整理しないといざというときに大損する…年末の帰省で両親と一緒に仕分けしたい、実家に眠る「金目の紙」一覧
プレジデントオンライン / 2025年1月2日 16時15分
※本稿は、石阪京子『実家片づけ』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。
■難度の高い「紙片づけ」こそが本丸
実家片づけのゴールは「モノの片づけ」と「紙の片づけ」を両方終えること。特に、後々のお金に関するトラブルや悲劇は往々にして「金目の紙」=財産にかかわる書類が整理されていなかったことによって起こります。
「モノ」は多少散らかっていても後でどうにかなりますが、紙はご両親が認知症になったり亡くなったりしてからではどうにもならない。だからこそ、「紙片づけ」は、子どもにとっての本丸なのです。
とはいえ、「紙片づけ」はモノよりも難度が高いといっていいでしょう。
手紙、税金の書類、契約書、チラシなど。見た目はどれも同じ紙なので、パッと見ただけでは捨てていいのか、とっておくべきなのか判断するのが難しいからです。
■紙は布団1枚捨てるより難しい
実は、布団1枚捨てるより、紙を1枚捨てるほうが難しいです。見た目や好き嫌い、使用頻度などで要・不要を判断できないからです。
そのため、「とりあえずとっておこう」となり、大事な紙と、そうでない紙が入り交じっているご家庭がたくさんあります。特に、高齢の方はご自身の記憶力に自信がないため、「とりあえずとっておこう」の傾向が強くなりがち。
ところが、とりあえずレターケースに入れたり、吊り下げ収納につっこんだり、押し入れの隙間に入れたりしただけで管理ができていないから、肝心なときに大事な紙が出てきません。
中でも、財産にかかわる紙はお金そのもの。家のどこかにあるのにいざというとき取り出せず、大損をすることがないよう、仕組みを作りましょう。
■「親の財産」はデリケートだが重要な話
「紙片づけ」を始めるときも、まずは作戦会議でゴールを親御さんと共有することから始めてください。具体的には、
・突然、介護が必要になったときのため、年金や保険、資産を把握しておきたい
・相続で困らないように、どこにどんな財産があるかを知り、必要なら相続税対策をしておきたい……など。
モノの片づけより、さらにデリケートな話であるのは事実です。親御さんの中には、自分たちの財産は知られたくないと思っている方もおられます。
そういう親御さんには、もし把握していなければご両親や自分たちがいかに困るかということを伝えましょう。
その際には、身近な人が大変な目に遭った例を持ち出すのが効果的です。
なお、本来は、「モノの片づけ」→「紙の片づけ」の順番でやるのが効率的です。モノが整理されていない家は紙もあちこちに散らばっていることが多いので、重要な紙だけをひっぱり出してくるのが難しいからです。したがってまずはモノを片づけるときに、紙だけを分けておき、あとで「紙片づけ」をするのが速いです。
とはいえ、モノはだいたい片づいているという家や、資産の把握のほうが急務だという場合、「紙片づけ」だけ先にやったほうが安心です。
本稿では、先に「紙片づけ」をやる場合でも、無理のない方法を書いています。
次から具体的なステップをお伝えします。
■「紙片づけ」の3つのステップ
「紙片づけ」の目的は、次の三つです。
・親の資産を把握する
・資産を動かすときに必要な紙を確保する
・親が今後、重要な紙を整理できるシステムを作る(=ホームファイリング)
これができていれば介護などが発生しても慌てることがありませんし、節税対策もできます。相続もスムーズでしょう。そのために【1】金目の紙を集める→【2】金目の紙を二つに分ける→【3】ホームファイリングをする の3ステップで片づけていきます。
それぞれ、説明していきます。
紙片づけ 3ステップ
ステップ0:作戦会議をして目的を共有する。なお、ゴミ屋敷状態の場合は、必ず「モノ」の片づけを先にして、金目の紙を探し出す
ステップ1:「金目の紙」だけを集める
ステップ2:「金目の紙」を二つに分ける
①動いていない「金目の紙」→ 大事に保管
②動いている「金目の紙」→ ホームファイリング
ステップ3:「ホームファイリング」する
①入ってきた紙を三つに分ける
・すぐに捨てる
・確認して捨てる
・とっておく
②とっておく紙をジャンル分けする
③便利グッズで収納する
「金目の紙」を選別し、財産や収入を把握できたら、税金面などで知らずに損していることはないかチェックしよう
■まずは「金目の紙」を1カ所に集める
今まで「金目の紙=財産にかかわる書類」と書いてきましたが、例えばどういう紙なの? と思われる方も多いかもしれません。古い雑誌や年賀状、写真などが「金目の紙」でないことは明白だと思います。
「金目の紙」というのは、生命保険の証書や通帳など、それがあることでお金に換わったり、資産を把握したりするのに役立つ紙のこと。まずはそれらを1カ所に集めます。金庫に入れている場合も「金庫にあるから大丈夫」ではなく、中身を確認するために集めてください。なお、紙は薄くて軽いので、床に平積みすると誤って紛失する恐れがあります。紙袋や段ボールなどの「枠」の中にまとめて入れていきましょう。
