どの銘柄にするか悩む必要はない…ウォーレン・バフェット(94)が投資を始めた11歳の自分に伝えたいこと
プレジデントオンライン / 2025年1月2日 10時15分
■ヘッジファンドVS.インデックス・ファンド
もしあなたが個別銘柄を調べる時間も専門性も持っていないのであれば、資金の90%をS&P500種指数を追跡する低コストのインデックス・ファンドに、10%を短期債券ファンドに投資すべきだ。投資業界で働いていなければ、株価指数を上回るパフォーマンスを上げることはできないはずだからだ。
2017年株主総会で、バフェットは、ニューヨークのヘッジファンド、プロテジェ・パートナーズとの間で2006年に行った100万ドルの賭けについて語った。プロテジェ・パートナーズの面々はその後10年間で5本のヘッジファンド(実際にはファンド・オブ・ヘッジファンズ)の累積リターンがS&P500種指数を上回るほうに賭けた。バフェットはS&P500に賭けた。
■勝ったのはインデックス・ファンド
さて、10年たって結果はどうだったか。
S&P500種指数は125.8%上昇したのに対し、ヘッジファンドの上昇率は36%だった。株主総会の参加者はこの結果を聞いて大爆笑となり、バフェットは株主宛書簡で勝利を宣言した。
「このインデックス・ファンドの今日までの複利リターンは年率7.1%でした。これは株式市場の長期リターンとしては典型的な水準と言ってよいでしょう。……これに対し、5本のヘッジファンドの2016年までの平均はわずか2.2%。年複利リターンです。つまり、ヘッジファンドに100万ドルを投資していれば10年で22万ドルの利益になっていたのに対し、インデックス・ファンドでは85万4000ドルの利益が得られていたはずなのです」
■なぜプロに任せると損をするのか
このエピソードを通して、バフェットは、他人の資金をアクティブに運用しているヘッジファンドの投資マネジャーから得られる利益はほとんどないという、長らく信奉してきた考え方を強調した。
これは、ヘッジファンドをはじめとする投資マネジャーは通常、「2%/20%」に基づく手数料を投資家に課す、つまり毎年2%の管理手数料と利益の20%を取るという仕組みだ。
もし、バークシャー・ハサウェイが同じ手数料体系で資金を運用したら、現在の投資管理会社であるトッド・コームズとテッド・ウェスチャーは、「ただ、息をしているだけでどちらも毎年1億8000万ドルずつを得ることになるのです」とバフェットは指摘した。要するに、バフェットは、いわゆる「パッシブ投資」(インデックス投資)がアクティブ投資と同じか、それ以上のパフォーマンスを上げられると考えている。
バフェットは、バークシャー・ハサウェイのような機関投資家は投資先候補を絞り、「スカトルバット手法」(※1 編集部注)を通じて投資先企業の財務数値と文化をどちらも知ることに時間をかけるべきだが、個人投資家は、資金を分散して「アメリカの代表的な企業群」、つまりインデックス・ファンドを買うべきだと考えている。
※1 投資する企業を判断する際に、財務諸表だけでなく、消費者や競合他社、コンサルタント、経営者、以前の従業員や取引先などから定性的な情報(数字で表せない情報)も集める手法。
■買ったら株式のことは一切考えない
バフェットは次のように説明した。
1942年3月11日、私が最初の株式を購入した日に皆さんができたはずの最善のことは、インデックス・ファンドを何か買って、それ以降決して新聞の見出しに目を向けず、株式のことを一切考えないことでした。
まさに皆さんが農場を購入した時にすることと全く同じです。皆さんはただ農場を買って、小作農家にそれを運営させればよいのです。そして、私は指摘しました。「1万ドルをインデックス・ファンドに投資して配当金を再投資しておけば……」とそこまで言って一呼吸置き、私がいくらと言うかと聴衆に考えさせてから付け加えたのです。「今なら5100万ドルになっているはずなのです」と。
当時、信じなければならないただ一つのことは、アメリカが戦争に勝つこと、そしてアメリカが1776年以来ずっとそうであったのと同じように今後も進歩を続けること、そしてアメリカが前進し続けるのであれば、アメリカ企業も進歩を続けるだろう、ということでした。つまり、どの銘柄をあなたが購入するかなんて悩む必要がなかったし、何を売り買いするか、そして連邦準備制度理事会(FRB)が存在し続けるか、どうなるかなどに心を迷わせる必要がなかったのです。そう、アメリカはうまく機能しているのです。
■アメリカは「金の卵を産むガチョウ」
この「アメリカはうまく機能している」という信念がバフェットの態度を導いている。
バフェットは、「裕福な家族」が自分たちの子どもの面倒を見るのと同じように、「まっとうな市民で、市場でのスキルなど持っていない」人の面倒を見る社会プログラムを導入する必要があると言ってきた。しかしそのようなプログラムは、「金の卵を産むガチョウ」、言い換えれば、アメリカの市場経済を損なわないように実施されなければならない、と。
さらに「私は金の卵を産むガチョウに迷惑をかけるようなことはしたくありません。そして、信じられないことに、この国ではガチョウが金の卵を次々と産んでいるのです。私たちは、この市場システムの中で、人々が必要とする多くの財やサービスを提供する企業を生み出しているわけです」。
バフェットはまた、2009年に私の学生たちとのインタビューでも話したように、「世界はゼロサムゲームではない」こと、そしてアメリカ経済は、中国を含む諸外国の経済の改善によっても伸びていくのだと信じている。「(その結果)アメリカの生活水準は20世紀の間に7倍になったのです」と。バフェットによると、アメリカ経済への投資は今後もずっと利益を出し続けるのだ。
