「背伸びして東京に住み続けるのは妻にも子にもよくないが…」代官山→長野に移住した実業家の"葛藤"
プレジデントオンライン / 2025年1月31日 10時16分
■都心を離れると人付き合いは疎遠になる
【ヨッピー】東京から軽井沢に引っ越してきて良かったこと、悪かったこととかを聞きたいです。
【家入】前回話したみたいに、僕も家族もその東京で起こりがちな競争とかヒエラルキーの争いから逃げられたっていう部分は大きいと思うんだけど、かといって長野に引っ越したデメリットがないわけではないよ。
僕の奥さんは元アニソンDJだし、それこそ秋葉原や中野・高円寺みたいなカルチャーが好きな人だし、子どもたちもわりとそういうのが好きなんだけど、そういう催し物に行こうと思っても長野から行こうと思ったら新幹線使ってもなんやかんやで片道2時間はかかるじゃん。
【ヨッピー】そういう、イベント的なものの接触頻度はどうしても落ちますよね。
【家入】そう。移住してきたばかりの頃は、新幹線使えば東京駅から軽井沢まで1時間だから「すぐじゃん」って思ってたし、週に3回とか新幹線乗って東京来て会食したりしてたんだけど、長野から東京駅に着いて人混みを見ると「あ、もう森に帰りたい……」とか思うようになっちゃって、段々東京から足が遠のいちゃったんだよね。
人と会ってる時間は楽しいし実りもあるんだけど、結局物理的な距離があると段々疎遠にはなっちゃう。
■「ちょっと1杯」ができない
【ヨッピー】そこがねー、悩むポイントですよね。僕も東京にはずいぶん友達ができて、今中野に住んでるんですけど「中野はいいぞ。引っ越しておいでよ」って周囲に言いまくったら本当に引っ越してきた連中がちらほら居て。
だから夜子どもを寝かしつけたあとに「銭湯行こうよ」って友達を誘って銭湯に行って、中野北口の飲み屋でウーロンハイ1杯ひっかけて帰る、みたいな過ごし方ができるのは東京ならではなんですよね。
【家入】ああ、それはここだと無理だね(笑)。
■「人と会うことで生まれていたアイデア」があったと実感
【ヨッピー】あとはやっぱり仕事かなぁ。打ち合わせはZoomも増えたとはいえ取材とか撮影ってなるとやっぱり東京のほうが便利だし。家入さんは会社の代表やりながら長野にいて不便はないですか?
【家入】うーん、東京に居た頃から、自分自身がボトルネックになるようなことはどんどん権限移譲したんだよね。「家入さんのジャッジ待ち」みたいなことが起こらないように。だから実務上はそんなに影響はないんだけど、東京で人と会うことによって得た刺激から生まれるアイデアとか新規事業とかそういうのは減ったかもしれない。
【ヨッピー】そうですよね。そこに対する恐怖心みたいなものはあるかな……。子育て面だとどうですか?
【家入】これも似たような話なんだけど、ヨッピーも『育児ハック』で書いてるみたいに、「子どもをいろんな人に会わせる」っていうのを僕も昔から意識してたんだよね。自分が仕事で家にいないことも多いからこそ、例えば会社のイベントや僕が登壇するような場、打ち合わせなどの仕事の現場にも子どもを連れていって、いろんな大人に会わせてたんだよね。
子どものうちにいろんな大人を知るってとても大事だと思っていて、例えばすごい人なんだけど、昼間から酔っぱらってるダメなおじさんだったり、そういう多様性に触れさせる、みたいなのも東京ならではかも。
■背伸びして東京に住み続けるのはよくない
【ヨッピー】確かに……。今の保育園、同じクラスに外国人の子がチラホラいるんですよね。あれも東京ならではかもしれない。そういう環境は東京のほうが圧倒的ですね。
【家入】ただ、長野に来てからは子どもが「○○の花が咲いてるね」とか「今日の夕焼けすごくきれい!」みたいな、そういう自然のうつろいに対する解像度があがってたりして、それは素敵なことだなとも思うからどちらがいい、と決められるようなものではないね。
【ヨッピー】難しいですよね。「東京か、田舎か」っていうのも極端な話で、その間にはグラデーションみたいに選択肢がいろいろあるし。僕、個人的には大阪出身だし大阪にいつか帰りたいな、みたいな想いもあるんですけど……。
【家入】結局、無理して背伸びするのはよくないんだよね。親も子どもも。親がどうしてもしんどいのに、無理して東京に残り続けるのはやっぱり子どもにとってよくないと思う。
親に余裕がないと、特に小さいうちは子どもへの影響があるからね。
■親だからすべてを犠牲にする必要はない
【家入】前編で話したように、今の奥さんは「自分がやらなきゃ!」という意思が強い人だったから、0歳、1歳、2歳と「全部自分が育てる!」みたいな意気込みで離乳食も全部手作りしてやってたんだけど、それぐらいの子どもってご飯をひっくり返したりあちこち投げたりして遊ぶじゃない?
