「勉強しなさい」より絶対に効果的…自己肯定感のプロが教える「受験生の成績が伸びる親の声かけ」
プレジデントオンライン / 2024年12月14日 9時15分
■「勉強しなさい」は最悪のひとこと
塾への送迎に説明会の参加、ネットでの情報収集……子どもの受験なのに、自分事のように真剣に挑む親御さんが増えています。そして、子どもの成績が悪かったり、ちょっとゲームをしたり、ゲラゲラと友達と通話していたりする子どもの姿を目にすると、ついつい「勉強しなさい」と言ってしまう。ただ、その言葉こそ、子どもたちが聞きたくないワーストワードとも言えます。
子どもたちはなぜ「勉強しなさい」に嫌悪感を抱き、そして、親はなぜ思わずその言葉を口にしてしまうのでしょうか。
まず、親側の心理を読み解きます。親の多くが会社員として熾烈な競争社会に身を置いています。そんな中、子どもには「いい教育を受けさせたい」「よりよい環境の学校に行ってほしい」わけです。
子どもの将来を思い、IQやEQ(心の知能指数)の面でも整った環境で育ってほしい、そんな切実な思いを抱く親は当然多いでしょう。親が子どもの将来を思うがゆえに、「勉強しなさい」の言葉に集約して表れてしまうのです。
■自分のための勉強が、義務的なものに
しかし、言われた子ども側の心理として、不幸にもその言葉は逆効果にしかなりません。なぜなら、人間は自己肯定感、自己決定感といったものが持続するモチベーションの源であり、自らの意志をもって奮起して行動に移す存在だからです。
しかし、親からの「勉強しなさい」は外部からの圧力です。何度も聞かされるうちに、勉強は自分のためなのに、「勉強すること=親の意見」となり、義務的なものにすり替わってしまいます。
そもそも受験期は、子どもが一番、勉強の重要性を自覚しています。そんな中、他者から言われるそのひと言は過剰な圧力となり、ひいては「勉強やってないの?」といったクリティカルな言葉として受け止め、より自己肯定感を傷つけられ、やりがいを失わせてしまうのです。
■子どもが勉強したくなる「親の声かけ」
「勉強しなさい」の言葉には、ゴールもなければ具体的な取り組み方法のアドバイスもありません。ただ、「しなさい」と言われても子どもは混乱します。親世代の方だって自分の仕事を懸命にしているのに、他者から抽象的に「もっと数字を上げろ」「結果を出せ」と言われるのは、つらいし、苦しいですよね?
だからこそ、「勉強しなさい」といった指示・命令でなく、「何のために勉強をするんだっけ?」「憧れの高校に入るには数学が大事だよね」といった目的に基づいた声かけから、「何を勉強すれば今後につながるだろう?」など、具体的な目標の確認や取り組みを相談しながら話を進める。親の態度として、サポーティブにかかわることが大事になっていきます。
勉強をしない子に何を言えばいいかわからないと迷ったら、「なぜ」「なにを」「どうやって」など、勉強する意味や目的について声かけして、子どもの声に耳を傾けるのが賢明です。
子どもがやる気を持ったり、自信がついたりするには、生物学用語で「オートクライン」と言って、自己内分泌、つまり話していく中で自分で気づくことが重要です。親との会話を通じて「なるほど」という気づきを子どもが得られれば、思考と行動の変容が生まれます。
■重要なのは「傾聴→承認→質問」の順番
声かけの大きなポイントは、「傾聴→承認→質問」の法則で接することです。これは子どもに対して、9割くらいの気持ちで傾聴し、3倍くらいの愛情の承認を与え、優しいトーンと明るい雰囲気で1つ質問することを指しています。数字はあくまで目安ですが、意識しておくといいでしょう。
子どもが勉強に行き詰まっている姿、やる気が起きない姿を見たら、まずは勉強に気持ちが向かない原因を聞いてあげながら、子ども自身が気づきを得るように寄り添っていく。そして、最後に「そのためには、まず数学から手をつけたほうがいいのかな?」などと質問すれば、先ほどもお伝えしたオートクラインによって、子ども自身に内発的動機づけが生まれてきます。
だからこそ、気づきにつながる傾聴はとても大事なんです。つまり、親が質問攻めしたり、自分のやり方をおしつけたりするのは論外だとわかるでしょう。子どもが気づきを得れば、うなずいて承認してあげて、最後に質問を添える。そうして気づきを得た子どもが勝手に課題を発見したり、問題解決にいたったりする、いわば考える力を自分で培っていきます。
■成績が伸びる叱り方、落ち込むだけの叱り方
一方で、模試の結果が良かった時など、「よかったね」などと親は子どもをほめます。ポイントは、具体的な目標に向かっている子どもの価値を認める視点からほめていくこと。つまり、プロセスをほめるわけです。「よく頑張ったよね。ひとつずつクリアしているね。これからも自信を持って取り組んでいこう」と、存在価値とプロセスをほめる言葉がいいですね。
