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日本人の年収が増えないのは「薄利多売」のせい…時給30万円の経営アドバイザーによる「厚利少売」のススメ

プレジデントオンライン / 2025年1月6日 8時15分

出所=『厚利少売 薄利多売から抜け出す思考・行動様式』(匠書房)

なぜ日本経済は成長しなくなったのか。経営アドバイザーの菅原健一さんは「GDPが増えていないということは、新たに付加価値を付けられていないということだ。たくさんつくって安く売る薄利多売はやめて、少なくつくって高く売る『厚利少売』に切り替えるべきだ」という――。

※本稿は、菅原健一『厚利少売 薄利多売から抜け出す思考・行動様式』(匠書房)の一部を再編集したものです。

■日本だけが経済成長できていない理由

日本は、すでに沈没しています。

たとえば、日本人の1人当たりGDPは、2000年にはG7(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、イギリス、アメリカ)でトップでしたが、2023年には最下位に転落しています。図表1を見てもらえればわかるように、アメリカ、韓国、台湾と比較しても、1人当たりGDPが増加していないのは日本だけです。

また2024年2月時点では、日本のGDPが、ドイツに抜かれ、世界4位に転落したことが話題となりました。

GDP(国内総生産)は、一定期間内に国内で生産されたモノやサービスの付加価値の合計額のこと。付加価値とは、サービスや商品などを販売したときの価値から、原材料や流通費用などを差し引いた価値を指します。

つまり、GDPが増加していないということは、極めてシンプルにいえば、新たに付加価値を追加できていないことを意味します。

「日本が成長できていないのは、価値を足せていないから」とも言い換えられるでしょう。

日本の人口は急激に減少しているので、このまま1人当たりのGDPが増えなければ、ますます世界から経済的に後れをとることになります。

■平均年収は増えず、先進国最下位

次に、平均年収に目を向けてみましょう。日本の平均年収は現在443万円で、過去30年間横ばいです。そして、こちらもG7で最下位です(図表2)。

【図表2】G7各国の平均賃金の推移
出所=『厚利少売 薄利多売から抜け出す思考・行動様式』(匠書房)

にもかかわらず、手取り収入は減少しています。1997年(年収が一番高かった年)から2020年までを分析した結果によると、日本人の「実質手取り収入」は物価高も加味して、平均で年84万円も減っているそうです。同じ年収であっても、親世代と僕たちの世代では実態がまったく異なるわけです。そして今後も、物価や社会保険料は上がり続けるでしょう。

さて、こんな逆風の時代に、あなたならどう生き残るか?

その答えが、本書のテーマである「厚利少売」です。

■薄利多売でも最低限食べていけるが…

今後、これまでは普通に買えていたものが「高くて買えない」という時代がやってくるはず。でも、高くて買えないなら、高く売ればいいのです。

あくまで「買えない人と買える人の二極化が激しくなる」という話であり、すべての日本人が貧乏になるわけではありません。

あなたが取り扱う製品やサービスの価値を見直して高く売ることができたら、あなた自身も高く買えるようになります。これはフリーランスであれ、会社員であれ、事業責任者であれ、経営者であれ変わりません。

これまでのような薄利多売でも、最低限食べていくことはできるはずです。でも、「金銭的・時間的な自由を増やしたい」「持続可能な社会にしたい」と思うなら、厚利少売一択です。

■「厚利少売」に切り替える方法

僕はこれまでSNSやイベントなどを通じて、数えきれないほどの方々から相談を受けてきました。

その経験から実感しているのは、「厚利少売の実現をもっとも邪魔するのは思考(マインド)である」ということです。

「やり方がわからない」という人よりも、「勇気がないです」「背中を押してください」という人のほうが圧倒的に多い。とりわけ「第2ステップ・お客さんを減らす」は、「お客さんの数が減る=売上が減る」ことを意味するので、頭では利益のほうが大事だとわかっていても、「売上が多いことは正義」という考え方をなかなか捨てられません。

