超重要臓器・肝臓をボロボロにするのは酒だけではない…専門医がすぐにやめるべきと話す健康的な飲み物
プレジデントオンライン / 2024年12月12日 16時15分
※本稿は、尾形哲『甘い飲み物が肝臓を殺す』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。
■肝臓を効率的に破壊する飲み物
砂糖や果糖ブドウ糖液糖を大量に含んだ甘い飲み物を日常的に飲んでいると体の中でどういうことが起こるのか。
砂糖には、ブドウ糖と果糖が1対1の割合で含まれていますし、果糖ブドウ糖液糖には、果糖が50%以上90%未満の割合で大量に含まれています。こうしたブドウ糖や果糖は、甘い飲み物として液体で口から入ると、たちまち小腸に到達します。そして、スピーディーに吸収されて、それぞれ次のようなかたちで肝臓にダメージを与えることになります。
・ブドウ糖→血糖値が急激に上昇し、多くのインスリンが分泌される。インスリンの働きにより、ブドウ糖が次々に中性脂肪に変換される。行き場なくあふれた脂肪がどんどん肝臓にたまっていく
・果糖→少量の果糖であれば、小腸においてブドウ糖に変換される。ただ、キャパを超えた大量の果糖はダイレクトに肝臓へ向かい、肝細胞のミトコンドリアの機能を障害する。さらに許容量をオーバーした果糖は次々に中性脂肪に変えられていき、どんどん肝臓にたまっていく
つまり、甘い飲み物を飲んでいると、ブドウ糖と果糖の「ダブルパンチ」によって、脂肪肝が進み、肝細胞が疲弊して、肝機能が低下していくのです。
一方ではブドウ糖の「精鋭歩兵部隊」が大挙してなだれ込んできてダメージをもたらし、一方では果糖という「“毒”を搭載した誘導ミサイル」が次々に着弾して、肝臓という街を大規模に破壊していくようなもの。このダブル攻撃はある意味、肝臓という街を廃墟と化すには、もっとも効率のいい攻め方なのかもしれません。
■脂肪肝炎、肝硬変、糖尿病のリスク
とにかく、このようなダブル攻撃をもし毎日のように続けられたら、肝臓はたまったものではありません。肝細胞にはみるみる脂肪がたまり、肝臓がパンパンにふくらんでいってしまうでしょう。それに、脂肪肝だけでなく、脂肪肝炎、肝硬変、糖尿病などのリスクもみるみる高まってしまうはずです。
これは決して他人事ではありません。別に脅かすわけではありませんが、甘い飲み物を日々多飲している自覚があるのであれば、(肝臓はほとんど何の悲鳴も上げはしないのですが)すでに肝臓が脂肪まみれで瀕死も同然の状態に陥っていたとしても、まったく不思議はないのです。
でも、ちょっと疑問に思った方もいらっしゃるかもしれません。肝臓は7割切除しても残った3割の部分がたった3カ月で元の大きさに再生するような、驚くべき再生能力を持つ臓器です。それなのに、甘い飲み物の攻撃を受けたぐらいで、そんなに痛めつけられてしまうものでしょうか?
みなさんは「雨だれ石を穿つ」という言葉をご存じですか。これは「雨のしずく程度の小さな力でも、長い歳月をかけて繰り返し落ちていると石に穴をあける」ということを表わしています。
現在では「小さな努力でも根気よく続けていれば成功する」といったプラスの意味で用いられていますが、このことわざの語源となった中国の『漢書』では、もともと「小さな物事でも長年積み重なると大きな災いに発展してしまう」というマイナスの意味で使われていたそうです。
■肝臓が最も苦手な攻撃
私は、肝臓が悪くなっていくプロセスは、まさに(マイナスの意味での)「雨だれ石を穿つ」だと思っています。
どんな人も、いきなり肝臓が悪くなるわけではありません。脂肪肝はもちろん、脂肪肝炎や肝硬変の場合も、「甘い飲み物」「過食」「アルコール」などのちょっとした悪習が長年にわたって積み重ねられたことによって、じわじわと少しずつ状態が悪化していくのです。
まさに1滴1滴の雨だれがいつかは石に穴をあけるように、日々ちょっとずつちょっとずつ肝臓が蝕まれていくわけですね。
じつは、肝臓という臓器は、こういう「小さな弱い力」の連続攻撃によるダメージに非常に弱いのです。たまに強いパンチをガツンと食らってもわりと平気なのですが、その一方、毎日のように弱いパンチを繰り返し打たれると、そのダメージの蓄積がこたえて、てきめんに弱ってしまいやすいのです。
ボクシングであれば、それこそ「ボディへの弱いレバーブロー」を繰り返し打ち込まれて、その疲弊ダメージが蓄積したあげく、たまらずダウンしてしまうような感じでしょうか。
■「健康のため」で不健康になる
たとえば、一気に大量のお酒を飲んで「急性アルコール中毒」になったとしても、それが原因で脂肪肝や脂肪肝炎が一気に悪化するといったことはありません。
むしろ、たいした量ではなくても、毎日毎日お酒を飲むほうが肝臓のダメージにつながりやすいんですね。毎日欠かさず多量の飲酒をして、それが10年も続けば、もう確実に脂肪肝や脂肪肝炎が進んでいると思って間違いありません。
同じように、甘い飲み物を何年にもわたって毎日習慣的に飲み続けていれば、肝臓は確実に弱体化していきます。
毎日欠かさず飲んできた乳酸菌飲料とか、毎日意識して飲んできた野菜ジュースとか、そういう日々の小さなダメージが積み重なって、いつしか肝機能をボロボロに破壊してしまうような大ダメージへとつながっていくのです。
小さなダメージを繰り返し受けていると、少し回復しかけたとしてもその回復途中でまた底のほうへ突き落とされることになり、一向に回復できないまま、日々ちょっとずつダメージが積み重なっていくことになります。
■ダメージ回復の基準は48時間
具体的には、最初のダメージを受けた後、48時間以内に次のダメージがもたらされると、機能が回復しづらくなることが分かっています。48時間ですから、アルコールであれば飲んでから2日は空けたほうがいいということになるわけですね。
さらに、肝臓の病気が怖いのは、その小さなダメージの蓄積が症状として表に現われない点です。
症状がないと、どんなに状態が悪化していたとしても「悪くなっているという実感」を持てません。鍋の水に入れられたカエルは、少しずつ熱せられると状況の悪化に気づかないまま「ゆでガエル」になってしまうと言いますが、肝臓の場合もこれと同じように、悪化に気づかないまま少しずつ進行させてしまい、判明したときにはすでにかなり厳しい状態になっているケースが多いわけです。
雨だれのしずくでもいつかは石に穴をあけるのです。みなさんの肝臓はどうでしょう。ひょっとして、日々「しずく」のような小さなダメージが積み重なって、いつの間にかボロボロに弱った状態になってはいないでしょうか。
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肝臓外科医
長野県佐久市立国保浅間総合病院外科部長、同院「スマート外来」担当医。医学博士。一般社団法人日本NASH研究所代表理事。1995年神戸大学医学部医学科卒業、 2003年医学部大学院博士課程修了。パリ、ソウルの病院で多くの肝移植手術を経験したのち、2009年から日本赤十字社医療センター肝胆膵・移植外科で生体肝移植チーフを務める。さらに東京女子医科大学消化器病センター勤務を経て、2016年より長野県に移住。2017年スタートの「スマート外来」は肥満解消と脂肪肝・糖尿病改善のための専門外来。著書に『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術』、『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす7日間実践レシピ』『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』(いずれもKADOKAWA)などがある。
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(肝臓外科医 尾形 哲)
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