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タイムセールに飛びつく人は「本当のお金持ち」になれない…節約好きがホイホイはまる"年末年始の落とし穴"

プレジデントオンライン / 2024年12月18日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Dilok Klaisataporn

お金を貯めるにはどうすればいいのか。消費経済ジャーナリストの松崎のり子さんは「年末年始は注意が必要だ。節約してお金を貯めようとする人を誘惑する“お得な演出”がたくさん現れる」という――。

■12月に特殊詐欺が増えるのはなぜか

年末は犯罪が増える時期だと言われている。ボーナス支給や年末年始の物入り用に、手元にお金がある時期という理由だろうが、特殊詐欺の認知件数も12月が最も多いそうだ。デジタル上で金融被害にあうケースでは、少なからず偽メールによるフィッシングが原因になっている。

日本クレジット協会の調査によると、2023年のクレジットカードの不正利用の被害額は540.9億円と過去最高になった。2024年は1~9月時点の数字で392.7億円。その9割が、カード番号を盗まれることによる被害だ。我が家でも、メールを開けば毎日うんざりするほど大量のフィッシングメールが届く。

当然すぐに削除するのだが、ある時にその件名を見ていて気づいた。詐欺メールは、私たちの「損をしたくない、絶対に自分のお金を減らしたくない」という心理を利用して作られているということに。悪質なメールを分析しながら、どんな時に私たちがうっかり警戒ハードルを下げてしまうのか考えてみたい。

■1円でも節約したい心理が利用される

「人間は得した時の喜びより、損した時の痛みの方を数倍強く感じる」というのが行動経済学の教えだ。典型的なフィッシングメールはまさにそれを利用している。

「不正ログインのお知らせ」「異常なアクセスがありました」と書いたメールが来れば、自分のお金が誰かに脅かされるのだと慌てるし、「あなたのカードがこの支払いに使われました」と覚えのない内容が書いてあればドキッとする。

カードの番号が不正利用され、大事な口座のお金が第三者のために引き落とされてしまうなど耐え難いからだ。もしや本当にカードが使われたのではと、そのままリンクをクリックし、パスワードを入力し――という行動をとってしまうと、相手の思うつぼだ。

クレジットカードを持ちスマホを使用する人
写真=iStock.com/Sitthiphong
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Sitthiphong

さらに、一歩進んで積極的にお金を節約したい人が目を止めるような手口もある。先日、「サブスクリプション料金の改定について」というメールが届いた。12月某日にサブスク料金を値上げするが、解約しない限りは自動更新となりますという。で、解約及び詳細の確認はこちらへ――とリンクに誘導されるわけだ。

自分はそのサービスに加入した記憶はないため詐欺メールだろうと判断したが、「固定費を1円でも節約したい」人なら、つい騙されてしまいそうな巧妙な手口だろう。今年中に使っていないサブスク料金を解約し、お金を浮かせたいと考えるのは正しいけれど、くれぐれもその心理を利用されないように注意したい。

■ポイ活好きに注意してほしい「もらえます」偽メール

先に書いた通り、これまでのフィッシングは「不正な取引があり、口座を凍結します」等の脅し型がメインだったが、その手口が周知されたせいか、最近はプレゼント型が目立つようになってきた。

目にする件名は「会員様限定 5000円プレゼントキャンペーン」、「年末の大感謝企画」「ログインするだけで300ポイント進呈、いますぐアカウントの確認を」といったものだ。ポイントに興味がある人なら、思わず目を止めてしまいそうだ。メール内のリンクをクリックさせ、IDやパスワードを入力させる手口だろう。脅しはスルー出来ても、ポイントをプレゼントと聞くと、まさか詐欺メールだとは考えない。そういうキャンペーンが世の中にごっそりあふれているからだ。

北風と太陽の逸話ではないが、脅しを続けても、相手は思うような行動を起こさないこともある。それよりも、これはあなたが得する話ですよ、と言われれば振り向いてしまう。ポイ活が浸透し、より効率的にポイントを稼ぎたいと考える人が多くなっているからこそ、この手口が増えているのだろう。

これがフィッシングメールではなく正規のキャンペーン企画であっても、応募のために自分のアカウントや情報を提供している点は変わりない。何かを得るためには、何らかの対価を払っていることは忘れずにいたい。うまい話はどこにもないということに。

■脅しメールはタイムセールと構造が似ている

年末年始はバーゲンセールの季節だが、こんな経験はないだろうか。外出先で処分セールをやっていた。特に買いたい物もないので通り過ぎようとしたら、「今日が最終日」とある。今日限りと聞くと、急に気が変わり、何か安く買えればいいなと考えてしまう。ネットのセールも同じこと。「いよいよ今日が最終」という通知が来たとたん、さほど興味がなかったその通販サイトを開いてしまうものだ。

