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2億円超の物件でもどんどん売れる…いまタワマンを買っている「金持ち日本人」4タイプをご存じか

プレジデントオンライン / 2024年12月24日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/y-studio

タワマンを筆頭に首都圏のマンション価格が高騰している。不動産事業プロデューサーの牧野知弘さんは「とくにタワマンは、もはや住むためのものではなく、投資や節税手段としての対象となってきている。そのため、実際に住んでいる人というのは数がしぼられている」という――。

※本稿は、牧野知弘『家が買えない 高額化する住まい商品化する暮らし』(ハヤカワ新書)の一部を再編集したものです。

■5人に1人以上がタワマンオーナー

不動産経済研究所の調査によれば、2004年から2023年までに首都圏(1都3県)で供給されたタワーマンション、通称タワマンは、21万9478戸にのぼる。実は「タワマン」と言っても世の中に明確な定義があるわけではないが、同研究所では「超高層マンション=タワマン」の対象を地上20階建て以上のマンションとしている。

同じ期間に首都圏で供給されたマンション全体の戸数は91万9005戸なので、ここ20年間の新築マンションの約24%、実に4戸に1戸がタワマンという計算になる。

かつてタワマンと言えば「超高級マンション」の代名詞だったが、今や新しくマンションを買う人の5人に1人以上がタワマンオーナーなわけだ。もはやその希少性は薄れ、一部の物件はコモディティ化している現実がある。

■一般庶民には買えない価格で売れている

それでも販売価格はうなぎのぼりだ。数年前に東京・江東区豊洲で供給されたあるタワマンの新築販売時の価格を見ると、平均で坪あたり450万円を超えていた。上層階で専有面積100平方メートルを超すようなプレミアム物件になると、坪単価は600万円にもおよび、優に2億円を超えるお買い物だ。

中層階~低層階で20坪(66平方メートル)程度の物件でも、9000万円前後になる。いずれも一般庶民には到底手が届かない価格であるが、販売は好調に終了したという。

それでは、そんなタワマンを買っている人は、どのような人なのだろうか。実際に購入している人のプロフィールを見ると、おおむね四つのカテゴリーに分類できる。

■地方タワマンの「天守閣」に住む金持ち

①フロー金持ち

ポンッと1億円以上の物件を買える人は、あたりまえだが金持ちだ。

富裕層を分解すると、そこにはおよそ二つの形態がある。ストック金持ち(所有資産が多い金持ち)とフロー金持ち(所得収入が多い金持ち)だ。タワマン好みは、このうちフロー金持ちが多いという。自らの成功の証しとしてタワマンオーナーになるわけだ。

地方の主要駅前に建設されるタワマンのペントハウス(最上階にある高級住戸)を買うのは地元の名士と言われる。その地域の最高層建物となるタワマンは、いわば「富の象徴」である。その最上階から街を睥睨(へいげい)する天守閣を自らの館にする。

私はこれを「地方タワマンの天守閣需要」と名付けている。彼らは東京=江戸にも館を持ちたがる。こちらは東京に出かけたときに過ごすための藩邸というところか。

一方、主に東京や大阪でタワマンを買う富裕層は、現役バリバリのフロー金持ちだ。ビジネス社会の頂点にいることの誇りとしてタワマンを買う。「タワマン文学」と称されるタワマン内部にある階層ごとの熾烈な権威争いを描く物語があるが、それを巻き起こす闘争本能の高い人たちをイメージしてもズレてはいないだろう。

■売り時を見定めている投資家たち

②高齢資産家

二つ目のタイプは富裕層のなかでも、相続が心配になった高齢者による購入だ。このカテゴリーにはストック金持ちが多い。資産を大量に持ち、そのままにしていると多額の相続税が課せられることを懸念している。

娘や息子が税理士や金融機関などの勧めにしたがって、多額の借入金を調達して親に買わせるケースも目立つ。タワマン購入は相続の際の節税効果が絶大であると喧伝されたこともあり、タワマン購入者のプロフィールには意外と高齢層が多い。

③投資家

第三に投資家だ。タワマンに投資してひと儲けを企む。彼らの多くはテナントに賃貸して当面の運用益を確保し、時期を見定めて売却する。あるいはテナントは付けずに空箱のままか、あくまでも別宅としてたまに利用する程度にしながら、売り時を見定めている人たちもいる。

