日経平均は2025年に4万5000円までスルスル上がる…経済評論家が「その後も長期的に上昇基調」と読む納得の理由
プレジデントオンライン / 2024年12月19日 7時15分
※本稿は、渡邉哲也『世界と日本経済大予測2025-26』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
■日経平均は4万円を超えて上値を狙う
株価のゆくえを左右する世界的な経済の潮流を予測する。現時点で何が起きているのか。これから1年、2年にいかなる「お金の流れ」が起きるのかをつかんでほしい。
さて、おそらく多くの読者の関心事は、「日経平均株価はどこまで上がるのか? あるいは下がっていくのか?」であろう。したがって、最初に結論を述べよう。
いずれ5万円を超える。
だが、それはいつになるかはわからない。株価は人生のように紆余曲折を経て上昇していく。大きな流れとしては4万円を超えて、さらに上値を狙っていく展開である。
「2025年には5万円突破だ」と景気のいいことを言いたいところであるが、一本調子で上がっていくのはむしろ危険で、踊り場を何度も繰り返し、内部調整を行いながら、緩やかに踏み上がっていくというのが正しい株価の形成なのである。
■政治的混乱が当面悪影響を及ぼすが心配は不要
実際、2024年3月4日に史上初の4万円台に乗せた後は、調整局面を経て全体としては上げ基調となっている。この傾向はポジティブにとらえたほうがよいだろう。2024年8月に4000円を超える大暴落があったが、翌日すぐに3000円戻したように、市場も冷静ではあった。
同じく2024年9月に行なわれた自民党総裁選において、石破茂氏と高市早苗氏による決選投票の前後で株価は激しく乱高下した。石破氏が首相に決まった結果、株価は大きく下落した。
これは市場の期待を裏切ったからにほかならない。石破氏の経済政策は皆無に等しく、空虚な左派的理想論が並んでいた。
また、高市氏にも言えることだが、石破氏の党内基盤は弱く、長期安定政権となる可能性は低い。当面政治的混乱が市場に悪影響を与え続けると考える。
■リーマン・ショックのような歴史的な大暴落は起きない
しかし、リーマン・ショックのような歴史的な大暴落は、今後はそうそう起きないと思っていい。そもそも現在は、リーマン・ショックの時とは金融環境がまったく異なる点を頭に入れておく必要がある。
当時は、投資銀行をはじめとした国際金融資本が直接ポジションをとって取引を行なっていた。また、リスクが連鎖しやすい構造を抱えていた。
サブプライムローン会社の破綻がきっかけとなり、投資銀行の信用不安、モノライン保険会社の破綻(資本不足で保険が機能しない)、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ、発行体の信用リスクを対象とするデリバティブ)の無理な引き受けなど連鎖的に問題が生じた。
これらに関して、現在は規制が強化されており、一つのほころびが恐慌へと連鎖発展するリスクは格段に低くなっている。株価は、経済の実体に合わせた上昇こそが望ましい。経済の身の丈を超える上昇はまさにバブルで、壊れるときに一気に崩れる。
現在、投資ファンドでも銘柄を定期的に入れ替えており、より適正な成長が進んでいく。2025年は当面は踊り場状況が続くと予測されるが、4万5000円程度まではスルスルと上昇するかもしれない。政治的混乱がなければ、その後、5万円をうかがう展開になるだろう。
■NISAが株価上昇に貢献。累積買付額は41兆円超に
2024年に4万円を突破した要因として、新NISAの存在も無視できない。
新NISAでは、投資上限額が年間360万円まで引き上げられ、その内訳は成長投資枠が240万円、つみたて投資枠が120万円となっており、両者の併用が可能になった。売却した分だけ、翌年に非課税枠が復活するなどの特徴がある。
従来のNISAは一般NISAが120万円で、つみたて(積立)NISAは40万円が上限だった。投資の上限額は2倍以上になったわけで、そのかなりの部分が東京市場に投じられたことは想像に難くない。
金融庁の公表資料によると、新NISA開始後の2024年3月時点でのNISAの口座数は約2323万件となっており、2023年末からプラス9%となっている。累計買付額は、プラス17%の41兆6000億円。新NISAによって、市場は今後、さらに活況を呈するだろう。
■NISAが過熱するほど日経平均株価は長期的に上昇
じつは、NISAが過熱すればするほど、日経平均株価の長期的な上昇が見込める。それはなぜか。NISAの仕組みをわかりやすくして考えてみよう。
