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3位は野間口徹、2位は坂東龍汰、1位は…国内ドラマ「2024年俳優ランキング」男性部門ベスト10

プレジデントオンライン / 2024年12月27日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Pitroviz

2024年に日本国内で放送・配信されたドラマで、評価するべき俳優はだれか。ドラマ偏愛コラムニストの吉田潮さんが作成した「2024年俳優ランキング」を紹介する。第1回は男性部門ベスト10――。(第1回/全3回)

■観たいと思う俳優は配信系に流れていった2024年

今年もやります、超主観&偏向的「ベスト俳優ランキング2024」。

男性部門は点数化で苦戦。なんかね、地上波作品が若年化&稚拙化しているせいか、私が観たいと思う中堅俳優がどんどん配信系に流れている気もする。地上波はギャラが低いのか、作品の質や志が低いのか。「ちいぱっぱ」学芸会作品が大量生産されているテレビドラマ界ではあるが、確かな技術で良作に貢献した俳優にまっとうな評価を。

【図表1】超主観&偏向的「ベスト俳優ランキング2024」

■エントリーは1作でも強烈な印象を残した

10位 稲垣吾郎 26点

自分の遺伝子を信じて疑わない危うさ

「燕は戻ってこない」(NHK)のたった1作の出演だが、強烈な印象を残した。世界に名を馳せたバレエダンサーで、己の血を引く子供がほしいがゆえに超高額な代理母ビジネスに依頼をする役だ。

不妊と不育で長年の治療に疲れ果てた妻(内田有紀)を気遣い、愛しているからこそ、禁断のビジネスに手を出す。選民意識が高すぎて無神経に見えるが、悪人ではない。ナルシシズムの純度が高くて、神々しさまで覚えるような役どころを違和感なく体現。また、特権階級の自負がある母親(黒木瞳)とのDNA連係も濃厚で、見事な母子関係を見せてくれた。

稲垣吾郎
写真提供=Anadolu Agency/ゲッティ/共同通信イメージズ
2022年10月26日、東京日比谷ミッドタウンで開催された第35回東京国際映画祭に登壇する稲垣吾郎 - 写真提供=Anadolu Agency/ゲッティ/共同通信イメージズ
8位タイ 戸塚純貴 27点

ボーイズクラブに同調しない、男の鑑

同点8位で2名。まずは戸塚純貴。なんつっても「虎に翼」(NHK)での轟太一の功績は大きい。やや時代遅れのバンカラキャラと思いきや、ホモソーシャルに毒されることもなく、性差別をせず、優秀な女性に敬意を払う、まともな男性を演じきったからだ。主にコミカルな言動と表情が思い浮かぶけれど、アイデンティティの葛藤も滲ませた名演だった。

「肝臓を奪われた妻」(日テレ)では、地獄を体験して復讐に走るヒロインに好意を抱く優しい男性役、「新宿野戦病院」(フジ)では未知の感染症の犠牲者になってしまうホスト役、「舟を編む」(NHK BS)ではイラストレーターだった亡き父のまなざしに気づく息子の役。軽妙さに加えて今年は優しさを強化した1年だった。

■「どこか光を感じる悪人」をやらせたらピカイチ

8位タイ 仲野太賀 27点

優しすぎた男、報われない次男の諦観

優しすぎる男といえば、仲野太賀。「虎に翼」で寅子の最初の夫を演じ、見事な腹下し芸からステテコ芸まで笑わせてくれた。

が、ポイントが高いのは「季節のない街」(テレ東)で演じた次男役だ。母と弟妹を支えるために頑張ってきたが、家を出て勝手気ままに生きる兄が、金も母の愛もすべて奪っていく。その報われない絶望の表情が今でも忘れられない。2026年の主演大河も今から期待しておこう。

6位タイ 玉置玲央 32点

嫌われ道兼の罪深き人生

NHK大河ドラマ「光る君へ」で視聴者に悲鳴を上げさせた唯一の人物を熱演。初回でヒロインの母親を斬り殺すという苛烈な役だが、父からも兄からも忌み嫌われ、汚れ役に徹するしかない悲しい定めは胸を打った。改心した場面があって救われた気もする。