ここには外国人投資家の姿も目立つ。使い方としては、同国人に賃貸して運用する、自分たちが日本旅行するときの宿泊所として活用する、子弟が日本に留学する際の居場所としておく、などがある。

■全員がタワマンに住んでいるわけではない

さて①から③までの購入者属性の特徴を一言で言うと、そのほとんどが「買うだけの人」であることだ。

富裕層の多くは、タワマン購入前から別に自宅を保有している人が多い。天守閣需要で買っている地方富裕層などは、買ったタワマンの部屋を迎賓館や社内保養施設として扱っている例が多い。

東京や大阪のフロー金持ちの場合は住んでいることも多いが、軽井沢や箱根に別荘を持ち、二拠点生活のうちの一つとして買っていたりもする。投資家はもちろんのこと、節税対策をもくろむ高齢者にいたっては、相続が起こることを前提とした買い物であるため、そもそも居住する意思など最初からない。

④パワーカップル

最後に残った第四の購入者が、主な「住んでいる人」になる。世間がもてはやす「パワーカップル」だ。パワーカップルに明確な定義はないが、ニッセイ基礎研究所では夫婦それぞれが年収700万円以上ある世帯としているので、おおむね世帯年収1500万円超えの共働き夫婦を指すものとされる。

彼らがタワマンを購入する理由は、会社通勤がしやすい都心部にあって、交通利便性が高いことにある。世帯年収が1500万円ほどもあれば、35年返済の夫婦ペアローンを組むことで、現行金利水準が続く限り1億円ほどかかるタワマンでも買うことができる。

リビングで過ごす家族
写真=iStock.com/kohei_hara
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kohei_hara

■日本人の資産格差の象徴的存在に

タワマン購入者のうち「住んでいる人」というのは、実は多くがこのパワーカップルなのだ。プライドや見栄で買っている富裕層、運用益や売却益を狙う国内外の投資家たち、相続を終えたらお役御免で売り払うつもりの高齢富裕層といった「買うだけの人」を除けば、数がしぼられてくる。

この構造からすると、都心マンション、とりわけタワマンは、もはや住むためのものではなく、投資や節税手段としての対象となっていると言っても過言ではない。買って住んでいるパワーカップルたちのなかにも、ゆくゆくは売却してあわよくば多額の売却益を享受しようと考えている者もいるし、それで実際に成功した人たちもいる。

野村総合研究所の調べによれば、2021年において純金融資産(不動産を除いた金融資産のうちローンなどの負債を除いた額)で1億円以上を保有している世帯は、全国で約149万世帯も存在する。しかも、その数は年を追うごとに伸びている。

今後さらに日本人の間で資産格差が広がると言われているが、タワマンはこのうちの富裕層に向けて供給する商品であり、今後もこうした人々によって支持されていくものなのである。

■あくまでタワマンは「金融商品」である

私のもとにも、お客様からタワマン購入についての相談がときどき寄せられるが、「お買いになるのでしたら、数年で売却しましょう」とアドバイスするようにしている。ここまで見てきたように、タワマンは長く住み続ける居住用のマンションではなく、「金融商品」と考えたほうがよいからだ。

金融商品に投資して得られる利益は、購入時から売却時までに上昇した価格の差分と、所有している間の運用益で決まる。タワマンを売買する行為を金融商品売買に見立てれば、高額化してもタワマンが買われている理由が見えてくる。

先ほど挙げた豊洲のタワマンを例に考えてみよう。分譲当時の販売価格は坪あたり単価で400万円前半から600万円だったが、現在の売り出し価格は同500万円から1000万円ほどになっている。今すぐ売却すれば、数千万円から1億円以上の売却益が期待できる計算になる。

■賃貸にした場合、利回りは年間3~4%

運用益についてはどうだろうか。実際に賃貸として出されている住戸の賃料を見ると、最も狭い住戸13坪(43平方メートル)で月額25万円程度、広めの住戸32坪(106平方メートル)で月額75万円程度だ。

それに対して、オーナー負担となる月額の管理費は1平方メートルあたり400円、修繕積立金は同100円であるから、両方合わせても狭い住戸で2万2000円ほど、広い住戸で5万3000円ほどの出費で済む。

