小5のときもらった万年筆を使い続けている…聖心女子学院校長「手紙の字が母に似ていて、くすぐったかった」
プレジデントオンライン / 2024年12月17日 10時15分
※本稿は、『プレジデントFamily2025冬号』の記事の一部を再編集したものです。
■■豊島岡女子学園中学校・高等学校校長 竹鼻志乃先生
本当に欲しいものは自分で選ばせます。愛着が湧くので大切にするのでは
Q:子供に贈ったプレゼントは?
ものではなく手作りケーキを贈っていました。
ケーキの材料を用意して、一緒に作りました。作る過程から、ワクワクと楽しい時間を一緒に過ごせますし、ずっと続けているので、ケーキの出来栄えから成長も感じられます(笑)。
子供がデコレーションを考えて、必要なフルーツを用意し、カットして一緒に飾り付けます。食事の後、子供がケーキを家族の人数分に切り分けて、食べ終わるまで、長い時間を家族で楽しむことができます。
プレゼントは、家族と一緒においしいものを食べて過ごす時間であることが伝わると嬉しいです。
うちの子の誕生日は、スーパーでイチゴが売っていない時期なので、毎年、デパ地下を駆け回っていました。どうしても手に入らなかった年が1回ありましたが、何軒も回ったと伝えたら、逆に感謝されました。
Q:プレゼントを選ぶときに心がけていること、ルールはありますか。
本当に欲しいものは、自分で選ぶのがいいと考えています。自分で選んだものは愛着が湧き、大切にするのではないでしょうか。仮に選択を間違えたなと思った場合でも、次回への学びにつながります。
プレゼントとして欲しいものがあるときには、子供と一緒に購入してきました。子供の大学院進学の際には、腕時計が欲しいということだったので、一緒に買い物に行き、気に入ったものを購入しました。
子供が小さいころには、一緒に選んでいましたが、その過程で、ものを選ぶ基準や価値観など、わが家の教育方針も伝わっていったと思います。
■■聖心女子学院初等科・中等科・高等科校長 大山江理子先生
成長の段階を実感できるものって、印象に残るものですね
私はシスターですので子供はおりません。ここでは、私が子供のころ、父母からもらった贈り物をご紹介します。それは今も大切にしている万年筆です。
小学校5年生か6年生の誕生日か何かのときだったでしょうか。父母が相談して、「そろそろこういうものを使ったら」という意味でくれたのだと思います。私はそのとき、大人扱いしてもらった、これから大人の世界に入っていくんだなと、とても嬉しかったことを覚えています。
母は自分でもよく万年筆で、さらさらと手紙を書いていました。特にお礼状を書くことをとても大切にしていましたね。その姿を見ていましたから、万年筆をもらうことで、私も大人になっていくんだなあと思ったのです。
もらってすぐ、万年筆を使ってみました。最初はなかなかうまく書けませんでしたが、大人のものを使うのが嬉しくて、鉛筆で書けばいいところを万年筆で一生懸命、書いていました。
成長の段階を感じられるプレゼントって、印象に残るものですね。もっと小さいころ、自転車を買ってもらったことも覚えています。三輪車を卒業して、次のステップにいくんだなあと。
大人になってからも、母を見習って、手紙を書くことを大切にしています。
最初は横書きが多かったのですが、母のように、さらさらと縦書きすることに憧れがあって、いつごろからでしょうか、私も縦書きになりました。
ある日、思い立って母に縦書きの手紙を送ったことがあります。母から、「あなたもこういうのが書けるようになったのね」と言われて、温かい気持ちになりました。そのときの文字が、母の字に似ていたことも、ちょっとくすぐったい思いになりました。
■「母の傘寿のお祝いに小さい頃にもらった絵本を贈りました」
私の生涯で、万年筆はこれ1本です。新しいものを欲しいと思ったことはありません。いただいたものはあったかと思いますが、やはりこれが一番しっくりくるのです。名前が入っていたのですが、それはいつの間にか消えてしまって、ボディーに少しひびが入ったので修理しましたが、ペン先はそのまま。長持ちするものですね。
本校でも、手紙を書くことは非常に大切にしています。上級生が下級生に送ることもありますし、下級生が上級生に送ることも。社会科見学などで学校外の人にお世話になったら、必ずお礼状を書きますし、年賀状や暑中見舞いも書いて、お友達や先生方に送っています。
「心のこもった贈り物」と言いますよね。相手のことを考えて贈るのは、どんなものでもすてきですが、相手を思って書く手紙もすてきなプレゼントになるのではないでしょうか。
とはいえ贈り物を選ぶのは、なかなか難しいですね。私も、一生懸命考えます。ただ遊び心を大切にしたいので、通り一遍でないものを贈りたいと心がけています。
母の傘寿(八〇歳)には、“傘”にかけて『あまがさ』(やしまたろう作)という絵本を贈りました。この絵本は、私が子供のころに母が買ってくれたもので、その不思議な雰囲気の絵柄に引かれて、大人になってからもずっと心の中にあったのです。私が小さいときにもらって嬉しかったので、今度は母に差し上げますって言ったら、こんなのあげたかしらねって。でも、とても喜んでいました。
こうして贈り物について考えてみると、教育こそ、子供の未来への贈り物だと感じます。
今は時代の変化が速くて、小学校に入学してから高校を卒業するまでの12年間でも、世の中が大きく変わってしまうほどのスピードです。想像もつかない未来に向けて、大事なことは、どのような世界になっても通用する基本的な人間としての生きる力です。子供たちが生きる力を育むために、大人たちは何を与えるか、どんなメッセージを伝えるか、しっかり考えていかなければいけないでしょうね。
(プレジデントFamily編集部)
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