つみたて(積立)NISAは、毎月株を買い増していき「平均値」を取っていく投資だ。そのため、最終的に、平均購入価格の上昇率が平均インフレ率や預金利回りを上回った分だけ利益が出ることになる。
たとえば年率3%以上の上昇があれば、そのまま利益になる。短期的に儲けようと思っても、新NISAは爆発的に儲かる仕組みになっていないのだ。今すぐに大きく儲けたいなら、成長枠で個別銘柄を売買すればいい。
「個別株投資はリスクがあるからやらない」「新NISAで十分だ」という投資初心者の場合、株の長期保有が見込めるため、多少の上げ下げで売りに出すようなことは考えにくい。
要するに、短期間に売買を繰り返して利鞘を取る、あるいは損切りをする投機筋とは異なり、資産形成のための投資行動をする人が増えれば増えるほど、その影響は日経平均の長期的な上昇に寄与すると考えられる。
そのような動きが緩やかな一般投資家が増えていくことを踏まえると、2025年は調整局面が続き、4万円前後から4万5000円あたりでの振幅と考えておけばいいと思う。
■マグニフィセント・セブンの行方は
ニューヨーク市場も、日本の株式同様、振幅はあるものの全体として好調を維持している。株価上昇を支えているのが、マグニフィセント・セブン(アップル、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン、メタ、エヌビディア、テスラ)と呼ばれるAI(人工知能)に関連するテクノロジー企業の銘柄だ。
「マグニフィセント・セブン」という言葉の本来の意味は、1960年に製作された西部劇アクション映画のタイトル(邦題『荒野の七人』)で、その内容は黒澤明監督の『七人の侍』(1954年)の翻案である。この大人気を博した映画にちなんで、現代を代表する7つの大企業をまとめた呼び名として定着した。
このマグニフィセント・セブンの時価総額は、2024年1月の時点で12兆ドル(約1800兆円=1ドル150円換算)。東証プライム市場の時価総額(同時期、約1001兆円)のおよそ1.8倍にもなる。わずか7社が東証プライム市場1651社(2024年4月1日現在)の時価総額を上回っているのである。
■長期国債の利回り上昇で「株より国債へ」
ところが、そのマグニフィセント・セブンにも、2025-26年を前にして暗雲が立ち込めている。投資効率の問題が疑問視され始めているからだ。
米10年物の国債利回りが2020年1月に0.44%と最低をつけた後、右肩上がりに上昇している。2023年10月には一時的に5%を突破、2024年8月時点では約4%となった。「AIバブル崩壊」を予感させるほどのマイナス要因となりつつある。
たとえばマイクロソフトは2020年1月3日に158ドルで、2021年11月には343ドルまで上昇したが、徐々に上がる国債利回りに押されたのか2023年1月には224ドルまで下がった。
ところが、その後は再び上がり続け2024年7月の時点で467ドルまで上昇している。国債利回りが4%前後もあるのに、よりリスクの高い株式投資で株価がここまで上がるのは、リスクと期待される資金回収とのバランス、すなわち投資効率からしてどうなのか。
アルファベットも同様で、2023年1月に88ドルをつけた後はほぼ上がり続け、2024年7月には191ドルと2倍以上の株価となった。エヌビディアは2023年1月に14ドルだったものが、2024年7月には129ドルと9倍以上をつけていた。ところがその後ずるずると下げた。
2024年8月の決算発表後に時価総額が68兆円消失、日本の半導体関連銘柄にも波及する大暴落に発展した。
わずか4年半で長期国債の利回りが9~10倍になれば、「株を買うより確実な国債を」と考える人が増えるのは当然である。これがアメリカ株式市場に大きな影響を与え始め、これはまだバブル崩壊の前兆にすぎないだろう。
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経済評論家
1969年生まれ。日本大学法学部経営法学科卒業。貿易会社に勤務した後、独立。主な著書に、『世界と日本経済大予測』シリーズ(PHP研究所)、『「米中関係」が決める5年後の日本経済』(PHPビジネス新書)のほか、『「中国大崩壊」入門』『2030年「シン・世界」大全』(以上、徳間書店)など多数。
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(経済評論家 渡邉 哲也 )
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