常に借り手がいて稼働していることは前提になるが、これらの費用を差し引いた運用利回りは、狭い住戸で年間4%程度、広い住戸で3.5%程度となる。ここ十数年続いてきた超低金利時代において十分な利回りだろう。

つまり、このタワマンは出口価格として2割から6割強の値上がりが期待できるうえに、運用利回りで税引き前3%半ばから4%になる「金融商品」なのだ。

住宅として資金調達していればローン金利は低く、税制上の優遇も受けられることを踏まえると、「借金をしてでも買おう」と考える人が出ておかしくない。現実に、相当な利益を叩き出した投資家は何人もいる。

■富裕層がやっている相続税対策のカラクリ

高齢富裕層によるタワマン購入の多くに、節税対策の意図があると先述したが、そのカラクリにも触れておこう。

日本の相続税申告書
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

相続が起こった場合、土地は路線価評価(国税庁が毎年定める道路に面する土地の1平方メートルあたりの単価から算定する方式)となる。タワマンは、同じ敷地内に大量の住戸があるため、持分とされる土地面積が小さくなることが節税対策となるポイントだ。

たとえば、敷地面積2万平方メートル、総戸数1000戸、平方メートルあたりの路線価が56万円のタワマンを例に取ろう。このタワマンの平均にあたる23坪(76平方メートル)の住戸を1億円で買い、その内訳は土地に7000万円、建物に3000万円とする。

この住戸の土地所有面積は1戸あたりわずか20平方メートル(2万平方メートル÷1000戸)ほどという計算になり、土地評価は約1100万円(20平方メートル×56万円)になる。

建物については固定資産税評価額で約2000万円だとすると、合わせた評価額は3100万円となる。現金で1億円を持っていれば額面通りに課税されるが、タワマンにしておけば相続税の計算のもととなる評価額が7割も圧縮されるのだ。

おまけに借入金額は相続評価額から差し引くことができるため、購入資金を借入金で充てることによって、さらに評価額を圧縮する方法もある。

■「億ション」の相続税がたったの12万円

国税庁の資料には、東京、福岡、広島でのマンションの実例が掲載されている。東京都内にある43階建てのタワマンの例では、23階67.17平方メートルの住戸の実勢価格(実際に売買される取引価格/時価)が1億1900万円であったのに対して、相続税評価額は3720万円と、実勢価格は評価額の3.2倍にもなっている。

相続には基礎控除があり、3000万円+600万円×法定相続人の数で計算されるため、相続人が子1名であれば3600万円が引かれ、課税価格は120万円だ。仮にマンションだけが相続財産だとすれば、1000万円以下の相続税率は10%であるため、税金支払いはわずか12万円ほどで済む。

同資料では福岡のマンションで乖離が2.36倍、広島のマンションで2.34倍など、実例を示しながら相続税評価額が実勢価格と乖離しているさまを掲げている。

マンションの乖離率の平均は2.34倍と言われており、タワマンに限らず、マンションは現金で持つよりもはるかに税負担の少ない金融商品のような役割を持っていることがわかる。

■タワマン節税にようやく国税庁がメス

ただ、この手法については国税庁が問題視し、税負担の公平化を理由として評価手法を改正することになった。2024年より実施されたこの改正では、実勢価格との乖離率が1.67倍以上になる場合において、「相続税評価額×乖離率×0.6」で評価することになった。

戸建てにおける平均乖離率が1.66倍であるため、それを上回る場合には、「相続税評価額×乖離率」でいったん実勢価格に調整し直してから、さらに0.6掛けする(1÷1.66=0.6)ことで、戸建てとの格差を是正しようというわけだ。今回の算定方法はタワマンだけが対象ではなく、マンションの場合はすべてが該当することになる。

とはいえ、現金で持つよりも相続評価額を下げられることには変わりなく、相続後の売却も見込めば、タワマン購入による節税効果への需要は残り続ける。

ここまでの話を聞けば、世間で「タワマンは儲かる」と喧伝される理由もわかるだろう。しかし、絶対に儲かるうまい話などないことは投資の常識だ。取引価格が相場に左右されるのは株式と同じで、相場が安いときに仕入れ、高いときに手放すのが鉄則になる。特に投資額が大きくなるタワマンを買う際には、この鉄則をよりいっそう肝に銘じておく必要がある。

