いつも社交的な人も実はかなり無理をしている…専門家が「人見知りをまったく気にしなくていい」という理由
プレジデントオンライン / 2024年12月2日 15時15分
※本稿は、片田智也『弱メンタルでも職場でうまいことやる方法を教えてください!』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
■見知らぬ人に警戒するのは、正常な防衛反応である
初対面の人と話すのが苦手
↓
他の人も緊張していることを知る
仕事をしていれば、それまで会ったことのない人と会うことがありますよね。
新しい取引先やお客様と顔合わせをしたり、同業者との交流会のような場があったりするかもしれません。
そういう時、するっと会話に入っていけずに悩んだり、「どう思われているか」が気になったりすることはないでしょうか?
私たちの体のしくみはおよそ10万年前、狩猟採集時代から基本的に進化していません。もちろん、脳の構造もそのままです。平たく言えば、どんな状況でどう感じるかは古代人と同じということです。
当時、私たちの祖先は100人程度の小集団で生活していました。
要するに、知らない人などいない状況だったのです。
そんな中、突然見知らぬ人物と遭遇したら?
「やあやあ、初めまして」といって握手を求めにいくでしょうか?
ありえませんよね。まずは「敵ではないか?」とチェックするはずです。
初対面の人を警戒するのは、正常かつ健全な反応なのです。
もちろん、仕事で出会う人があなたを害することはないでしょう。
でも、どう感じるかの仕組みが古代人と同じである以上、ある程度、警戒や緊張を感じることは避けられません。
たとえば、目の前でものを投げるそぶりをされたら、反射的に身構えてしまいますよね。それと同じ、本能的な防衛反応だと考えてください。
少なくとも、社交的になれない自分を否定する必要はありません。
それをすると、あなたの心はますます硬くなってしまいます。
■意外とまわりの人も緊張している
大切なのは、「他の人も緊張している」という事実を理解することです。
これまで多くの方の相談を受けてきた経験上、1つ断言できることがあります。
それは、社交的なキャラを装っている人は少なくないということです。
ぱっと見、フレンドリーな人でも、よくよく話を聴けば、「内心けっこうムリしています」という人は意外と多いのです。
そもそも「社交的にならなければ」と気張っている人は、自分がどう見られているかで頭がいっぱいなはずです。
あなたの振る舞いをチェックする余裕はないでしょう。
あくまでも仕事上の関係なのです。友達ではありませんし、一生付き合うわけでもありません。ムリして社交上手を装ったりしなくて大丈夫です。
大切なのは、そんな自分を否定して落ち込まないことです。
「あの人も緊張しているんだな」と自分だけではないことに気がつければ、硬くなった気持ちもほぐれるのではないでしょうか?
■管理職向けの研修で上司も緊張している
上司と2人で過ごすのがしんどい
↓
「役職」ではなく「○○さん」と考える
営業に同行したり、他の人が先に帰ってしまったり、不本意ながら上司と2人きりになることはあるものです。
そんな時、「何を話せばよいのやら……」と気まずさからしんどくなってしまうことはないでしょうか。
まず知ってほしいことは、向こうだって気まずい、ということです。
「若い人の話題って何だろう?」「ハラスメントとか言われるのでは?」。
管理職向けの研修をすると、こういった声をよく聞きます。
「上司も緊張しているんだな」と思うと、あなたの気まずさも少しは晴れるのではないでしょうか。
もちろん、中にはまったく気を遣ってくれない上司もいるでしょう。
実際、私が新入社員の時の上司がそんな感じでした。派手なスーツに銀縁メガネをかけていて、見た目は完全にヤクザ(もちろん健全な会社です)。
言葉もキツく、よく怒鳴るため、どうしても身構えてしまっていました。
■同じ人間であることを思い出すとしんどさが軽くなる
上司といっても、別に「人として偉い」わけではありません。
あくまでも仕事上の役割として、あなたを監督しているだけなのです。
たとえるなら、オーケストラの指揮者の位置づけです。指示に従うのは、指揮者が偉いからではなく、単純に「そういう役割の人だから」なのです。
中には、はき違えて偉ぶるような上司もいるでしょう。でも、それは「精神的な未熟さゆえのカン違い」です。
少なくとも上司相手にご機嫌を取ったり、へつらったりする必要はありません。
