「いじめ」発言の次は「悠仁さまの筑波大進学」も物議…自由を尊ぶ秋篠宮家の"ご難場"が終わらない本当の理由
プレジデントオンライン / 2024年12月23日 7時15分
■眞子さんと小室圭さんの結婚から3年がたつが…
秋篠宮家への批判が止まらない。
秋篠宮妃の紀子さまは9月11日の誕生日に際して、ネット上のバッシングについて「思い悩むことがあります」と文書で回答。秋篠宮さまは、11月30日の誕生日を前にした記者会見で、「いじめ的情報と感じる」と述べた。
12月11日に宮内庁が発表した秋篠宮ご夫妻の長男・悠仁さまの筑波大学合格をめぐっても、祝福の声は多数とは言いがたい。
長女・眞子さんと小室圭さんの結婚から3年がたち、バッシングは収まるかに見えたものの、一層ボルテージが上がっているようにも見える。
この理由は、どこにあるのか。
すでに本サイトの記事<天皇家とは姿勢がまったく違う…秋篠宮さまの「いじめ」発言に社会学者が見たバッシングの根本原因>で、社会学者の千田有紀氏が分析しているように、秋篠宮家の姿勢を天皇家と比べて、「反論せず静かに耐える」といったことを求めるから、今回のバッシングにつながっていると言えよう。
秋篠宮家では、秋篠宮さまが皇位継承順位1位、悠仁さまが2位である。将来の天皇を2人も抱えているから、国民からの視線が厳しくなる。そう考えるのが妥当だろう。皇室に対して期待を込めているだけに、応えてくれていない、と感じられると、その落胆もまた同じぐらい深い。
しかし、皇位を引き継ぐと予定されているからといって、そして、千田氏が言うように「皇室の方々に無私の心を求める」からといって、当事者が「いじめ」とまで表現する状況は、尋常ではない。
■「プリンセスの日常が面白すぎる」
ここでは、千田氏とは別の角度から、この「バッシング」を考えよう。ヒントになるのは、別の皇族が書いた本である。
三笠宮家の彬子さまが2015年に出版した『赤と青のガウン オックスフォード留学記』(PHP研究所)は、2024年4月に文庫化され、3カ月ほどで30万部の大ベストセラーになった。きっかけは、Twitter(当時)で、「ドイツで保育士を目指すアラフィフ」という「かよ」さんの下記のツイートだった。
3万をこえる「いいね」がついたことから、著者の彬子さまみずからが、発行元のPHP研究所に対して再販を持ちかけた。単行本に使った用紙の生産中止などにより、文庫版ならば、と話が進んだという。
「かよ」さんが引用しているページを解説すると、場面は、ドイツからロンドン郊外の空港に戻った入国審査場である。パスポートのスタンプを押すページが少し破られていたため、審査官(「眉間にしわを寄せたおばさん」)から詰問され、乗り切ったあとに、上記のやりとりが交わされている。
■なぜ彬子さまの「奔放さ」は支持されるのか
引用されていない末尾には、「スーツケースを自分で運び、ジーンズにセーター姿で目の前に立っている女の子が、まさか本物のプリンセスだとは思えなかったのだろう」と続く。
ほかにも同書では、「側衛」と呼ばれる、皇族の側で守る(護衛する)人たちについて、ユーモラスに描いている。外国資本の飛行機のなかでCAさんたちに(通じないはずなのに)日本語で話しかけたり、巨漢ゆえに怪しまれ現地の警備員に追いかけられたりする。そんな「側衛」の姿が描写されている。
「かよ」さんが言う通り、「プリンセスなのに」意外な、そして、何より「面白すぎる」日々が、生き生きと書かれ、多くの人の興味を引いたから、売れ続けているのだろう。
しかし、もし、千田氏の言うように、「皇室の方々に無私の心を求める」のが国民の願いだとしたら、こうした彬子さまの奔放さは、支持ではなく、批判の的となるのではないか。
もちろん、先に触れた通り、秋篠宮家は、これから皇位を受け継ぐ立場の男性皇族が2人もいる。女性であり、皇位継承とは無関係の彬子さまとは、大きく異なるから、世間からの視線は、比べようもない。
■「皇位継承者」に向けられる視線の厳しさ
