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3位は杉咲花、2位は宮本信子、1位は…国内ドラマ「2024年俳優ランキング」女性部門ベスト10

プレジデントオンライン / 2024年12月28日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/baona

2024年に日本国内で放送・配信されたドラマで、評価するべき俳優はだれか。ドラマ偏愛コラムニストの吉田潮さんが作成した「2024年俳優ランキング」を紹介する。第2回は女性部門ベスト10――。(第2回/全3回)

■「有能なのにちょっとおバカ」がハマり役

超主観&偏向的「ベスト俳優ランキング2024」、女性部門は上位が早々に決まった。「面白いドラマを珠玉の役者陣で」という志を貫く制作陣が残っていると実感した。「この作品の運命を託すなら彼女しかいない」という熱い思いも伝わる。ではいく(最近よく観ているYouTuberのマネ)。

【図表1】超主観&偏向的「ベスト俳優ランキング2024」女性編
10位タイ 小池栄子 32点

詐欺師の説得力と元軍医の破壊力

同点10位、まず小池栄子は「地面師たち」(Netflix)で魅せたリアリティを評価。地面師詐欺グループの紅一点だが、弱者の人心掌握が巧みな手配師役がしっくり。地主になりすまし、機転で乗り切る場面は手に汗握ったものよ。

主演作「新宿野戦病院」(フジ)では岡山弁とわかりやすい日本人英語でまくしたて、媚びのない顔芸で盛り上げる元軍医役。日本では非常識や無神経とされる言動だが、医師、いや人間としてはまっとうなヒロインを演じきった。有能なのにちょっとおバカな要素を残してくれる小池、最高よね。

10位タイ 土居志央梨 32点

意志を貫き、ツンとはするがスンッはしない

もうひとり、土居志央梨はNHK朝ドラ「虎に翼」でヒロイン・寅子の盟友・山田よね役で脚光を浴びた。虐げられた背景を抱え、男装と弱者救済を貫いた芯の強さを体現。寅子と絶交状態にもなるが、友情は未来永劫続くと思わせた。頼もしくも憎らしくも愛らしくもあり、物語の中で尊い存在になった。

その後「無能の鷹」(テレ朝)では、変人扱いされてはいるが優秀なエンジニアを演じた。世間や常識にとらわれず自分のスタイルを貫く役は、土居の看板のひとつになりそうだ。

■出演作によって印象がガラリと変わる

8位 伊藤万理華 33点

呼吸が自然体、作品ごとで別人級に変貌

出演作によって本当にガラリと印象が変わる、不思議な俳優のひとり。今年はまず「PORTAL-X~ドアの向こうの観察記録~」(WOWOW)で演じたカメラマン役。現状とは異なる歴史をたどった並行世界「PORTAL」が複数存在するというモキュメンタリー作品。

明らかに危険なPORTALヘ取材に行かされ、恐ろしい真実を知ると同時に悲劇に見舞われるが、息遣いがリアルで驚いたのよ。セリフは少ないのに強く印象に残った。気配をすっと消すこともできるのよね。

PORTAL-X~ドアの向こうの観察記録~
「PORTAL-X~ドアの向こうの観察記録~」(WOWOW)公式ウェブサイトより

また「燕は戻ってこない」(NHK)で演じた、ヒロインの同僚役も「あーこういう感じの子、おるなぁ」と感心しきり。仕事も生活も男関係もすべてがゆるくて不安定、衝動的な割に自分の人生の土台をちゃっかり固めるタイプを好演。貧困の愚痴と社会への呪詛を滑らかに吐き出し、飄々とサバイブする姿がたくましかった。

主演作「パーセント」(NHK)で演じたのはテレビ局員。障害をもつ俳優を起用したドラマ制作に奮闘する。車椅子の女子高生俳優(和合由依)の演技に惚れこんで口説くのだが、さまざまな壁にぶち当たる。ドラマが好きでも情熱が空回りする様を、みずみずしく演じた。3作品とも高評価としたい。

