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男性は30代、女性は40代で「ヨボヨボ化」が急加速…休んでも疲れがとれない人がやるべき"たった一つのこと"

プレジデントオンライン / 2025年1月13日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

心身ともに健康で過ごすにはどうすればいいのか。順天堂大学医学部の小林弘幸教授は「『アクセル役』の交感神経と『ブレーキ役』の副交感神経がバランスよく働いていることが重要だ。男性は30代、女性は40代で副交感神経が低下するので、注意したほうがいい」という――。

※本稿は、小林弘幸『心と体が乱れたときは「おてんとうさま」を仰ぎなさい』(草思社)の一部を再編集したものです。

■心と体をコントロールする「交感神経」と「副交感神経」

よく知られるように、自律神経には「交感神経」と「副交感神経」とがあり、交感神経はアクセル、副交感神経はブレーキの役割を果たしています。

交感神経が優位になるのは、仕事で緊張しているとき、他人と何かを争っているとき、身の危険を感じたときなどです。そういうとき、交感神経はアクセルをグイッと踏み込んで心身を戦闘態勢に移行させます。すると、呼吸が速くなり、心拍数や血圧が上がり、血管はキュッと収縮して、心と体がより大きな力を生み出せる状態へとシフトするわけです。

一方、副交感神経が優位になるのは、ひとりでくつろいでいるとき、寝ているとき、家族で談笑しているときなど。そういうとき、心身がリラックスした状態でいられるのは、副交感神経のブレーキがかかっているおかげです。このブレーキがかかると、呼吸が落ち着き、心拍数や血圧が下がり、血管が適度に拡張して、心と体がより効率的に休める状態にシフトするのです。

■自律神経のバランス傾向には「4つのタイプ」がある

このように、交感神経と副交感神経は、互いに異なった働きをしながら、そのときの状況に応じて私たちの心と体をコントロールしています。自動車はアクセルとブレーキをバランスよくかけてこそうまく乗りこなせるものですが、自律神経もそれと同じで、交感神経のアクセルと副交感神経のブレーキがバランスよく働いていることが非常に大事になるわけです。

ただ、自律神経は「バランス」だけでなく、「レベルの高さ」も重要です。自律神経が最高の状態で機能するのは、交感神経と副交感神経の両方が「高いレベル」で「バランスよく」働いているときなのです。図表1のマトリクスを見てください。図の縦軸が交感神経のレベルで、横軸が副交感神経のレベル。自律神経のバランス傾向には4つのタイプがあることが分かりますね。

それぞれの特徴を簡単に説明しておくと、まず、Aは交感神経と副交感神経の両方とも高いタイプで、これがもっとも理想的な状態です。アクセルとブレーキの両方がハイレベルで安定していると、心身を絶妙のバランスでコントロールすることができます。この状態を維持していれば、病気になることもなく、仕事でも生活でもすべてにおいて自分の力をいかんなく発揮していけることでしょう。

■「イライラしている人」「やる気がない人」のタイプは?

Bは交感神経が高く、副交感神経が低いタイプです。これはアクセルばかり踏んでいてブレーキがあまり利いていない状態であり、ストレスが多く、いつもイライラ、ピリピリしている傾向があります。病気に罹りやすく、常に体のどこかに不調やトラブルを抱えている人も少なくありません。

Cは交感神経が低く、副交感神経が高いタイプ。Bと反対に、こちらはのんびり屋さんタイプで、注意力散漫でケアレスミスが多く、他人から「やる気があるのか」と疑われることもあります。また、ひとりで仕事を抱え込みやすく、うつ病に陥りがちな傾向もあります。

最後のDは、交感神経と副交感神経の両方とも低いタイプです。このタイプには疲れやすく、やる気や覇気が感じられず、活動度の低い生活を送っている人が少なくありません。アクセルもブレーキも働きが落ちているため、ちょっと体を動かしただけで疲労してしまうという“弱々しい状態”になっているんですね。