■株式投資にはないマンション投資のリスク

株式投資と異なる不動産投資ならではのリスクとしては、流動性の低さがある。相場を見て「ここぞ」というタイミングで売却し利益を確定する、逆に「ダメだ」と思ったら損切りを行うことも投資の鉄則だが、タワマンは株式のように即日で売買が成立するものではない。

ボタン一つで済む株式市場とは異なり、取引に相応の時間がかかる。相場が悪くなり一斉に売りに出される事態に陥っても、商品単価が高いのですぐには買い手がつきづらいのだ。

しかも、不動産は個別性が高いので、同じ建物内の住戸であっても階数や方角、間取りなどが影響して選ばれない可能性もある。最悪の場合、相場が下がり始めて慌てて売りに出そうとしても、売れるまでの期間、どんどん下がり続けていくさまを指をくわえてながめるしかないのだ。この流動性の低さは、急な金利変動など経済環境の変化に対しても脆弱だ。

売買取引の際にかかる手数料もバカにならない。宅地建物取引業法上、規定されている仲介手数料は取引価格が400万円超えで3%、報酬には消費税が課せられるので実質3.3%になる。この料率はあくまでも上限値ではあるが、仲介手数料をケチると業者のやる気がなくなり、きちんと扱ってくれなくなるリスクがある。

■手数料と税金の塊だという覚悟が必要

株式投資でも信託報酬などは取られるが、不動産は金額が大きいので、この仲介手数料にかかる額も多額になり、1億円の売買ならば税込みで330万円だ。この仲介報酬は売る場合にも買う場合にも同様に3%が請求される。

譲渡する場合の譲渡税も侮れない。自宅用であれば売却金額から取得費用等を差し引いた譲渡所得に対して3000万円まで控除されると先述したが、通常は自宅として居住していない限り、この特例は利用できない。住民票があることは必須で、なかには住民票を移して偽装する人もいるが、実際に居住している形跡が確認できないと否認されるケースが多い。

これらに加え、売買契約書締結にあたって印紙税がかかるほか、住宅ローンを組んでいた場合、期日前返済に関わる手数料、抵当権抹消費用などもかかる。

このように不動産取引は手数料と税金の塊なのだ。したがって、売買によってある程度の利益をつかめたと思っても、意外にも仲介手数料その他の譲渡費用でかなりの部分が相殺されてしまう。

■「タワマンで金儲け」は簡単ではない

さらに不動産という商品は、時間の経過とともにそれ自体の価値が劣化していくという特徴を持つ。古くなる建物の価値を維持するために修繕費用が嵩むし、周囲に競合する建物(商品)が出てくれば競争が激しくなり、売却額を下げる必要が出てくる可能性がある。

牧野知弘『家が買えない 高額化する住まい商品化する暮らし』(ハヤカワ新書)
牧野知弘『家が買えない 高額化する住まい商品化する暮らし』(ハヤカワ新書)

運用益を見込んで賃貸に供しても、借り手がいなければ話にならないため、当初は見込めていた高い利回りが続く保証などない。

2010年代後半から今にいたるまでは、かなり高いパフォーマンスを示してきたので、実際に得をした人が多いのは事実だが、どの金融商品もそうであるように、これまでの成功がこれからの成功を約束するものではない。

私がタワマン購入を検討されているお客様に、売却を前提に出口戦略を考えておくよう勧めるのは、こうした点があるからだ。それを承知のうえで買うのならば、金融商品同様に、不動産マーケットの動向に加え、金融マーケットの動向などにもよく目を配って、即座に売買ができる体制を保っていくことが肝要になる。

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牧野 知弘(まきの・ともひろ)
不動産事業プロデューサー
1959年生まれ。東京大学卒業。ボストン コンサルティンググループ、三井不動産などを経て、2006年日本コマーシャル投資法人執行役員に就任しJ-REIT(不動産投資信託)市場に上場。15年オラガ総研株式会社を設立し、代表取締役を務める。全国渡り鳥生活倶楽部代表取締役。主な著書に『空き家問題』『ここまで変わる!家の買い方 街の選び方』(いずれも祥伝社新書)、『不動産の未来』(朝日新書)、『負動産地獄 その相続は重荷です』(文春新書)など。

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(不動産事業プロデューサー 牧野 知弘)

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