以前に取材をしたときに聞いた話だが、安売り期間を短くするほど、わっと人が集まるという。1週間のセール期間より本日限り、24時間よりも今から30分だけのタイムセールですと言われた方が、客の購買意欲が盛り上がる。いつでも安く買えるなら今度でもいいかと気に留めないが、安いのは今日限りですと聞くと、じゃあ何か買わないと損じゃないかと慌ててしまう。

スーパーのチラシ
写真=iStock.com/laymul
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/laymul

不正メールもやはりそのような心理を利用している。「●日以上は延滞金がかかります」「至急ログインして確認してください」「24時間以内にご確認がない場合はアカウントの利用制限をさせていただきます」というように、急き立てるような文言ばかりだ。焦ると人間は深く考えられずに行動してしまうもの。時間を短く区切られて、そこで決めろと言われると、正しい判断を下すのが難しい。

詐欺はもってのほかだが、「今から30分以内なら5000円引きです」とか、「今日中に決めると半額になります」「この電話で契約していただければ特別料金を適用できますよ」という「今だけ」セールストークには惑わされないことだ。それはあなたではなく、相手側が得するだけだ。慌てて決断することの危険を覚えておこう。

■「ポイント経済圏」でカードを増やしすぎるのは危ない

このようにして詐欺を仕掛ける側は「お金を失いたくない」という心理を利用する。我々は自分の財産を守ろうとして、セキュリティ対策を固めようとするのは当然だ。そこに届くのが、こんなメール。「カードの不正利用を防ぐために3Dセキュア認証の手続きをお願いします」「長期間変更されていないパスワードを変更してください」「不正防止のためお客さま情報等の確認をお願いします」。

実際に、このようなメールは正規のカード会社や銀行からも届くので厄介だが、これもフィッシングで使われている手口だ。不正メールからリンクをたどってログインしてしまうと、もはや相手の思うつぼ。正規サイトそっくりの画面に誘導されてしまう。

フィッシング対策協議会のホームページには、「最近のフィッシングサイトはとても精巧に作られているため、見分けることは非常に困難」との記載があるほどだ。大事なお金を守りたい気持ちがまんまと利用されるとは腹立たしい。面倒でも必ずカード会社や金融機関の公式サイトから開く習慣をつけよう。

フィッシング被害が増えている背景には、コロナ禍をきっかけにネット購入が増えたことや、キャッシュレス決済へのシフトが進んだ影響などがある。もう一つ、気になっているのが「ポイント経済圏」の増加だ。ドコモやau(KDDI)、ソフトバンク系のPayPayなど通信系が力を入れているのはご存じの通り。それも、ポイントそのものというよりも、カードの利用を促す方向に軸が移っている。

■「お得ですよ」と言われても無視がベスト

元祖経済圏の楽天は言わずもがなだが、ドコモのdカード、auPAYカード、PayPayカードなどを作ってもらい、スマホ決済アプリに紐づけることでよりオトクにポイントがたまりますよとアピールを強めている。2024年にリニューアルしたVポイントも、元々は三井住友カードの決済で付与されるポイントだ。

複数の「経済圏」に参加し、お得にポイントをためようとすれば、より多くのカードを持つことにつながる。おまけに銀行のキャッシュカードもデビット一体型カードが多くなり、ますます枚数が増えていく。保有するカードが増えれば増えるほど、そのブランドをかたるフィッシングメールをうっかり開いてしまう危険性も増すだろう。

たくさんのクレジットカード
写真=iStock.com/bernie_photo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/bernie_photo

節約のセオリーでいうなら、カードはメインとサブの数枚に絞ったほうが効率はいい。使っていないカードは解約してしまえば、偽メールが届いてもうっかり惑わされずに済む。不正利用が心配な人は取引通知メールを登録したり、あえて手数料を払って確認しやすい紙の利用明細を受け取るのも対策になるだろう。

残念ながらフィッシングの手口は進化し続け、今後はますますAIが悪用されるに違いない。人間の「絶対に損したくない」という心理をどのようにくすぐれば騙せるのか、着々とAIが学んでいると思うと気が抜けない。筆者はこれまで様々なメディアを通じ、消費者がお金を損しないために、「オトクですよ」という文言を見たら警戒しましょうと伝えてきたが、メールも同じ。本物であれ偽物であれ、無視したほうが身のためだ。

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松崎 のり子(まつざき・のりこ)
消費経済ジャーナリスト
『レタスクラブ』『ESSE』など生活情報誌の編集者として20年以上、節約・マネー記事を担当。「貯め上手な人」「貯められない人」の家計とライフスタイルを取材・分析してきた経験から、「消費者にとって有意義で幸せなお金の使い方」をテーマに、各メディアで情報発信を行っている。著書に『定年後でもちゃっかり増えるお金術』『「3足1000円」の靴下を買う人は一生お金が貯まらない 』(以上、講談社)ほか。

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(消費経済ジャーナリスト 松崎 のり子)

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