【図表1】自律神経のバランス傾向の4つのタイプ
出所=『心と体が乱れたときは「おてんとうさま」を仰ぎなさい』(草思社)、イラスト=森ゆみ子

■男性は30代、女性は40代で副交感神経が低下

それと、みなさんに知っておいていただきたいのは、「自律神経の力は加齢とともに衰えてくる」という点です。私の研究では、「自律神経の力は10年で15パーセントずつ低下する」という結果が出ていて、年を取るごとにアクセルやブレーキの利きが悪くなり、体という車を思い通りに運転できにくくなるのです。

とりわけ、加齢とともに力が低下しやすいのは副交感神経です。副交感神経のブレーキの働きは、男性の場合30代、女性の場合40代になるとガクンと落ち込むことが分かっています。すると、日々交感神経優位の状態が続くようになり、それまでと同じように休んでいても疲労の回復が間に合わなくなり、体の無理が利かなくなってきたり、病気や不調に悩まされやすくなったりするのです。

では、こういった衰えを食い止めるにはどうしたらいいのでしょう。

それには日々副交感神経の働きをアップするよう努めるのがカギ。副交感神経はリラックスをしたり気持ちのよいことをしたりすることで強まる神経なので、意識して気持ちのいい場所に行ったり、心身がリラックスする音楽を聴いたりするといいでしょう。

そして、日々陰徳や善行を積む行為が、副交感神経を刺激する「気持ちのいい行い」であることも、ぜひ覚えておいてください。

■おてんとうさまと自律神経の「深い関係」

おてんとうさまと自律神経は、非常に深い関係で結ばれています。

そもそも、私たちの自律神経は、毎日太陽が昇ったり沈んだりするサイクルに合わせて稼働しているようなものなのです。

一応説明をしておくと、朝、目が覚めると、日が昇ってくるとともに次第に交感神経が優位になり、心身が「活動モード」になります。これにより、日が明るいうちはさかんに体や頭を動かして仕事や作業に精を出すことができるわけです。一方、夕方以降、日が暮れる頃になると副交感神経の働きが活発になり、日が沈んですっかり夜になると、副交感神経が完全に優位になって心身が「休息モード」に移行します。

そして、夜間、睡眠を取って心身を休めたら、翌朝、日が昇るとともに再び交感神経が活発になって活動に向けて動き出す――。このように、おてんとうさまの動きに合わせて自律神経のモードが切り替わり、日々規則正しいリズムがつくり出されているわけです。

おそらく、私たちの心身には「日が昇るとともに心身の活動度を高め、日中は仕事に汗を流し、日が落ちればねぐらに帰ってぐっすり休む」という「おてんとうさまに合わせたリズム」が本能レベルで深くインプットされているのでしょう。この大地に人類が誕生したときから、そういうリズムで動くことが初期設定されていたのかもしれません。

■心と体を整える「朝一番の習慣」

なお、人間がこうした「毎日を生きるリズム」をつくり出すための「起点」となっているのが「朝のおてんとうさまの光」です。

朝、おてんとうさまの光をしっかり浴びていると、交感神経への切り替えがスムーズに進み、今日1日を元気に過ごすスイッチがしっかりとONになります。そのため私は、朝起きたら、真っ先にカーテンを開け、おてんとうさまの光を全身に浴びてグーッと伸びをするのを習慣にしています。なんでもないことのようですが日々心と体を整えていくには、この習慣が非常に重要なのです。

ベッドで伸びをする女性
写真=iStock.com/oatawa
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/oatawa

ご存じの方も多いと思いますが、私たち人間には日々の生体リズムを調整する「体内時計」が備わっています。ただ、人の体内時計の周期は1日25時間。地球の自転周期の24時間と比べてズレがあり、放っていると日々少しずつズレていってしまうことになります。

そこで、「コラッ、ズレを直してちゃんと正しくしてろ!」と活を入れてくれるのがおてんとうさま。朝のおてんとうさまの光が、「体内時計のズレをリセットする役割」を果たしているんですね。

