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「すぐ逃亡して音信不通」「仕事中にパチンコ」…"ムダに高学歴"とバカにされる早慶出身社員の"親の共通点"とは

プレジデントオンライン / 2024年12月5日 10時15分

※写真はイメージです - 写真左=iStock.com/y-studio・写真右=iStock.com/mizoula

名門大学卒で優秀な人材を採用したのに、仕事はできない上に“自己中”で協調性もない……といった失敗事例が後を絶たない。未来の成功者を育てるために小学生対象の非認知能力向上に取り組んでいる井上顕滋さんは「そうした見せかけのエリートは本人の幼児期の育てられ方に原因があることが多い」という――。

■早慶含む名門大学を卒業しても、その恩恵を活かしきれていない

一般的に「名門校」と呼ばれる、歴史があって高偏差値の大学に入る恩恵には、大きく分けて次の三つがあります。

一つ目は、自分の努力に対して結果が出たという成功体験による自信。それが自分の能力に対する自信につながります。

二つ目は、社会的な信用。誰もが知る名門校卒というだけで、この人はきっと優秀だろう、このレベルの仕事を任せても大丈夫だろうと勝手に思わせる力がある。そういった類の社会的信用です。

そして三つ目が、お金では買えない人脈です。損得や利害関係がない学生時代の友人こそが本当の人脈だと思います。名門校であれば優秀な人も多く、そういった人たちを友人として持ち、彼らが将来的に出世して人脈となれば、大きな財産になります。

こうした恩恵を存分に生かして活躍する人が多い中、たとえ早稲田大学や慶応義塾大学といった一流の大学を卒業しても、職場で戦力になれず「あれ、早慶出身だよね? 全然使えないな」「ムダな高学歴」などと陰口をたたかれてしまう残念な人になってしまうケースは少なくありません。

■社会人として問題を抱える名門大出身者の実例

一流大学卒の人の中には、もともとコミュニケーション能力が高く、学生時代は交友関係も広かったにもかかわらず、社会人になったと途端、自分で自分の信用をなくすようなことをしてしまうタイプがいます。

私が実際に面談した早慶出身の人を含む5つの例を挙げていきましょう。

①嘘をついて人を裏切り、何かあると音信不通

東京の名門私立大学出身のある男性は、コミュニケーション能力が高く、仕事の能力も高い。ところが、すぐに嘘をつくし、人を裏切るし、なにかうまくいかないことがあると逃げ出して音信不通になる。そういった道徳的な問題があって社会人としての信用をなくしてしまい、彼は会社で活躍するチャンスを失ってしまいました。

②注意されると逆ギレして攻撃的、仕事中にパチンコ

関西の難関私立大学を出た人で、コミュニケーション能力は問題がないものの、無責任で他責傾向が強く、被害者意識が過剰に強いために、誰かから注意されると逆ギレして攻撃的になるという人がいました。また、仕事中にパチンコに行ってしまうなど、非常識な面もありました。彼のせいで、社内で一緒に働いている人たちが精神的に疲弊してしまい、特に彼の上司は体調を崩してしました。注意すると反撃してきますし、それ以上注意したら、パワハラだと言われかねないからです。

③優秀だが人の立場や気持ちを無視し、組織批判

同じく関西の難関私立大学を出てIT関連会社で働いている30代の人は、仕事は優秀でも、空気を読まず、人の立場や気持ちも考えない、それで他人や組織の批判ばかりを言う。当然、周りから嫌われていて、会社の中で孤立していました。

④コミュニケーションが苦手な頼りない弁護士

猛勉強で超難関の司法試験をクリアした弁護士であるにもかかわらず、コミュニケーションが苦手で、自信がなさそうな雰囲気が体全体から出てしまっている。仕事を依頼してくれるクライアントは少なく、収入は一般企業に勤務したほうが多いのではないかと悩んでいる。

⑤自信が持てず自己肯定感が欠如し、うつ発症

東京の名門私立大学を出た人で、コミュニケーションは十分にできるにもかかわらず、長期間うつ病に悩まされていました。自分に自信が持てず、過剰な自責傾向があり、自己肯定感が欠如していて、何でも自分のせいにしてしまう。その結果、うつ病を発病してしまった。

