グツグツ煮込んだ「白菜、長ねぎ、大根」は栄養がスカスカ…風邪予防を高める「鍋の定番具材」の効果的な食べ方
プレジデントオンライン / 2024年12月23日 6時15分
※本稿は、しん(野菜を育むプロ)、東京慈恵会医科大学附属病院栄養部(監修)『農家が教えたい 世界一使える野菜の教科書 おいしくて体にいい選び方&食べ方』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■「鍋の具材」で免疫アップ
症状:免疫低下
疲労やストレス、季節の変わり目といった外的要因は免疫低下を招き、風邪などにかかりやすくなります。こうした要因に思い当たるときは特に、免疫強化に役立つ栄養素を含む野菜が、病気予防の心強いサポーターになってくれるでしょう。
白菜、長ねぎ、大根
免疫強化のキー栄養素は「イソチアシアネート」と「ビタミンC」
免疫強化にはエネルギーになる糖質・脂質・たんぱく質をはじめ、体の諸機能を底上げする多種多様な栄養素をバランスよくとることが重要です。なかでも野菜が免疫強化に役立つのは、イソチオシアネートとビタミンCの供給源となること。ここに挙げた野菜のうち、長ねぎはビタミンC、白菜と大根はイソチオシアネートとビタミンCの両方に富んでいます。
■白菜と大根は「煮込みすぎ」に注意
イソチオシアネートはフィトケミカルの1つで、抗酸化作用(体内で発生した有毒物質・活性酸素を除去する)や、解毒作用(肝臓の解毒酵素を活性化することで有害物質の排出を促す)、抗炎症作用(免疫の過剰反応を抑え、免疫システムを整える)などにより、免疫強化に役立つことが認められています。
また、ビタミンCは白血球中に多くあり、外敵と戦う白血球をサポート。つまり体内のビタミンCの減少は免疫低下に直結すると言え、ビタミンCを外から意識的に補うことも免疫強化につながるというわけです。
免疫強化! おいしくて体にいい野菜料理
白菜と大根のキムチの素あえ
キムチといっても漬け込んだものではなく、細切りにした白菜と大根にキムチの素をまぶすだけ。ビタミンCとイソチオシアネートは水溶性で熱に弱く、しかもイソチオシアネートは揮発性もあるため、長時間煮込こむのも、切ったりすりおろしたりしてから時間を置くのもNG。切りたて新鮮な白菜と大根を生で食べるのが一番です。
大根、長ねぎと白身魚のうま煮
大根と長ねぎを白身魚と一緒に短時間でさっと煮ます。免疫強化をサポートするイソチオシアネートとビタミンCに、魚の良質なたんぱく質をプラス。加熱によってイソチオシアネートは多少減少しますが、煮汁も食べるうま煮ならビタミンCの損失は抑えられますし、温かい料理は生野菜よりたくさん食べられるというメリットも。
■冷え性は体の内側から温める
症状:冷え性
栄養素や酸素を運んでいる血液は体温の元でもあります。冷え性とは、何らかの理由で血管が収縮して血流が悪くなっている状態なので、外からいくら温めてもあまり効果はありません。血管拡張・血流促進作用のある野菜をとって、体の内側から温めていきましょう。
しょうが
しょうがに含まれる「ジンゲロール」という物質はフィトケミカルの1つで、血流を促進することで冷え性の改善に役立ちます。その効果をより高めるには、しょうがを加熱すること。熱によりジンゲロールは「ショウガオール」という物質に変化するのですが、体を内側から温める作用は、このショウガオールのほうが高いのです。
にんにく
にんにくに含まれる「スコルジニン」という物質には末梢血管を拡張する作用があります。それにより血流が促進されるため、にんにくもまた冷え性の改善に役立つと言えます。スコルジニンは脂溶性で加熱によって生成するため、炒めものなどを油と一緒に調理すると効果的です。
にら
にらの根元の白い部分には「硫化アリル」が豊富。糖質代謝に欠かせないビタミンB1の吸収を助けることで疲労回復に役立つ硫化アリルですが、実は血流促進効果により、体を温める作用もあるのです。その他、かぼちゃやモロヘイヤ、パプリカに含まれるビタミンEにも血管拡張・血流促進作用があり、冷え性改善に役立つと言えます。
■肩こりには「血流を改善する成分」を
冷え撃退! おいしくて体にいい野菜料理
にら玉
しょうがとにんにくも加えれば、ショウガオール、スコルジニン、硫化アリルと、血管拡張・血流促進成分が3つそろった体ぽかぽか料理に。同じ具材で温かい中華スープにするのもおすすめです。
にら餃子
硫化アリルは細かく切るほど増えるので、にらの青い部分も白い部分もすべてみじん切りにして餃子に。餃子といえばにんにく、しょうがもつきもの。つまりスコルジニン、ショウガオールも一緒にとれる冷え性対策料理になります。
症状:肩こり
肩こりとは猫背や同じ姿勢が続くことで、肩まわりの血流が悪化し、筋肉が硬くなっている状態。マッサージや整体などの施術を受けるのもいいのですが、血流を改善する成分を意識的にとって、体の内側からも肩こり解消を目指しましょう。
かぼちゃ、モロヘイヤ、パプリカ
肩こり解消のキー栄養素はビタミンE
