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「勉強しなさい」より効果的…子が自ら勉強し偏差値70の中学を目指すようになった"親の問いかけフレーズ"

プレジデントオンライン / 2024年12月27日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hakase_

自ら勉強をする子どもの親は、わが子にどんな声かけをしているのか。未来の成功者を育てるために小学生対象の非認知能力向上に取り組んでいる井上顕滋さんは「親の役割は、子どもの性格や状況に応じて、適切なタイミングで必要な刺激を与えることにある」という。子どもが机に向かうことの価値に気づくための15の声かけを紹介しよう――。

中学受験を控えるお子さんを持つ親御さんなら、一度は「なんでうちの子は勉強しないんだろう」と疑問に思ったことがあるのではないでしょうか。合格に向け、親としては何とか勉強させたいと思うものの、子どもが全く机に向かおうとしないと、どうしたらよいのか途方に暮れてしまいます。

子どもが「勉強しない理由」は、実は大きく分けて3つあります。

1つ目は「楽しくないから」。勉強を楽しむ工夫がなければ、子どもにとって勉強は単なる「苦行」となり、やる気を削がれます。

2つ目は「わからないから」。理解が追いつかないと勉強がストレスになり、避けるようになります。

3つ目は「重要性が理解できないから」。勉強する意義や目的を知らないままでは、なぜ頑張らなければいけないのか納得できません。

これらの理由が複合的に絡み合い、結果として「勉強しない」という状況が生まれるのです。ここで注目すべきは、子ども自身が意欲的に勉強を始めるには、これらの障害を一つずつ取り除き、「楽しい」「わかる」「大切だ」と感じさせるアプローチが必要だということです。

このような背景を踏まえ、最近では「勉強しなさい」という指示が子どもの学習意欲を損ねる可能性がある、という議論もよく耳にします。

その主張は、心理学や教育学の研究に基づいています。たとえば、心理学者エドワード・デシとリチャード・ライアンが提唱した自己決定理論では、人間のやる気は「自律性」「有能感」「関係性」という3つの基本的欲求が満たされることで高まるとされています。

親が強制的に「勉強しなさい」と言うと、自律性が損なわれ、子どもが勉強に対して反発心を抱いてしまうことがあるのです。このような理論を背景に、「勉強しなさい」という指示は慎重に使うべきだとする意見があるのも事実です。

しかし、現実の子どもに対応するには、それだけでは不十分です。すべての子どもが放っておいても勉強をはじめたり、やさしい声かけだけでやる気になったりするわけではありません。それではどうしたらよいのでしょうか?

■すべての子どもが「放っておいても勉強する」わけではない

教育心理学者キャロル・デュエックの成長マインドセット理論によれば、子どもの学び方や成長の仕方には大きな個人差があります。特に、「固定的思考(Fixed Mindset)」を持つ子どもは、「自分は勉強ができない」「勉強は苦手」と考え、失敗を恐れて挑戦を避ける傾向があります。このようなタイプの子どもの場合、学習や努力の「過程」を重視し適切にサポートすることを前提として、親からの明確な指示が学習を始めるきっかけとなることがあります。

また、スタンフォード大学のBJフォッグが提唱する「フォッグ行動モデル」によれば、人が行動を起こすためには「動機(Motivation)」「能力(Ability)」「きっかけ(Prompt)」の3つが揃うことが必要だとされています。「勉強しなさい」という指示は、まさに「きっかけ」としての外的な刺激となり、適切に使えば子どもが学習を始める第一歩となり得るのです。親の役割は、子どもの性格や状況に応じて、適切なタイミングで必要な刺激を与えることにあると言えます。

■指示の前に、気付きを促す「問いかけ」を活用する

ただし、単に「勉強しなさい」と繰り返すだけでは、親子間のコミュニケーションがうまくいかない場合があります。そこで、子ども自身が「勉強の価値」に気付くよう、親が問いかけを活用する方法が効果的です。

子供に話しかける父親とそっぽを向く子ども
写真=iStock.com/imtmphoto
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/imtmphoto

たとえば、将来の目標や夢を話題にしながら、勉強と結び付ける問いかけが有効です。

●「将来、大人になったらどんな仕事をしてみたい?」
→ 子どもが自分の将来について考えるきっかけを作ります。

●「その仕事をするためには、どんなことを知っていると役立つと思う?」
→ 勉強が夢の実現に必要なスキルであることを考えさせます。

●「今のうちにどんな準備ができると思う?」
→ 勉強が「将来の自分」への準備であると気付かせます。

また、憧れの存在がいる場合には、その人の成功の背景を話題にするのも有効です。

●「あなたが好きな人(アスリートやピアニストなど)は、どうやって今の実力を身につけたと思う?」
→ 努力や学びが成功につながることを認識させます。

●「海外で活躍している人ってみんなすごく勉強しているらしいよ」
「その人みたいに活躍したいなら、今の勉強はどう役立つと思う?」

→ 中学受験での勉強内容が夢に繋がっていることを気づかせます。

日常生活に結び付ける方法も効果的です。

●「普段の生活で、これって便利だなと思うものはある?」
「それって、どうやって作られていると思う?」
「どんな勉強をしておくとすごいものがつくれるようになりそう?」