体内時計のズレが大きくなると、就寝や起床の時間だけでなく、体内でのホルモン分泌や新陳代謝、消化吸収が行われるタイミングもズレてきて、心身にストレスがたまりやすくなります。すると、自律神経が大幅に乱れ、生活も不規則になり、不眠をはじめ多くの不調や病気に見舞われやすくなって、メンタル面でも落ち込みやうつ病などのトラブルを招くことが多くなります。

■「1日を元気に活動するスイッチ」をONにする

つまり、朝、おてんとうさまの光を浴びて体内時計をリセットするのを習慣にしていれば、こういった体内リズムのズレから引き起こされる不調やトラブルを未然に防ぐことができるわけです。まさに「おてんとうさまの力によって心と体のリズムが整えられている」ということになります。

それに、朝のおてんとうさまの光を浴びると、「セロトニン」という脳内物質の分泌が大きく高まることが知られています。

セロトニンには心身をしゃきっと覚醒させたり、精神を安定させたりする働きがあります。朝、太陽光を浴びてセロトニン分泌が高まるとしっかりと目が覚めて、同時に交感神経の働きが高まってきて心身が「活動モード」にシフトするようになるのです。言わば、おてんとうさまの光によって、1日を元気に活動するスイッチがONになるようなもの。このスイッチングのおかげで、私たちは日中の仕事や作業に全力投球することができるわけです。

■「穏やかで幸せな気分」でいるためのカギ

なお、セロトニンは心身の覚醒だけでなく、睡眠や休息にも大きな影響をもたらしています。それは「睡眠ホルモン」の「メラトニン」がセロトニンを原材料にしてつくられているから。メラトニンは日没後、とっぷりと日が暮れた頃に分泌が高まって、自然な眠気をもたらす物質です。

そして、このメラトニンは、朝、おてんとうさまの光を浴びてからだいたい15時間後に分泌されるとされています。つまり、朝7時に光を浴びると、それを合図にセロトニン分泌が高まり、それを原料にメラトニンがつくられて、15時間後の夜10時くらいにメラトニン分泌が高まって眠くなってくるのです。だから、朝、いつも同じ時間におてんとうさまの光を浴びていれば、夜、いつも同じくらいの時間に眠くなり、規則正しい睡眠リズムを形成できるようになります。

小林弘幸『心と体が乱れたときは「おてんとうさま」を仰ぎなさい』(草思社)
小林弘幸『心と体が乱れたときは「おてんとうさま」を仰ぎなさい』(草思社)

さらに、セロトニンには「幸せホルモン」「癒やしホルモン」といった呼び名があるように、心を癒やしたり、幸せな気分をもたらしたりする作用があることが知られています。また、逆にセロトニンが不足すると、気分が落ち込んだり不安をつのらせたりイライラしたりすることが多くなり、うつ病になりやすくなるということもよく知られています。ですから、普段から穏やかで幸せな気分でいられるか、それともうつうつとした落ち込んだ気分になってしまうかも、日々おてんとうさまの光を浴びて、セロトニンをちゃんと高めているかどうかが重要なカギになるということになりますね。

このように、人間は、心も、体も、おてんとうさまの光によってスイッチが入るようにできているのです。

まさに、おてんとうさまによってすべてが始まり、おてんとうさまによってすべてが整うようなもの。もっと言えば、私たち人間は、“おてんとうさまのおかげで日々生かされている存在”なのです。

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小林 弘幸(こばやし・ひろゆき)
順天堂大学医学部教授
1960年、埼玉県生まれ。順天堂大学医学部卒業後、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科講師・助教授などを歴任。自律神経研究の第一人者として、トップアスリートやアーティスト、文化人のコンディショニング、パフォーマンス向上指導にも携わる。順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した“腸のスペシャリスト”としても有名。近著に『結局、自律神経がすべて解決してくれる』(アスコム)、『名医が実践! 心と体の免疫力を高める最強習慣』『腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず 免疫力が10割』(ともにプレジデント社)『眠れなくなるほど面白い 図解 自律神経の話』(日本文芸社)。新型コロナウイルス感染症への適切な対応をサポートするために、感染・重症化リスクを判定する検査をエムスリー社と開発。

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(順天堂大学医学部教授 小林 弘幸)

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