バカほど「なるほど、勉強になります」と言う…学ぶことをやめた大人たちが口にする"残念なフレーズ"
プレジデントオンライン / 2024年12月29日 9時15分
■「勉強」すると考える力が身に付く
社会人が勉強するとき、その目的は「勉強すること」そのものでかまわない。これは山登りの目的と似ている。山登りが好きな人は、山に登りたいから山に登るのだ。その目的を果たそうとしていると、あとから素晴らしい気分になったり、達成感を味わえたりする。これらはすべて後付けの感情だ。
社会人の勉強も同じだ。目的は「勉強」であり、しっかり勉強することで脳が活性化し、柔軟性が身に付いたり、ストレス耐性が上がったりする。考える力が身に付き、覚悟を決められるようになる。
私は16年以上メルマガを発信し続けている。週に2~5回発信しているが滞ったことは一度もない。「何のためのメルマガを出しているのか?」と自問自答することもあるが、すぐ自制する。それをしてしまうと、継続できなくなるかもしれないと思うからだ。
勉強するときもそうだ。「継続するために勉強しよう」「習慣化するために勉強しよう」とあまり我に返らないようにすることを私は強くお勧めする。
とはいえ、何となく勉強をしていても、勉強の効果は実感しづらい。目的はともかくとして、目標があったほうがいい。ゴールや目的地だ。そうでないと、だらだら本を読んだり、何となく研修を受けることになる。いくら勉強をすることが重要だといっても、目標がないとさすがに効率的に学べない。
■「理解レベル」には4つの段階がある
それに「勉強しがい」がないではないか。資格試験などは最もわかりやすいゴールだ。しかし、そういったわかりやすいゴールがないのなら、これから紹介する「理解レベルの4段階」を参考にしてほしい。勉強する上での大事なモノサシとなる。(図表1)
まずは、レベル2を目指し、経験を積んでレベル3にする。さらに上司として部下育成したり、お客様にレクチャーすべきなら、レベル4まで目指したほうがいいだろう。それではさっそく「理解レベルの4段階」について解説していく。まずは「理解には4つのレベルがあり、それを無視して一足飛びに理解が進むことはない」と捉えよう。
まず理解レベル1についてだ。学ぶ意識が低かったり、ネット記事やブログ、動画といった断片的な情報のみで勉強していると表面的な知識しか手に入らない。理解どころか「正しい知識」の習得もできていないはずだ。
このように、多角的な視点が手に入らないと勉強を終えても「参考になった/参考にならなかった」程度の浅い印象しか残らない。これがレベル1の状態である。
次に理解レベル2だ。多様なインプットを通じて、多角的な視点で物事を見られるようになっている状態。これがレベル2である。全体像を理解した上で、何が論点で、何がトピックで、何が具体的なコツかも整理できている。そのためには、体系的に書かれた複数の書籍や研修からのインプットが不可欠だ。
■「腹落ち」することを目指す
一方で、体系的に知識を身に付けても実際に経験し安定して成果を出さないと腹に落ちることはない。知識を身に付けると最初はわかった気になる。だが、知識を応用してもうまくいかないことが増えると納得できなくなるものだ。「本当にこの知識・ノウハウは役に立つのか?」と疑うようになる。
「理解=言葉×体験」を頭に入れ、知識に基づいた実践を繰り返す。知識と経験が資産化するといずれ点と点が繋がって――まさにスティーブ・ジョブズが言った「コネクティング・ザ・ドッツ(「点と点を繋ぐ」の意味)」を体現することになる。そうすると、複利曲線を描くように理解レベルが上がっていき、腹に落ちる。
「ああ、そうか!」といった「腹に落ちる/腑に落ちる」という心理現象を味わったら、理解レベル3の状態に達したと受け止めていいだろう。ここで大事なことは「知識に基づいた経験」が増えることだ。自分なりのやり方で経験を積んでも、なかなか点と点が繋がることはない。
さらにレベルが進むと腹に落ちるだけでない。膨大な知識資産、経験資産によって、借り物の言葉ではなく、自分の言葉で人に教えられる域に達する。これが理解レベル4の状態だ。大量の試行錯誤を重ねているため、センスが磨かれている。何がいいか、何が悪いかを一瞬で見抜くことができる。理解レベル4にまで達すれば、知識や知恵のみならず知性も身に付いたと捉えていい。
こういったモノサシを頭に入れて研修を受けたり、読書に勤しんだりすれば、効果的に勉強できるはずだ。
■「オンラインサロン」には入らないほうがいい
本稿の最後に社会人がやらないほうがいい勉強法をお伝えしておきたい。それはたった1つだけ、交流がメインの講座やオンラインサロンに参加することだ。人と人とが交流する時間や機会をやたらとお勧めするコミュニティやオンラインサロンなどは、できる限り避けたほうがいい。
たしかにモチベーション維持のためには効果があるだろう。しかし、交流のための時間が大きく取られると勉強効率が非常に悪くなる。