→ 勉強が将来の可能性を広げる手段であることを感じさせます。

あるご家庭では、お母さんが子どもの将来の夢であるキャビンアテンダントという目標を学習につなげるために「CAさんとして活躍できるようになるためにはどんな勉強をしておく必要がある?」や「CAさんになるための条件って調べたことある? 調べてみたら?」などのを声かけを行い、学ぶ目的を子ども自身に感じさせるよう工夫していました。すると、こうした取り組みにより、子ども自ら勉強に向かうようになっていったそうです。

子どもは小4の頃から中学受験に向けての学習塾の入塾テスト対策を始め、小5になった時点で入塾試験をクリアしました。現在、その塾では150人中9番目の成績で、上位クラスを維持する為に朝6時から夜23時まで勉強することもあり、偏差値70レベルの中学校を目指して頑張っています。

■「勉強しなさい」がポジティブに働く条件とは?

このような問いかけを通じても、子どもがどうしても動かない場合は、「勉強しなさい」という親の明確な指示が必要になることもあります。

アメリカの発達心理学者ダイアナ・バウムリンド(Diana Baumrind)が行った調査では、明確なルールや一貫性ある指導を与えつつ、子どもの意見や感情を尊重する態度で接する『権威的な子育て(authoritative parenting)』を行う親のもとで育つ子どもは、自己肯定感が高く、社交的で、学習意欲や問題解決能力が優れていることがわかりました。その後、エレノア・マッコビー(Eleanor Maccoby)やジョン・マーティン(John Martin)をはじめとする研究者たちによる、多様な文化的背景を持つ対象集団に対する長期縦断研究でも、やはり権威的スタイルが子どもの学業達成、社会的成熟、メンタルヘルス面で有益であると結論づけています。

ただし、その際には普段子どもに対して温かみのあるコミュニケーションをとり、愛情をしっかり感じさせている必要がありますのでお気をつけください。以下が「勉強しなさい」をポジティブに働かせるための注意点です。

子どもの勉強を見る母親
写真=iStock.com/miya227
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/miya227
1.一貫性が重要

ルールを作ったら、その場しのぎで変えたり不公平に扱ったりしないことが大切です。一貫性がないと、子どもは混乱し、親との信頼関係が揺らぐ可能性があります。また、「ルールを守らなくても大丈夫」と認識させることにもつながります。

両親や複数の養育者がいる場合、基本的なスタンスや規則について事前に話し合い、できるだけ足並みを揃えることが望まれます。親同士で方針が異なると、子どもはどちらに従えばよいか戸惑い、場合によっては片方の親を味方につけてルール回避を試みるなどの行動が出やすくなります。

2.子どもの個性を尊重すること

全ての子どもに同じ対応が合うわけではありません。性格や発達段階に応じて、褒め方や声のかけ方、関わり方を柔軟に工夫する必要があります。

幼児と小学生、中学生、高校生では、それぞれ理解力や自己コントロール力が異なります。幼児には短い言葉と視覚的なサポート、小学生には理解できるような論理的な説明、中高生にはもう少し深い対話や議論が効果的です。

また気質や性格特性への考慮も重要です。社交的な子どもには、積極的な場や仲間との交流機会を与えることで才能を伸ばせますが、内向的な子には無理に他者との交流を強要せず、一人で楽しめる学びや自己表現の機会を確保することがサポートになります。学習面での遅れ、特定の才能や障害など、その子が持つ特定のニーズをよく観察し、それに合った支援を心がけてください。

3.「厳しさ」と「やさしさ」のバランス

権威的子育ては「優しすぎて何でも許す」わけでも、「厳しすぎて押さえつける」わけでもありません。両極端に偏らず、適度な指導と温かい配慮を両立させる姿勢が大切です。

まずは「厳しさ」の質を見直すことから始めてください。ここで言う「厳しさ」は、子どもの人格を否定したり無理やり抑えつけたりすることではなく、子どもが守るべき社会的ルールや責任を明確にし、それに違反したときは理由を伝えた上で適切な対応(叱る、ペナルティを与える)を行うことです。過剰に怒鳴る、身体的罰を与えるといった過激な方法は、長期的に子どもの心に悪影響を及ぼします。

この研究で、厳しさに偏りすぎた接し方をする親に育てられた子どもは自発性や自己主張が弱くなることがわかりました。またコミュニケーション能力や学力の低下、さらに自己肯定感が下がり将来うつなどのリスクが上がることもわかっていますのでくれぐれもご注意ください。