小室眞子さんの結婚に対して、あれだけ社会が湧き立ったのも、将来の天皇=悠仁さまの姉であり、小室圭さんには義理の兄、つまり、家族としての品格を求めた要素が大きい。日本国と日本国民統合の象徴である天皇になる見込みの人の、義理の家族が、借金トラブルを抱えているとは何事か。そうした声が聞かれていた。
男性と女性の違い、という点では、「愛子天皇」を求める意見ともかかわる。
いまの皇室典範は、その第1条で「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」と定めており、天皇陛下の長女・愛子さまは、皇位継承順位に連なっていない。「女性天皇」や「女系天皇」についての議論は、ここでは置こう。
現時点では皇位を引き継げない愛子さまへの人々の好感度が上がる一方で、秋篠宮家に関しては、秋篠宮さまや悠仁さまという将来の天皇への視線が厳しい。また、小室眞子さんや佳子さま、紀子さまといった女性にむけても、ゆくゆくは天皇になる男性の支えとなっていないのではないか、という見方もあるのではないか。
こう考えると、皇位継承とはほとんどかかわりのない彬子さまがどのように振る舞ったとしても、微笑ましく見守るだけ、というのは、納得してもおかしくはない。
しかし、彬子さまの自由さへの反応と、秋篠宮家へのまなざしが、正反対なのは、まだ腑に落ちない。
なぜなら、彬子さまのほうが、秋篠宮家よりも、家族仲の点では、うまくいっているとは言いがたいからである。
■百合子さま「斂葬の儀」、喪主は孫の彬子さま
2024年11月15日、三笠宮妃百合子さまが101歳で薨去された。葬儀にあたる「斂葬の儀」で喪主を務めたのは、彬子さまだった。8年前、2016年11月4日に営まれた、故・三笠宮崇仁さまの葬儀でも、彬子さまは喪主代理だった。さらに、その4年前、2012年6月6日に、彬子さまの父・寛仁さまが亡くなった際も、喪主は彬子さまだった。
彬子さまの母・信子さまは、これまで3度も喪主に目されながらも、ほとんど、その姿をあらわしていない。
また、宮内庁が2025年度予算の概算要求にあたって、同庁の分舎(東京都千代田区千鳥ヶ淵にある旧宮内庁長官公邸)を総額約14億円かけて改修する計画が明らかになっている。これは、本来なら三笠宮家が住むはずの赤坂御用地の外で、これからも信子さまが暮らしつづけることを意味している。
三笠宮家のなか、というよりも、信子さまと、そのほかの皇族とのあいだの、すれ違いには、長い経緯がある。1980年の寛仁さまと信子さまのご成婚、その10年後の、寛仁さまによる食道がんの公表のころまでは、「おしどり夫婦」として知られていた。
しかし、2004年に信子さまは更年期障害や胃潰瘍と診断され、2年あまりにわたって軽井沢の別邸での療養生活を過ごした。このころから夫婦のあいだには、大きな溝ができていたと言われている。その後も夫婦関係は修復できず、信子さまが、いまも住まいとする宮内庁分庁舎で別居していると、2009年秋に明らかになった。
夫婦仲だけではない。信子さまと、彬子さまの確執は、より深くなる。
■『週刊朝日』が報じた“事件”
2016年7月には、彬子さまの留守中に、信子さまが、東京・赤坂御用地の三笠宮東邸(旧・寛仁親王邸)を訪れた。鍵を持っていなかった信子さまは、同行させた業者に鍵を開けさせ、中にある荷物を持ち帰ったという「事件」が起きる。
同年10月21日号の『週刊朝日』は、この経緯を詳しく報じた上で、「母娘の愛憎劇に、体調を崩している三笠宮両殿下もさぞかし胸を痛めているに違いない」と結んでいる。
同誌からの質問に信子さまの代理人弁護士が「お話しすることはできない」と答えている以上、真相は断言できない。それでも、週刊誌上で、こうした「事件」が報じられ、信子さまの代理人弁護士をはじめ、宮内庁も訂正を求めてはいない。まったくのフェイクだとは考えづらい。
実際、彬子さまの著書『赤と青のガウン』には、ひとことも信子さまについては触れられていない。
