「これを守らせるのが一番難しかった」娘3人をハーバード大に入れた親が20年間貫いた"最高難度のルール"
プレジデントオンライン / 2024年12月12日 16時15分
※本稿は、シム・ファルギョン『3人の娘をハーバードに合格させた 子どもが自ら学びだす育て方』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
■夫婦はワンチームである
娘たちには優しい父親だった夫も、私と同志であることは忘れなかった。私は私なりのスタイルで母親役を担い、夫は夫なりのスタイルで子どもたちに接したが、父親と母親はワンチームであることを鉄則としていた。
私たちはこれを子どもたちにもはっきりと伝えておいた。いくら優しい父親でも、母親が決めた規則から外れようとする子どもをかばうことはせず、母親の権威に対抗することはどんなことでも許さなかった。私たちは子どもの前で、お互いの権威を傷つけるような言葉は絶対に言わなかった。私たち夫婦はお互いに非難せず、いつも同じ意見、同じ決断を保った。
もちろん、子育ての方針を立てる上で常に意見が一致しないといけないというわけではない。意見が異なる場合は事前に擦り合わせてから、子どもの前では一致した意見を出そうという意味だ。
夫婦は十分な会話を通して、育児の基本原則を合意すべきだ。夫婦の意見が食い違って言い争うような姿を見せてしまうと、子どもは内心でストレスを受けてしまう。
子どもを安定させるためにも、夫婦の合意が必要だ。夫婦が決めた子育ての原則の下、イエスかノーかという明快な信号を送ってあげれば、子どもが混乱することもない。夫婦は一致した考えを実行する権威者として、子どもの前では常に模範を示すべきだ。
もし親として不足な点があれば、率直に話し合おう。何よりも子どもの成長を最優先に考える勇気こそが、夫婦というワンチームに必要なのだ。
■テレビを見ていいのは土曜日の2~3時間だけ
私たち夫婦が決して主導権を手放さず、介入を続けたのは、何といってもテレビだった。それ以外のことについては、説明すればよく守ってくれた子どもたちだが、ことテレビに関してだけは、なかなか素直に言うことを聞かなかった。それほどテレビに関するルール作りは難しいものだった。
わが家は、平日にはテレビを見せなかった。テレビを見ていいのは週に一度、土曜日にハングルの勉強が終わったあとの2~3時間だけ。しかも教会関係の集まりや信者の家庭訪問などがあれば、子どもだけを家に置いておくわけにいかないので、さらにテレビを見られない時間が増えた。たまに誰かの家に行ってそこの家の子たちと一緒にテレビやビデオを見るときも、宿題などやるべきことを終わらせてから、よい内容の子ども向けアニメなどに限定していた。
子どもたちには、何度もテレビの害について説明したが、テレビを見たい気持ちが勝ってしまい、私の言葉など耳に入らなかった。
■テレビを見たあとはメンタルが不安定に…
もちろん、テレビの利点を唱える人もいる。特に移民であるわが家の場合、ニュース番組など時事番組を子どもと共有できないため、世の中の出来事を知るにはテレビを見せるべきだとの助言ももらった。
また、子ども同士の付き合いにはテレビが必須であり、テレビを見ていないと友達ができないとも言われた。
しかし、いくら考えてもテレビから得られる利点よりも、失うもののほうがはるかに多かった。私の経験から言えば、子どもたちがテレビを見たあとはメンタルがより不安定になった。きょうだい喧嘩も多くなった。また、テレビを見たあとで読書や勉強をしようとすると、集中できるようになるまでより時間がかかった。テレビを2時間見ると、そのあとにやるべきことがあってもすぐに取り組むことができず、集中力を取り戻すのに少なくとも2時間はかかった。
■親が見本を見せることがもっとも重要
読書よりも簡単で、おもちゃよりも面白い四角の小さな怪物を、子ども自身で制御するのは難しい。親がしっかりコントロールすべきだ。この怪物に勝つには、見たいという欲求に立ち向かってブレーキをかけ続ける親の意志が必要だ。
実のところ疲れた日など、もうテレビを好きなだけ見せておきたくなるほど、それは長く厳しい戦いだった。わが子たちは歳が離れていたため、末っ子まで3人が全員テレビの影響から抜け出すには、20年以上も戦わないといけなかった。
しかし、テレビは手強(てごわ)い相手だったが、親の愛と確信には勝てなかった。
ここで一番重要なのは、親が見本を見せるということだ。親がテレビを見ていながら子どもには見るなと言っていては、説得はできない。
私たち夫婦は成人してからアメリカに来たため、メディアにもう少し触れていたら、今よりももっと英語がうまくなっていたはずという惜しさもあるが、子どものための最善の決断に後悔はしていない。
■「チートデー」の思い出
今でも家族で集まって昔の話をすると、テレビに関する小さなエピソードが出てくる。アメリカは保護者なしに未成年だけを家に残してはいけない。しかし、たまに夜や明け方の礼拝には、子どもたちを家に置いていくことがあった。それは子どもがこっそりテレビを見られる一種の「チートデー」だったのだ。
