親の遺品の9割はゴミになる…「高くて捨てるのがもったいない」が口癖の両親が実家整理に動く効果的な声かけ
プレジデントオンライン / 2024年12月26日 17時15分
※本稿は、ミニマリストTakeru『60日で9割捨てる片づけ術』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
■親の持ち物の「9割」がゴミになる
遺品整理を経験したことがある方はご存知だと思いますが、僕たちが死んだ後の遺品は約9割がゴミとなります。つまり、身内といえど他人の持ち物はそのほとんどがいらないモノで、処分されることになるのです。
実際、祖母の生前整理でも、叔父の生前整理でも、ほぼ9割のモノは処分。残りの1割は、介護施設や病院で使う用として日用品や数着の衣類を残したり、相続の手続きで必要そうな書類や貴重品だけでした。
あんなに家にモノがあったのに、結局人生の最期は少しのモノしか必要ない。病院にも、介護施設にも、あの世にも、大量のモノは持っていけませんから。
そして、家に残った大量のモノたちは家族が処分することになり、それが大きな負担となります。親が残したモノはあなたに負担が、あなたが残したモノは配偶者や兄弟、子どもに負担がいくのです。
■「片づけ」はお金や仕事にも影響する
片づけは本当に大変な作業で、まずは肉体的に大きな負担がかかります。分別が大変で時間がかかる上、ゴミ袋や家具・家電を運び出したりと、想像以上に重労働です。
さらに最悪の場合、その家のトイレが汚すぎて用を足せなかったり、水道水が飲めなかったり、真夏や真冬の時期に冷暖房機器が使えない中で片づけることもあります。片づけが原因で、大きく体調を崩す人もいるでしょう。
その上、片づけをするにはお金もかかります。業者に頼めば、まるまる処分するために数十万〜百万円というかなりの大金が出ていきます。
自分たちで生前整理・遺品整理するとなれば、帰省のための交通費や宿泊費、飲食代、ゴミ袋費用、粗大ゴミの処分費用などにもお金がかかります。遺産相続である程度お金が入ってくるならいいですが、場合によっては自費でお金を払って処分することもあります。
それだけではありません。生前整理や遺品整理は長期戦なので、仕事を何度も休んで片づけを行わなければいけなかったり、誰かに子どもの世話をしてもらっている間に片づけたりと、周りの家族や仕事にまで影響が出るのです。
もちろん、老後を楽しむためにはある程度のモノは必要でしょう。でも、「使ってないモノ」「役目を果たしたモノ」まで残しておく必要はありません。「程よく残し、程よく捨てておく」がちょうどいいのかもしれません。
■あなたの親が片づけてくれない理由と対策
僕のユーチューブチャンネルには、遺品整理や生前整理に関するお悩みがたくさん届きます。その多くが「親が片づけてくれない」「片づけに反対してくる」「片づけようとしたら怒られる」「何も捨てるモノはないと断られる」というものです。せっかく実家を片づけようとしても、なかなか片づけが進まず、モヤモヤしている人が多いようです。
あなたが実家の遺品整理や生前整理を進めたい場合、まずは相手を知ることから始めましょう。相手の言い分や気持ちを理解することで、対策が見えてくるはずです。
捨てたくない理由①「所有物=財産」だと思っている
自分がお金を払って買ったモノには価値があり、「モノ=財産」だと思っている人が多くいます。だから、「片づけ=財産を手放すこと」だと感じ、捨てられないのです。
〈対策〉両親が「価値を感じないモノ」から手放していきましょう。
賞味期限切れの食材や大量のチラシ、粗大ゴミ、処分に困っているモノ、壊れているモノ、ボロボロのモノ、枯れた植物など、「処分を手伝う」スタンスで片づけを一緒に進めてみてください。
〈対策〉「売りたいモノ」がないか聞いてみましょう。
貴金属やパソコン、本、着物、ブランドモノなどであれば、早いうちに売った方がお金になるはずです。
捨てたくない理由②思い出を捨てたくない
ずっと人生を共にしてきたモノだからこそ、一つひとつのモノに思い出が詰まっています。「モノ=宝物」と捉えているので、「片づけ=思い出を捨てること」に感じてしまうのです。
〈対策〉「思い出とは関係ないモノ」から手放しましょう。
例えば、大量の傘や充電ケーブル、古いタオル、期限が過ぎた保証書、昔のカレンダー、多すぎる工具など、思い出と関係なければ手放せるはずです。
〈対策〉「嫌な出来事・辛い体験を思い出させるモノ」を手放しましょう。
例えば、仕事関係の衣類や名札、辛い時期に身につけていたモノ、汚いモノ、ケガの原因になったモノなどであれば、躊躇なく手放せるかもしれません。
■「いつか使う」と思っている場合は?
