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「メディアが報じない隠された真実」は99%ウソ…「ネットで真実を知った」と言う人に決定的に欠けていること

プレジデントオンライン / 2024年11月29日 7時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Adam Yee

陰謀論やフェイクニュースを見分けるには、どうすればいいのか。経済コラムニストの高井宏章さんは「適切な距離感で雑多な情報を摂取しておいた方がいい。それには新聞を読むことが効果的だ」という――。(第3回)

※本稿は、高井宏章『新聞のススメ 1日15分でつくる教養の土台』(星海社新書)の一部を再編集したものです。

■紙の新聞とSNSの違い

高井:元日本経済新聞編集委員。日経退職後、YouTubeチャンネル「高井宏章のおカネの教室」を開設。Twitter、noteでも幅広く情報を発信している。
新倉:東京大学法学部卒業後、現在は日本プロ麻雀協会に所属。
布施川:東京大学文学部在学中。学業の傍ら東大生ライターとしても活動中。

【新倉】新聞を読み始めてから「いいな」と感じたことがあって。SNSだと「いま炎上しているニュース」ばかりが目に飛び込んでくるんですよね。匿名アカウントが酷いことを言って荒れているとか。そういうのばかりに時間や感情なんかのリソースを割くのは、もったいない。でも、そんな有益とは言えないことで変な快感を得て、癖になっている人もたくさんいるでしょう。

【高井】山ほど、いるだろうね。

【新倉】そういう情報に接すると、脳内麻薬が出るのかな。中毒だと感じます。新聞から情報を得る方がずっと健全で快適でした。少なくとも、ネットで毎日起きている、何の役にも立たない話で不愉快になるよりはずっといい。新聞も、意外と面白いニュースが多いですからね。「うなぎ稚魚3割減」とか。

【高井】出た、うなぎ(笑)

【布施川】ありましたね、うなぎ!(笑)

【新倉】うなぎの話は何度でも盛り上がるなー(笑) よくわからない炎上ネタなんて世界から見たら些末な問題ですし、こういう情報の方が面白いですよね。

■気になる記事があった時だけ全部読めばいい

【高井】ネットメディアはトラフィックが命なので、人間の弱いところを突いてくる。好奇心とか嫉妬とか怒りとか、感情を操作して、情報を追いかけたくなる意識を利用する。たとえ時間の無駄だとわかっていても、アプリを開いてしまえば、なかなかあらがえない。

正直に言うと、日経新聞でも、電子版の見出しには、若干、その気があります。検索で見てもらいやすいようにキーワードを盛りこむ、みたいなこともある。紙の新聞の方が、その点かなり抑制的に作ってあるので弊害が少ない。

【新倉】そうですね。こちらの感情を無駄に煽らないようにしていると感じました。

【高井】だから面白くないんだ、という意見もあるかもしれないけど、感情的なリソースをもっていかれないから、読んでも疲れないんです。最低、前文だけ読めばいいわけだから、Xのポスト1本分程度でしょ。気になる記事があった時だけ全部読めばいい。「うなぎ」とかそうだったでしょ?

【新倉】たしかに、「うなぎ」は気になって読んでしまった。

【高井】仮におふたりがいい歳したビジネスパーソンだとして、その記事を読んでれば、しばらく飲み会の話題に困らないよね(笑) 「うなぎの稚魚がねぇ……」って。

【布施川】すでにこのミーティングで「うなぎ」はメッチャこすってますよね(笑)

■実はかなりコスパがいい

【新倉】そういえば私、「気候変動でリンゴやオレンジが作れなくなる」って記事を読んでから、何かの会話で「青森でリンゴ作れなくなるかも」って話しました!

【高井】連続テレビ小説的には、カカオ豆の一連の物語も、よかったよねぇ(笑)

【布施川】そうそう! 「あ、価格落ちたんだ!」ってなりました(笑)

【新倉】布施川さんが以前、カカオ豆の不作の話で盛り上がってたの、よく覚えています(笑)

【高井】これも30日間ずっと読んでたから面白いんですよね。「カカオ、メチャクチャ上がってる~」から、「うわ~! バブルはじけたぞ~」みたいにオチが付いたから、面白い。情報を追っていれば興味深く読めるし、「こんなことが起きてるんだよ」ってウンチクを傾けられる。

カカオの実
写真=iStock.com/carlosgaw
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/carlosgaw

【高井】さて、30日間読んでみて、コスパ的にはどうでしたか。

【布施川】1カ月で6000円。それでこれだけの情報が得られるなら安い。6000円って、マンガ10冊も買えばって金額ですよね。僕はマンガが趣味なのでそっちもアリだと思うけど、比較しても、かなりコスパのいい6000円の使い方ではないかと思いました。

1日10分で新聞を読むとして、30日で300分。5時間分の娯楽と、世間を渡っていく常識が手に入る。アリですね。

■スマホよりタブレットの方がいい

【高井】おおー。新倉さんは、どうですか。

【新倉】すごく勉強になったし、紙の新聞を読むことにも慣れてきたのですが、実は来月からは電子版だけにしようかと考えています。電子版の「紙面ビューアー」の機能なら、タブレットでも紙面そのままの形で読めると知って。紙の新聞はかさばるし、毎朝取りに行く手間もないので、こっちの方が私の生活には合っていると感じました。

