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生活費も老後のお金も不安…そんな日本人に52歳僧侶が「不安を抱いている人こそ成功する」と諭す理由

プレジデントオンライン / 2025年1月5日 18時15分

YouTubeで老若男女の人生相談に乗っている大愚和尚 - 本人提供

現在の生活、そして将来に不安を抱えている人は多い。不安を感じた時はどうすればいいのか。福厳寺住職でYouTuberの大愚元勝さんは「不安というのは人間が生き抜くために欠かせない感情だ。お釈迦さまは、不安をどうやって乗り越えるかについて明確な教えを残しておられる」という――。

■トップ3は「生活費」「医療費」「年金」

突然ですが、あなたにお尋ねします。

「あなたは将来に不安を感じていますか?」

もし答えがイエスならば、続けてお尋ねします。

「あなたは将来にどんな不安を感じていますか?」

2023年10月、株式会社フォーイットは全国の20~60代の男女500人を対象に将来の不安に関するアンケートを実施した(複数回答可)。

アンケートの内容はまさにこの「将来にどんな不安を感じますか?」という問いだった。

それに対して最も多かった回答は「生活費の不安」で59.2%。次いで、「健康・医療費の不安」が46.8%、「年金や社会保障の不透明さ」が36.4%で続くという結果になった。

【図表1】男女500人に聞いた「将来の不安」
出典=株式会社フォーイット「80%以上が将来に不安を感じていると回答!その内最も多かったのは『生活費の不安』」より

■8割以上の人が何らかの不安を感じている

「将来の不安はない」と回答した人は17.6%に留まっており、80%以上の人が将来に何らかの不安を感じているという。

ちなみに、回答選択肢は、以下のようなものだ。

1.生活費の不安
2.健康・医療費の不安
3.子どもの教育費用の不安
4.仕事やキャリアの不確実性
5.住宅問題への不安
6.自然災害や緊急事態への不安
7.年金や社会保障の不透明さ
8.人間関係の不安
9.家族や親の介護の不安
10.その他(記入してください)
11.将来の不安はない

どうだろう。あなたにも思い当たる項目が1つや2つ、あるのではないだろうか。

■和尚の元に寄せられる現代人の「三大不安」

同様の調査は他にもたくさんあるが、私自身も10年以上、人々の不安の声に耳を傾けてきた。私は10年ほど前から、人々の悩み・苦しみに寄り添いたいという思いからYouTube上に「大愚和尚の一問一答」というチャンネルを開設し、配信を続けてきた。今そこに寄せられている回答待ちの相談は、4500件を超える。

それぞれの悩みには、それぞれストーリーがあるが、人々が抱える不安の3大要素は、

1.経済的不安、2.心身の健康不安、3.人間関係の不安

である。この10年ずっと変わらない。

そして人々の心に不安が広がる背景には、物価高、電気料金など生活インフラの値上げに関するニュース、ロシア・ウクライナ戦争などの諸外国での戦争関連のニュース、大雨や災害ニュースなどが大きく影響している感がある。

■不安を拭いきれず、病になってしまう人も

いずれにしても、常に不安や悩みを抱えている状態が続くと、精神的に多大なエネルギーを消耗してしまう。そして精神的なエネルギーの消耗は、身体的な不調も引き起こす。心身は密接に繋がっているからだ。

もともと神経質で不安を持ちやすい性格の人はもちろん、精神の強さや無神経を自負する人であっても、繰り返し、あるいは継続的にストレスがかかり続ければ、心身の病を患い、不安障害やうつ病と診断されることにもなりかねない。

不安が病と診断される基準は何か。

それはそれらの不安を拭いきれなかった結果、日常生活、学校生活、仕事に支障をきたしているかどうかだ。

公益社団法人日本WHO協会によれば、不安障害を患っている人は、日本に1000万人以上、世界には約3億100万人もいると言われている。

そう。将来に不安を感じている人々が多いのは、決して日本だけではないのだ。

例えばポジティブシンキングの国、アメリカでも同じである。特に若年層における問題がより深刻なのは、アメリカだ。

■連日、テレビやネットに流れる不穏なニュース

アメリカ心理学会によると、現在の10代の米国人は、過去の同じ世代の若者たち以上に大きなストレスを抱えている。

彼らは若いがゆえに高い感受性を持つ。その繊細な心が、毎日のようにメディアに流れる銃乱射事件や自殺、気候変動、不法移民の親と子どもが引き離されていること、セクシャルハラスメントなどに関するニュースに疲弊している。

米国、2013年4月20日:ボストンマラソン爆破事件の報道を一面にした新聞の山
写真=iStock.com/Allkindza
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Allkindza

さらに日本よりも桁違いに高騰している物価や悪化している住宅事情に、将来への不安を強く感じている。

三菱総合研究所の研究によれば、特にコロナ危機以降、そのような不安から日米の若年層の消費動向に極めて対照的な変化が見られるという。

※三菱総合研究所「経済的不安から『倹約化』する日本の若者たち」(2024年6月17日)

どういうことか。繰り返しになるが、人々の間で経済的な不安感が広がり、将来への不確実性が増したと感じているのは、日本の若者もアメリカの若者も同じ。ところが、日本の若年層が経済的不安から「倹約」して消費を「減らす」一方で、アメリカの若年層は、消費を「増やす」行動をとるようになった。それも「少々」ではない。

