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インフルエンザワクチンは12月中旬までの接種が理想、今年は微熱のケースも…医師が解説する冬の感染症対策

プレジデントオンライン / 2024年12月11日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/west

インフルエンザが流行する季節になった。有効な対策はあるのか。産業医の池井佑丞さんは「基礎疾患を持つ方や高齢者、そのような方と接触する機会が多い方にはインフルエンザワクチンの接種をおすすめしたい。12月中旬までに接種できると良いだろう」という――。

■今年は11月上旬から流行の兆し

秋がなかなか訪れないように感じるほど長く暑い夏が続きましたが、冷え込む日が増えてきた今日この頃、体調を崩されることなくお過ごしでしょうか。低温、低湿度を好むウイルスにとって、冬は最適な環境となります。例えば、毎年冬に流行するインフルエンザウイルスは10〜20℃、湿度は20%程度が最も生存しやすいと言われています。空気中に長時間ウイルスが浮遊すると、それだけ私たちの感染リスクも高まります。そこで今回は、これから本格的な流行期を迎えるインフルエンザと、流行が未だ収まらないマイコプラズマ肺炎についてお話ししたいと思います。

インフルエンザはインフルエンザウイルスの感染によって起こる病気です。このウイルスは、5000年も前から存在していたとも言われています。20世紀以降、複数回の大流行を経て、ウイルスの構造を変化・変異させながら、季節性インフルエンザや新型インフルエンザとして流行しています。

例年、12月下旬から3月上旬にかけて猛威を振るいます。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの発生以降、インフルエンザの流行がこれまでと異なるタイミングで始まったケースも報告されていますが、今年は11月上旬から流行の兆しが見え始めています。インフルエンザウイルスにはA、B、Cの型があり、それぞれにいくつかの亜型があります。昨年流行した型はA型(AH3亜型)と言われています。インフルエンザは他の風邪とは異なり、38度以上の急な発熱や悪寒に加えて、頭痛や咳などが主な症状です。

■微熱でもインフルエンザに感染している場合がある

しかしながら、微熱でもインフルエンザにかかっている場合があります。特に今年は微熱でも、検査をしてみると実はインフルエンザにかかっていたという方が多いと聞きます。インフルエンザ推計受診者数が約1801万9000人と2018/19年以降最多だった昨シーズン、インフルエンザに罹患したことで獲得した免疫の影響があるとも推測されています。微熱だから大丈夫と過ごしているうちに、家族や周りの人に感染を広げてしまうかもしれません。インフルエンザに罹ったことが疑われる場合には、早めに医療機関を受診するようにしましょう。

インフルエンザの治療薬には、タミフル(内服、1日2回5日間)、ゾフルーザ(内服、1回のみ)、イナビル(吸入、1回のみ)、リレンザ(吸入、1日2回5日間)、ラピアクタ(点滴、1回のみ)があります。いずれのお薬も症状が軽減するまでの時間を短縮し、症状自体も軽減させる効果がありますが、耐性や年齢、状況に応じて選択する必要があります。医師と相談の上、効果的で安全な治療薬の選択をするようにしてください。

■12月中旬までにはワクチンを接種するといい

インフルエンザワクチンは生後6カ月以上の赤ちゃんから接種することが可能です。季節性インフルエンザワクチンは接種後約2週間で効果を発揮しはじめ、5カ月程度効果は持続すると言われています。つまり、流行の波より2週間以上前に接種することが望ましいと考えられます。流行のピークは1月末ごろと予想されますので、12月中旬までにはワクチンを接種できると良いでしょう。ピーク前後の接種については、もはや確率論的な話になります。リスクと必要性を考慮し、適切に判断することを推奨します。

2024年12月リアルなグレー卓上カレンダー
写真=iStock.com/spawns
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/spawns

また2023年3月に新たなインフルエンザワクチン「フルミスト点鼻薬」が承認され、今年から鼻からワクチンを接種できるようになりました。フルミストは「鼻の中にスプレーを吹きかけるだけなので、痛みがない」「生ワクチンのため得られる免疫が強い」といったメリットがある反面、「生ワクチンのため副反応が出やすい」というデメリットもあります。フルミストの添付文書によると、副反応として59.2%に鼻づまりや鼻水、27.8%に咳の症状が見られると報告されています。2歳から使用可能ですが、アレルギー性鼻炎や鼻水の症状がある場合、使用が難しいことも考えられます。これらのメリット・デメリットを考慮し、ワクチンを選択すると良いでしょう。

■生後6カ月未満の乳児と65歳以上の高齢者に入院が多い

季節性インフルエンザによる入院の割合は、生後6カ月未満の乳児と65歳以上の高齢者が特に多いと言われています。30万人近くの65歳以上の高齢者が参加した、インフルエンザワクチン接種が心疾患や肺炎、インフルエンザによる入院、そして全死因の死亡のリスクに与える影響などを評価した大規模なコホート研究があります。この研究の結果、インフルエンザの予防接種は心臓病による入院リスクを19%減少させ、肺炎またはインフルエンザによる入院リスクを30%前後、全死因の死亡リスクを50%弱減少させることと関連していたということが分かりました。(Kristin L. Nichol et al. “Influenza Vaccination and Reduction in Hospitalizations for Cardiac Disease and Stroke among the Elderly” N Engl J Med 2003; 348: 1322-1332.)