かぼちゃ、モロヘイヤ、パプリカ、すべてビタミンEが豊富な野菜です。抗酸化作用による老化抑制、疲労解消、免疫強化、美肌などさまざまな方面に役立つビタミンEに、もう1つ期待できるのが、末梢血管を拡張して血流をよくする作用。つまり、ビタミンEに富むかぼちゃ、モロヘイヤ、パプリカは内側からの肩こり解消をサポートしてくれる野菜と言えます。
■「タウリン」を含むエビと合わせて疲労回復
その他、しょうがのジンゲロール(加熱するとショウガオールに変化)、にんにくのスコルジニン、にらの硫化アリルにも血流改善作用があり、肩こり解消の助けとなります。かぼちゃ、モロヘイヤ、パプリカにこれらの食材を組み合わせることで、より効果的な肩こり解消食に。
同じ姿勢が続くと血流が滞って肩がこりやすいので、1時間に一度は肩まわりを動かす、温めるなどを習慣づけ、また、どうしてもつらいときには施術院の手も借りながら、血流改善に役立つ野菜を意識的にとって日ごろからケアしていきましょう。
肩こり解消! おいしくて体にいい野菜料理
かぼちゃのモロヘイヤあんかけ
とろとろのモロヘイヤと出汁を合わせて、蒸したかぼちゃにかけた一品。モロヘイヤのあんに豚肉など脂質を含む食材を加えると、脂溶性のビタミンEの吸収が上がり、より血流改善に効果的なおかずになります。
パプリカとえびのガーリック炒め
パプリカのビタミンE×にんにくのスコルジニンでダブルの血流改善効果が期待できる一品。さらにえびに含まれる「タウリン」という成分には筋肉疲労の解消をサポートする作用があるため、より効果的な肩こり対策食です。
■ストレス軽減にはカルシウムとビタミンC
症状:ストレス
仕事や人間関係などでストレスを感じることは日々あるはず。野菜ひとつですべて解消とはいきませんが、ストレス軽減に役立つ栄養素は確かにあります。それを含む野菜を食生活に取り入れて、ストレス社会を生き抜くサポート役になってもらいましょう。
小松菜、チンゲンサイ、カリフラワー
ストレス軽減のキー栄養素は「カルシウム」と「ビタミンC」
イライラや不安感といったストレス症状に効果的とされる成分は、主に2つ。まず1つめ、もっとも効果が期待できるのは小松菜とチンゲン菜に多く含まれるカルシウムです。
カルシウムは脳の神経伝達物質の放出を助け、神経細胞同士のやり取りを円滑にする作用があります。それが神経の興奮を抑えることにつながり、結果としてイライラなどの感情が収まりやすくなるのです。
また、ストレス要因を感知すると「コルチゾール」というホルモン分泌され、心身の緊張を高めることでストレスに対抗してくれるのですが、過剰分泌されると、むしろストレス症状が続いてしまいます。ここでもカルシウムの出番。コルチゾールの分泌量や働きを調整し、ストレス症状が適度に収まるよう働いてくれます。
■カリフラワーは「ピクルス」がオススメ
そしてもう1つは、カリフラワーに含まれるビタミンCです。強い抗酸化作用を持つビタミンCですが、実は体内のコルチゾールレベルを下げる作用もあります。さらには気分を落ち着かせる神経伝達物質「セロトニン」の生成にも関わっています。
ストレス軽減! おいしくて体にいい野菜料理
小松菜、チンゲンサイ、きのこの炒め煮
カルシウムの吸収をよくするにはビタミンDが欠かせません。カルシウムに富む小松菜とチンゲン菜、優秀なビタミンD食材であるきのこ類を炒め合わせれば、簡単便利なストレス軽減食になります。ビタミンDは脂溶性なので、まず油で炒めることで吸収率アップ。
カリフラワーのピクルス
水溶性ビタミンのビタミンCをなるべく多くとれるよう、加熱せず生のカリフラワーをピクルスにします。ほどよい酸味で気分もすっきり。
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1977年生まれ。(有)高橋農園常務取締役。群馬県前橋市にて従業員約80名、ビニールハウス470棟にてほうれん草やチンゲンサイなどを周年栽培しながらフォロワー数26万超えのX(Twitter)を運営し、野菜と農業の魅力について配信中。衰退する日本の農業を元気にし、農業を通じて幸せになる人を増やすのが夢。
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東京慈恵会医科大学附属病院栄養部部長
給食栄養管理と臨床栄養管理をバランスよく機能させ、患者の立場に立った食生活の向上指導にあたる。監修書に『完全版 その調理、9割の栄養捨ててます!』(世界文化社)、『慈恵大学病院のおいしい大麦レシピ』(出版文化社)など多数の健康レシピ本にかかわる。
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(高橋農園常務取締役 しん/野菜を育むプロ(高橋伸吾)、東京慈恵会医科大学附属病院栄養部部長 濱 裕宣)
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