玉置玲央
画像提供=ゴーチ・ブラザーズ

インタビューで「悪人ではなく、もう少しいい人の役を演じたい」と話していたのが印象的だ。確かにこれまでも残忍、あるいは反省のない極悪人の役が多かったのだが、そこにひとすじの光を表現できる玉置だからこそのオファーだったと思う。

■番外編① 「一人二役」で魅せた俳優3傑

話をそらそう。残念ながらランキング上位ではないものの、「一人二役」で演技力の幅を見せつけた俳優をまとめておこう。

●神木隆之介 やさぐれホストと純朴青年、時をかけた

「海に眠るダイヤモンド」(TBS)。信じるのは金だけ、平成のやさぐれたホスト役と、人を信じて和を重んじる昭和の青年役をまったく別の表情とトーンで演じた。厭世的で絶望と諦観しかない人間と、困難な状況でも希望だけは忘れない人間のギャップはすごかった。

●高橋文哉 アイドルヲタクのこもり人と伝説のヤンキー

「伝説の頭 翔」(テレ朝)。いじめを機に不登校になったアイドルヲタク男子高校生が、町で伝説と語り継がれるヤンキーと顔が似ているために、なりすましを余儀なくされる。美形の高橋が両極端な二役を心の底から楽しんで演じていた感も。どっちも純粋なのよね。

●磯村勇斗 マッチ好きヤンキーとコスパ重視男子

「不適切にもほどがある!」(TBS)。昭和では近藤真彦大好きで中途半端なヤンキーの先輩、令和ではその息子であるイマドキの低体温男子を演じた。時代の特性で父と息子を演じ分けたが、恋愛に対する熱量の差がおおいに笑いを誘った。どっちもかわいいんだけどね。

ということで、ランキングへ。皿をバリバリ食らう暴挙のあの人がランクイン。

■今年最もリアルな医師役を演じた

6位タイ 松山ケンイチ 32点

司法の独立とあんこの味にこだわり続けた男

またもやトラツバからエントリー。大の甘党であんこにこだわりをもつという使命を帯びて、コミカルな仏頂面を貫いたマツケンだが、「司法の独立」という揺るがないテーマも背負った、重要な役どころだった。すべての人を公平・平等にとらえる法律を、政治家に恣意的に蹂躙されて憤る姿は、令和の法曹界にとっても胸アツだったのではないか。

また「お別れホスピタル」(NHK)で演じた医師は、「死との向き合い方は他人や世間、さらには家族が価値観を押し付けるものではない」ことを教えてくれた。多くを語らずとも包容力を体現した1年だった気もする。

5位 若葉竜也 36点

星の数ほどある医療ドラマの中で最もリアルな医師

「アンメット」(関西テレビ・フジ系)は記憶障害を抱える脳外科医が主人公という、やや荒唐無稽な設定だが、主演の杉咲花と二人三脚で「良質な医療ドラマ」に仕上げた若葉の功績はぜひとも称えておきたい。

有能な医師として知識と見解を理路整然と述べる姿に、セリフ感や演技臭がなく、説得力しかなかった。元恋人の記憶から自分が消されているやるせなさをこらえ、真相究明に猛進する役を淡々と演じたが、心中は穏やかでなく、脳内も常にフル回転という心情描写も伝わった。ホントうまい。

■アニメ実写化の再現度高し

4位 矢本悠馬 40点

随一の軽妙さに加えて、安定感と意外性も生み出す

ここ数年、本当に働きづめである。画面の中でちょろつく面白さと軽妙さは既に評価されているが、今年は安定感と意外性を提供してくれた。「イップス」(フジではバカリズム演じる敏腕だがスランプの刑事を、適度な距離感で支えるバディ役、「舟を編む」では紙の手ざわりにこだわる製紙会社の営業で、辞書編纂の仕事で苦悩するヒロインを陰ながら支えて慕う役だった。安定の安心感。