以上のように、基本的なコミュニケーションに大きな問題はなく、勉強も優秀にもかかわらず、社会に出て苦戦する人々。どうしてこんなことが頻発しているのでしょうか。さらに聞き取りをすると「背景」が見えてきました。

■実は幼児期の親の育て方が原因だった

①の男性は、子供の頃に親に厳しくされたことがありませんでした。つまり、親のしつけによって社会性を身につけるという経験が欠落していたおり、叱られたこともないので、ここまでやってもOKだけど、これを超えたらダメだといった線引きができない。学生時代は学業優秀だったので大目に見られてきたことも、社会人になったら許されないことが多いのですが、その判断もできないのです。

IT関連企業で働いている②の人は、他人の立場や気持ちを考えずに批判ばかりする傾向がありますが、①と同様に親に厳しくされた経験がない。親はとても優しく、なんでも子供に合わせてやってくれていたそうです。面談した際、親に厳しくされた経験がなく、厳しさを伴った愛情が不足するとこういうことが起きやすいと説明したところ、その人は号泣し始めました。「おっしゃるとおりです。会社で自分が浮いているのは分かっていたけど、どうしていいか分からなかったんです」と。

算数の宿題を手取り足取り手伝う母親
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

この①に人も②の人も、大学の友達やサークルの仲間などとのコミュニケーションに問題はなかったそうですが、より密接した人間関係が求められる仕事になると、本性(ボロ)が出てしまったわけです。

共通点は、親の育て方。こういう時にはこう振る舞うべきだとか、人の立場、気持ちを大事にしないといけないという厳しさが足りなかった。親御さんとしては子供がかわいいから大事に育ててきただけで、それ自体は決して悪いことではありませんが、結果的にそれによってわが子に被害が出ているのです。

親の教育による影響で、もうひとつ見逃せないのが、勉強に関することです。

親に「勉強ができない人間はダメだ」といった強迫観念があり、子供には勉強をさせる。子供は小さい頃は言うことを聞くので、勉強が得意になる。すると、親はさらに上を求め、とにかく勉強だけさせていればいいと、追い込む。子供を言いなりにする傾向は勉強以外のことに関しても同じで、とかく子供の言動に批判的なことばかり言ったり、子供を否定したりするのです。これにより子供は、「自分はダメな人間だ」と思い込でしまうケースがあります。

それに当てはまるのが、④の弁護士の方と⑤の自己肯定感が欠如していてうつ病になってしまった人で、二人とも親が非常に厳しかったそうです。

親にかわいがられたり、温かい愛情を受けたりしたことは記憶にないと言っています。それだけでなく、親からは「お前の努力はまだまだ足りない」とか「こんな成績しか取れないのか」といった過度な否定の言葉ばかり投げつけられ、自己肯定感が欠如してしまったのです。

親にほとんど厳しくされなかった人と、過度に厳しくされた人。その両方が、社会に出て、苦しんでいるのです。

■親が幼児教育をする上で必要な「優しさ」と「厳しさ」のバランス

上に挙げた、高学歴でも職場でさまざまな問題を抱えている人たちの幼児期の体験にもあるように、やり方を間違えると、大人になってからさまざまな問題を抱えることになる可能性があります。

では、どうしたらいいのでしょうか。

まず親御さんに知っておいていただきたいのは、「優しさの愛情」と「厳しさを持った愛情」という異なる2つの愛情を適切に注ぐことの重要性です。

「優しさの愛情」は子供の存在をまるごと肯定してあげる、包み込むような愛のことを指します。親であれば誰もが持っている本能的な愛情といえます。

一方、「厳しさを持った愛情」は、「ダメなものはダメ」と、厳しく、かつ愛情を持って子供に社会のルールを教えることです。厳しくといっても、何事にも厳しくするということではなく、例えば、子供が社会的なルールを破るような行動をしてしまった時に、それはダメなことだと厳しく教えることです。