薄利多売から厚利少売に切り替えるときには、勇気が求められます。

これまで当然だと思っていた方法や考え方をほぼすべて否定して、ときには取り扱っているプロダクトを根本的に変えなければならないわけですから。

ただこれは、逆にとらえれば、「本人の覚悟と行動さえあれば、厚利少売は誰でも実現できる」ともいえます。

実際、僕はこれまでたくさんの経営者や個人事業主にアドバイスをして、厚利少売に導いてきました。なにより薄利多売だった僕自身が、かれこれ20年間くらい、厚利少売を続けられています。

■「時給30万円」でも仕事が舞い込んでくる

ここで自己紹介をさせてください。

僕は30代で取締役CMO(最高マーケティング責任者)として参画した企業を十数億円で売却し、そのまま経営を継続して3年で売上数百億円規模に成長させました。その後、株式会社Moonshotを創業し、現在に至るまで「企業の10倍成長」のための経営アドバイザーとして活動しています。

具体的にやっていることといえば、1社当たり週1時間の「壁打ち」です。経営者と一対一で向き合い、あれこれ話をして、「なぜうまくいかないのか?」「なぜ予定どおり成長していかないのか?」といった本質的な課題を見つけ出します。そこから一緒に解決策を考えたり、ときには大胆な提案をしたりすることもあります。

僕の時給は30万円です。「話を聞いてアドバイスするだけで30万円⁉」と驚かれたかもしれませんが、対価以上の本質価値を提供しているので、押し売りしているわけでも、騙して売っているわけでもありません(笑)。

こうした自己紹介をすると、「どうせ成功者だから、高く売れるんでしょ?」と思うかもしれません。だけど、僕はエリートでもなければ、才能やセンスに恵まれた人間でもないのです。

■ブラック職場から這い上がったきっかけ

僕は母子家庭で育ち、10代の頃は根暗で引っ込み思案でした。写真を撮るときは顔を隠し、話すときはいつも赤面してしまうほど。人と関わることが本当に苦手でした。

通っていた高専では不登校になりました。生きていくのが精一杯で、自分が社会貢献をしたり、仕事で活躍したりしている姿なんて、これっぽっちも描けませんでした。

高卒でエンジニアとして働くようになったあとも、毎日上司から怒られ、泣きながら働く日々。まさに薄利多売の働き方で、月の残業は300時間を超えていました。2年間うつ病も経験し、人生のどん底を見た感じがしました。

ソフトウェア・エンジニア
写真=iStock.com/PonyWang
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PonyWang

そんな僕が、厚利少売を始めるきっかけを得たのは37歳のとき。

広告を販売するベンチャー企業のCMOとして、年間売上100億円という高い目標を掲げました。ですが、当時販売していた広告は「単価100万円」。このままだと目標達成するのに1万件売らなければなりません。普通に考えたら達成不可能です。

そこで僕は、単価を下げてたくさん売るのではなく、1000倍(10億円)の新たな広告プランをつくり、少なく売ることを決めました。その戦略は功を奏し、年間売上100億円を達成することができたわけです(詳しいエピソードは本書の120ページ)。

■スマニューで広告単価を上げるには

この経験から学んだのは、どんな業界でも、何歳であっても、厚利少売は実現できるということ。誰だって、遅すぎることはないのです。

僕がスマートニュースでブランド広告責任者を務めていたときの話です。

スマートニュースは、全国紙をはじめとするニュースメディアと連携し、インターネット上で話題になったニュースを配信するアプリです。当時の会員数は600万人、主な収入源は広告収入でした。

当時、僕が注力していたのが、スマホの全画面で表示される新たな広告の販売でした。スマートニュースのアプリを起動すると、新聞の一面広告のように画面いっぱいに表示される広告。これを厚利少売することがミッションでした。