■「破滅的消費」に走るアメリカの若者たち

彼らの消費は、破滅的消費(Doom Spending)と表現される、文字通り生活を破滅に導くような消費行動を取り、これが社会問題にまでなっているというのだ。

将来の不確実性に対して、不安を感じるからこそ倹約する日本の若者に対して、破滅的消費をするアメリカの若者。

この違いから分かることは何か。それは問題の本質が、「不安を感じること」にあるのではなく、「不安を感じた後の行動」にあるということだ。

かくいう私にも不安がある。それも一つや二つではない。先述したフォーイットのアンケートにある項目はもちろんのこと、些細な不安から大きな不安までたくさんある。それも今に始まったことではない。振り返ってみれば子どもの頃から常に漠然とした不安があり、それは50歳を過ぎた今でも変わらない。

こんなことを書くと、「なんだ、あなたは修行を積んで心の不安を克服したお坊さんではないのか」というツッコミが聞こえてきそうだが、すまし顔で「不安などない」と嘯くつもりはない。いくら修業を積んでも不安なものは不安だ。

■人間が生き抜くために欠かせない感情

生きている以上、人間である以上、全く不安が無くなることはない。

なぜなら「不安」は、私たち人の祖先が生きるために発達させた、貴重な感情だからだ。

「不安」の起源は、太古の昔、石器時代にまで遡る。その時代、私たちの祖先は常に命の危険にさらされていた。いつ大型肉食動物に襲われるか、いつ気候が急変するか、いつケガや病気を負って命を落とすか分からない。

現代のようにクマが出たからといって、110番すれば警察や猟友会の方が駆けつけてくれるわけではい。クマに襲われて大怪我をしたからといって、119番すれば救急車が来てくれるわけではない。自分で自分を、家族を守らなければならなかった。

生き抜くためには自分の状態や周囲の環境を常に観察し、そこに起こるささいな変化や小さな違和感に気づき、それが危険かどうかを見極めて行動する必要があった。そのために発達し、大きな役割を果たしたのが「不安」という感情だ。

■「不安」を感じた後、何をするか

不安を感じるからこそ、起こりうる危険を予測し、警戒し、慎重に行動できるようになった。不安を感じるからこそ、まだ起こっていない危機に備えることができるようになった。つまり「だいじょうぶ! 余裕! 全然OK!」と悠長に構えているよりも、ちょっとした物音にでも不安になるくらいのほうが、生存競争において有利だったのである。

また、強烈な不安を感じるからこそ、その不安を取り除くために、不安の原因と真正面から向き合う必要があった。必死で考え、試行錯誤し、仲間と助け合い、懸命に働き、さまざまな道具や技能を発明開発してきた。不安こそが厳しい自然界を生き抜くための最強の武器だったのだ。

問題は「不安」という感情にあるのではない。「不安」を感じた後の行動にある。

では、どのように行動したら良いのだろうか。「不安」の乗り越え方について、お釈迦さまは次のような明確な教えを残しておられる。

■不安と戦い、前に進むから成功者になれる

「過去を追うな。未来を願うな。過去はすでに捨てられた。未来はまだやって来ない。だから現在のことがらを、現在においてよく観察し、揺ぐことなく動ずることなく、よく見きわめて実践すべし。ただ今日なすべきことを熱心になせ。誰か明日の死のあることを知らん」(マッジマニカーヤより)

実にどんな時代にも、どんな業界にあっても、成功者と呼ばれる人たちは、不安と戦いながらも実践し、前に進んでいる。

成功しているスポーツ選手は、不安だからこそ、練習を怠らない。
成功している経営者は、不安だからこそ、新規事業にチャレンジする。
成功している芸能人は、不安だからこそ、技芸の練磨に余念がない。

トラック上でレースの準備
写真=iStock.com/Jacob Wackerhausen
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Jacob Wackerhausen

成功者とは何も、名の知れた有名人に限らない。

成功している農家は、不安だからこそ、研究耕作を怠らない。
成功している主婦は、不安だからこそ、料理、洗濯、掃除、買い物に工夫を凝らす。

しかもそれらの創意工夫を、「苦しみながら」ではなく、「楽しげに」行っている。

くれぐれも、「不安」に問題があるのではない。

生き抜くために備わった不安を「敵」と見るか、武器と見るか。
高度に発達した記憶力と想像力を「妄想」に使うか、「創造」に使うか。

「不安」の見方と心身の使い方を見直せば、人生はきっと生きやすくなる。

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大愚 元勝(たいぐ・げんしょう)
佛心宗大叢山福厳寺住職、(株)慈光グループ代表
空手家、セラピスト、社長、作家など複数の顔を持ち「僧にあらず俗にあらず」を体現する異色の僧侶。僧名は大愚(大バカ者=何にもとらわれない自由な境地に達した者の意)。YouTube「大愚和尚の一問一答」はチャンネル登録者数57万人、1.3億回再生された超人気番組。著書に『苦しみの手放し方』(ダイヤモンド社)、『最後にあなたを救う禅語』(扶桑社)、『思いを手放すことば』(KADOKAWA)、『自分という壁』(アスコム)、『愚恋に説法: 恋の病に効く30の処方箋』(小学館)などがある。

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(佛心宗大叢山福厳寺住職、(株)慈光グループ代表 大愚 元勝)

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