■番外編① 馬車馬女優4傑

ここで、ランキングをちょいと外れる。今年のドラマで実によく働いた「皆勤賞」というか「馬車馬賞」を授けたい女優4傑を。

●余貴美子 狂気の人から恍惚の人まで6作品に出演

「虎に翼」では認知症を患った義母役、「Re:リベンジ」(フジ)では継承権争いで敵意を激しくむき出す義理の伯母役、「君が心をくれたから」(フジ)ではヒロインを幼少期から育てて見守った祖母役、「新宿野戦病院」ではヒロインのぶっとんだ母親でジャズシンガー役を演じた。

1話ゲスト出演も2作、余すところなく余貴美子の迫力や包容力が活かされた2024年。

●桜井ユキ 華族の令嬢から脱獄囚まで、観ない日はないほど登板

今年に限った話ではない。桜井ユキは本当によく働く。主演にこだわらず、しれっと脇で爪痕を残す。陰の見せ方がうまいのよね。今年は5作品。「虎に翼」では華族の令嬢役、「ゴールデンカムイ」(WOWOW)では妖艶な女装の脱獄囚(中身は殺人鬼の爺)を演じた。

「95」(テレ東)と「ライオンの隠れ家」(TBS)では記者(ライター)役で、真相追及という使命を背負っていた。聡明で大胆だが、怒りの導火線を内に秘めた役が意外とハマる気がする。

■「全日本看護師役最適選手権」優勝

●さとうほなみ 不倫、横恋慕、逆恨み、社内CIAと嫌な役回りコレクター

5作品、出ずっぱり! この数年、恋愛系ドラマで嫌な役回りを進んで引き受けているフシもあり、頼もしい限り。勝気で攻めの態度の女を演じることが多い分、寡黙な役を演じたときのギャップも計算済みならば、戦略成功。

「わたしの宝物」(フジ)ではヒロインの不倫相手に好意を寄せるも邪険にされる役、「無能の鷹」(テレ朝)では社内CIAと呼ばれる情報通だが、自分の社内恋愛はバレバレというわきが甘い役。

個人的には「持久力とリズム感のある女性ドラマーの役者起用」は好物なので、シシド・カフカと並んで、ほなみにも期待している。

●野呂佳代 画面の端で絶大な安心感を与える名脇役に

「全日本看護師役最適選手権」があったら間違いなく優勝。ナース役が板につき、手元の仕草が医療従事者そのものに。

病院が似合いすぎたか、今年は麻酔科医役も担った(「アンメット」関西テレビ・フジ系)。NHK大河「光る君へ」でもちょろっと登場、「舟を編む」(NHK BS)ではヒロインの父親の再婚相手、「クラスメイトの女子、全員好きでした」(読売テレビ・日テレ系)ではプロレス好きな女子・橘さんの現在を演じて、有無を言わせぬ説得力をもたらした。6作品、ノロカヨイヤーだ。

そろそろ戻るが、馬車馬系であり、かつ、ランキングに入ったのはあの人だ。

■実質上は1位なんですが

7位 坂井真紀 40点

母という生き物を生々しく&香ばしく表現

今年はいろいろな母ちゃんを演じていたなぁ……。娘にたかり、男にだらしない母(「若草物語」日テレ)、自身の離婚&再婚を機に、娘との距離感をつかめずにいる母(「くるり」TBS)、他にも未来から来たり、事故で亡くなったり……。

2023年放送(今年再放送)された「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」(NHK BS)の母役が好演で、母親役のオファーが殺到したのではないかと推測する。

で、今年最も強く瞼の奥によみがえるのは「季節のない街」(テレ東)で演じた母だ。ヤンチャな長男(YOUNG DAIS)を溺愛するあまり、優しい次男(仲野太賀)を蔑ろにしまう、何というか、やや問題のある母親だったが、すごくリアリティがあった。子育ては公平にはいかないもので、偏ってしまう皮肉を表現。「子の心、親知らず」ってやつだ。

母役需要は今後もしばらく続くだろう。

6位 伊藤沙莉 41点

1位でもおかしくない、歴史に残る名演

もうすでにお気づきとは思うが、「虎に翼」が面白すぎたため、記述もつい増えてしまう。その座長がなぜ1位じゃないのか? これは他の作品の出演がないからである。佐田寅子に捧げた数年を評して、実質上は1位でもある、と言いたい。

