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単語が思い出せず「あれ」「それ」しか出てこない…老化していく脳を元気にする"身近な野菜"

プレジデントオンライン / 2024年12月22日 7時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fcafotodigital

認知症になるリスクを低くする方法はあるのか。「脳トレ」で知られる東北大学教授の川島隆太さんは「複数の研究調査から、脳にとっていい影響を与える食品が分かってきた。とくに、タマネギに含まれるケルセチンは認知機能の維持に役立つだけでなく、鬱々とした気分を前向きにする可能性が指摘されている」という――。

※本稿は、川島隆太『脳を鍛える! 人生は65歳からが面白い』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

■「身体に良い」だけではないチーズ

研究では脳にとっていい影響があるとされた食品がいくつかあります。

食品は薬ではないので、「これを食べていればいい」「これを食べれば認知障害が治る」というものではありませんが、食事で脳へプラスになる働きかけができるのならうれしいですね。こうした食品を取り入れてみるのもいいでしょう。

①チーズ

骨や歯をつくるカルシウムやリン、鉄などが豊富に含まれているチーズ。骨折の原因になる骨粗しょう症を予防するためにも、意識して摂取している方もいらっしゃるかと思います。身体にいいということは多くの人が知っているかもしれませんが、じつは認知症を予防する効果もあるのです。

■定期的にチーズを食べる“すごい効果”

桜美林大学、東京都健康長寿医療センター、明治の共同研究チームが、チーズと認知機能の関連を調べるために、65歳以上の方を対象に調査を行いました(※)。すると、チーズを1週間に1度以上食べている人は、食べていない人よりも認知機能テストのスコアが高い傾向にあることがわかりました。

※Kimら Nutrients 2023

また、チーズを食べている人は歩行速度が早く、ふくらはぎの周囲径が大きいだけでなく、歯の残存本数が多く、血中の善玉コレステロール値が高いといったことも明らかになったのです。

このように、定期的にチーズを食べることで、認知機能の低下が起こりにくくなる上に、身体の状態も良好に維持できる可能性がありますが、チーズのなかでも特におすすめしたいのがカマンベールチーズです。

■カマンベールが認知症リスクを低くする

認知症の原因のひとつと言われているのが、脳の神経を保護したり発達させたりするタンパク質、脳由来神経栄養因子(BDNF)の不足です。脳由来神経栄養因子が不足すると、記憶や学習能力などの認知機能が低下してしまいます。

その脳由来神経栄養因子が、カマンベールチーズを食べることで増えるということが、同研究グループの調査(※)によって判明したのです。

※Suzukiら JAMDA 2019

軽度認知症と診断された70歳以上の人たちに、市販の6ピースプロセスチーズとカマンベールチーズを食べ続けてもらったところ、カマンベールチーズを食べた人たちの脳由来神経栄養因子(BDNF)の血中濃度が6.2%も上昇したのです。

カマンベールチーズ
写真=iStock.com/Wako Megumi
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Wako Megumi

カマンベールチーズだけにこのような結果が出たのは、白カビがポイントだと考えられています。白カビによってつくられる物質に抗炎症作用があることが動物実験で知られており、それがさまざまな健康有用性につながるようです。

カマンベールチーズなら食事中も、空腹時のおやつとしても食べやすいのではないでしょうか。身体にも脳にもよい効果をもたらしてくれるチーズを、ぜひ積極的に取り入れてみてください。

■「肉を食べると長生きする」は本当か

②魚

「長生きの人は肉を食べている」といった話を聞いたことがあると思います。この根拠のひとつは、日本人で100歳以上まで長生きをした人たちを調べると、平均的な日本人と比べて、肉や魚から摂取できる動物性タンパク質をたくさん食べていたという事実(※)があるからです。

※Shibataら Nutrition and Health 1992

しかし、この研究は肉食だけをハイライトしたものではありません。また、長寿者が動物性タンパク質をよく食べていたという事実だけで、動物性タンパク質を食べたから長生きしたのかどうかはわかりません。

一方、フランスで行われたコホート研究では、65歳以上の高齢者を約10年間追跡した結果、肉を食べる習慣が少ない人(概ね週に1回以下)は、認知症のリスクが高いことが指摘されています(※)。医学的には、腎臓の機能が正常であれば、肉食は推奨されると考えてよいと思います。

