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このままでは「第2の大谷翔平」は現れない…欧州移住でわかった「自己肯定感の低い日本人」が量産されるワケ

プレジデントオンライン / 2025年1月10日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kool99

なぜ生きづらさを感じてしまうのか。『自分に嫌われない生き方』(KADOKAWA)を書いた谷口たかひささんは「日本は『義務』を教えがちで、自分を縛り付けることにつながっている。ヨーロッパのように“やっていい”という考え方が大事だ」という――。(第1回)

■日本は「義務」を教えるが、「権利」は教えない

私は環境活動家として100カ国以上を訪ねているのですが、ヨーロッパのある教育機関を訪問したときに、「日本では、義務は教えるが、権利は教えない」と教えてもらいました。初めてこの言葉を聞いたとき、雷に打たれたような気持ちになりました。

それまでに自分が感じていた疑問のほとんどが、この言葉に集約されている気さえしました。今でも、自分の人生で聞いた言葉の中で、自分に影響を与えた言葉ベスト5に入っています。

①「やらないといけないこと」
②「やってはいけないこと」

日本では、物心ついてからというもの、家庭でも、学校でも、社会でも、この2つ(①あーしなさい! ②あれはダメ!)ばかりを人から言われ続けるといいます。

そうすると、その人の脳は「義務脳」という頭の半分が「やらないといけないこと」で、残りの半分も「やってはいけないこと」でいっぱいいっぱいになり、とても生きづらくなるそうです。いわば、「減点方式」。

こども家庭庁の「国別の自己肯定感」によれば、日本の自己肯定感は、諸外国に比べて低いという調査結果が出ていますが、これが大きな要因であることは間違いないかと。

一方でヨーロッパは、「権利」、「やっていい(やらなくてもいい)」ということをとても大切にするといいます。あなたの人生はあなたのものです。義務を果たすために生きているロボットではないのだから。いわば、「加点方式」。

■自分は「やりたい」のか、「やりたくない」のか

日本には、「義務」で自分のことを縛りつけて生きていく人がとても多いように思えます。

そうではなくて、自分の「自由」と「権利」を尊重し、他の人ともお互いの「自由」と「権利」を尊重し合い、ありたい自分であろうとすることが大切かと。そんな人が自分から増えていったときに、自分も周りもとても明るく楽しくなると思います。

【図表1】「義務脳」と「権利脳」
『自分に嫌われない生き方』より

また何かに取り組むときも、「やらないといけない」と自分に言い聞かせ、義務で取り組む人がいます。私は、これはしないようにしています。必ず、しんどくなるから。

それに極論、「しなくてもいい」と思っています。自分にムリヤリにでも何かをさせることができるのは究極、自分自身以外にはいません。だから誰に何と言われようとも、「やらない」という選択肢はいつでも残されているのです。

それよりも大切なのは、自分は「やりたい」のか、「やりたくない」のか──。

私は社会問題と呼ばれるものに取り組み続けていますが、「やらないといけない」と思ってやっているわけではありません。自分が「やりたい」からやっているのです。他の誰でもなく、「あくまで自分で選んだ道である」ということを、自分で潔く認めることが大切だと思うのです。

■“自分で選んだ”と認められる人は成長できる

そういう意味でいうと、自分の仕事やパートナーのことも絶対に悪く言わないと固く心に決めています。仕事もパートナーも、「選んだ」のはまぎれもなく自分自身。

それ以外にも、自分が今いる場所は、これまでの自分が行ってきた選択の結果。それらを悪く言うことは、自分自身の選択を否定していることになると思うからです。それはあまりカッコいいことだとは思いません。

それに、自分が選んだと認めると、他にも良いことがあります。生きていれば、良いときも良くないときもあります。良くないとき、自分で選んだと認められない人は、人のせいにしがちです。それは結局、自分も周りもキズつけていきます。

しかし、自分で選んだと認めている人は、スッキリしていて立ち直るのも早い上、成長に繋げることができるのです。「自分が選んだ道だから」「自分がやりたくてやっていることなのだから」というふうに。

問題に取り組む「義務」があるのではなく、問題に取り組む「権利」がある。もし「権利」がなければ、問題を知っても、取り組むことさえできないわけです。これほどツラいこともないと思います。だけど「権利」があるから、取り組むことができます。

何事にもできるだけ、「やらないといけない(人にやらされている)」ではなく、「やりたい(自分で選んだ)」で取り組む。そう考えられると、とても素敵だと思います。それは未来を自分が望む方向に近づけていい、ということですから。好きに生きていい。あなたにはその「自由」と「権利」があります。人は「自由」と「権利」さえあれば、幸せになる力を持っています。

ハッピーな男性
写真=iStock.com/RyanKing999
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/RyanKing999

■「感情」「可能性」にフタをしないほうがいい

「ノミの話」というものがあります。ノミは地球上で最も高く跳べる生き物(体長比)。しかし、コップに閉じ込めてフタを閉めると、フタで頭をぶつけてしまいます。問題は、その後、フタを取ってコップから出ても、そのコップに入る前とは違い、フタを閉められていた高さまでしか跳ばなくなることです。

①あーしなさい! こーしなさい!(コップ)
②あれはダメ! これはダメ!(フタ)

