Amazon、楽天で中国製の「違法チャイルドシート」が販売中…国交省が危険視する「未認証商品」を買ってみた結果
プレジデントオンライン / 2024年12月23日 18時15分
■通報しても再び販売されるいたちごっこ
日本は2000年4月1日から5歳以下の子どもを自動車に乗せる際にチャイルドシート使用を義務化した。そして2012年7月よりチャイルドシートとして販売や使用が許可される製品は国連の安全基準【UN/ECE】に適合し、Eマーク認証を受けていることが必須となっている。
しかし、Amazonをはじめ楽天やYahoo!などの大手通販サイトではこれまで数々の「未認証」チャイルドシートが販売されてきた。
筆者は安全基準に適合していない製品を各社に通報し、その都度販売が取り下げられた製品も多々あるが、結局、数カ月たつと再び販売される現状がある。サイトに通報→販売中止(リコール返金)→ほとぼりが冷めた頃に再び販売……6~7年間、この繰り返しだ。
■衝突試験を行った国交省が動画で注意喚起
今年4月にも楽天市場の複数のショップで布製ジュニアシートが販売されておりSNSやメディアで騒いだ結果、一時的に姿を消した。しかし今また、何事もなかったように同じ中国製の布製ジュニアシートが楽天を中心に数多くのサイトで販売されている。
これら未認証の布製ジュニアシートについては2017年、国土交通省が実際に7製品を購入して交通安全環境研究所での衝突試験などを経て検証しその危険性を動画にして啓発している。
その動画では「固定金具は壊れ、布は破れ、ダミー人形は放り出された。ジュニアシート自体は破損せずとも衝撃によって子どもの腹部を強く圧迫し、命に関わる危険な状態を引き起こす」と注意喚起している。
同様の布製ジュニアシートは海外でも大きな問題となっており、イギリスの消費者団体はこれらを「殺人チャイルドシート」と称して購入や使用をやめるよう啓発している。
■中国企業の偽造商品がAmazonで販売中
このような未認証チャイルドシートはかつてYahoo!ショッピングでも販売されていたが、パトロールを強化しているようで現在、Yahoo!での販売は認められなかった。
以下は現在、楽天市場で販売されている安全基準不適合の危険な布製ジュニアシートである。絶対に買ってはいけない。
取材を進めていくうちにAmazonでとんでもない製品が販売されていることが分かった。簡単に言うと、偽造した「Eマーク」を付けた2製品である。
実際にAmazonで販売されているGoodasstブランドの2製品
①ベスト調整式ジュニアシート
②補助ベルト
を購入して検証した。
① ベルト調整式ジュニアシート
車両シートベルト(肩ベルト)の長さ(高さ)を子どもの体に合わせて短くして使用する方式は、メテオAPAC社のスマートキッズベルトがおなじみだが、こちらはチャイルドシートの国連欧州基準「ECE R44/04」の認証を得ている。
ただしR44製品は2023年8月末で生産も出荷も終了している旧基準であり、在庫限りの販売である。新基準は「R129」だ。
■安全基準を満たしていないのに「合格」
現在もAmazonで販売されているGoodasstというブランドは、商品説明に「ECE R44/04の衝突テストに合格」と書いている。
これに関して中国の製造元に確認したところ、テストレポートが送られてきた。そこには、「ECE R44/04の衝突試験を実施して要件は満たしているが、認証は与えられなかった」と記されていた。テストレポートの重要部分は以下。
「アイテム1」のECE R44/04の結果(Conclusion)については何も書かれていない。「アイテム2」の結果は「PASS」(合格)とあるが、この「EN71-Part3」は正式名称を“Safety of toys - Migration of certain elements”(玩具の安全性――特定元素の移行)といい、検査対象の玩具製品中に重金属類17元素(19項目)が、接触や誤飲により健康影響を与えるレベルで含まれているか否かを調べる溶出試験である。チャイルドシートの安全基準であるECE R44/04とは何の関係もない。
■Eマークは他社商品から勝手に流用?