『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 虎に翼Part2』(NHK出版)
画像=NHK出版
『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 虎に翼Part2』(NHK出版) - 画像=NHK出版

時間に制限のある朝ドラで、たった数秒間でも意味と意義と奥行きのあるカットとして表現したヒロインだった。鍛え上げた芝居の筋肉で笑いも涙も誘う一方で、怒りが根底にあるヒロインを見事に演じきった。怒りの表現力がとにかく抜群だ。歴代の中で最も聡明で知的なヒロインを完走した沙莉、次の作品が楽しみ。

■次回朝ドラに対する期待と不安の二つ在り

5位 河合優実 43点

コミカルに父娘の愛を変化球で魅せた適役

なんでもありの野蛮な昭和と、コンプラ重視でぎすぎすした令和を行き来する「不適切にもほどがある!」(TBS)で、主人公の父(阿部サダヲ)とともに、切なくも笑える物語を牽引。父娘の口汚いが愛のある喧嘩も見ものだった。

80年代のツッパリかわいこちゃんに説得力をもたらしただけでなく、強がっているが寂しさを見せまいとする健気さにも心奪われた。歌もうまかったよねぇ。「RoOT」(テレ東)では、事件を追いつつも自分の過去と対峙する若き探偵役。自然体の怪物だ。

今後の活躍が楽しみな若手のひとりだが、テレビドラマで観たい気持ちと、逆に駄作で消費されてほしくない気持ちがある。来年の朝ドラは大丈夫かな。

2024年11月1日、映画『彼女が教えてくれたセレンディピティ』の舞台挨拶に出席する河合優実
写真提供=VCG via Getty Images/ゲッティ/共同通信イメージズ
2024年11月1日、映画『彼女が教えてくれたセレンディピティ』の舞台挨拶に出席する河合優実 - 写真提供=VCG via Getty Images/ゲッティ/共同通信イメージズ

■民放でも配信でも匠の技を魅せた

4位 森田望智 45点

確かな再現力、強烈な印象、振り幅がすごい

演じる役柄の方向性がまったく異なるのに、どの作品においても強烈な印象を残す匠の技を感じた。「虎に翼」で主婦の鬱屈を表現したと思ったら、名作漫画のキャラを見事に再現。「シティハンター」(Netflix)の槇村香役は地味に感動しちゃったよ。完璧な鈴木亮平にがっつり喰らいついた感。

「シティハンター」(Netflix)
「シティハンター」(Netflix)公式ウェブサイトより

「ザ・トラベルナース」(テレ朝)の新人問題児ナース役も物語をかき回す厄介な役どころだったし、不評の声しか聞こえてこない「龍が如く」(Amazon Prime Video)でも、度肝を抜くトラブルメーカーの役。罪悪感も躊躇もなく迷惑をかける醍醐味を、まざまざと見せてくれた。

■番外編② 阿吽の呼吸を見せた「名コンビ」3組

再び、話をそらそう。名コンビと思った作品が3つあったのでまとめておく。

●小林聡美&小泉今日子 酸いも甘いも経験した幼馴染コンビ

「団地のふたり」(NHK BS)で共演したふたりの「ちょうどいい」距離感がうらやましかった。55歳設定、キラキラもギラギラも通過し、人生の凪を淡々と謳歌するふたり。成熟というほど達観はしていないところもリアルだった。続編希望。

●伊澤彩織&髙石あかり 社会不適応な殺し屋コンビ

映画からドラマ化した「ベイビーわるきゅーれエブリデイ!」(テレ東)。ちさと(髙石)&まひろ(伊澤)は淡々と任務をこなす手練れの殺し屋だが、ほどよく脱力感を醸し出す共同生活が愛おしくてね。時を経てもコンビは続けてほしい。

●比嘉愛未&西野恵未 少しずつ心の距離を縮めていく愛情

「作りたい女と食べたい女」(NHK)は、女性同士の恋愛を丁寧に描いた作品。料理好きな比嘉と食べることが好きな西野が、隣人からお互いの大切な人へと、愛情を育んでいく。このふたりだったからこそ、優しい物語として完成した感がある。