【高井】タブレットならいいかもね。スマホだと、紙面ビューアーは読みにくいかな。紙の新聞のメリットの一覧性が損なわれる気がします。個人的には、画面の大きさが同じでも、PCよりもタブレットの方が紙面ビューアーは見やすいと思う。ソファに座って、だと本を読む姿勢に近くて視線が下がるからかな。

【新倉】電子版、かなり便利ですね。ページの切り替えも早いし、キーワードで記事を検索できるし。物理的に破くことはできませんが、記事単位でスクラップできます。

【高井】紙はどうしても場所ふさぎだし、紙面を破ると家族が読めなくなるとか、検索できないとか、いろいろと不便な点はありますからね。そこは自分に合っているのはどちらか考えて選択すれば良いよね。今、1日にどれくらいの時間かけて読んでますか。

積み重ねられた新聞
写真=iStock.com/Wako Megumi
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Wako Megumi

■スマホは便利だけど恐ろしい

【新倉】最初は1時間以上かけていましたが、いまは気楽に10~15分くらいですね。

【高井】それだけの時間で得られる情報量として、いわゆる「タイパ」はどう?

【新倉】メチャクチャいいです。無為にネットを眺める10分より、ずっと良質な時間です。ニュートラルで根拠のある知識が増えますからね。

【高井】スマホは便利だけど恐ろしいデバイスです。朝起きてすぐスマホを見ちゃったら、布団のなかで10分なんてあっという間に過ぎちゃう。スマホのアプリを開く前に、新聞を取りに行くことを習慣にすれば、エコーチェンバーから逃れられる。だらだらスマホと情報の偏りから逃れられる点だけでも、新聞は良いツールです。

【布施川】そうですね。

【高井】あえて付け加えると、僕はいい歳したオトナやもっといい歳したご老人も新聞をちゃんと読んだ方がいいと思っています。最近、リタイヤした親世代が筋の悪いYouTubeにハマって、洗脳されて陰謀論に染まるって話、聞きますよね。

そんなリスクから身を守るために、新聞って良い予防、ワクチンになるんです。いま、スマホ中毒で一番怖いのは陰謀論の落とし穴ですよ。わりとまともな人でも簡単にハマるから、恐ろしい。

■「メディアが報じない隠された真実」は99%デタラメ

【布施川】陰謀論にハマっちゃうと「新聞は○○を隠蔽している!」とか言い出しそう。

【高井】新聞って、そんな大したモンじゃないですよ。サラリーマン記者がヒイヒイ言いながら作ってる、ただのテキストメディアです。慢性的にネタに困っているから、隠蔽とかしてる余裕もない。

「メディアが報じない隠された真実」なんて、九分九厘、デタラメだと思った方がいいし、「メディアの情報の方が真実」なんてことも99%ない。取捨選択するのは自分です。「メディアは全部ウソ」とか言い出しちゃうと洗脳から覚めるのが大変だから、適切な距離感で雑多な情報を摂取しておいた方がいい。

なーんて、かくいう僕も実は、中学2年生頃まで陰謀論にハマっていました(笑)

【一同】 ええ⁉

■他の人と差がつけられるチャンス

【高井】ノストラダムスの大予言とか、月刊誌『ムー』とか、真に受けてね。でも、ある時、開高健の本を読むようになって、「俺はなんて無知なんだ!」と目が覚めた。

陰謀論って、「俺だけが真実を知っている」という全能感があって、気持ちいいんですよ。ひとつの神話を信じればいいから、情報摂取をサボれるし。僕は読書がきっかけで足抜けできたけど、新聞にも同じような効果があると思う。活字を読むことに慣れるのも大きい。

高井宏章『新聞のススメ 1日15分でつくる教養の土台』(星海社新書)
高井宏章『新聞のススメ 1日15分でつくる教養の土台』(星海社新書)

【布施川】いま僕は予備校で国語を教えています。生徒を見ていると、かなり文章が読めなくなっていると感じます。1時間与えても1000文字、2000文字の文章が読めない。

【高井】逆に言えば、そこはチャンスとも言える。少し長い文章が読めれば他の人と差がつけられる。まず1日15分、新聞を読めばいい。

【新倉】みんなが読まない時代だから、読むだけで差がつくんですね。

【高井】最初はつらいかもしれないけど、すぐ慣れるから。やはり習慣にすることが一番大事ですね。

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高井 宏章(たかい・ひろあき)
経済コラムニスト
1972年名古屋生まれ。1995年に日経新聞入社。マーケット、資産運用などが専門分野。2016年からロンドンに2年駐在。編集委員として動画解説「教えて高井さん」や「日経ニュースプラス9」のキャスターも担当した。「高井浩章」名義で2018年に出版した『おカネの教室』は10万部超のロングセラーに。日経退職後、YouTubeチャンネル「高井宏章のおカネの教室」を開設。Twitter、noteでも幅広く情報を発信している。2025年4月に千葉商科大学付属高校の校長に就任予定。三姉妹の父親で、趣味はビリヤード。

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(経済コラムニスト 高井 宏章)

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