売されています。チョコレートは、むし歯になりやすい食べ物の代名詞ともいえます。でも、むし歯リスクゼロの糖を100パーセント使ったチョコレートなら、どれだけ食べてもむし歯になりません。もちろん、ほかのお菓子や料理に使った場合も同じです。
■和食は意外とむし歯リスクが高い
また同じ素材でも、調理法によって、むし歯リスクが異なります。
ジャガイモなら茹でた芋かポテトチップスかで、まったく違います。茹でた芋は軟らかく、比較的早く分解されて口の中に残りにくいので、むし歯リスクが低いのです。一方、油で揚げたポテトチップスは脂質が多いため分解されにくく、口の中で長くとどまりやすくなります。それだけ、むし歯リスクが高まります。
また意外に見逃されがちなのが、和食です。「和食はヘルシー」というイメージがありますが、砂糖を使うものも多く、むし歯リスクが高くなりがちです。煮物や煮魚など甘辛く煮たものには砂糖がすべて入っていますし、酢飯(すめし)にも入っています。和食のときも、使う糖をむし歯リスクゼロのキシリトールやラカントSなどに置き換えると、リスクをなくすことができます。
芋は揚げるより茹でる、砂糖をキシリトールなどに置き換える
■口臭の原因は「舌の苔」にある
口臭がするのは歯周病のせい
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口臭の6割は、舌の表面にできる舌苔のせい
エチケットとして、口臭を気にする人は少なくありません。
口臭の原因は食べ物もありますが、ほかにむし歯や歯周病が原因の場合もあります。あるいは内臓の疾患による口臭もあります。とくに歳をとると歯や体の病気が原因の口臭が増え、気にするお年寄りもいますが、じつは食べ物以外で一番多い口臭の原因は、舌から発せられるものです。
舌の表面に、白い苔(こけ)のようなものが付くことがあります。これを「舌苔(ぜったい)」といい、この舌苔が口臭のもとになっているのです。舌苔は、細菌の塊です。体に有害ではありませんが、口臭の原因となるので取り除いておきたいものです。
ドラッグストアに「舌ブラシ」という器具があり、数百円で買えますし、百均でも売られています。使い方は、鏡を見て舌の表面にある白いものをブラシで落とすイメージです。ブラシでこすって白いものがなくなればOKです。1日1〜2回落とせば十分で、私は朝食後の歯磨きのあとに行うようにしています。ただし、きつくこすると舌を傷つけるので、そっとなでるぐらいで十分です。
1日1〜2回、舌ブラシで舌苔を取る
■子どもを無菌状態のまま育てるのは不可能
子どもにむし歯菌がうつるからスプーンの共有はNG
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どんなに注意しても、口内のむし歯菌はゼロにできない
赤ちゃんができると、親はつい神経質になりがちです。口腔ケアでは、わが子をむし歯にしたくないからと、子どもとスプーンを共有しない人も少なくありません。スプーンを共有することで、親のむし歯菌が赤ちゃんにうつり、赤ちゃんがむし歯になってしまうのを防ぐためです。
なかでも2歳半までは「感染の窓」と呼ばれ、この時期に外から入ってきたむし歯菌が口の中で定着しやすいといわれます。生まれたときの赤ちゃんの口の中には、むし歯菌がいません。それが外部から入ってくることで、むし歯菌が定着し、場合によってはむし歯になるというわけです。
むし歯菌を持ち込むのは多くは親で、そこから赤ちゃんにキスをするのもダメという人もいます。確かに理屈上はそうですが、実際はそこまで神経質になる必要はありません。親がどれだけ気をつけようと、子どもを無菌状態のまま育てるのは不可能だからです。
むし歯菌にしても、どこかの段階で必ず入ってきます。そう考えれば、親と子どもが使うスプーンを別々にしたり、かわいい我が子へのキスを我慢する必要はありません。親子のスキンシップを大事にしたほうが、子どもの成長にはより有用ではないでしょうか。
■歯周病菌がきっかけで浮気が発覚したケースも
そもそも、むし歯菌があるからといって、必ずむし歯になるわけではありません。これまで述べてきたように、口腔ケアをきちんとしていれば、むし歯にはなりません。
親として気をつけるとしたら、自分自身にむし歯があったら、これを治すことです。さらには定期検診をきちんと行うことです。親がむし歯だったり口腔ケアが疎(おろそ)かだったり食生活が乱れていれば、子どもも同じように成長する可能性が高いからです。
ちなみに人からむし歯菌をうつされるのは、子どものときだけではありません。キスによって夫が妻に歯周病菌をうつしたり、妻が夫にむし歯菌をうつすこともあります。歯周病菌やむし歯菌は一種類ではなく、いくつもの種類があります。夫婦間で菌をうつしあっているので、夫婦の口の中の菌は同じタイプになります。