娘たちは、「私たちがこっそりテレビを見ていたの、ママは知らなかったでしょ? 一度、ママが出かけたと思っていたら忘れ物を取りに戻ってきたんで、すごくあわてて、みんなで一緒に本を読んでいるふりをしたんだよ」と武勇伝を語ったりもした。
それに気づかない親がどこにいるだろうか? ドアを開けた瞬間、ドタバタする音を聞いただけでも、こっそりテレビを見ていたことはわかる。でも、いつも知らないふりをしてあげていた。テレビのことでいつも厳しくしていたから、たまには息抜きの日も必要だろうと思ってのことだ。それに、しょっちゅう起こることでもなかったから。
こうして思い出話をする子どもたちは、当時の親の方針を恨んだりはしていなかった。厳しいルールのなかで育った子どもたちが、今は当時の親心を理解し、笑いながら昔話ができるのは、実にありがたいことだ。
■わが子たちにゲーム機は必要ない
長女と次女が小学生だったとき、子どもたちに一番人気のおもちゃはゲーム機だった。私たちの教会でも、ゲーム機を持っていない子どもはほとんどいなかった。
特に男の子は必ず持っていた。韓国からアメリカに来て間もない子どもほど、ゲーム機は必需品だった。教会で友達と会ったときに、ゲーム機で遊ぶからだ。
一緒に遊ぶことほど、連帯感を強めるものはない。わが家で教会の集まりをすると、うちに来る子どもたちは各自がゲーム機を持ってきて遊んだ。だが、わが子たちはゲーム機がなかったため、他の子が遊ぶのを隣にピッタリくっついて、不思議そうに見るばかりだった。
それに気づいたある信者の方が、クリスマスプレゼントだと言って高価なゲーム機をくださった。貧乏な牧師のふところ具合を察したのだろう。その温かい気持ちを知っていたからこそ、私たちはこれをどうするべきか頭を悩ませた。
そして夫と数日間考えた末、思い切ってプレゼントをお返しした。お気持ちはありがたく頂戴するが、わが子たちには必要ないと思ったから買っていないのだと説明した。その方も、私たちの考え方を受け止めてくださり、子どもにゲーム機を使わせることを考え直すよい機会になったとおっしゃってくれた。
このように、わが家ではテレビもゲームも子どもの好きなようにはできなかった。小学校のときに始まった「ノー・テレビ、ノー・ゲーム」の習慣は、高校に入って勉強するときに非常に役立った。忙しい高校生活でも、時間をうまく配分して活用することができたからだ。
それは長い訓練を通して、自律心が生まれたおかげだ。何かにはまって抜け出せなくなったり、衝動的に行動して自分をコントロールできなくなることはなかった。
■自立心は大人になってもなくならない
これは、長い訓練で習慣づけたからこそ可能なことで、そのときにやろうと思ってもできるわけではない。
大学に行くと、これまでとは違って守るべき規則もなく、自由な時間が増える。口うるさい親とも離れられる。授業に行かなくてもよくなり、1日中パソコンをしたって、テレビを見たって、何も言われない。ずっとサボっても、誰も介入してこない自由が与えられるのだ。
だが、たとえわが子たちが、幼い頃にやらせてもらえなかったことを取り返そうとしてそのように1日を過ごそうとしても、すでに成人し大脳と性格が完成されたあとは、どうにもならない。成人になってからなら、テレビを見ようがパソコンを使おうが、大きな影響はない。頭が悪くなるわけでもなく、読書の習慣がなくなるわけでもなく、集中力が落ちるわけでもない。
大学に行けば、それまで制限されていたテレビ、パソコン、ゲーム、SNSを自由に楽しめるが、決して勉強の邪魔になったり自律の心を失くしたりはしない。これはすべての親が、子どもに望む姿勢ではなかろうか。勉強するときは勉強し、遊ぶときは遊ぶ、節制のある生活。このような姿は、幼い頃からの訓練のたまものなのだ。
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韓国でキリスト教教育で修士学位を取得した後、同じ大学で神学を学んでいた夫と結婚。夫の留学を機にアメリカに移住。アジア人移民は社会的にはマイノリティーであり、さらに牧師の家庭だったため経済的にも苦しかったが、入試コンサルティングはもちろん、塾にも行かせず、一般の公立学校に通った3人の娘全員をハーバード大学に入学させた。三姉妹がハーバードに合格したあとも「私はごく平凡な人間で、特別なところは一つもない。すべて子どもたちが成し遂げたことだ」と述べ、多くを語らなかったが、『3人の娘をハーバードに合格させた 子どもが自ら学びだす育て方』(かんき出版)で初めてそのストーリーを惜しみなく公開。子どもの教育や育て方に関する講演を活発に行いながら、多くの親の悩みを聞いて共感し、読者一人ひとりと目を合わせるような温かいメッセージを伝えようとしている。
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(主婦 シム・ファルギョン)
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