秋篠宮家でも、親子の確執が取り沙汰されてきたし、それが、「いじめ的情報」の元になった部分があろう。
19世紀ロシアの文豪、レフ・トルストイの名作『アンナ・カレーニナ』の冒頭の名言「幸福な家庭はどれも似たものだが、不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸なものである」を、いまさら引くまでもないし、また、秋篠宮家も三笠宮家も、どちらも「不幸」ではないのかもしれない。
彬子さまが、本を書いたり、テレビに出たり、また、京都に住んだり、と、のびのびと過ごしていたとしても、母・信子さまのほうに非難の目が向けられているのかもしれない。
しかし、だとしても、両家をめぐる世間のとらえかたの違いは、まだ完全には納得しがたいのではないか。
■秋篠宮さまの「本音」と「建前」
ここでもヒントにしたいのは、本である。それも『秋篠宮』と題した本である。
同書は、2022年、ジャーナリストの江森敬治氏によって小学館から出版された。江森氏と秋篠宮さまの30年以上にもわたる「個人的な付き合い」をもとに行った、いくつもの単独インタビューをまとめたものだ。
「皇族である前に一人の人間である――。こうした規範とも言えるものが、彼(秋篠宮さま)の人生の中に、一貫してある」と江森氏は書く。社会学者の千田氏が述べていたように、秋篠宮さまは「自由で闊達なところを愛された」、その姿勢が、同書からも、ありありと浮かび上がる。
宮内庁のウェブサイトに掲載されている、これまでの記者会見の文字起こしを読み直しても、自由を尊ぶスタンスが貫かれているように見える。
けれども、一見すると「本音」ととれる発言のほとんどは、原則論というか、定型的というか、もっと言えば、「建前」なのではないか。
その疑いを最も濃くしたのは、江森氏から「令和時代の皇室のあり方」を尋ねられたときの、次の答えである。
■「いじめ的情報」の火に油を注いでいるもの
江森氏が、「シンプルな答えだが、やはり私が求めていたものではなかった」と受けている通り、隔靴掻痒の感が否めない。
ここに、彬子さまの本やことばと、秋篠宮さまのことばとの、決定的な違いがあるのではないか。前者が、家族の確執を隠そうともせず、みずからの私生活をユーモラスに、あけすけに語っているのに対して、後者は、親子関係について率直に語っているかのように見せながらも、その実、教科書的なことばにとどまっているのではないか。
すでに述べてきたように、皇位を受け継ぐ、その立場の責任は重く、軽々しく「本音」は吐露できまい。けれども、だからこそ、私たちは、秋篠宮家の「建前」ではない、血の通ったことばを聞きたいと思ってしまう。その不満が、「いじめ的情報」の火に油を注いでいるのではないか。
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神戸学院大学現代社会学部 准教授
1980年東京都生まれ。東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(社会情報学)。京都大学総合人間学部卒業後、関西テレビ放送、ドワンゴ、国際交流基金、東京大学等を経て現職。専門は、歴史社会学。著書に『「元号」と戦後日本』(青土社)、『「平成」論』(青弓社)、『「三代目」スタディーズ 世代と系図から読む近代日本』(青弓社)など。共著(分担執筆)として、『運動としての大衆文化:協働・ファン・文化工作』(大塚英志編、水声社)、『「明治日本と革命中国」の思想史 近代東アジアにおける「知」とナショナリズムの相互還流』(楊際開、伊東貴之編著、ミネルヴァ書房)などがある。
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(神戸学院大学現代社会学部 准教授 鈴木 洋仁)
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