※Ngabiranoら Journal of Alzheimer’s Disease 2019

■魚で頭は良くならないが、認知症は予防できる

では、魚についてはどうでしょうか。「魚を食べると頭がよくなる」という歌が、脳にこびりついている人も多いかと思います。栄養学的には、魚には、脳の機能を維持するために必須の、オメガ3脂肪酸(DHA、EPA)などが豊富に含まれていることが知られています。

本当にオメガ3脂肪酸を摂取すると、認知機能が向上するのかどうか、私たちも東北大学の学生を対象として、エビデンスレベルの高いランダム化比較対照試験によって調査を行いました。

鮮魚
写真=iStock.com/ahirao_photo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ahirao_photo

対照群にはオリーブオイルを摂取させたのですが、結論は、認知機能向上の効果はまったくなし。論文化を断念しました。オリーブオイル自体の効果があったのかもとして、お茶を濁しましたが、おそらく頭をよくすることを目的に魚を食べても無駄と結論しました。

しかし、魚を食べると認知症の予防ができるという研究はたくさんあり、最もエビデンスレベルの高いメタ解析(※)で、高齢者では魚の摂取量が多いほど、アルツハイマー病等の認知症や認知機能低下の予防効果が高いことが示されています。

※Godosら Aging Clinical and Experimental Research 2024

■うつ病の症状を改善する働きも確認

こうした研究の多くは欧米人を対象としたものです。普段から比較的魚をよく食べる日本人を対象として、魚を食べることの有益性を示したものとしては、東北大学の研究チームによるものがあり、65歳以上の人を対象に約6年間にわたり追跡調査した結果、魚をよく食べる人ほど認知症のリスクが低いことが明らかになりました(※)

※Tsurumakiら British Journal of Nutrition 2019

頻繁に魚を食べる人たちの認知症発症率は、ほとんど食べない人たちと比べると、約85%になることがわかったのです。

これは、DHAやEPAといった魚由来の脂質が、脳の神経細胞の発達を促したり、神経細胞の細胞膜を柔軟にして細胞間の情報伝達をスムーズにしたりするからです。

また、魚にはうつ病の症状を改善する働きもあります。オメガ3脂肪酸(DHA、EPA)の欠乏がうつ病、不安障害などと関連しているということが指摘されています。実際に、複数の研究論文において、体内のDHAレベルが低いとうつ病発症のリスクが高まるということが確認されているのです(※)

※Zhouら Frontiers in Psychology 2022

脳はその60%が脂肪で構成されているため、摂取する脂質の質がその働きに影響するというのはイメージしやすいですよね。

魚に含まれるDHAやEPAは、人の体内では合成できない栄養素ですから、食べ物から絶えず摂取する必要があります。食卓に魚を並べるのを意識することで、年齢を重ねてからも脳の働きを健全に保つようにしていきましょう。

■タマネギを食べると脳に良いことだらけ

③タマネギ

最近、単語が思い出せずに「あれ」「それ」といった言葉しか出てこない……なんてことはありませんか? そんな悩みに効果的な食品がタマネギです。野菜の中でもタマネギに多く含まれるポリフェノールの一種「ケルセチン」が、認知機能の維持に役立つという研究(※)があります。

※Nishiharaら Journal of Clinical Biochemistry and Nutrition 2021

この「ケルセチン」を多くとっている人は心筋梗塞のリスクが少なかったり、LDL(悪玉)コレステロールの数値が低かったりするという調査結果もあり、タマネギにはいわゆる“血液サラサラ”効果があると考えられていますが、じつは脳にとってもよい効果をもたらしてくれるのです。

玉ねぎ
写真=iStock.com/FotografiaBasica
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/FotografiaBasica

岐阜大学の研究グループが、記憶力や計算力、言語能力などの検査を行ったところ、ケルセチンを摂取した人はそうでない人に比べ、言語能力などの検査の点数が大きく増加することがわかりました。

また、気分(抑うつ状態)についても、ケルセチンを摂取した人のほうは大きく低下しました。ケルセチンは認知機能の低下を防ぐだけでなく、鬱々とした気分を前向きにする可能性があるのです。

