農家の息子→東大法→大蔵省→首相…「日本一出世した学歴厨」が東大経済部卒に言い放った強烈な「学歴煽り」
プレジデントオンライン / 2024年12月18日 7時15分
※本稿は、じゅそうけん『受験天才列伝』(星海社新書)の一部を再編集したものです。
■なぜ圧倒的な地位だった「東大文一」は衰退したのか
昭和(特に戦後〜バブル前夜あたり)の時代、圧倒的な地位を築いていた東京大学文科一類の入学難度についても詳しく見ていきましょう。
東京大学では、入学時から進学する学部が決められているわけではありません。文系・理系それぞれ3つずつ設けられた科類(文科一類・二類・三類、理科一類・二類・三類)に進学し、2年次まで教養科目を幅広くおさめたあと、3年次より希望の学部に進む(2年次までの成績で決まる)というやや特殊な方式をとっています。
とはいえ最初に入る科類によっておおよそ進学する学部は決まっているようなもので、文一は法学部、文二は経済学部、文三は文学部、理一は工学部、理二は農学部、理三は医学部にその多くが進学します。
当時の文系においては法学部が一番ブランドがあったため、法学部への門戸が広く設定された文一の地位も自ずと高くなっていたというわけです。
昭和後期には、文一と文二・文三との間には偏差値で言うと5〜10程度の差があったと言われ、文一は圧倒的な地位に君臨していました。東大の文系入試で最も合否を左右する科目である数学では毎年4問出題されるのですが、当時文三は一問完答、文二は二問完答、文一は三問完答する必要があると言われていたそうです。
この頃の予備校のデータを見てみると、当時の東大文一合格者の高2時点の文理共通の数学の問題での平均点は京大理学部合格者のそれを上回っていることが確認できます。文系でありながら東大京大(医学部除く)の理系をも凌駕する数学力まで兼ね備えていたのです。
■東大であればどこでもいい
しかし現在、東大文系の合格最低点は文一、文二、文三の間で大差がなくなってしまいました。2021年入試では、なんと文二、文三の合格最低点を文一が下回ってしまうという、この世代の受験生からしたら信じられない事態が起こっています。
次章で詳しく言及しますが、要因としては法学部からの定番の進路である官僚が激務の割に稼げなくなり、弁護士もロースクール改革の失敗や供給過多による需要の減少があることなどから、以前ほど魅力のある職業ではなくなってしまったというのが大きいでしょう。
今の受験生は「東大ブランド」が手に入ればそれで良いと考え、科類はどこでも良いというホリエモン的傾向が強くなっているように見受けられます。
ちなみに、この時代の東大文一を受験した有名人に岸田文雄前首相がいます。
岸田首相は3度の東大受験に失敗し、早稲田大学法学部に進学しており、ネット上では「東大落ちたくせに」と叩かれていることも多いです。
たしかに岸田首相は東京大学文科一類の受験に失敗していますが、前述の通り全盛期の文一を受けているという点にご留意ください。当時の文一は圧倒的であり、不合格者でも文二や文三であれば受かっていたということは十分ありえるでしょう。
そういうわけなので、岸田首相を叩くのは大目に見てあげてほしいというのが正直なところです。
■名門鳩山家の生でも屈指の「受験天才」
第一章では戦前の神童エピソードを紹介しましたが、もちろん戦後にも天才は現れます。
鳩山邦夫さん(1970年東大法学部卒)は個人的に推している天才の一人です。
そもそも鳩山家といえばとんでもない学歴エリート家系として知られており、なんと5代連続で東大生を輩出しています。
学者や政治家の家系で3代連続東大といった例はそこそこ見られますが、5代連続となるとかなりのレアケースでしょう。
名家揃いの政治家一族の中でも鳩山家はひときわ注目を集めており、『鳩山家の勉強法』という教育本が学習塾から出版されているほどです。
内閣総理大臣を2人も輩出した秀才揃いの鳩山家の中でも、とりわけ「受験天才」の才能が光っていたのは、鳩山由紀夫さんの弟である邦夫氏です。
邦夫氏は幼少期から神童と呼ばれ、数々の神童エピソードが語り継がれています。
■参考書を買ったことがないのに東大一発合格
そんな邦夫氏の神童エピソードをいくつかピックアップしてみました。
・高校時代、駿台全国模試で全国1位連発
・駿台模試初の現役生での全国トップとなり週刊誌から取材を受ける
・東大法学部を首席で卒業(元都知事の舛添要一と首席争い)
・写真記憶(カメラアイ)ができたと言われている
・参考書を買ったことがない(立ち読みで覚えていた)
・母親(鳩山安子)曰く、兄の由紀夫はしっかり勉強していたが、邦夫が勉強しているところは見たことがないとのこと
