性生活がヨボヨボだと健康寿命にも悪影響…和田秀樹が「高齢者にこそ必要」という社交の場とサービスの種類
プレジデントオンライン / 2024年12月14日 16時15分
※本稿は、和田秀樹『50代うつよけレッスン』(朝日新書)の一部を再編集したものです。
■年配者がときめきを感じられる社交場を
最近、私はいろいろなところで半分は冗談、半分本気で話しているのですが、中高年向けの「インテリ系ホストクラブ」をつくってはどうかと思っています。
今のホストクラブには押しの強い若いホストが多いそうですが、そうではなくて、40代、50代の大卒や大学院卒で知力の高い男性が話を聞いてくれるクラブです。
あるいは、「臨床心理士クラブ」もいいかもしれません。臨床心理士の資格を持っている男性がホストになって1時間3万円などで話し相手になってくれるクラブです。じっくり悩み相談に乗ってくれたり、恋愛ごっこのような関係を楽しめたりするクラブなら、日常のストレスを発散する場としても最適です。臨床心理士の資格を持つ女性がホステスになって、客の悩みをじっくり聞いてくれるクラブもいいかもしれません。
とにかく、これから高齢者が増えれば増えるほど、年をとってからときめきを感じられるような場が社会的に必要になってきます。
「年をとったら枯れていくのが美しい」なんて、マスコミの大ウソです。
そんな意識は捨てて、男性も女性もどんどんときめくことが大事です。
後述しますが、男性ホルモンを増やしたい場合は、「セックスミネラル」とも呼ばれる亜鉛が含まれている牡蠣やニンニクを積極的に食べるのもいいでしょう。
■欧米では解禁されているポルノグラフィー
私から言わせれば、年をとったら、ときめきだけでなくて性的生活も必要です。性的な関心が強い人ほど健康寿命も延びるため、性規制はもっとゆるくしたほうがいいと考えています。
たとえばアメリカやヨーロッパの国々では表現の自由という観点からポルノグラフィーが解禁されていますが、先進国と呼ばれる国のうち、ポルノを解禁していないのは日本くらいです。
男性ホルモン補充療法以外で、男性ホルモンの分泌をもっとも速く促すのは、実はこうしたポルノの鑑賞です。
日本では高齢者がエロ動画やヌード写真などを見ていると眉をひそめられるような風潮がありますが、若返りという点から見れば、性をタブー視すべきではありません。高齢者の多い日本こそポルノを解禁したほうがいいのに、政治家の頭が固すぎるのは残念なことです。
■「性の先進国」はポルノ上映を合法化
日本とは違い、高齢者に対して思い切った策を取ったのが、北欧のスウェーデンとデンマークでした。
1960年代から現在の日本と同じように国民の高齢化に頭を悩ませていたスウェーデンとデンマークは、老人たちに活力を与えて若返らせるために、1970年前後からポルノを解禁し、ポルノ映画の上映を合法化したのです。
スウェーデンは特に「性の先進国」と呼ばれますが、他にも非常にユニークな政策を行っていて国民の幸福度も高く、寝たきりの老人もほぼいないと言われています。このような実質的な考え方を、日本の政治家も取り入れてほしいものです。
性的な気持ちを持つことは悪いことではありません。
「こんな年なのに恥ずかしい」「情けない」などと考えて自分にブレーキをかけないことが、老け込まずに若々しくいるために必要なのです。
■セロトニンを補うには肉食が最適
このように意識して後半生にプラスしていきたいのが、栄養、運動、ときめき(性的活動)です。
年をとってくると食事の量が減って栄養が不足してきたり、男性ホルモンの分泌が減少したり、運動量も少なくなりがちですから、日常生活で補うことがとても重要です。
なかでも一番改善しやすいのが、食生活です。
脳内の神経伝達物質のセロトニンの不足がうつ症状を引き起こす要因と言われていますが、セロトニンは年齢を重ねるにつれて減少していくため、補う必要があります。
このセロトニンの材料となるのは「トリプトファン」と呼ばれる必須アミノ酸の一種です。「必須」というのは、体にとってなくてはならない大切な成分ということ。この必須アミノ酸は人間の体内でつくり出せないので、食べ物から補給するしかありませんが、トリプトファンの材料はタンパク質です。
ですから、タンパク質が豊富な食べ物を摂(と)る必要があります。
大豆やナッツもいいのですが、セロトニンを脳に運ぶ役割をしているのがコレステロールなので、タンパク質とコレステロールの両方が豊富な肉が最適なのです。
数あるタンパク質のなかでも、動物性タンパク質の宝庫である肉は男性ホルモンを活性化させ、人を行動的にする働きがあるため、50代以降は特に肉を積極的に食べることをお勧めします。
■健康な老後に何より大事なタンパク質
セロトニンは精神を安定させるため、肉食はストレスの緩和にも役立ちます。
年を重ねるごとに筋肉はどんどん落ちていき、いくら筋トレで鍛えても、一度落ちた筋肉は簡単にはもとに戻りません。タンパク質は筋肉や臓器、骨格などをつくる材料にもなりますから、特に50代以降は意識的に摂取したほうがいいのです。
その他にもタンパク質は免疫機能を維持する物質の材料にもなっており、不足すると免疫機能がどんどん衰えていきます。風邪をこじらせて肺炎で亡くなる高齢者が多いのは、タンパク質が不足しているために免疫機能が弱っている可能性があるからです。
健康な老後を送るためには、アミノ酸を多く含むタンパク質を摂取することが何より大事ですが、そのための理想的な食べ物が、肉なのです。
ただし、うつ症状が出ている人は食欲が落ちるだけでなく、肉類をあまり受け付けなくなることがあります。うつ病の患者さんのなかには、「肉なんてムリ、あっさりしたものしか食べられない」という人も多いです。
しかし、そのために余計うつ症状が進んでしまうこともあるのです。ですから、うつ症状が出る前からしっかり肉類を摂っておいたほうがいいでしょう。それでも、やはり肉が苦手という人や、もうすでにうつ症状が出ていて肉を食べられないという人は、動物性タンパク質の豊富な牛乳や卵でも構いません。
■ホルモンを活性化させる食品群
他にも、ホルモンを活性化させる食品はたくさんあります。
図表1に列記しますので、なるべく積極的に食べることをお勧めします。
食事の際には、食べる順番も大事です。
ポイントは、「タンパク質から食べる」ことです。
始めに炭水化物を摂ると、血糖値が大きく上がってインスリンが大量分泌されます。すると血糖値が乱高下するため、内臓に負担を与えて細胞の炎症を起こして老化を促進してしまうのです。
ですから、まずは肉や魚、大豆製品などのタンパク質から先に食べて、その後に野菜、そしてご飯やパン、最後にデザートという流れにすると、血糖値の上昇が穏やかになり、内臓への負担が少なくなります。
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精神科医
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学教授(医療福祉学研究科臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。
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(精神科医 和田 秀樹)
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