高齢者はインフルエンザにかかることで、肺炎の併発や併存疾患の悪化など重篤な状態に陥ることがあります。現在のインフルエンザワクチンは、接種すればインフルエンザに絶対にかからないということを保証できるものではありませんが、特に基礎疾患を持つ方や高齢者、またそのような方と接触する機会が多い方には、ワクチン接種を強くおすすめします。

■マイコプラズマ肺炎の抗菌薬は途中でやめてはいけない

またニュースでも大きく報道されていますように、マイコプラズマ肺炎が8年ぶりに大流行しています。特に今年の6月以降、患者数は増加傾向にあり過去最多レベルの勢いです。マイコプラズマ肺炎はインフルエンザのようなウイルスが発症原因ではなく、「肺炎マイコプラズマ」と名付けられた細菌に感染して発症します。インフルエンザと異なり、潜伏期間が長く、感染してから2~3週間の潜伏期を経て、発熱や倦怠感といった初期症状が表れ、解熱後も咳が長く続くことがあります。

感染力はインフルエンザほど強くないものの、濃厚接触によって感染が拡大する傾向があります。そのため、集団生活をしている子供や若い世代が感染することが多く、そこから家庭内へと広がっていくことが多いようです。

マイコプラズマ肺炎には有効なワクチンはなく、治療には原因菌を死滅させるための抗菌薬による薬物療法が行われます。主にマクロライド系と呼ばれる種類の抗菌薬が用いられますが、2000年代にはマクロライド系の抗菌薬が効かないマイコプラズマが多く出現するようになり、ほかの種類の抗菌薬が必要になることも少なくありません。抗菌薬は通常3~14日分処方され、その間服用することが推奨されています。

症状が軽快した後も、体内に菌が残っている可能性があります。菌が完全に死滅する前に抗菌薬の服用を中止すると、細菌が耐性をもってしまい、将来的に抗菌薬が効かなくなる恐れがあります。薬は自己判断でやめることなく、医師の指示に従って、決められた用量用法を守るようにしましょう。

体調の悪いビジネスマン
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

■感染症を予防する基本的な5つの対策

感染症については予防策をしっかりと実施することが重要です。基本的な5つの予防対策を大切にしましょう。

①手洗い、うがいをする
②室内を適度な湿度に保つ

加湿器や洗濯物を室内干しするなどして、50~60%を保ちましょう。

出張時には、ホテルの湯船にお湯を溜めるなどの工夫をされるとよいでしょう。

③人混みや大勢が参加する行事などでは、マスクを着用する

感染を広げないためにも、ご自身を感染から守るためにも、マスクを着用すべき時があります。

④こまめに換気する

2方向の窓を開けると効果的ですが、換気扇も有効です。定期的に換気を行い、空気のよどみを解消しましょう。

⑤免疫力を上げる

■毎日6~8時間の睡眠をとったほうがいい

特に免疫力についてお話します。免疫力を高めるための三大生活習慣は、「食事」「運動」「リラックス」です。まず、バランスの良い食事は腸内環境を整え、免疫機能を支えます。脂質やタンパク質の過剰摂取に注意し、善玉菌を含む発酵食品や善玉菌のエサとなる食物繊維を積極的に摂取しましょう。

また、体温が1度上がると、免疫力は5~6倍もアップするといわれています。適度な運動や湯船に浸かるなど、日常的に代謝を上げる行動を心がけ、体を冷やさないようにしましょう。そして、リラックスには良質な睡眠が欠かせません。睡眠は、免疫に関わる重要な物質の分泌量と密接に関わっています。毎日6~8時間の睡眠をしっかりとれるようにしましょう。

予防対策を意識し、これらの生活習慣を取り入れることで、私たち一人一人が免疫力を高め、冬の感染症シーズンを健康に過ごしましょう。

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池井 佑丞(いけい・ゆうすけ)
産業医
プロキックボクサー。リバランス代表。2008年、医師免許取得。内科、訪問診療に従事する傍らプロ格闘家として活動し、医師・プロキックボクサー・トレーナーの3つの立場から「健康」を見つめる。自己の目指すべきものは「病気を治す医療」ではなく、「病気にさせない医療」であると悟り、産業医の道へ進む。労働者の健康管理・企業の健康経営の経験を積み、大手企業の統括産業医のほか数社の産業医を歴任し、現在約1万名の健康を守る。2017年、「日本の不健康者をゼロにしたい」という思いの下、これまで蓄積したノウハウをサービス化し、「全ての企業に健康を提供する」ためリバランスを設立。

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(産業医 池井 佑丞)

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