ただし、どちらかが浮気をすれば、別の異性の菌が口の中に入ってきます。なかには夫婦の口の中の菌を調べたところ、別の歯周病菌が発見されて浮気が発覚したという笑い話もあるほどです。
さらにいえば、犬からも感染します。イエテボリ大学の口腔細菌学主任教授グンナーダレン(Gunnar Dahrén)教授から、ある子どもが悪性の歯周病にかかった話を聞いたことがあります。
歯周病菌の中でもとくに悪質な、アグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス菌と呼ばれる菌がいます。この菌に侵されると、若くても悪性の歯周病にかかります。昔は若年性歯周病と呼ばれていましたが、いまは侵襲(しんしゅう)性歯周炎と呼ばれています。
■完璧主義を目指す必要はない
たいてい家族から移りますが、この子の場合、親は保菌者ではありませんでした。
感染源をたどっていくと、飼い犬であることがわかりました。北欧生まれの犬で、その犬が歯周病菌を持っていたのです。おそらくは愛犬とのキスでうつされたのでしょう。生きている限り、バイキンを完全にシャットアウトするのは不可能です。
そもそも人間の体には常在菌がいて、菌をゼロにすることはできません。必要以上に減らせば、むしろ抵抗力を失い、かえって病気にかかりやすくなります。体内に菌がいることが問題ではなく、避けるべきは菌が体内で悪さをして病気になることです。
プラークも同じです。歯磨きで100パーセント取り除こうと、1日5回ぐらい磨き、さらに歯間ブラシで磨き残しを取り除けば、ほとんど取り除けるかもしれません。とはいえ、そんな生活は楽しくないでしょう。プラークが多少残っていても、発症しなければ問題ありません。定期的に歯科医院でメンテナンスすれば十分です。
むし歯菌に神経質になるより、子どもとのスキンシップを大事に
■歯並びの悪さには食生活も影響している
子どもの歯並びが悪いのは遺伝だから仕方がない
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遺伝もあるが、口呼吸や食生活も関係している
歯並びが悪いと歯を磨きにくく、磨き残しも出やすくなります。また奥歯に負担がかかり、歯が割れるリスクも高くなります。歯並びの悪い人は、子どもの歯並びも悪いことがあります。そこから「歯並びは遺伝だから仕方ない」と思っている人もいますが、歯並びの悪さは、遺伝以外にも大きな原因があります。
アメリカの歯科医師で、歯と体の健康に関する研究者としても知られるウェストン・プライス博士による、次のような報告があります。
1930年代に世界中の発展途上国の子どもの歯を調べたところ、西洋の食文化が入っている国の子どもは、みんな歯がボロボロだったのです。一方で昔ながらの食文化を続けている国の子どもは、みんな歯並びがきれいで、むし歯もありませんでした。理由は、西洋の食べ物には砂糖がたくさん入っているうえ、軟らかく、顎が発達しにくいものが多いからです。
■噛み応えのあるものを食べさせるべき
問題は、顎が発達しにくいことです。
歯の大きさは食べ物に関係なく成長します。歯が成長しているのに顎が発達しないと、歯の収まるスペースが足りなくなり、歯並びが悪くなってしまうのです。とくに西洋文化が入っている発展途上国では、お金のない人ほど歯に悪いものを食べがちです。そうしたものほど値段が安く、簡単にお腹を満たせるからです。
歯並びが悪いと、人前で笑うのを気にしたり、人相が悪くなったりしがちです。歯並びの悪さをバカにされたことが、精神に悪影響を与えることもあります。結果として犯罪に走る人も多いといわれています。その意味で幼少期の食事は重要で、軟らかく食べやすいものばかりでなく、噛み応えのあるものを食べさせる必要があります。
具体的には食物繊維の多い根菜や豆類、丸ごと食べられる小魚、弾力性のあるイカやタコなどです。ハンバーグなど挽(ひ)き肉を使った料理も子どもの好物ですが、塊肉の状態で食べさせることも大事です。
噛み応えのあるものを食べさせ、顎の発達を促す
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歯科医
1976年生まれ。日本歯周病学会認定医。2003年日本歯科大学を卒業。仁愛歯科クリニック副院長を経て、現在、医療法人社団康歯会 理事長、前田歯科医院 院長をつとめる。歯周病治療の第一人者・岡本浩氏、竹内泰子氏に師事。歯科世界最高峰であるスウェーデンのイエテボリ大学をはじめ、海外での研修を定期的に受講して最新の治療法を学び、世界標準の歯科治療に精通している。著書に『歯を磨いてもむし歯は防げない』(青春新書インテリジェンス)がある。
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(歯科医 前田 一義)
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