・大臣時代、膨大な資料を一度流し読みしただけで完全に内容を理解・暗記し、重要部分には漏れなくチェックをつけていた
・田中角栄から「君は官僚たちとは持っているものが違う。他人とは違うということを理解しなさい」と釘を刺される
挙げればキリがないですが、このような信じられないエピソードが多数残っています。
法相時代など、過激な発言でたびたび物議を醸していましたが、それも天才ゆえのことだと考えると、なんだか憎めない感じがします。
それから、昭和を代表する学歴厨とも言われる宮澤喜一さんにも触れないわけにはいきません。
宮澤喜一氏は東京帝大法学部から大蔵省に入って内閣総理大臣にまで上り詰め、「日本一出世した学歴厨」とも呼ばれる人物です。
高い英語力にも定評があり、サンフランシスコ講和会議には全権随員として参加しています。
■「日本一出世した学歴厨」の強烈エピソード
ただ、政界きっての学歴厨であったことで知られており、早稲田大学卒の竹下登元総理に「貴方の時代の早稲田の商学部は無試験だったんですってね?」と煽ったというエピソードや、東京農業大学出身の金丸信に対して、「偉い方ですよ。大学を出ているんですね。知っていました?」「そいつはお出来になりますなあ」と皮肉ったという話も語り継がれています。
東大法学部至上主義者であったことでも知られ、経済学部などの出身者には「ほう、近頃は法学部でなくても東大って言うんですか」と言い放ったというなんとも強烈なエピソードも残っていたりします。
ただ、宮澤氏のルーツは広島の農家であり、華やかな名門家庭の出身者が集まる政界の中でコンプレックスを感じていたという話もあります。学歴煽りはそのコンプレックスの裏返しだったのかもしれません。
■「私は1位、1位、1位、1位でした」
昭和期の女性の受験天才も紹介したいと思います。
1970年頃、さいたま市立高砂小学校では、同校始まって以来の天才少女が現れたと話題になっていました。こちらの天才少女とはみなさんご存じ、今では政治家やコメンテーターとしてご活躍の片山さつきさんであります。彼女は当時から「神童」として近所ではちょっとした有名人だったようです。
彼女の華麗なる経歴を振り返ってみましょう。
片山氏は東京帝国大学の数学科を出た数学者・朝長康郎の娘として生まれます。小学校時代は開校以来の受験天才だと持て囃され、当時首都圏の女子で最も難易度が高かった東京教育大学附属中学(現・筑波大学附属中学)に難なく合格・進学します。ここでもトップを独走し、全国模試でもたびたび1位を獲得するなど、神童ぶりを遺憾なく発揮します。
当時圧倒的な地位を誇った東京大学文科一類に現役合格し、進学します(同じ年に岸田首相も東大文一を受験しておりますが、儚く散っておられます)。
卒業後、当時日本で最も優秀な人が集まると言われた大蔵省に入省し、配属された主税局調査課でも抜群の事務処理能力を発揮します。2004年には女性初となる主計局主計官に就任しています。まさに受験天才の極致でしょう。
面白いエピソードがあります。
先ほど取り上げた鳩山邦夫氏(高校の先輩後輩の関係でもあります)との異次元の受験天才トークです。まだ財務省の役人だった片山さつき氏と邦夫氏が受験の話になり、「先生は高校時代、全国模試で1位、1位、3位、1位だったそうですね」と片山氏が尋ねると、邦夫氏は満足そうに「そうだ」と答えます。
すると片山氏が「私は1位、1位、1位、1位でした」と勝ち誇ったように言ったというのです。これに邦夫氏は「あの女はなんだ!」とご立腹だったということです(日刊ゲンダイ2010年3月18日号より)。
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受験総合研究所、略して「じゅそうけん」の名前で活動する学歴研究家。本名は伊藤滉一郎。じゅそうけん合同会社代表。X(旧Twitter)をはじめとするSNSコンサルティングサービスも展開する。早稲田大学を卒業後、大手金融機関に就職。その後、人生をかけて学歴と向き合うことを決意し退職。高学歴1000人以上への受験に関するインタビューや独自のリサーチで得た情報を、X(旧Twitter)やYouTube、Webメディアなどで発信している。著書に『中学受験 子どもの人生を本気で考えた受験校選び戦略』(KADOKAWA)、『中学受験はやめなさい 高校受験のすすめ』(実業之日本社)がある。
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(学歴研究家 じゅそうけん)
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