この2つで縛り続けられた結果、起きる「義務脳」がまさに跳べなくなってしまった状態です。自分の感情にも可能性にも見えないフタをして生きるようになります。

あなたが「できるわけがない」「やってはいけない」と決めつけてしまう理由は、そういった呪いの言葉や嘲笑によって、フタをされてきたからかもしれません。「義務」だけを教わり続け、「自由」と「権利」について教わってこなかったからかもしれません。

良いニュースとしては、この「ノミの話」には続きがあります。フタを閉められた高さまでしか跳ばなくなったノミでも、のびのびと跳んでいるノミと一緒にいるようになれば、「あれでいいんだ」と、また自分自身も再び跳ぶようになるのです。

■“自分を信じて挑戦し続けている人”と過ごす

もしもあなたが、自分は跳べないと感じていて、それでも跳びたいと思っているなら、のびのびと跳んでいる人を見つけて、その人と時間を過ごすようにしましょう。

そこで大切なのは、嫉妬ではなく、尊敬の気持ちを持ちましょう。嫉妬は相手を自分の低さに下げ、尊敬は自分を相手の高さに上げようとすることですから。反対に呪いの言葉をかけてきたり、あなたの夢を笑ったり、その人都合の義務を押し付けてくる人からは、距離を置くようにしましょう。

自分を信じて挑戦し続けている人と時間を過ごすようにしましょう。そして、あなただけでもあなたのことを信じてあげましょう。あなたができない唯一の理由は、あなたができないと決めつけていることなのだから。

アメリカのメジャーリーグでプレイする日本人、大谷翔平選手。投手としても打者としても大活躍するという、マンガでしかありえなかったようなことを体現している人ですが、その大谷翔平選手の高校時代からの「座右の銘」は、「先入観は可能を不可能にする」です。

2024年9月19日、マーリンズ戦の7回に50号2ランを放ったドジャース・大谷
写真提供=共同通信社
2024年9月19日、マーリンズ戦の7回に50号2ランを放ったドジャース・大谷。「50本塁打、50盗塁」を達成した=マイアミ(共同) - 写真提供=共同通信社

■自己肯定感が低いまま生きるのは「健康に害」

子育てや学校教育において、最も重要視されるべきものの1つが、「自己肯定感(自尊感情)」でしょう。この言葉は「自分で決めることができて、自分のその決定を自分で尊重できること」と定義されています。

先にも書いた通り、日本人は諸外国に比べてこの自己肯定感が低いという調査結果が出ています。日本では「流行り」のように扱われることもあるこの「自己肯定感」ですが、他の国では盤石な地位を築いています。

例えば、イギリスがその国家予算の多くを投じる「NHS(国民保健サービス)」の公式ホームページにはこうあります。

“もしあなたの自己肯定感が低ければ、あなたは人付き合いを避けるようになり、新しいことや難しそうなことに、チャレンジすることをやめるようになります。それは短期的には安全を感じられるかもしれませんが、長期的には逆のことが起こり、あなたの心の奥底にある疑いの心や、恐怖を増幅していくのです。低い自己肯定感のまま生きることは、あなたのメンタルヘルス(精神的な健康)に害であり、不安やうつ等に繋がりえます。”

国家予算の多くが使われているイギリスの国民保健サービスが、低い自己肯定感のまま生きることは健康に害であると、だから高めようと推奨しているわけです。

■「自己肯定感を高めること」に注力したほうがいい

以前講演に呼んでもらった中学校では、校長先生が自己肯定感を何よりも大切に考えているとおっしゃっていました。実際にその学校の子どもたちは、とても生き生きとしていて嬉しくなりました。全国を周っていると、そんな学校も増えてきているように感じます。

私はよく、自分の身に起きること=天候に、自己肯定感=家にたとえます。雨が降ろうが風が吹こうが、雷が落ちようが地震が起きようが、家が頑丈であれば平気なわけです。反対に、家がボロボロであれば、少し悪天候になっただけでひとたまりもありません。有名な絵本『三匹のこぶた』もそうでしたね。

谷口たかひさ『自分に嫌われない生き方』(KADOKAWA)
谷口たかひさ『自分に嫌われない生き方』(KADOKAWA)

多くの人はこの「天候」のほうを、悪くならないように願ったり、コントロールしようとしたりするんですが、そんなことは不可能です。自分の人生に何が起きるかをコントロールできないように。お願いなんて、てるてる坊主ぐらいの効き目しかありません。生きていれば、天候が良い日もあれば悪い日もあるのはあたりまえのことです。

ただ、天候を操ることは不可能でも、家を頑丈にすることは可能なんですね。自分がコントロールできないものに注ぐ時間とエネルギーがあるなら、自分がコントロールできるものにひたすら注ぎましょう。

頑丈な家は、ローマと同じように一日にして成るものではありませんが、地道に取り組めば必ずつくれるものです。一生モノの、ビクともしない家をつくりましょう。自分だけではなく、自分の大切な人も招き入れて守ってあげられるような、強くてあたたかい家(=自己肯定感)を。

参考文献
・「令和5年度 我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査」
・「National Health Service(国民保健サービス)」

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谷口 たかひさ(たにぐち・たかひさ)
環境活動家・実業家・作家
1988年大阪生まれ。10代で起業し、イギリスへ留学。卒業後、アフリカのギニアで学校設立に携わり、メガバンク/M&A/メディアのコンサルタント、グローバルIT企業の取締役を経験した後、ドイツへ移住し、起業。2019年、ドイツで気候危機の深刻さを目の当たりにし、現在も気候危機に関する講演を続けている。

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(環境活動家・実業家・作家 谷口 たかひさ)

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