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社説は読まなくてもいい。それよりも重要なのは…仕事のデキる人がやっているタイパ最強の新聞の読み方

プレジデントオンライン / 2024年11月27日 7時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/electravk

新聞はどう読むのがいいのか。経済コラムニストの高井宏章さんは「紙の新聞の価値の5割以上はレイアウトを含めた見出しにある。極論を言えば、見出しを眺めるだけでもいい」という――。(第1回)

※本稿は、高井宏章『新聞のススメ 1日15分でつくる教養の土台』(星海社新書)の一部を再編集したものです。

■新聞は見出しを眺めるだけでいい

高井:経済コラムニスト。元日本経済新聞編集委員。
新倉:プロ雀士。東京大学法学部卒業後、日本プロ麻雀協会に所属。
布施川:現役東大生(文学部)。学業の傍ら東大生ライターとしても活動中。

【高井】新聞は1日分で文庫本1冊くらいのテキストが入っていると言われています。それをどうやって15分で飛ばし読みするかといえば、見出しだけ眺めるんです。

【新倉】見出しだけ、でいいんですか?

【高井】それである程度、何が書いてあるかわかるように作ってある。気になったら中身を読んでみればいい。独断ですけど、紙の新聞の価値の5割以上はレイアウトを含めた見出しにあるんです。ここはネットメディアよりも価値があると断言できる。見出しを固めるのに、どれだけ労力をかけているか、ちょっと想像を絶しますよ。

【布施川】何がそんなに大変なんですか。

【高井】新聞の見出しって最長12文字くらいしか入らないんですよ。そこに情報とニュアンスを詰め込んでいる。情報量がすごく多い。ネットの見出しはクリックしてもらうために「釣り」気味になりがちだし、検索キーワードを盛り込んだりする「SEO対策」を優先せざるを得ない。紙の見出しの方がはるかに洗練されている。

■大きい見出し=大事なニュース

【新倉】ほとんどのネットニュースだと見出しは短くて20字くらいか、それ以上ですよね。その半分だと思うとメチャクチャ短い。たとえばこの記事の見出しも、「非鉄」の2文字だけで金属の話だとわかるようになっている。

【高井】全部そんな調子で、燃費がメチャクチャいいんです。朝刊の1面の見出しをどうするか、キャリア10年、20年、30年なんてベテランが何人も集まって、顔を突き合わせて、1時間、2時間とウンウンうなって決めてる時もある。あと、見出しは文言だけじゃなく、サイズと位置も情報になっている。シンプルに、見出しが大きければ、大事なニュースです。

【新倉】大きさで決まるんですか(笑)

【高井】シンプルでしょ。あと見出しが横向きにレイアウトされていて白抜きになっていれば、超重要とか、法則がある。重要度が高いニュースほど、見出しが目に飛び込んでくるように強調されている。複数の見出しがついている大きな記事の場合、慣れてくると、視線が誘導されて大事なポイントが順に頭に入るようにデザインされている。

■忙しくともここだけは読むべき

【高井】新聞の基本的な構成もざっと話しておきましょう。その日で一番大事な話が「1面」つまり1ページ目に入るのは分かるよね。1面にプラスして、大事な話は3面までに載っている。1、2、3ページ目までが超重要。

【布施川】3面までですか。

【高井】日経新聞の場合、開くと「総合面」となっているでしょ。1面と総合面、この3ページの重要度がクリティカルに高い。新聞の編集者が「全読者が読むべき」と考えるニュースを選び抜いて載せている。4面から先は各ページの左肩か右肩に「政治経済」とか「マーケット商品」とかジャンル別の分類が書いてあるでしょ。そこから飛び出すほど重要なニュースが総合面に集められているわけです。

【新倉】じゃあ、この「医療介護職急増」ってニュースも、重要度が高いと判断したから、前の方に繰り上がってきたんですね。

【高井】そう。後ろの方に置くと埋没しがちだから、読み落とす人が出てくる。読者がスルーするにはニュースバリューが高すぎると判断されたわけ。その中でも見出しやニュースの置き場所で重要度の重みが分かるようになっています。

だから、忙しくても、1面から3面までは毎日、最低限でも見出しには目を通した方がいい。このレイアウトが持っている情報量が紙の新聞のすごく大きな価値です。

【布施川】なるほど。

印刷機で印刷される新聞
写真=iStock.com/simonkr
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/simonkr

■ひとまず読まなくていい記事

【高井】総合面のニュースの選び方は、新聞ごとのカラーによって変わります。日経新聞はビジネスや経済の視点で重要だと判断したら、前に持ってくる、みたいな。

それと、これは新聞全般に当てはまるルールだけど、見開きの両方に記事が入っていたら、左の面に重要なニュースが載っています。だから2ページ目の「総合1面」より3ページ目の「総合2面」の方が大事。

【新倉】そうなんですか。

【高井】総合面以外も同じです。ここの見開きを例にとると、右面にも左面にも株式や為替のマーケットとか金融のニュースが載っている。で、左面はグローバルなニュース、右面は日本の話題でちょっとスケールが小さくなっている。中身を見ても左の方に重要ニュースが並んでるね。本の場合はページ順に読むわけだけど、新聞は左面のアタマ記事から読めばいい。その面の中では見出しが大きい順、目立つ位置に置いてある順に大事な記事。