競合だった大手新聞社の広告価格は、1回の表示当たり9円。仮に1000万人が見たら9000万円という、非常に大きな収入です。

僕は、この競合よりも、さらに単価を上げられないかを考えました。

お客さん(広告主)が広告に期待している価値とはなにか。当然、広告をたくさんの人が見て、さらにその先にあるプロダクトを買ってもらえることです。

■「嫌われない広告」の表示方法を考えた

ではどうすれば、アプリ起動時に表示される全画面広告を、たくさんの人が見て、その先の購入に結びつけられるか。

当時、スマートニュースのユーザーは、1日で平均12分、一度起動すると3〜5分はアプリを見てくれていることがデータでわかっていました。

そこでまず僕が考えたのは、「広告を表示するタイミング」です。

たとえば、アプリを使用して5分後に広告が表示された場合、もし気になったプロダクトだとしても、離脱せざるを得ない状況(電車を降りる、トイレから出るなど)だったら、広告の内容を見る時間も、買う時間もありません。そのため広告の表示は「アプリ起動時にすべき」と考えました。

とはいえ、アプリ起動時にいきなり全画面の広告が出たら、クライアントは喜んでくれるかもしれませんが、ユーザー目線ではどう思うでしょうか。「わっ、広告だ」と思ってスキップしてしまうでしょう。これだと表示回数を稼げても、実際の購入までは結びつかず、価値提供としては弱くなります。

広告だとわからない、あるいは広告であっても質のよいコンテンツに見えるような工夫が必要です。

そこで僕が考えたのは、「この全画面表示は、重要度の高いニュースである」ことをユーザーに認識させることでした。

■「いかにバズらせるか」より製品価値が重要

具体的には、「宇多田ヒカル、新曲リリース!」「今日(11月11日)はポッキーの日!」など、多くのユーザーに刺さる情報を全画面で表示する期間を半年間ほど設けたのです。

この期間があったことで、ユーザーに「ここに表示されるなら重要度が高い情報だ」という認知が広がりました。

そう。プロダクトとして熟したタイミングで高単価の広告を販売しにいったのです。結果、その全画面広告は、競合を超える1回の表示当たり、およそ5倍の単価で売ることができました。

菅原健一『厚利少売 薄利多売から抜け出す思考・行動様式』(匠書房)
菅原健一『厚利少売 薄利多売から抜け出す思考・行動様式』(匠書房)

この事例からお伝えしたいことは、厚利少売においてはプロダクトの完成度は非常に重要であり、完成度を高めるためには準備期間も場合によっては必要である、ということ。

昨今、マーケティングの4P(製品、価格、流通、プロモーション)では、とりわけ「プロモーション」に重きを置いて語られています。「いかにバズらせるか」「いかにメディアに取り上げられるか」みたいな話です。

しかし厚利少売を実現したいなら、まず考えるべきは「製品(プロダクト)」です。いかに製品の価値を上げるかを重視してください。

「マーケティング=プロモーション」という勘違いをしている人があまりに多いので、この点は声を大にしてお伝えしたいです。

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菅原 健一(すがわら・けんいち)
経営アドバイザー
株式会社Moonshot代表取締役CEO。企業の10倍成長のためのアドバイザーであり、社会や企業内に存在する「難しい問題を解く」専門家。年間でクライアント10社、エンジェル投資先20社の計30社のプロジェクトを並行して進める。過去に取締役CMOで参画した企業をKDDI子会社へ売却し、そのまま経営を継続し売上を数百億規模へ成長させる。その後スタートアップのスマートニュース社でブランド広告責任者とBtoBマーケティング責任者を経て現職。著書に『厚利少売』(匠書房)、『小さく分けて考える 「悩む時間」と「無駄な頑張り」を80%減らす分解思考』(SBクリエイティブ)など。現在、片づけコンサルタント「こんまり」のプロデューサー川原卓巳氏が、薄利多売なビジネスモデルから抜け出すための考え方と行動のヒントをお話するビジネス対談型ラジオ「厚利少売ラジオ」をPodcastで放送中。

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(経営アドバイザー 菅原 健一)

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