気を回すとしたら、仕事上のことであるべきです。それ以外は、人として対等な関係だということを覚えておいてください。
上司も1人の人間です。役割の仮面に邪魔されて、人の顔が見えていないのかもしれません。でも、どんな人にも人間的な一面は必ずあります。
私は入社1年目の冬、仕事に行き詰まりを感じて「もう辞めようと思っています」と上司に相談したことがあります。先ほどの言葉のキツイ上司と一緒にご飯を食べたのですが、その日の上司はとても優しかった。といっても気を遣うような優しさではありません。
いつも通り言葉はキツイまま。ですが、人として対等に話してくれているのはよくわかりました。
それからは、2人になってもしんどさは感じなくなったものです。
2人きりになって気まずさを感じた時は、「上司」という役割ではなく、人としての「○○さん」に目を向けてみてください。
同じ人間であることを思い出せば、しんどさや気まずさも軽くなるでしょう。
■ムリして雑談に入らず黙っていても構わない
雑談に入れなくて居心地が悪い
↓
ムリに入らなくて大丈夫。あいさつで好印象は残せる
「雑談に入れなくて困った」という経験はありませんか?
ちょっとした合間に突如始まる雑談タイム。
「会話に入りたいのに、なかなか入れない……」。
そうやって、うじうじしている時は、まったく居心地が悪いものです。
そもそも、ムリして雑談に入る必要はないでしょう。
特に思うことがなければ、黙っていても構わないのです。
大丈夫。雑談に夢中な人はあなたの存在を気にしていません。安心して、空気のように過ごせばよいでしょう。
「それができたら苦労はしない」と思ったかもしれません。
もしかしたらあなたは、「雑談に入らないのは悪いこと」だと思っていないでしょうか?
たしかに、「話に入らなければ」と思いながらぐずぐずしているのは居心地が悪いでしょう。でも、「別に入る必要はない」と割り切って堂々としているのは、むしろすがすがしいものです。
では、この違いはどこから生まれるのでしょうか?
おそらく「雑談に入らないと、感じ悪く思われるのでは?」という不安があるのではないでしょうか。だとすれば、「がんばって入らなきゃ」と、雑談を重く考えてしまうのもムリはありません。
■少し高めの声で感じよく挨拶する
安心してください。雑談に入らなくても好印象を与えることはできます。
普段から、メリハリをつけて感じよくしていれば問題ありません。
具体的には「あいさつ」です。
「おはようございます」「ありがとうございます」「お疲れ様でした」。
こうした普段のあいさつを、思い切り感じよくしてみましょう。
大切なのは声のトーンです。声というのは思っている以上にあなたの内面を反映しています。気まずさを感じている時ほど、声が小さくなったり、「もごもご」とした声が出てしまったりするものです。
その瞬間だけ意識して、少し高めの声を出してみてください。
気持ちよくあいさつされて誰も悪い気はしませんし、何よりあなた自身の気持ちが軽くなるでしょう。
ここで大切なのは「感じよくできている」というあなた自身の実感です。
ポイントを押さえて感じよくできていれば、「印象が悪いのでは?」という不安も軽くなります。そうすれば、いざ雑談が始まった時に「話に入らないと」と重く受け止めることもなくなるでしょう。
透明な空気として過ごすことに、むしろ落ち着きを覚えるはずです。
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一般社団法人感情マネージメント協会代表理事、公認心理師
20代で独立起業するが、ストレスから緑内障を発症、視覚障害者に。同年、うつ病と診断された姉が自死。姉の死の真相を知るために精神医学や心理療法を探求し、後に心理カウンセラーに転身する。厚生労働省ストレスチェック制度、防衛省メンタルサポートなどメンタルケア関連の公共事業に多数参画。カウンセリング実績はのべ1万5000人以上。企業研修や講演の受講者は累計2万名を超える。精神障害を持つ方のカウンセリングから経営者、アスリートのメンタルトレーニングまで「心の問題解決」に広く取り組む。
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(一般社団法人感情マネージメント協会代表理事、公認心理師 片田 智也)
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