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「子あり」と「子なし」どちらが幸せなのか…30代の私が「夫婦2人暮らしでよかった」と思う瞬間

プレジデントオンライン / 2024年12月19日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

共働きで子供を作らない夫婦は「DINKs(Double Income No Kids)」と呼ばれている。「DINKs(仮)」のライター・月岡ツキさんは「子供を持つか持たないかという他人の選択にケチをつける人がいるのは、心のどこかで自分の選択に満足できていないからではないか」という。著書『産む気もないのに生理かよ!』(飛鳥新社)より、一部を紹介する――。(第3回/全3回)

■「子なしもいいですよね」に隠された意味

「子供は持たない方向で行こうと思ってるんですよね」と言うと、「それ“も”いいですよね」とか、「全然“あり”ですよね」と返されることがある。私の考えを否定されているわけではないし、本当に「いいですね」「ありですね」と思ってくれているんだと思うのだけれど、何か引っかかるような気がする。

なんというか、「子供を持つ」が最良かつ最善の選択ではあるものの、そうでない選択も、今どきは受け入れられるべきですよね! 的なニュアンスを感じるのかもしれない。

「子なし」はあくまで例外というか、オプションというか、一段劣るもの、みたいな。

私の場合は「子供がいなく“ても”」幸せというより「子供がいない“ほうが”」自分にとっては幸せだと思っているからこういう選択をしているのだが、私のような人(特に女性)はあまりいないことになっている。

「子供を持たない人生でも幸せになれる」ということを宣伝しすぎてしまうと、より少子化が進んでしまうような気がして、言ってはいけないことになっているのかもしれない。

■「子なし=遊んで暮らしている」?

「子供がいないと、自由でいいですよね」と言われることもある。

それも本当にそうだし、育児に拘束されずに自由を享受したい側面も大いにある。

でも、そこに「子育てに苦労せずに遊んで暮らせていいですよね」的なニュアンスを感じてしまうのは、私がひねくれすぎなのだろうか?

実際まっすぐな性格です! とは言い切れない人間であるのだが、子なし夫婦というと「遊んで暮らせる人たち」という目で見られることは少なくない。

そして「今は自由で楽しいかもしれないけど、老後に後悔するに決まってる」と内心思う人もいるだろう。

私は、子供を育てている人の幸せを全く否定しないし、なんなら「こんなに楽しい子育ての幸せを知らないなんて、もったいないな」と思えるくらいでいてほしいとさえ思う。

■夫婦それぞれが好きなことをして過ごす週末

私も「こんなに楽しい夫婦二人暮らしの幸せを知らないなんて、もったいないな」と内心思っている。

お互いに自分の選択が一番幸せだと思える世界だったら、こんなに平和なことはない。あなたもそれが一番幸せ、私もこれが一番幸せ、それでいいじゃないか。

他者の選択にケチをつけたり、順位をつけたりしたくなるのは、心のどこかで自分の選択に満足できていないからではないか。

私が「夫婦二人暮らしでよかった」と思うのは、たとえば週末の朝。予定がなければ10時半くらいまで布団でゴロゴロしながら、二人でそれぞれ本を読んだり、スマホを見て無益な時間を過ごしたりするのが、最高に贅沢だと思う。

他にも、思いつきで旅行したり、子供に壊されたり汚されたりする心配をせずに壊れやすい家具を買えたりと、「子供がいたらできなかっただろうな」と思うことがたくさんある。

旅行や買い物といった消費行動に限らず、子育て環境や学校の都合を気にせず好きな場所に住めたり、邪魔されずに本を読む時間が取れたり、仕事で少しリスクのあるチャレンジができたり、習い事に思いっきり打ち込めたりと、人生の幅を広げてくれる要素も多い。

■韓国の女性が途上国の子供を支援する理由

「子供がいない人生には深みがない」と言う人もいるが、子供がいないからこそ深められる部分も、確実にある。

こういう話をすると、ますます「子なし夫婦は、子育てに苦労せずに遊んで暮らしてばかりいるキリギリス」的な印象が強まりそうではあるが、私は自由を享受する幸せと同じくらい、誰かのために自分の人生を費やすことも自分自身を幸せにしてくれるのではないかと思っている。

その最たるものが子育てなのだと思うが、子供を持つ選択をしていなくても、「次の世代のために力になりたい」という気持ちは湧いてくるものだ。

韓国の子なし女性たちにインタビューした本『ママにはならないことにしました』(晶文社)に、自分の子供を持つ選択はしなかったものの、途上国の子供を何人も支援し、養っているソヨンという女性が登場する。

彼女は弁護士として働きながら、奨学金団体を作って途上国の女子学生の進学をサポートしている。生活費以外のほとんどの収入をこの奨学金事業に使っているというから驚きだ。