■市況が悪化しても動揺してはいけない
バリュー投資(※2 編集部注)で成功するには、企業または銘柄の実際の価値を知る必要がある。その上でいったん投資したらそのままいつまでも保有し、売買しないことだ。「どのタイミングでバットを振るのが正しいか」を知っておくべきだ。1年に1度だけ正しいタイミングで振ればよいのである。
バフェットの試算によると、個人投資家は、S&P500指数にさえまず勝てない投資マネジャーを雇った結果、この10年で1000億ドル以上を失ってきた。2016年に、大型株に投資するアクティブ型ファンドのうちラッセル1000指数に勝ったのはわずか19%だったと報じられた。ラッセル1000指数とは、アメリカの株式市場で時価総額の大きい上位約1000社を追跡する指数のことで、アメリカ合衆国の全上場銘柄の時価総額のおよそ90%を占める。
ここで非常に重要な点を指摘しておこう。株式市場は、長期的には上昇する傾向がある、ということだ。したがって、個別銘柄の日々の価格変動を追ってはならないし、経済全般について気をもんでもいけない。株式市場は、100年ごとに悪い年が15回やってくる。ある日、ある週、あるいは今から1年後に何が起きるのかなんて誰も予測できないのである。
※2 企業の利益や資産に対して株価が割安な銘柄に投資する方法。
■投資家として成功したいなら読書は必須
バフェットもマンガー(※3 編集部注)も熱心な読書家だ。
その理由は二人とも知的好奇心が強く、多くのさまざまな分野についてたくさん学ぶことをただただ楽しんでいることに加え、読書がビジネスにも有益だからだ。投資家として成功するためには、バフェットは1日当たり500ページ以上読むよう助言しており、1日の80%を喜んで読書に費やすと言う。マンガーも、多岐にわたって読書することの重要性を強調する。
読書をせずに賢くなった人なんて聞いたこともありません。しかし、ただ読むだけでは不十分です。さまざまなアイデアを把握し、理にかなった行動をする気質を持つ必要があります。たいていの人は正しいアイデアをつかめないか、それらをどう扱えばよいかわからないのです。
実業界の多くの人たちよりも、ウォーレンと私は読書と思考に多くの時間を費やしており、あまり行動を起こさないほうです。私たちはこのような生活が好きなのです。個性的かもしれませんが、自分たちの癖をうまく活用しているわけです。私たちは二人ともただ座って考えることのためにほぼ毎日の大半を過ごそうと決めています。これはアメリカの実業界では非常に珍しいことでしょう。ただ読んで考えているだけなのですから。
※3 チャールズ・トーマス・マンガー(1924~2023) バフェットが率いる投資持株会社、バークシャー・ハサウェイの元副会長。
■投資家に求められる資質
忍耐はバークシャー・ハサウェイの投資哲学で極めて重要な役割を果たす。バフェットとマンガーは、投資が高リターンを生むのを何年も待つことが多い。
また、IQ(知能指数)が高いからといって、どんな分野でも成功するとは限らない。モチベーション、リーダーシップ、粘り強さ、コミュニケーションスキル、実生活での経験や判断力など、成功に影響を及ぼす要素は他にもいくらでもある。バフェットはこう指摘する。「IQが125を超えると、投資における成功とIQは相関しません。通常の知能があれば、必要なのは投資で失敗するような行動がついしたくなる、誰でも陥りやすい衝動を抑える気質です」
成功を持続させるには、投資家は一定の気質を養う必要がある。マンガーは情熱的な好奇心と、トレンドや決断の背後にある理由を探る精神力を鍛錬する必要を強調した。一定の気質がないと、どんなに聡明な人でも失敗するのが必然であると言うのである。
■周りに流されず独力で判断する
バフェットがグレアムから学んだ最も有益な教訓の一つは、独立して考えること、つまり大衆を追いかけるのではなく事実と推論に基づき、独力で判断して投資することの重要性だった。
マンガーとバフェットは、優れたリターンを得るための最も信頼できる方法は、投資対象が割安(「大安売り」状態)の時に買うことだとよく指摘する。割安銘柄は、その定義から言って不人気でもある(もっとも、すべての不人気銘柄が割安というわけではない)。
これに対して、盲目的な追従者(レミング)とは、他の人たち全員がすることを、他の人たち全員がしている時にしがちな投資家のことだ。この種の投資は、価格が高騰している時や「バブル」に引き寄せられる時に投資をすることを意味する。
バフェットはこれを、ハンバーガーを買う時に例えている。ハンバーガーが通常の価格より20%安かったらあなたは買うだろうか? もちろん、買うだろう。株式の場合には、価格が割高のときになぜ買いたいと思うのか? 盲目的な追従者タイプの投資家は、いわゆる「群衆バイアス」と呼ばれる心理的な罠に陥る。これについては次稿で論じる。マンガーとバフェットは逆張り方針によって成果の出る銘柄を探そうとしている。
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米ゴンザガ大学教授。ネブラスカ大学リンカーン校卒業、同大学院修了。専門は起業家精神で、ウォーレン・バフェットの研究で知られる。投資家として39年以上の経験を持ち、講演家、コンサルタントとしても活躍中。
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(米ゴンザガ大学教授 トッド・A・フィンクル)
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