さらに、同研究グループは、「ケルセチン」が、文章表現を司る機能を維持することも明らかにしています。これは、ケルセチンが想起障害に対して役に立つ可能性を示しています。

■「脳のサビ」をとってくれる野菜・果物

④緑黄色野菜・果物

ホウレンソウにブロッコリー、オレンジやパパイヤ、柿。緑やオレンジ色が鮮やかですが、こうした緑黄色野菜や果物に含まれる抗酸化物質が、認知症の予防に役立っているという研究結果(※)があります。

※Beydounら Neurology 2022

緑黄色野菜や果物には「ルテイン」「ゼアキサンチン」「ベータクリプトサンチン」などの成分(抗酸化物質)が含まれていますが、米国のある調査では、血中の抗酸化物質量のレベルが高い人は、低い人に比べて認知症を発症する可能性が低いことがわかりました。

抗酸化物質は俗に「身体のサビを取ってくれる」成分として知られています。このサビとは、体内の細胞にダメージを与える活性酸素のことで、認知症の原因でもあるアミロイドβによってつくりだされます。サビは脳細胞にもダメージを与えるので、緑黄色野菜のような抗酸化力の高い食品をとり、発生を抑えることで認知症対策にもなると考えられるのです。

ただし、この研究はある種の血中の抗酸化物質の測定によるもので、生涯にわたって測定したものではないので、認知症を予防できるかを調べるためには、さらに研究を続けていく必要がありそうです。

■納豆、みそ、豆腐のうちベストなのは…

⑤大豆製品

大豆製品には「イソフラボン」が多く含まれていて、健康によいということをご存じの方は多いかと思います。イソフラボンは認知機能や記憶の改善に効果があるという研究結果もあり、認知機能の低下やアルツハイマー型認知症の予防になるかもしれないと期待されています。

大豆製品とひと言でいっても、豆腐や納豆、みそなど、いろいろな種類があります。

どの食品をとるのが認知機能の改善に効果的なのでしょうか。じつはこれまでの研究では、大豆製品や豆腐など個別の大豆加工食品の摂取量と認知機能の関連については、一致した関連が得られていませんでした。

そこで、国立がん研究センターの研究グループが大豆製品、個別の大豆加工食品(納豆、みそ、豆腐)、イソフラボンの摂取量と、その後の認知症リスクの関係について調査しました(※)

※Muraiら European Journal Of Nutrition 2022

■納豆だけに含まれている酵素がカギ

その結果、男女ともに大豆製品やイソフラボンの総摂取量と認知症のリスク低下の関連はみられませんでしたが、個別の食品で分析したところ、納豆の摂取量が多い女性の認知症リスクが低下する傾向にあったのです。特に60歳未満の女性で、この傾向が顕著でした。

川島隆太『脳を鍛える! 人生は65歳からが面白い』(扶桑社)
川島隆太『脳を鍛える! 人生は65歳からが面白い』(扶桑社)

なぜこうした違いが出たのかというと、発酵食品である納豆には大豆イソフラボンだけでなく、ほかの大豆製品にはない「ナットウキナーゼ」や「ポリアミン」といった酵素が含まれているからだという可能性が示されています。これらは、認知症を引き起こす原因のひとつとも言われる「アミロイドβ」というタンパク質の蓄積を抑制してくれるのです。

男女による結果の違いについては、飲酒や喫煙習慣の違いを考慮しましたが、現時点で明確な理由は明らかではありませんでした。そのため、今後の研究が必要とのことですが、長く日本の食卓で親しまれてきた納豆が、認知症の予防にも効果があるというのは、うれしい結果ですね。

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川島 隆太(かわしま・りゅうた)
東北大学加齢医学研究所教授
1959年千葉県生まれ。89年東北大学大学院医学研究科修了(医学博士)。脳の機能を調べる「脳機能イメージング研究」の第一人者。ニンテンドーDS用ソフト「脳トレ」シリーズの監修ほか、『スマホが学力を破壊する』(集英社新書)、『オンライン脳』(アスコム)など著書多数。

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(東北大学加齢医学研究所教授 川島 隆太)

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