「ゴールデンカムイ」(WOWOW)では脱獄王・白石由竹をぬるっとまるっと再現。正直、漫画のキャラと顔立ちが遠かったので、意表を突かれた感じだった。開けてみれば剽軽な役どころは適任で、実写化の不安を払拭。滑舌も愛嬌のある声もいいんだよなぁと新たな発見もあり、八面六臂の活躍を労いたいところだ。

左端の白石を演じたのが、矢本悠馬。
©野田サトル/集英社 ©2024映画「ゴールデンカムイ」製作委員会
実写『ゴールデンカムイ』では、脱獄犯・白石由竹(左端)を好演した。 - ©野田サトル/集英社 ©2024映画「ゴールデンカムイ」製作委員会

■番外編② 二人一役、絶妙な連係のキャスティング特別賞

ここらで再び脱線。今度は二人で一役を演じたコンビの妙をまとめてみる。

●木村昴&及川桃利 「クラスメイトの女子、全員好きでした」(読売テレビ・日テレ系)

主人公は同級生が書いた小説をパクって受賞してしまった作家・枝松脛男。罪悪感に身悶える可笑しさ、天性の優しさと人類愛に説得力をもたらしたのが主演の木村昴、中学校時代の脛男を瑞々しく演じたのが及川桃利だ。このふたりが連係して、魅力的な脛男を完成。こんな男子が同級生だったら、という理想形でもある。

●玉山鉄二&西山潤 「笑うマトリョーシカ」(TBS)

政治家の敏腕秘書・鈴木を演じた玉山鉄二、高校生の頃は西山潤が担当。DNAの連係が完璧すぎて、唸った。顔が似ているというだけでなく、自分の正義を貫くために悪事に加担してしまう逡巡を同じ体温で演じていたことに驚いたので。

●古田新太&錦戸亮、磯村勇斗&彦摩呂、袴田吉彦&沼田爆 「不適切にもほどがある!」

もうこれは笑うしかない、あえて別人級の配役である。テーマは「時の流れは残酷」であり、「でもなんとなくわかる気もする」設定。キャスティングした人に拍手を。いや、お互いに寄せて演じたかどうかは知らんけど、役者陣にも拍手を。

いよいよベスト3へ。3位は眼鏡ナシがネットで話題になったあの人である。

■もうバイプレイヤーとは呼ばせない

3位 野間口徹 41点

スウェット似合う選手権とノー眼鏡ヒール選手権優勝

今年は♪ノマノマイェイ、ノマノマノマウェイと歌い出したくなるほど野間口徹の暗躍を愛でた。

「VRおじさんの初恋」(NHK)ではVRゲームにしか興味がない、うだつのあがらない中年を演じた。どこにいても居心地悪く、誰といても落ち着かない、そんな人生ソロプレイヤーがVRゲームを通じて、人と関わる意義を見出す。

腹黒い笑顔や困惑顔であらゆる人間を演じてきたが、感情の起伏が少なめのおじさん役もしっくり。グレーのスウェット上下は、途端に男性から威厳を奪うアイテムなのだが、そもそも奪われるほど威厳がない中年というのも野間口ならでは。

野間口徹
写真提供=NHK
スーツもスウェットもよく似合う。「VRおじさんの初恋」はNHKオンデマンドで配信中 - 写真提供=NHK

逆に体温高めで演じたのが「あの子の子ども」(関西テレビ・フジ系)で、高校生の娘(桜田ひより)が妊娠したことでいろいろと血迷う父親役。ここでも威厳はないの。娘の子を自分の養子にするなど無神経な提案をして却下されたり、妻に暴言吐いたりもするが、真剣に考えているからこその暴言ともとれる。家族から蔑ろにされている父でも、頼りがいのある父でもないが、至極まっとうな父だと思わせてくれた。

