「悠仁さまの筑波大入学は良い選択」東大卒の社会学者が「東大にしなくて本当によかった」と言う納得の理由
プレジデントオンライン / 2024年12月17日 7時15分
■筑波大学進学は「良い選択」
悠仁さまが、学校推薦型入試で筑波大学に合格されたという。東京大学に進学されるのではないかという声が大きかっただけに、意外に思われた方も多かったのではないだろうか。
個人的には良い選択をされたと感じた。もしもあのまま国民の批判の声を無視して東大への進学を選ばれていたならば、秋篠宮家への批判が制御できないほどに大きくなっただろう。制度的にはなにも「ずる」などしていないにもかかわらず、「裏口入学」とまでいう批判があったのだ。そのため、さすがに東大進学を推し進めるのは、厳しいのではないかと感じていた。
また筑波大学も、ほぼ面接だけで合否が決まる、アドミッション入試を利用するのかと思っていたが、学校推薦型選抜で入られたようだ。アドミッション入試については「悠仁さまのために作られたのではないか」と勘繰る声もあっただけに、この入試方法を使わなかったのは批判を抑えるためにもよかったのではないか。何年にもわたる悠仁さまの進学をめぐる騒動が、ひと段落したようで心の底からほっとしている。
■東大進学のメリットはなかった
以前も「悠仁さまは東大を受けさえすれば合格する」そう断言する東大出身の教授が語る東大入学の見過ごせないリスク(2024年8月30日公開)と題する記事で書いた通り、そもそも国民の批判の声があがるなか、悠仁さまが東大に進学するメリットはあまりない。
NHKや政府系機関などのように、東大生を多く採用する企業への就職を希望していたり、弁護士や官僚などのように東大出身者が多く、卒業後の同窓生ネットワークが活きる職業に就いたりするのであれば、多少のメリットはあるかもしれないが、悠仁さまにはその必要がない。
しかも、学生数が多く、教授陣は教育というよりは、自分の研究に没頭するタイプの人が多い大学である。悠仁さまに手厚い配慮をすることは、それこそ「特別扱い」になるため、難しいだろう。また、将来官僚や財界で活躍する人材との交友関係は、政治にはかかわるべきではない天皇には、プラスよりは、マイナスに働きかねない。さまざまなことを鑑みて、悠仁さまが東大に行く必要はないのではないかと思っていた。
■「皇位継承は人気投票ではない」という主張
悠仁さまは、皇族の数そのものが減少し、とくに男性による皇位継承が困難になってきているために皇室典範の改正論議が起こるなかで誕生された。それは、ご自身の責任ではまったくない。これほどまでに大きな期待や重圧を背負わされて誕生された男児は、これまでいらっしゃらなかっただろう。
また、将来の天皇にふさわしいのは誰かという問題が、潜在的にくすぶっている。そうしたなかでの「東大騒動」は、悠仁さまには荷が重かったのではないか。
これまで「愛子さまを天皇に」という声に対し、保守派は「神武天皇のY染色体を継承しているのは、悠仁さまなのだ」と答えてきたが、最近はさすがにこうした発言はほとんど耳にしない。代わりに言われているのが「皇位継承は人気投票ではない」という主張である。すでに「愛子さまのほうが人気がある」ということが前提とされているあたりに、保守派の苦悩が見える。国民の9割が女性の天皇を支持しているとなれば、なかなか状況は複雑である。
■国民は愛子さまの成長を見守ってきた
しかし振り返ってみれば、愛子さまはずっと称賛されてきたわけではない。むしろ成人されるまでは、批判されるほうがはるかに多かった。
小さな頃は「笑わない愛子さま」といわれ、挨拶をモットーとする秋篠宮家に皇統を移すべきだと言われていた。雅子さまと一緒に皇室を出て行けとまでいわれていたのだ。静養先のオランダではじけるような笑顔を見せられていたら、「国内ではだんまりなのに、海外では笑うのか」と叩かれた。心無い批判に対し、宮内庁としては、絵本を読んだりお遊戯をしたりする愛子さまの動画を公開せざるを得なくなった。すると今度は、「絵本をスラスラ読んで暗記しているなんて、できすぎていておかしい」と叩かれた。大好きな相撲観戦にいけば、鼻をいじっている写真を週刊誌に掲載された。思春期には、激やせされたこともあった。
こうしたさまざまな批判のなかでも、愛子さまの姿はずっと私たちに届けられてきた。私たちがいま愛子さまを見て思うのは、「こんなに大きくなられて」という、まるで、成長した親戚の子どもを見るかのような思いだ。あれほど寡黙だった愛子さまが、しっかりと自分の言葉で喋り、笑顔を見せていらっしゃる。「だんだんお母さまの雅子さまに似てきて、美しくなられてきた」などの感想は、長い間、愛子さまの姿を拝見させていただいてきたからこその感慨なのである。
■私たちは悠仁さまの等身大の姿を見たい
それに対して私たちは、悠仁さまの姿にはそれほど慣れ親しんでいない。作文で受賞された、通訳なしで英語で外国のお客さまと歓談された、筆頭著者として論文を書かれて国際学会に参加された、など、悠仁さまについて漏れ伝わる情報は、恐れ多いものばかりだ。公開される夏休みの宿題なども、非常によくできたものばかりであった。
ただ、その一方で、作文の剽窃騒動があったり、「英語が苦手なため、教科書レベルの質問にも固まってしまうことがある」などの報道がなされたりすると、いったい何が真実なのか、混乱してしまうのである。
しかし、外国の客人を英語でもてなすことができるような高校生が、いったい日本に何人いるのだろうか。そんな超人的な素晴らしさを、悠仁さまに求めている国民が何人いるだろう。むしろ国民としては、等身大の悠仁さまの若者らしい姿を拝見したいのだ。
幼い頃、幼稚園に行き渋り泣く悠仁さまを、紀子さまが手話で励まされ、親指を立てて応えられた様子を伝える写真などは、非常に可愛らしかった。紀子さまがお怒りになり、その後報道規制がなされたとのことであるが、残念なことである。
無礼であるかもしれないが、むしろ悠仁さまの「できる」姿よりも、「できない」様子も含めた、子どもらしい等身大の姿を見せてきていただきたかった。私たちは皇室に、素晴らしさや偏差値の高さを求めているのではない。
悠仁さまが大学生活を謳歌されることを期待したい。
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武蔵大学社会学部教授
1968年生まれ。東京大学文学部社会学科卒業。東京外国語大学外国語学部准教授、コロンビア大学の客員研究員などを経て、武蔵大学社会学部教授。専門は現代社会学。家族、ジェンダー、セクシュアリティ、格差、サブカルチャーなど対象は多岐にわたる。著作は『日本型近代家族―どこから来てどこへ行くのか』、『女性学/男性学』、共著に『ジェンダー論をつかむ』など多数。ヤフー個人
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(武蔵大学社会学部教授 千田 有紀)
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