ソヨンは「何よりもこのことから、私自身も心から満たされるものを感じる」と語っている。

■子供がいないからこそ、できることがある

現在、夫も私もそれぞれに、途上国や紛争地帯の子供を支援する機関に毎月寄付をしている。ソヨンがやっていることに比べたらゾウと羽虫くらいの規模の差があるが、私には彼女の気持ちがとてもよく分かる。

私のしている寄付は、サブスクと考えると安い額ではないが、実子を養うことに比べれば少ない負担だ。

偽善と言われればそうだし、子供を育てる代わりにするにはあまりに軽い行為ではあるけれど、どちらかと言うと自分が助けてもらうような気持ちでやっている。

もし自分の子供を育てていたとしたら、他の苦しい境遇にある子供のためにお金をかける余裕はないかもしれない。

しかし、子供がいない私には、同世代の平均的な子育て中の女性と比べると、お金が余分にある。それを世界の他の子供に分け与えることは、旅行や買い物や自己研鑽とはまた違った喜びを私にもたらしてくれる。

一緒にハートを持つ2人の手
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

■次の世代の役に立つことで救われている

私は子供を育てない自由を選んでいるけれど、完全に自分のためだけに生きるには、人生は長すぎるとも思う。他者のために、特に次の世代の、子供たちのために何かをしたい。それがエゴでも自己満足でも。

そして、社会のために声を上げたりアクションしたりするのは、私のようにある程度人生の余力がある人間こそやるべきだとも思う。

何も私は「自分がすごく素晴らしい人間である」と言いたいわけではない。

実際、何百人もの子供を大学に行かせてやれるほどの大富豪なわけではないし、ソヨンのように私財をなげうって活動しているわけでもない。私一人にできることは、たかが知れている。

ただ、子供を産んでいなくても次の世代の役に立つことはできるし、そういう行為によって他ならぬ自分自身が救われているのだ。

自分で好きで選んでいる「子供のいない人生」に、それでも時折訪れる「本当にこれでいいのか」という欠落感を、自分が次の世代の誰かの人生にほんの少しでもいい影響を及ぼしている、という事実が埋めてくれる。

■「子なしはフリーライダー」への反論

「子供を産まずに好きなことばかりして暮らして、子なしは社会にフリーライドしている」という言葉をSNSでしばしば見かける。

これに対して「私は寄付をしたりボランティアをしたり、子供たちのために役に立つことをしているので、フリーライドはしていません」という切り返しができればそれでよいのかといえば、それもまた違うような気もする。

社会の中で何かの役に立たなければ生きていてはいけないかというと、そうではない。

誰だって、なんの役にも立てなくたって、いていいのだ。

そもそも誰かの役に立つということは、社会のためにやるというよりも、究極的には自分の喜びのためにやるものなのだと思う。

子供を産み育てている人だって、結果的に社会の維持に役立っているかもしれないが、「世のため人のため」に子供を産んでいる人はいないはずだ。

他者を育てることや、他者を助けることを、「それをした人には相応のリターンがあり、それをしていない人は義務を果たしていないので、権利が与えられない」と考えることがそもそもおかしい。

■「自分で選んだ幸せ」なら後悔しないはず

子供を持たない選択をした夫婦に対して、「今は自由で楽しいかもしれないけど、老後に後悔するに決まってる」と言う人がいるのは、義務を果たさない者にはそれ相応の報いがないと帳尻が合わない、という考えの表れではないか。

月岡ツキ『産む気もないのに生理かよ!』(飛鳥新社)
月岡ツキ『産む気もないのに生理かよ!』(飛鳥新社)

子供を持つ幸せ、子供を持たない幸せ、自分のために生きる幸せ、誰かのために生きる幸せ。

どれを選んだとしても「完璧な幸せ」は訪れない。帳尻なんてみんな一生合わないかもしれない。

幸せは真円ではなく、片方が出れば片方が引っ込むような、不安定で歪んだ形をしているのだと思う。誰もが幸せの反対側に凹みを持っている。人生はままならない。

それでも、自分で選んだ幸せなら、私は凹みも愛して生きていきたいと思うのだ。

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月岡 ツキ(つきおか・つき)
ライター・コラムニスト
1993年生まれ。大学卒業後、webメディア編集やネット番組企画制作に従事。現在はライター・コラムニストとしてエッセイやインタビュー執筆などを行う。働き方、地方移住などのテーマのほか、既婚・DINKs(仮)として子供を持たない選択について発信している。既婚子育て中の同僚と、Podcast番組『となりの芝生はソーブルー』を配信中。マイナビウーマンにて「母にならない私たち」を連載。創作大賞2024にてエッセイ入選。

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(ライター・コラムニスト 月岡 ツキ)

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