■「金目の紙」そうに見えてそうではない紙もある
ただ、金目の紙を集めてくるときにやりがちなのが「一見、金目の紙だけど実は違う紙」も紛れてしまうこと。
例えば、銀行や保険会社などから届いた「重要」と書かれた封書。これは一見「金目の紙」のようですが、中を読んでみれば「資産形成セミナーのご案内」や「新・○○保険のお知らせ」など、ただのお知らせであることがよくあります。この紙があることで、お金が手に入ったり、資産を把握する役に立ったりするわけではないですよね。ということは、これは金目の紙ではありません。
他にも、昔勤めていた会社の給料明細や、クレジットカードの明細、支払い済みの請求書なども金目の紙だと勘違いしがちですが、これらは全て「過去のお金の流れの情報」です。未来に直接影響を与えるわけではないので、金目の紙ではありません(ただし確定申告をしている場合は期間内のものはお金に換わる紙なので「金目の紙」となります)。
また、直接お金に換わる紙ではないけれども、それを見ることで、親の資産や収入などが推定できる紙もあります。
■「動いている紙」と「動いていない紙」にも分ける
図表1に主な「金目の紙」の具体例を書いていますが、「金目の紙」なのか「金目の紙でないのか」の見極めはなかなか難しいもの。「金目の紙」をピックアップするときは、とりあえず怪しいものは集めて中をちゃんと確認してから、判断するようにしましょう。何の紙なのかわからないときは、書かれている問い合わせ先に電話などで確認することも必要です。
本当に必要な「金目の紙」なのか、それとも不要な紙なのかは、集めた後に落ち着いて分類するようにしましょう。
集めてきた「金目の紙」は、二つに大別されます。
・動いている紙
・動いていない紙
例えば、通帳や株主優待の紙などは、日常的に、あるいは近年中に使う予定がある「動いている紙」です。家のどこかに大事に眠らせておけばいいわけではなく、出し入れしやすいように管理する必要があるので、ホームファイリングをします。
一方、不動産を買ったときの紙などは、今すぐ使うわけではないので「動いていない紙」です。なくさないように、枕棚などに大事に保管しておきましょう。
■「動いている金目の紙」はホームファイリング
動いている「金目の紙」はホームファイリングをします。ホームファイリングとは必要な紙を5秒で取り出せる仕組みです。『人生が変わる 紙片づけ!』という本に詳しく書いていますが、ここでは高齢者に合わせて簡略化した方法をお伝えします。
ファイリングをする紙は、「金目の紙」だけではなく、健康保険証やパスポートなどの重要書類も対象になります。これらはお金に換わるわけではありませんが、何かの目的のために必ず必要になるもの。言い換えるなら「使う目的がある紙」です。
つまり、ホームファイリングをする紙は、「動いている金目の紙」と「使う目的がある紙」の2種類ということです。この仕組みを作っておけば、今後、様々な紙が入ってきても、ぐちゃぐちゃにならなくなります。
ホームファイリングの3カ条
1 大切なのは、どう収納するかより、何を残すか
ホームファイリングが目指すゴールは、「必要な紙を5秒で取り出せる仕組みを作る」こと。どんなに美しく収納されていても1000枚の中から1枚を探し出すのは大変。でも必要な紙だけが10枚厳選されていれば、そこから1枚取り出すのは5秒でできる。だから「紙片づけ」で最も大切なのは収納の仕方を知ることではなく、何を残すかを知ること。
2 残すのは「金目の紙」と「使う目的がある紙」だけ
実は残すべき紙は2つだけ。「念のため」と思って取っておいても、必要なときに探し出せなければ意味はない。
3 ネットで情報を見られるなら紙そのものはいらない
拙著『人生が変わる 紙片づけ!』(ダイヤモンド社刊)では、「書かれている『情報』だけとっておきたい紙」については「データ化」してクラウド保存を推奨している。しかし、親世代にそこまで求めるのは酷なのでデータ化まではしなくてOK。ただしネットでも見られる情報が載っている紙(取扱説明書や自治体のパンフレットなど)は処分して、今後はスマホやパソコンで見られるようにしてあげよう。
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片づけアドバイザー
宅地建物取引士。JADPメンタル心理カウンセラー・上級心理カウンセラー。大阪で夫と不動産会社を起業、夢のマイホームを手に入れても片付けができないと諦めている多くの人に出会う。自分にできることはないかと女性目線での建築設計、引っ越し後のアフターフォローとして家の片づけを提案。独自のメソッドは、一度やれば絶対にリバウンドしないのが特徴で、これまで様々な片付け法を試したり、プロに頼んではリバウンドを繰り返してきた人たちの「最後の駆け込み寺」となっている。
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(片づけアドバイザー 石阪 京子)
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