「家族の形は変わりますが」と子育て中の母が"ポジティブ離婚"するワケ…専門家が指摘する円満離婚の危なさ
プレジデントオンライン / 2024年12月11日 16時15分
■菊川怜ら44~53歳の子連れ母が実業家の夫たちと離婚した
能登半島地震、ストーカー殺人事件、総選挙と石破内閣の発足、パワハラ疑惑のあった斎藤元知事の再選……。振り返れば2024年も多くの重大ニュースが報道された。トランプ大統領の再選も決まり、彼の発言で大幅に日経平均が下がったり、能登半島地震の復興もままならないまま。斎藤知事の再選も新たな火種(公職選挙法違反なのでは?疑惑も)で解決が見えず、いまだに兵庫県民だけではなく日本中が注目しているという状況である。
さて、そんな重大ニュースめじろ押しだった2024年にもかかわらず私が総括したいのは、事件やニュースの合間合間にさらりと発表された女性芸能人たちの離婚。女優の菊川怜が、アメリカ大統領選の結果が出た日、ニュースがそちらに集中するのを見計らってたのか、自身のInstagramでさらっと発表したように、彼女たちの離婚発表の、そのあまりのタイミングの良さ、内容の「円満離婚」っぷりに、知らなかった人も記憶に残らなかった人も多かったのではないだろうか?
実際には、
・吉川ひなの(2024年11月)
・菊川怜(2024年11月)
・井上晴美(2024年10月)
・千秋(2024年10月)
と、知名度の高い女性芸能人たちが今年、夫婦連名ではなく自身のInstagramにて離婚の発表をした。
■子どもを2~3人育てている最中でも離婚を決意したワケは?
他にも離婚した芸能人はいるのだが、ここに挙げた彼女たちには大きな共通点があり、同じ働く子持ち母として「大変だったろうなー」とまずは共感が止まらなかった。次には、この離婚発表の形が今後有名人女性たちの「離婚発表の型」として定着するのではないかと思い思わず筆を取った次第である。
彼女たちの共通点。それは、
①一般男性と結婚して離婚した
②子どもが複数いる(2人から3人)
③シニア離婚(44歳から53歳まで)
の3点。
女性芸能人の場合、かつての藤原紀香や高島礼子、杏やMEGUMIなど、「同じく有名人である夫の浮気や逮捕」がきっかけで離婚に発展するというケースが注目を集め、人々の記憶にも残ったものだ。女性芸能人側も「自身のキャリアやイメージのマイナスになる」という職業的決断が離婚を後押しするからか、夫の浮気報道後すぐ他人になるという「超スピード離婚」を成し遂げている。話題にはなってしまったものの、解りやすい夫有責な離婚ということで同情票もあり、彼女たちが今も活躍している様子からキャリアダウンにならなかったとお見受けしている。
■「離婚後の家族は新しい形に…」と「円満離婚」をアピール
ところが、一般人男性と結婚した女性芸能人の場合、その夫は文春にマークされない。○○の夫より、有名人そのものを張り込んでいた方が、ニュースバリューがあるからだ。だから、たとえ夫が有責な離婚であっても表に出ることは少ない。勘違いしないでほしいのだが、私は何も、今年離婚した女性芸能人の夫の誰かが浮気をしていたとか、悪事に手を染めていたと言いたいわけではない。
前述した4名があまりにも、
「このたび夫婦で話し合って、新しいパートナーシップの形として離婚という選択をすることにしました。これからも二人で子どもを大切にしていく所存です。未来ある決断です」
と、全く同じような内容のキラキラした「離婚のお知らせ」を発表したため、その裏にいったいどれだけの夫婦のいざこざ、葛藤があったのか? それを想像するだけで「女はつらいよ」と同情を禁じえなかったからのだ。
特に彼女たちは2人から3人、複数の子どもを持つ母親である。子どもたちの為に離婚を思いとどまろうとしたことは何度もあったことだろう。そして、自身の仕事のためにも、何より子どもたちのために、たとえ夫が有責であったとしてもそれを匂わすことは絶対に避けなければならない。
■一般女性は夫に浮気されても「子どもがいるから」と踏み出せない
だからこそのこの「定型文」になるわけだが、彼女たちが一人で背負うのは「やっぱりね」「離婚すると思った」「そもそも男を見る目がない」「子どもがいるのに離婚するなんて」などなどの、自己責任論である。よってタイミングを計り、離婚理由に言及せず、さらっと目立たぬように離婚発表を済ますのは当然のことだと言える。
私がどうしてこの件に注目しているかと言えば、これは女性芸能人に限らない、一般の女性にも該当する大きな人生の選択だから。