私がとても気になる言葉を紹介する。それは「勉強になります」という言葉だ。交流会などでビジネスパーソンと会い、いろいろ話をしていると、「とても勉強になります」「学びの深い時間になりました」などと言われることが多い。あるテーマについてレクチャーしてそう言われるのは嬉しいが「実際にいったい何が勉強になったのか?」と問いたくなる。
何かを学んだ際のポイントは「記憶」である。それでは、一体何が記憶されたのか、必要なときにタイミングよく思い返せるように脳に記憶された知識やノウハウは何か? と問いたくなってしまう。
■「勉強になります」しか言えないなら無意味
その場限りの「気付き」を得ただけで、「勉強になります」と言ってはいないか。実のところ、何を隠そう、私も昔はそうだった。いろいろなコミュニティに参加し、著名な著者、経営者に会いに行って、「勉強になります」と言い続けた過去がある。楽しいし、その時間は充実している。だが、結局は何も残らなかったことが大半だった。
先にも述べたが、勉強は一人でやるものだ。資格試験や高校受験、大学受験を思い出してほしい。人から刺激を受けることは大事だ。しかし誰かと交流している時間があるぐらいなら、10分でも20分でも勉強したほうがいいと思ったはずである。それは社会人になっても当然同じだ。
もちろん、人と交流することによっていろんな学びを得ることができる。しかしそれは、そのテーマにおける「理解レベル」が3以上になってからにしよう(「理解レベル」は図表1を参照)。理解レベルが3以上になれば、同レベル以上の人と話をすることで、深い気付きを得られるだろう。
たとえば「採用におけるAI活用」というテーマで考えてみる。理解レベル1の人だと、「やっぱり採用面接にもAIを活用したほうがいいんですね。勉強になります」ぐらいしか言えない。こういった発言を聞いて相手も「ああ、そうですね。確かに、時代は変わっていきますからねえ……」といったリアクションしかとりようがない。
「今日も勉強になりました。ありがとうございました」これぐらいの感想しか言えない人は、まずそのテーマにおける知識やノウハウをしっかり勉強した上で、あらためてコミュニティやオンラインサロンに参加するようにしよう。
■「知識量を増やすこと」に力を注いだほうが良い
勉強しているかどうかは、記憶している知識量で測ればいい。単に知識が増えればいいわけではないのはわかっている。しかし体系的な基礎知識がない限り、知識と経験が繋がって新たな知見や知恵が生まれることはないのだ。
理解が足りないと、コミュニティやオンラインサロンの頂点に君臨するオーナーの「養分」にされてしまう。いつかは成果が出ると信じて高い会費を支払い続けることになる。
それどころか、交流会で理解レベルの高い他メンバーの格好の営業ターゲットになることも多い。別のコミュニティに誘われたり、高額の情報商材を売り込まれる可能性もある。つまり「カモ」にされるわけだ。
私が理想として奨励するのは「ダム勉強」だ。松下幸之助が提唱した「ダム経営」と同じ発想だ。必要なときに必要な分だけ勉強するのではなく、普段から勉強を通じてある一定量の知識やノウハウを常に蓄えておくこと。
これがダム勉強だ。お金と同じで、知識やノウハウ資産に余裕があれば安心だ。ここぞというときに蓄えられた知識やノウハウを有効活用できる。
だから、「社会人の学び」では、理解レベル2ぐらいまでは少しばかり負荷がかかっても必須でやるべきだ。知識量を増やすことに力を注ごう。勉強は受験や資格対策と比べるとわかりやすい。同じ目標を持つ人と集まって情報交換するのもいいが、基本的には一人でやるものだ。そこは学生も社会人も同じ。勉強は孤独な作業であり、自分との戦いなのである。
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株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ代表取締役社長、コンサルタント
1969年、名古屋市生まれ。幼いころから自由奔放な性格で、大学も行かずに社会に飛び出した。35歳でコンサルタントに転身したことを機に、独学による猛勉強を開始。その数年後には実績を上げ始め、セミナーや講演の依頼が殺到。代表を務める会社のコンサルティング先はNTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで200社以上。著書に『絶対達成マインドのつくり方』『絶対達成バイブル』など「絶対達成」シリーズの他、『「空気」で人を動かす』などがある。
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(株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ代表取締役社長、コンサルタント 横山 信弘)
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