この衝突試験を実施した検査機関にも確認したところ、以下のメールが送られてきた。
「R44の要件を満たしているがEマークは与えられていない」と書かれている。
しかし、R44のテストは衝突試験だけではない。検査機関「Eqo Testing and Certification Co., Ltd.(亿科检测认证有限公司)」はまともな機関のようだが、R44のその他の試験(衝突試験以外の構造要件に関する試験など)については行っていないのでEマークが与えられることはまずありえない。
Eマークタグに記載されているE20は「ポーランドで認証試験を行い、認証を取得した」という意味。そして、「44R-04 4013」は認可番号であるが、これは、メテオAPAC社のスマートキッズベルトと同じ番号である。つまりスマートキッズベルトのEマークを勝手に流用し、偽造しているとみられる。
■同じブランドの補助ベルトもウソだらけ
② 補助ベルト
筆者がAmazon広報に違法商品であることを通報した後、しばらくは販売が行われていなかったが、なんと12月13日に同製品の販売が再開されていた。
さらに、同じタイプの製品は他ブランドからいくつか販売されている(ECE R44/04適合とは書いていない)。いずれも3歳から使用可能とされているが、もちろんチャイルドシートの代わりに使うことは厳禁である。
購入した補助ベルトを確認してみると、「ECE R44/04」のEマークタグが縫い付けられていたが、こちらも偽造である。写真を見ると、Eマークタグには明らかに他社の商品「SMART KID BELT」とプリントされている。認可番号も①のベルト調整式ジュニアシートと同じ番号「44R-04 4013」となっている。明らかに別の商品である。
■Amazonはなぜ違法商品を野放しにするのか
このGoodasstブランドは、Amazonの商品説明で「日本Amazonでの独占販売権」などと謳い、「孫を守るために購入しました」「補助椅子なしで安心」などという高評価のカスタマーレビューを紹介している。
チャイルドシートは、国交省の道路運送車両法によって規制されており、Amazonや楽天は消費者庁による「製品安全誓約」に署名している。つまり、安全基準を満たさない違法なチャイルドシートを扱わないという署名をしているのだ。
筆者がAmazonにGoodasstの商品について通報すると、最初はすぐに広報担当者から返事が届き、商品が「在庫切れ」と表示されるようになった。ところが後日、販売が再開されたため、Amazon担当者に改めて連絡したのだが、「社内で確認させていただきます」という回答が返ってきただけで、現在もGoodasstの商品は購入できる状態になっている。
■国交省「販売中止を求めたが、今また再開」
これについて国交省物流・自動車局でチャイルドシートを担当する「審査・リコール課」に確認したところ、驚きの回答が返って来た。
「こちらの製品は『安全基準に適合しているのか?』などの情報提供を数多く頂いており、国交省としても今年10月頃から調査をすすめ、AmazonとGoodasstには照会をかけています。Goodasstから送られてきた検査報告書を確認したところ、技術基準は取得していない(=安全基準R44に適合しない)ことがわかりました。Eマークのタグも偽造であることもわかっています。販売中止を求めて一度は、Amazonでの販売がなくなりましたが、今また販売が再開されています。
また、楽天市場で販売されている布製ジュニアシート(=安全基準を満たしていない商品)についても、販売店に照会をかけるとほとんどは取り下げてくれるのですが、結局しばらく経つと販売が再開されていることが多いのです。また、『これは自動車用のチャイルドシートではない』と強硬に突っぱねる販売会社もあります」
いたちごっこであることはわかっていたものの、ここまでひどい対応だとは非常に驚いた。国交省の削除要請も無視して、危険なチャイルドシートの販売をやめないとは……。私たち消費者がこれらの商品を買わないことが最良の選択ということになる。
■子どもの命を危険にさらす危険な商品
チャイルドシートはベビーカーやベビーベッドなどの「育児用品」ではなく国交省が型式指定(Eマーク認証)を行って流通する「自動車部品」である。
以下は当然だが、買ってはいけない製品である。安全基準を満たしておらず、日本での販売や使用が法的に認められていない。
・ECE R44/04、ECE R129のいずれの認証も得ていない
・R44やR129のEマークを偽装している
・3歳&15kgから使用可能と書いてある背もたれなしのジュニアシート(ブースター)やベルト調整式ジュニアシート
※背もたれのないジュニアシートは身長125cm(7~8歳)を超えてからの使用が義務付けられている
■安全なチャイルドシートの見極め方
では、どのようなチャイルドシートを買えばいいのか?
まず、最も重要なことはR44やR129の安全基準に適合しているということである。車種適合表などで自分の車に適合するかを確認し、子どもの体格(身長)に合ったものを選ぶ。
乳幼児兼用タイプなら身長76cmを超えるまでは後ろ向き使用がマスト。身長100cmくらいまでは幼児用を使用する。身長100~150cmまでは学童用を選ぶ。
なお、ECE R44/04は旧基準だが使用は当面、問題はない。ただし、チャイルドシートには5~10年の使用期間が定められているので、あまりに古いものは避けたほうが安全だろう。見た目は問題なくても樹脂部品が劣化している場合もあり、事故の衝撃を受けて子どもの体を守れないこともある。
ジュニアシート(学童用チャイルドシート)は、通販で販売されているものは今回紹介したようなEマーク偽造や安全性が確立されてない製品がかなり多いので、これから買うなら以下の条件を満たしたものをお勧めする。
②身長150cmまで背もたれアリで使える
③シートベルトではなく、ISO-FIX固定タイプ
(ISO-FIX金具が車に装備されていない場合はベルト固定タイプを選ぶ)
年末年始は子どもを乗せて車で移動する機会も増える時期。身長150cmまでは安全性の高いチャイルドシートを使用してわが子をしっかりと守ってほしい。
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自動車生活ジャーナリスト
山口県下関市生まれ。大学時代は神奈川トヨタのディーラーで納車引き取りのバイトに明け暮れ、卒業後は日刊自動車新聞社に入社。95年よりフリー。2000年に自らの妊娠をきっかけに「妊婦のシートベルト着用を推進する会」を立ち上げ、この活動がきっかけで2008年11月「交通の方法に関する教則」(国家公安委員会告示)においてシートベルト教則が改訂された。育児雑誌や自動車メディア、TVのニュース番組などでチャイルドシートに関わる正しい情報を発信し続けている。「クルマで悲しい目にあった人の声を伝えたい」という思いから、盗難・詐欺・横領・交通事故など物騒なテーマの執筆が近年は急増中。現在の愛車は27万km走行、1998年登録のアルファ・ロメオ916スパイダー。
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(自動車生活ジャーナリスト 加藤 久美子)
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