私の所へ相談に来る女性たちは「子どもがいるから」「世間体が悪いから」「食べていけないから」等で、夫有責、もしくは夫婦が事実上破綻している状態にもかかわらず、離婚を踏みとどまっている人が多い。中にはすぱっと離婚して晴れやかに新生活をスタートしている人もいるが、幸せそうな人と自己責任論に押しつぶされそうになっている人たちがいる。
SNSを見ていても、インスタグラマーやブロガー、フォロー数が少ない発信者含めて、匿名の人たちは夫や元夫への文句を書いているが、実名や名が売れている人たちは離婚した女性芸能人たちと同じように「円満離婚」を謳っている。そして、何を隠そう、私自身が、18年前に同じことを経験している。
■18年前に離婚し、ブログで「ポジティブ離婚」を発表した
女社長ブロガーとして仕事や家族の日常を綴っていた私は前夫との離婚が決まって、ブログにもそれを載せなければならなくなった。
「離婚しました! これからは長女と2人で新たな第2章を楽しんでゆきます!」と。
離婚後、元夫は月に1回娘と面会していたし、ちゃんと養育費も払ってくれていたし、私たちも離婚してからの方が友好的な関係になれた。けれど、娘から実質父親を奪ったこと、仕事と子育てを(人の手を借りながらも)一人で責任を持つこと、結婚生活を続けられなかったという自分に対する失望など、その「本当は存在していたはずの重圧」を当時私は見て見ぬふりをしていた。
それは、自分がブログに書いた言葉をなぞろうと必死だったからだと今なら解る。まるで自分の宣言に呪いをかけられたように「娘と二人で絶対に幸せにならなければ!」と思い込んでいた。ところがその1年後に元夫は、突然死をしてしまう。
一報を聞いたとき、私は人生で初めて「膝から崩れ落ちる」というのが比喩じゃないことを知って、取り乱し、うろたえ、自分を責めた。「もし離婚しなければ彼は死ななかったのでは?」と直接因果関係がないことまで思いを馳せ、立ち直れないくらい落ち込んだものだった。
■離婚した人は「幸せにならなければ」とがんじがらめになる
そして、離婚後の自分がいかに、「無理やり前を向こうと必死だった」こと、「自己責任論」にがんじがらめになっていたことを思い知った。元夫も私も、ベンチャー経営者同士で、業界で人間関係も丸被りしていたため、互いにずっと平気な振りをし続けていた、社員の手前「社長」のイメージを堅持していたというのも理由の一つだったかもしれない。
本当は彼も私も「離婚」で傷ついていたのだ。世間に対して隠せば隠すほど、自分でも無自覚になって、本当は深く傷ついていたのだと私が解ったのは愚かにも彼が亡くなってからだ。
だからと言って世の女性たちに「離婚するな」と言いたいわけではない。離婚があったからこそ私はその後再婚し、第二子をもうけ、今とても幸せなのはあの時決断しなければ、離婚しなければ手に入らなかったものばかりだから。
■「離婚を決めたのは自分だから頑張る」はかえって危険
日本の女性の平均寿命が87.14歳で、これからも更に寿命が延びると言われている中で、アラフィフ女性の人生はこれから40年、下手すると50年以上続くと言われている。夫婦が一緒に居るがために諍(いさか)いが絶えないのだとしたら、「幸せのため、離婚する」はこの後ももっと自然な選択になってくると思う。
そして、私自身、「子どもにとっての養育者が幸せそうである」ということが、無理やり夫婦が一緒に居ることより重要であると、長年の子育てを通じて実感している。ただ、その選択を本当に幸せな結果に導くためにも、ご自身の心のケアだけは十分にしてほしいだけだ。カウンセラーを付けるも良し、友人に語るも良し、ぐうたらな時間を作るも良し、頼れる場所を作るも良し。「離婚を決めたのは私なのだから、私が頑張ればなんとかなる」は、危険思想であると心からお伝えしたい。
「幸せ」とは、虚勢の果てに得るものではなく、毎日の平凡な営みの中にご褒美のように降ってくるものだと最近しみじみ思う。
そして、今年再出発した彼女たちや、同じように幸せ方向に舵を切った女性たちに多くの幸せが降りますように、と願っている。
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リントス代表取締役
1997年に働く女性をサポートするための人材コンサルティング会社・ジョヤンテを設立。2016年より、働く女性の結婚サイト「キャリ婚」を立ち上げる。婚活結社「魔女のサバト」主宰。著書に『我がおっぱいに未練なし』『私たちが仕事をやめてはいけない57の理由』など。■川崎貴子のカウンセリングルーム
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(リントス代表取締役 川崎 貴子)
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