叱る際もプロセスが大事です。「できてないんだから頑張れ」ではなく、まずは「頑張ったね」と労い、続けて「1つずつ解けているから自信をもって問題に取り組もう」と良かった点を踏まえて、その先のチャレンジを促します。
また、言いがちなNGワードとして、「こんな簡単な問題でミスするなんて信じられない。何回言ったらわかるんだよ」と叱咤するケースがありますが、これでは子どもが落ち込むだけです。「ミスは誰にでもあるよ。間違えたからこそ学ぶチャンスだから次回は気をつけよう」と現状を把握しつつ、次に活かそうとするメッセージを添えることをお勧めします。
■「今日くらいはゲームしていいよ」はNG
とはいえ、ときには子どもも「集中できない」「気が散る」瞬間はあります。人間は完璧ではないので、親もそれはわかっています。だから、つい「今日くらいはいいか」と思って、1日中、子どもがゲームに逃げたりしても放置してしまいがちです。
しかし、これは親の気配りとはいえません。「できない」状況を受容した上で、「今は頑張ることをしっかりやる時期だよね」と伝えるべきです。今しかない時間を無駄にしてはいけないと理解させるのは、親の役目です。
「自分はこうだった」と言うより、子どもの胸の内を理解しつつ、親業として一緒に乗り越えていく気持ちが大切です。子どもが塾から帰ってからも自宅で勉強しているのに、親がいつもノンキにビール片手にスマホでショッピングやゲームに夢中になっていたら、子どものやる気だって下がりますよね?
だから、例えば、やる気がない子どもに対して「もっと勉強に集中しなよ、真剣に取り組めよ」と言いたくなるかもしれませんが、「今は自分に集中する時間にしよう。お父さん(お母さん)も今仕事の勉強でこんなことに取り組んでいるんだ」と、親自身が課題に向き合っている姿勢を示せるとベストだと思います。
■余計なストレスを親が与えてはいけない
声かけ以外にも、親ができるサポートがあります。それは、子どもが緊張状態の中にいる受験期に、勉強以外のストレスを感じさせないことです。夫婦喧嘩をしたり、親自身が忙しいからと適当な食事で済ませようとしたりすると子どものストレスに影響します。
また、わざわざ「この食材は記憶力にいいから、ちゃんと食べなさい」と、押しつけるのもストレスの原因になります。「寒いでしょ。温まるからこのスープも飲んでみて」と、さりげない気配りをするなど、勉強以外のストレスを作らないことが、親の唯一にして最大の務めです。
そして、親は自分の自己肯定感を保つことも大事です。親自身が自己肯定感が低いとイライラや不安が募っているわけですから、子どもには関係ないのに、「勉強しなさい」「ちゃんとやっているのか?」と言葉を発してしまいます。
逆に、自己肯定感が高ければ、心にも余裕があるため、子どもの個性を考え、どういうやり方なら力を発揮するかなと思いを巡らせられるようになります。
■子どもにとって「最高の親」とは
最後に、子どもを1人の人間として扱う上で重要なことがあります。受験があるからと言って、何でもかんでも子どもを甘やかさないことです。例えば、家庭の中で家事の役割分担を子どもが担っていたとします。受験生だから、「当番のお風呂掃除や食器洗いはしないでいい」わけではありません。
負担が軽い家事にするなど、役割分担を変えていく工夫は必要ですが、受験も大事な一方、家族の一員として役割を担っていくことも大事だからです。それを親がきちんと伝えることは、子どもの存在価値を認めることにもなります。そして、家事をしている子どもには必ず「ありがとう」と労いましょう。
また、受験生だからこそ、規則正しい生活は大事です。寝坊が続いても大目に見るのはよくありません。受験生である前に、1人の人間として向き合っていきましょう。
受験は子どもにとって、大人になる前の「試練の練習」ともいえます。ついつい勉強をしないわが子を見ると、何か言いたくなります。でも、そこでグッとこらえ寄り添って、乗り越えるさまを見守っていく姿は、子どもにとって最高の親といえます。
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心理カウンセラー
自己肯定感アカデミー代表、トリエ代表。困難な家庭状況による複数の疾患に悩まされるなか、独学で学んだセラピー、カウンセリング、コーチングを10年以上実践し続ける。「奇跡の心理カウンセラー」と呼ばれメディア出演オファーも殺到。著書に『何があっても「大丈夫。」と思えるようになる自己肯定感の教科書』『書くだけで人生が変わる自己肯定感ノート』『自己肯定感diary 運命を変える日記』(すべてSBクリエイティブ)、『1分自己肯定感 一瞬でメンタルが強くなる33のメソッド』(マガジンハウス)、『習慣化は自己肯定感が10割』(学研プラス)などがある。
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(心理カウンセラー 中島 輝)
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