捨てたくない理由③「いつか使う」と思っている
家にあるモノは全部「いつか使う」「いつか必要になる」「念のため残しておきたい」と思っていて、片づけられない人も多くいます。
たとえ「いつか使う」と思っていても、過去5年間、一度も使ってこなかったモノであれば今後も使うことはないでしょう。情報の古い教材や本、古い請求書、昔の名刺、手帳や勉強用ノートなど、古いモノから手放してみてください。
捨てたくない理由④「捨てることがもったいない」と感じている
「捨てる=もったいない」が口癖の人は、単に「捨てるのが心苦しい」「辛い思いをしてまで捨てたくない」と言い換えることができます。
「自分は使ってないけど、誰かが大切に使ってくれるなら……」と快く手放せるかもしれません。洋服、本、家具、家電、趣味の道具、入浴剤、未使用の食器など、もし状態のよいモノがあれば寄付やプレゼントを検討してみてください。
■「嫌いなモノ」「苦手なモノ」から手放そう
捨てたくない理由⑤将来のために備蓄しておきたい
歳を取ると買い物に行くのも大変になります。だから備蓄として、食材や消耗品のストックを買い込むのは仕方のないことなのかもしれません。また、少ない年金生活になったときにモノに対する価値が上がるので、より溜め込み体質になります。
例えば、賞味期限が切れた食材、空になった芳香剤、水一杯になった除湿剤、1年以上前に開封した防虫剤、使用期限の過ぎた薬など、役目を果たしたモノであれば手放しやすいはずです。
捨てたくない理由⑥「好きなモノを捨てたくない」
買い物が趣味の人は、好きなモノやお気に入りのモノがたくさんあります。当然ながら「好きなモノ」「お気に入りのモノ」まで捨てる必要はないのですが、「片づけ=好きなモノを捨てる」と勘違いしている人も少なくありません。
今まで買ってきたモノの中には、匂いが苦手なモノ、自分に似合わなかったモノ、自分の体に合わなかった服や化粧品、使ってみたけどストレスだった家電や便利グッズ、嫌いな人からもらったモノなどもあるはずです。
■片づけの必要性を感じていない親への伝え方
捨てたくない理由⑦「片づけの必要性」を感じていない
今は普通に生活ができていて、何の不便もなく、「片づける必要性」を全く感じてない人もいます。むしろ「片づけ=不便な生活になる」とすら思っているので、片づけを真っ向から嫌がり片づける時間を作ろうとしません。そしてこのタイプの人は、「自分が死んだら捨ててほしい」「自分が死んだ後のことは、家族に全部任せよう」と考えています。
〈対策〉遺品整理の何が大変かを伝え、自分の気持ちを正直に伝える。
本書には「遺品整理の大変さ」や「生前整理の重要性」が全て書いてあるので、この本を親にプレゼントしてもいいと思います。そしてあなたからも、遺品整理には体力もお金も時間も必要で、想像以上にキツイことを伝えてください。そしてあなたの気持ちを正直に伝えた上で、一緒に少しずつ片づける約束をしましょう。
〈対策〉処分費用を負担してもらう。
「親の持ち物の9割が処分対象になる」ことを伝えた上で、もし説得しても片づけに応じてもらえない場合、自分が買ったモノの処分は、自分で片づけてもらうために、数十万円〜百万円(業者処分費用)を負担してもらうように伝えましょう。さすがに自費で処分するのは辛いですからね。これは最終手段になります。
■60代・70代を迎えると片づけができなくなる
「いつか片づけよう」という言葉をよく耳にしますが、片づけられる期間にはタイムリミットがあります。60代・70代になると突然病気になったり、体調不良が多くなったり、体力や筋力の低下などで、家のモノが片づけられなくなっていきます。
さらに、高齢になっていくと買い物が頻繁に行けなくなったり、備蓄も増え、家の中の移動さえしんどくなって、家中のいたる所に同じようなモノが増えていきます。認知症などで物忘れもひどくなれば、よりモノが増えていくでしょう。
だからこそ、あなたも両親も、若くて元気なうちに、早めに片づけておくことが大事です。増えたモノが放置されたままになれば、今まで述べてきたように、必ず身内が遺品整理で辛くて大変な思いをすることになります。だから、できることを少しずつ始めていきましょう。
■「まだできること」を楽しめる環境をつくろう
悲しいことではありますが、60代・70代を迎えると、年齢と共に「できないこと」が増えていきます。長距離移動が辛くなったり、重いモノが持てなくなったり、高い場所のモノが取れなかったり、屈みにくくなったりします。
体の状態を見つつ、あなたも両親と共に「使わなくなったモノ」を片づけていきましょう。よほど思い出のあるものじゃない限り、残す理由はありません。
例えば、乗らなくなった車やバイク・自転車、使わなくなった趣味グッズや習い事アイテム、長距離用旅行グッズなどです。おそらく、玄関収納や車庫、物置、押し入れ、クローゼットなどの収納に「使わなくなったモノ」がたくさん保管されていると思うので手放しましょう。
その代わり、「まだできること」を存分に楽しめるような環境づくりをしましょう。70歳になっても、80歳になっても、料理やテレビ、映画、読書、作品作り、散歩、カメラ、ガーデニング、小旅行を楽しめる人は多いと思います。そこは「生きがい」ですから、多少モノが増えてもいいと思います。
そんなふうに、年齢や体の状態を把握しながら、人生を楽しめるように、暮らしやすいように住環境を変化させていけば、いざサポートや介護が必要になったときに、家族や介護ヘルパーもサポートしやすくなります。万が一亡くなったときも、家に残されたモノは比較的簡単に遺品整理ができるはずです。
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YouTuber
登録者は10万人超、月間200万PV以上のYouTubeチャンネルを運営。「ミニマリスト」を目指し始めたのは2015年。難病が再発し、収入も貯金もゼロになったことで心機一転。3000個以上のモノを手放し、住環境や人間関係、家計管理を見直して、一度人生をリセット。ゼロから生活を見直し、節約・貯金・複業・投資を経て、2021年にFIRE(経済的自立)を達成。「モノはより少なく、自由で豊かな人生」を実現するためのミニマリズムを世界に広めている。主な著書に『月10万円でより豊かに暮らすミニマリスト生活』『月10万円でより豊かに暮らすミニマリスト整理術』(ともにクロスメディア・パブリッシング)。
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(YouTuber ミニマリストTakeru)
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