もうひとつ、ネットで話題になったのが「全領域異常解決室」(フジ)の寿正役だ。眼鏡をかけないと野間口徹と認識されないのか、驚きの声があがっていた。本来は邪悪な笑みが似合うほうだよね。いろいろな顔を見せてくれたことを労おう。

■もう圧巻の名演でした

2位 坂東龍汰 42点

ミリ単位で心情変化を表現する珠玉の名演

どこか頼りない、気のいい青年役でキャリアを重ねてきた坂東。今年は「366日」(フジ)でヒロインたちの同級生役、「RoOT」(テレ東)で河合優実とW主演で新米探偵役をこなしてきた。

天然で悪気もなく頼りない感じが彼の持ち味と決めつけてきたことを反省したのが「ライオンの隠れ家」(TBS)だった。柳楽優弥演じる主人公の弟で、自閉スペクトラム症の青年・美路人を好演。いや、好演どころの話ではない。びっくりした、うますぎて。

「ライオンの隠れ家」(TBS)
「ライオンの隠れ家」(TBS)公式ウェブサイトより

美路人は日常生活で時間や順番に強くこだわりがあり、イレギュラーな事柄にはパニックを起こしてしまう特性がある。その繊細かつ敏捷、多発的な動きには目をみはるものがあった。坂東は相当な研究をしたはずだ。この美路人役だけで大賞を授けてもいいくらい、圧巻の名演だった。

え、だったら誰が1位なのよ⁉ 結婚のご祝儀も含めて、あの人に進呈。

■ヒロインの伴走者として理想的な存在だった

1位 岡田将生 50点

「なるほど」の説得力、笑みの奥に秘めた罪悪感

「不適切にもほどがある!」では昭和からタイムトリップしてきたヒロインをもてなすもスマホをなくすイケメン美容師青年役、「錦糸町パラダイス」(テレ東)では密かに人の裏の顔を晒して社会的に制裁を与えるジャーナリスト役、「ザ・トラベルナース」(テレ朝)では毒舌凄腕ナース・歩ちゃんとして、中井貴一とともに、新たなテレ朝シリーズ戦略に貢献した。

そして、セックスレス夫婦の行く末を描いた「1122 いいふうふ」(Amazon Prime Video)では、高畑充希と夫婦を演じ、実際に結ばれたわけだ。セックスに対する温度差を解消し、仲良く暮らすための自由恋愛を試す夫婦の物語だが、岡田は妻公認で愛人との逢瀬を楽しみながらも、その複雑な心境を表現。笑うに笑えない激痛シーンも含めて、正解のない夫婦の在り方を描いた問題作でもあった。

あ
ドラマ「1122 いいふうふ」(Amazon Prime Video)オフィシャルサイトより

最大の功績は言わずもがな「虎に翼」で演じた、寅子の2番目の夫・星航一役である。品のある微笑みの奥に、とてつもなく大きな罪の意識と喪失感を抱えている難役だった。

裏表なく猪突猛進の寅子に一種の憧れや嫉妬を見せながらも、徐々に愛情を募らせていく姿が麗しかった。「ちちんぷいぷい」でキャラ崩壊したり、老けメークがイマイチというツッコミどころはあったものの、ヒロインの人生の伴走者として理想的な存在であり続けたと思う。ありがとうとおめでとうをこめて。

ざっと眺めると、やはりNHK贔屓になっちゃってるな。2位はTBS、3位はフジの印象。テレ東にはエッジを取り戻してほしいし、日テレはいろいろな意味で呪縛から抜け出してほしいし、テレ朝には頑張れとしか言いようがない。

俳優がはじけられる問題作をお待ちしております。

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吉田 潮(よしだ・うしお)
ライター
1972年生まれ。千葉県船橋市出身。法政大学法学部政治学科卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆。2010年4月より『週刊新潮』にて「TVふうーん録」の連載開始。2016年9月より東京新聞の放送芸能欄のコラム「風向計」の連載開始。テレビ「週刊フジテレビ批評」「Live News イット!」(ともにフジテレビ)のコメンテーターもたまに務める。

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(ライター 吉田 潮)

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