生またばかりの頃は「優しさの愛情」により親子間の愛着を形成しておくことが大切です。愛着とは乳幼児期に親子間で築かれる心理的な結びつきのことです。その土台の上に、子供が年齢を重ねるにつれて「ダメなものはダメ」と厳しい愛情をもって社会のルールを教えていくのです。

自宅でDIYをする父親と息子
写真=iStock.com/Wiphop Sathawirawong
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Wiphop Sathawirawong

その時に子供の反抗期などとも重なり、親としては自分の思いどおりにはならないという困難に直面しますが、幼少期の親子の間に愛着が形成されていれば、子供は親から厳しいことを言われても、「親は自分を大事にしているから、厳しく言ってくれているのだ」と受け止めることができます。

こうした親子関係や信頼関係が確立されれば、子供が社会に出て困難に対してフラストレーションを感じた時も対処できるようになり、自分の感情や欲求を制御しなければならないという社会性の基礎を身につけることもできるのです。適切な振る舞い方や空気を読む力、社会に出て必要になる「破ってはいけないルール」を守る感覚も身についていきます。社会性を育む上で重要な「優しさの愛情」を十分に与えた上で、「厳しさを持った愛情」に基づき叱る行為は、とても大切なことなのです。

ところが、1990年代になって「叱らない子育て」がもてはやされるようになりました。曰く、「幼い子供に厳しくすると脳が萎縮し、ストレスホルモンが出て脳神経の発達が阻害されますよ」と。そんな根拠不明な言説がまことしやかに言われるようになったのです。そういう情報に踊らされて、子供に厳しくてはダメだと鵜呑みした親御さんたちが増えた結果、前述したような社会人生活を送るのに苦しむ子供を量産してしまっているのです。

もちろん虐待レベルの過剰な厳しさで子供に接してはいけません。しかし、普段は「優しさの愛情」を与えていて、子供がルールを破った時に「ダメなものはダメ」だと「厳しさを持った愛情」で叱るくらいで脳に問題が起きるのなら、今よりも親に厳しく育てられてきた50歳以上の人たちはみんな頭に問題を抱えているはずです。しかし実際にはそんなことはありません。一定の厳しさは必要なのです。

子供はまだ社会的ルールも礼儀も知りませんから、自己中心的だったりルールを破ったりするのは普通のことです。その際、1回目は優しく注意します。もし、また同じことをしたら、次は厳しく言います。それでもダメなら、もっと厳しく叱ります。それにより子供は、「ダメなものはダメ」だということを学んでいくのです。

何もかもルールでガチガチにしてしまうのも、子供のクリエイティビティを奪うことにつながりかねないので、それは良くありません。

しかし、「優しさの愛情」と「厳しさを持った愛情」をバランスよく子供に与えて、温かい愛情で育てていけば、子供たちは将来必ず社会的に成功し、かつ幸せを感じる人生が送れるようになるはずです。

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井上 顕滋(いのうえ・けんじ)
非営利型一般財団法人日本リーダー育成推進協会(JLDA)特別顧問
1970年生まれ。2004年 Result Design株式会社を設立。最先端の心理学および脳科学を学び、それらを融合させることで人それぞれの持つ能力を最大限に引き出す、独自の能力開発メソッドを確立。3000社以上の企業で経営者・経営幹部への指導や研修を行い、「1年間で離職率8分の1」「2年間で経常利益26.8倍」「営業成約率平均31.9%アップ」などの実績をもつ。エグゼクティブコーチ、メンタルトレーナーとしてオリンピック出場の日本代表選手や世界一に輝いたプロスポーツ選手のサポートも行っている。自らも経営者として30年以上の部下育成の経験を持つ。2011年に未来の成功者を育てるため、小学生を対象とする日本初の非認知能力専門塾Five Keysを設立。2015年には非営利型一般財団法人日本リーダー育成推進協会(JLDA)を創設し代表理事に就任。現在は特別顧問。講座などを通じてこれまで指導した小学生の保護者は4万人を超える。著書に『7つの“デキない”を変える “デキる”部下の育て方』『子育てママに知ってほしい ホンモノの自己肯定感』(ともに幻冬舎)などがある。

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(非営利型一般財団法人日本リーダー育成推進協会(JLDA)特別顧問 井上 顕滋)

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