「優しさ」と「寛容さ」の限度にも注意が必要です。優しさや子どもを思いやる気持ちは重要ですが、全てを子どもに合わせてしまうと、子どもは自律性や自制心を獲得する機会を失います。望ましくない行動に対しては、なぜそれが問題なのかを説明し、子どもが自ら責任を理解できるよう促しましょう。

4.親自身のセルフケアの重要性

親が疲れ果ててイライラしていると、一貫性の確保や柔軟な対応がどうしても難しくなります。親自身が十分な休息を取ることが重要です。長年ネガティブな感情に支配されている人や、子どもへの愛情の与え方がわからないなどが理由で、優しさと厳しさのバランスをとることが難しい人はコアビリーフセラピストなどの専門家やコミュニティにサポートを求めることも、良質な「権威的子育て」の実践に欠かせません。

■「勉強しなさい」とセットで言うと効果的な声かけ

ここで「勉強しなさい」とセットで行うことで親の愛情を同時に伝えるコツをお伝えします。

●学ぶ価値を伝える

「この算数の問題を解くと、難しいことを考える力が鍛えられるんだよ」
「理科を学ぶと、世の中の仕組みが分かるから面白いよね」
「国語は、将来どんな本を読んでも内容が理解できる力をつけるためなんだよ」

など、学ぶ価値を伝える。

●小さな目標を設定する

「今日は漢字を3つだけ覚えよう」「10分だけ集中してみよう」

など、年齢に合わせた達成しやすい目標を設定することで、子どもに成功体験を与える。

●ポジティブなフィードバックを与える

「頑張ったね」「少しずつできるようになってきたね」

といった前向きな声掛けを心がけることで、子どもは努力を続けやすくなります。

子どもを抱きしめる母親
写真=iStock.com/kyonntra
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kyonntra

■親が導く「厳しさと気付かせ」のバランスがカギ

最後に大切なのは、親が「あたたかい愛情をベースとした厳しさ」と「気付かせ」のバランスを取ることです。

ある野球が大好きな小4の子どもがいるご家庭では、「勉強しなさい」と厳しく伝える一方で、子どもがつまずいて投げやりになっている時には「最初は誰だってできないんだよ」「この前も諦めずに頑張ったら、わからなかったところがわかるようになったよね」と励ましたり、「大谷翔平選手ならこういう難しい問題をやる時、どう考えて、どう乗り越えると思う?」という気づきを促す質問をしたりする関わりを続けていたそうです。

その結果、算数が苦手だったAくんは、「1カ月間、毎日1時間勉強にチャレンジする」と自ら目標を立てるようになりました。現在は小5になり、「もっと解きたい」と自分から1日3時間以上も集中して勉強する習慣が身についているそうです。

この例からも分かるように「勉強しなさい」といった厳しさが必要なケースもあれば、問いかけで気付かせる方が効果的なケースもあります。

子どもの性格や状況を見極め、柔軟に対応することが、学習意欲を引き出すカギです。親の適切なサポートは、子どもの未来を切り拓く最大の力となります。非認知能力のうちの「やる気」や「忍耐力」に相当するものが、身につくことでしょう。「「勉強してくれない」と嘆くよりも、ぜひこの記事を参考に、子どもと向き合いながら、その可能性を最大限に引き出してください。

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井上 顕滋(いのうえ・けんじ)
非営利型一般財団法人日本リーダー育成推進協会(JLDA)特別顧問
1970年生まれ。2004年 Result Design株式会社を設立。最先端の心理学および脳科学を学び、それらを融合させることで人それぞれの持つ能力を最大限に引き出す、独自の能力開発メソッドを確立。3000社以上の企業で経営者・経営幹部への指導や研修を行い、「1年間で離職率8分の1」「2年間で経常利益26.8倍」「営業成約率平均31.9%アップ」などの実績をもつ。エグゼクティブコーチ、メンタルトレーナーとしてオリンピック出場の日本代表選手や世界一に輝いたプロスポーツ選手のサポートも行っている。自らも経営者として30年以上の部下育成の経験を持つ。2011年に未来の成功者を育てるため、小学生を対象とする日本初の非認知能力専門塾Five Keysを設立。2015年には非営利型一般財団法人日本リーダー育成推進協会(JLDA)を創設し代表理事に就任。現在は特別顧問。講座などを通じてこれまで指導した小学生の保護者は4万人を超える。著書に『7つの“デキない”を変える “デキる”部下の育て方』『子育てママに知ってほしい ホンモノの自己肯定感』(ともに幻冬舎)などがある。

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(非営利型一般財団法人日本リーダー育成推進協会(JLDA)特別顧問 井上 顕滋)

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