【ヨッピー】わかります。何度「もーーーーー!」って言いながらご飯を拾い集めたか……。
【家入】お風呂だって、「絶対耳に水が入らないように……」ってそーっとそーっとお風呂に入れるの。そんである日家に帰ってきたら奥さんも子どもも号泣してて「どうしたの?」って聞いたら「ご飯食べてくれない‼」って。それで病んじゃって奥さんのSNSの投稿も暗いものが増えるから友達から「家入さん、奥さん大丈夫?」とか聞かれたりして。
でも2人目、3人目ってなったらそういう前のめりな姿勢が良い意味でなくなって、子どももお風呂に入れてドボンと落ちたって「あらあら」くらいで気にしないもんね(笑)。
【ヨッピー】そう! まさに僕が言いたいのはそういう部分なんですよ……!
僕も奥さんがけっこう真面目な人でそうなりそうな予感がしたから、最初から宣言したんですよね。「我が家は効率重視の育児をやります!」って。親だからって全部犠牲にする必要はないし、息抜きだって当然必要だし、逆に息抜きがあるからこそ子どもと仲良く、楽しく暮らせるんでしょ、っていう。
■怒って落ち込む妻に5歳の娘が手渡した手紙
【家入】お受験するしないで悩んだ僕の長女は面白い子で、とにかく本を読むのね。2、3歳くらいの時にはカタカナひらがなをもう読めるようになってて、絵本とかを勝手に読むようになったんだよ。
【ヨッピー】えー、それはすごい。
【家入】4、5歳になると今度は漢字も読めるようになるわけよ。そうすると僕らが買うような大人向けの育児本なんかも、たぶん雰囲気なんだろうけど前後の文脈でなんとなく書いてることを理解しはじめるわけ。
で、ある時妻が子どもにめっちゃ感情的に怒っちゃって、そのあと自己嫌悪して落ち込んで「ごめん、今日はママもう寝るね」って寝てたら枕元に「ママ、あんまり怒りすぎると自分のことが嫌いになっちゃうから、そういう時はこの本を読んでね」って長女が書いた手紙があって、一緒にアドラーの子育ての本が置いてあったらしい(笑)。
【ヨッピー】天才じゃないですか。まじですごい。家入さんも本めちゃ読む人だし、遺伝なのかな~。
■東京には文句も多いがいいところもある
【家入】「結局、全部DNA」みたいな話もあるけど、本当のところはよくわからないから、子ども一人ひとりと向き合うしかないんだよね。「こう育てたらみんなうまくいく、これが正解!」みたいな話はないと思っていて。ヨッピーだって東京の文句ばっかり言ってるけど、東京から離れたら離れたで「あそこがよかったな」みたいなものは出てくるだろうし。
【ヨッピー】それはそうですね。東京の環境はあんまり気に食わないんですけど、今住んでる中野はかなり好きなんですよね。駅近くにデカい公園があって、しょっちゅう色んなイベントやってるから楽しいし。お弁当持ってって芝生にレジャーシート敷いて「ピクニックだ~」ってやったり。
【家入】結局はしょうもない結論にしかならないんだけど、東京が向いてるのか、大阪が向いてるのか、長野が向いてるのか、もっと田舎が向いてるのか、親が子ども一人ひとりと向き合って、よく考えるしかないよね。子どもだって一人ひとり違うから合わせるのはなかなか大変だけど。
【ヨッピー】それは本当にそうだな~~。
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ライター
1980年生まれ。大阪市出身で、現在は東京都在住。体を張ったネタ記事からニュース記事まで幅広いジャンルの記事を執筆。銭湯が好きすぎて週に8回銭湯に行く。
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CAMPFIRE 代表取締役CEO
1978年生まれ、福岡県出身。株式会社paperboy&co.(現GMOペパボ)を創業し、JASDAQ市場へ上場。退任後、クラウドファンディング「CAMPFIRE」を運営する株式会社CAMPFIRE創業、代表取締役に就任。他にもBASE、partyfactory、XIMERAの創業、駆け込み寺シェアハウス「リバ邸」の世界展開、ベンチャーキャピタルNOW設立など。
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(ライター ヨッピー、CAMPFIRE 代表取締役CEO 家入 一真)
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