【新倉】そういうのを教えてもらえると、読みやすくなりますね。

【高井】ついでに、ひとまず読まなくていい記事を伝授しておこうか(笑)

【布施川】それは助かります(笑)

■なぜ社説の中身は読まなくていいのか

【高井】総合面なら「社説」はひとまず中身は読まなくていい。見出しを見て、関心があるテーマなら、読んでみてもいい、くらい。重要テーマに一区切りついたタイミングで社説は出てくるので、見出しだけは一応読んで「大事な話題なんだな」と認識しておけば十分でしょう。

【新倉】なぜ中身は読まなくていいんですか。

【高井】お好み次第だけど、たぶん、つまんないよ(笑) 「こうするべき」といった語り口で、「そりゃそうだよね」という正論がほとんど。

「国際社会は協力して問題解決に当たれ」とか言われても、困るじゃん。主流派というか保守的な見方や理想論みたいなものを知るには便利、とまで言っちゃうと、書いている人たちに怒られそうだな(笑)

僕は「まとめ記事」的に読むときがあります。ニュースは日々揺れ動くので、「あの問題、結局どうなったんだっけ?」と分かんなくなっちゃう。社説はたいてい「経緯と結論のまとめ」から「こうあるべき」という構成になっているので、一連の流れのダイジェストとして便利です。

【布施川】連載記事はどうですか。

■「上澄みの上澄み」だけを読める連載

【高井】日経新聞の連載だと「迫真」はオススメ。これ、けっこうな人数で取材チームを組んで、とにかく情報を集めまくって、えりすぐりの面白いエピソードをつなげて作ってる。この連載の担当になると、記者はすごい大変。

僕もロンドンにいた頃、イギリスがEU(欧州連合)離脱を決めたときに「迫真」の取りまとめをやって死にかけました(笑) 普通の記事5本分くらいのエネルギーを1本に投入している感じかな。

【布施川】「上澄みの上澄み」だけを読めるんですね。

【高井】元のニュースを知らないと面白さが伝わらないことがあるので、絶対読めとまでは言いません。正直、当たり外れもある。でも、「ニュースの裏で実はこんなことがあったんだよ」みたいな、ここ以外で読めない情報が入っていることが多い。場面で展開するルポルタージュ調だから、人間臭い話が多くて読んでいて楽しいしね。

ついでに連載記事の基本的なつくりと読む・読まないの見分け方も話しておこう。「迫真」とかの4~5本の長めの連載には「2」とか「3」ってナンバーが振ってあるでしょ。連載が2~3回の時は「上・下」か「上・中・下」になる。四角に囲んであっても、ナンバーや上中下の記載がないのは単発の企画記事です。

【新倉】ほんとだ。この日の「迫真」は「3」ですね。

■新聞は無理して読むものではない

【高井】さっきオススメと言ったけれど、今回の「迫真」は僕は読んでません(笑) 「1」と「2」を読んで、今回はあまり面白くないなー、と感じたから。

連載記事は、全部じゃなくていいので、初回はひとまず読んでみる。イマイチだな、と思ったら、次の日からしばらく読まなくていい「塊り」として飛ばす。社説と「迫真」を読まないと、総合面の右ページは2本くらいしか記事はないわけです。

【布施川】それだとサクサクめくれそう。

高井宏章『新聞のススメ 1日15分でつくる教養の土台』(星海社新書)
高井宏章『新聞のススメ 1日15分でつくる教養の土台』(星海社新書)

【高井】「迫真」以外に1面の企画も読む価値が高いものが多い。これもすごい手間がかかってるから。ただ、初回か2回目まで読んで、つまんなかったら読まなくてもいい。無理して読むようなものじゃないから、新聞は。

読まない記事を見極められると、楽にスラスラとめくっていけるようになる。情報摂取の効率が格段に上がる。僕の場合、「作る側歴28年」の蓄積があるから、見出しを見たらほぼ中身が分かる。全部読む記事の数はすごく少ない。でも「読まないものにお金を払うのは損」じゃない。見出しは目を通しているから。

【新倉】見出しだけでも読む価値がある?

【高井】やってみれば、言ってる意味がわかると思うよ。何度も言うけど、新聞は連続テレビ小説なので、毎日読んでいると「あ、ここ知ってる」が増える。そうすると中身まで読む部分が減っていきます。「これは昨日の続きだ」とか「これはまとめだ」みたいにスルーできる場所が見えてくる。とにかく最優先は「めくる習慣」を定着させること。

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高井 宏章(たかい・ひろあき)
経済コラムニスト
1972年名古屋生まれ。1995年に日経新聞入社。マーケット、資産運用などが専門分野。2016年からロンドンに2年駐在。編集委員として動画解説「教えて高井さん」や「日経ニュースプラス9」のキャスターも担当した。「高井浩章」名義で2018年に出版した『おカネの教室』は10万部超のロングセラーに。日経退職後、YouTubeチャンネル「高井宏章のおカネの教室」を開設。Twitter、noteでも幅広く情報を発信している。2025年4月に千葉商科大学付属高校の校長に就任予定。三姉妹の父親で、趣味はビリヤード。

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(経済コラムニスト 高井 宏章)

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