コンビではないが「極悪女王」(Netflix)でデビル雅美役の根矢涼香と、ジャガー横田役の水野絵梨奈も名演だった。身体能力の高さと表現力で、昭和のレスラーを見事に再現。メイン3人もよかったが、特にこのふたりがリアリティに貢献。

さて、やっとベスト3へ。誰もが納得ではないかと思う。

■記憶が1日しかもたない脳外科医を好演

3位 杉咲花 52点

医療ドラマで真摯な役づくり、格を見せつけた

「アンメット」(関西テレビ・フジ系)で、記憶が1日しかもたない脳外科医という難役を演じた。若い女性の脳外科医という設定に懐疑的だったが、その真摯さにどんどん心を奪われた。

毎朝、昨日までの日記を読み返して、患者の情報も人間関係も1から覚え直すという苦行。相当無理め設定だが、杉咲に託して正解。破天荒でも天才でもない医師が苦悩を背負いながらも日々懸命に生きる姿が尊かった。

「海に眠るダイヤモンド」(TBS)では食堂の娘・朝子を健気に演じた。彼女の実力とキャリアを十分発揮できる、良作に巡り合っている印象だ。

■NHKドラマでの「母」役が圧巻

2位 宮本信子 53点

品格と威厳と茶目っ気を共存させる無二の俳優

今年はテレビでも配信でも大活躍。「忍びの家」(Netflix)では忍びの一族・俵家の祖母・タキ役。現役を離れ、ハンバーガーをモリモリ食べたりする茶目っ気もあるが、機敏に動かずとも忍びの貫禄と威厳を体現。

「海に眠るダイヤモンド」では端島出身の会社社長役。かつて愛した男に瓜二つのホスト(神木隆之介)に恋人を装わせるも、その過去には謎が多い。端島に思いを馳せる時の表情は、言葉以上に多くを語る。ふわーっと背景が広がっていくような錯覚を提供。数十年を遡って描く設定に、これ以上の適役はいない。

宮本信子
画像提供=東宝芸能

で、最大の功績は「母の待つ里」(NHK BS)で演じた「母」役である。宮本は日本国民全員の母を演じられると思わせた、トリッキーな設定だ。独特の方言で昔話を聞かせる場面も、類を見ない迫力が。地上波で再放送しないかしらね。

故・伊丹十三監督の映画で築いてきた「品のあるかわいらしさ」「特殊な職業の独特な威厳」「機転と突破力」などの魅力が再び開花した、そんな年だった。

■来年の大河ドラマでの活躍も楽しみ

1位 安達祐実 54点

罪悪感の行方、感情の揺らぎを好演

「ビリオン×スクール」(フジ)では教育用AIプログラム・ティーチという、人間じゃない役で不思議な存在感を醸し出した安達。

なんといっても、久々の主演作「3000万」(NHK)で魅せた、迷える子羊ならぬ大金に目が眩んだパート主婦の役が素晴らしかった。罪の意識を抱え、いや、実際に悪事に加担したうしろめたさも含めて、シニカルに「精神状態も経済状況も崖っぷち」を好演。

安達祐実
画像提供=IMILIMI

「ザ・トラベルナース」で使えない新人ナースに暴言吐く姿もちょっと胸がすいたし、「推しの子」(Amazon Prime Video)の漫画家役にも馴染みと説得力があった。

ということで、振り返ると今年はNHKと配信系のドラマが豊作。果樹同様、豊作の翌年は不作という懸念もあるが、金を払ってる分だけ執拗にチェックしていこう。

若い俳優だけでなく、年齢を重ねたからこその女の円熟を魅せてくれる俳優が活躍できる作品を増やしてほしいわ。

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吉田 潮(よしだ・うしお)
ライター
1972年生まれ。千葉県船橋市出身。法政大学法学部政治学科卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆。2010年4月より『週刊新潮』にて「TVふうーん録」の連載開始。2016年9月より東京新聞の放送芸能欄のコラム「風向計」の連載開始。テレビ「週刊フジテレビ批評」「Live News イット!」(ともにフジテレビ)のコメンテーターもたまに務める。

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(ライター 吉田 潮)

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