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正しく使えば「発がん性物質」を9割以上除去できる…PFAS研究者が伝授「キレイな水を出す浄水器」の見極め方

プレジデントオンライン / 2025年1月4日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/show999

発がん性を指摘される化学物質「PFAS」が全国の水道水で検出されている。安全な飲み水を確保するにはどうすればいいのか。20年あまりの間、PFAS研究に携わってきた京都大学の原田浩二准教授は「水道水のPFAS濃度が高いなら、浄水器を使うという方法がある。根本的ではないが、個人でもできる対策だ。9割以上除去することができると言われているが、選び方と、使い方に注意すべきポイントがある」という――。

※本稿は、原田浩二『水が危ない!消えない化学物質「PFAS」から命を守る方法』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。

■煮沸しても除去できない

毎日飲んでいる水がPFASを多く含んでいるとわかったら(※)、どうしたらいいでしょうか?

編集部註※「地域のPFAS検査の結果どうすればわかる?」を記事末に掲載しています。

「煮沸(しゃふつ)消毒をしたら、除去できますか?」

よく、こう尋ねられますが、煮沸は揮発性の成分(残留塩素やトリハロメタン)を除くためには役立ちますが、PFASは一度水に溶けてしまうと、非常に蒸発しにくくなると言われています。おそらく煮沸しても分解しないし、飛んでもいかないのです。あまり効果はないと思われます。

「水道水を飲むのを止めて、ペットボトルの水を買って飲むのはどうですか?」

水道水のPFAS濃度が高いのであれば、地下水などを水源とした天然水を飲むという選択肢もありえます。しかし、こちらも、不安な報告があります。

■「ボトル水101本中15本に混入」

米国で、NGOが101種類に及ぶボトルウォーターでPFASが混入していないか、調査を行いました。すると、15種類のPFASが検出され、最大濃度が18ng/L(※)に達したものもあったそうです。

編集部註※米基準は10ng/L

製造工程で入ってしまったのではないかと分析されています。

アメリカで調査されたペットボトルの水に含まれていたPFAS
出所=『水が危ない!消えない化学物質「PFAS」から命を守る方法』

日本のメーカーではそんなにひどいことはないだろうとは思いますが、ペットボトルの水といえども安心して飲めるわけではないのです。

また厚生労働省が国内に流通するミネラルウォーターなどを検査した結果も公表されました。多くの製品では検出されませんでしたが、ある会社のミネラルウォーターから水道水の暫定目標値を超える濃度で検出されたということがわかりました。また目標値以下でも検出されたものもありました。

この発表の後に、検査を実施したことを公表したメーカーが多く出ました。しかし、暫定目標値を下回ったということだけの発表で、具体的に検出されたかどうかまで具体的な情報はほとんどありませんでした。

■浄水器で9割以上除去できる

浄水器の設置は個人の取れる対策の一つです。水に含まれる有機物を除去する活性炭が新しい状態であれば、9割以上のPFAS(特にPFOSやPFOA)を取り除くことができると言われています。個人でできる、かなり効果的なPFAS対策でしょう。

私が沖縄や東京・多摩地域で血液中のPFASを測る調査をしたときも、浄水器を使っている方は、使っていない方に比べて平均的に血液中のPFAS濃度が低く検出されました。浄水器が一定程度、有効なことを物語っています。

浄水器を使うことは個人の対策としてありえますが、市販の浄水器はいろいろあり、中には十数万円もする高いものもあります。

ただ高ければいいというものではなく、安価なものでもある程度効果は期待できます。

■見極めのポイントは「水の勢い」

ただし、カートリッジ(フィルター)に水をしっかり通している浄水器かどうかは確認してください。安価なタイプでは、活性炭が入っていても水がほとんど素通りしてしまうものがあるので気をつけてください。

浄水器をつけずに流したときの水の勢いと、浄水器をつけたときの水の勢いを比べてみて、ゆっくり流れてくるようだったらカートリッジをしっかり通り、水をろ過している証拠です。

切り替え式タイプなら、浄水器使用のモードにすれば、水の流れが遅くなることがわかります。

浄水器の機能の違い
出所=『水が危ない!消えない化学物質「PFAS」から命を守る方法』

浄水器のろ過材には活性炭のほかに、中空糸膜(中が空洞になっている糸状の膜)や不織布を使ったものがあります。活性炭は有効です。イオン交換樹脂というタイプもありますが、こちらはPFASを対象としたもの(陰イオン交換樹脂)でないと効果がありません。

ちなみに、浄水器と似たようなもので軟水器というものも売られています。こちらは水の硬度の高い地域でよく利用されている、陽イオン交換樹脂でできているものですが、カルシウムなどは取れるものの、PFASは取れません。

水中に溶け込んだ不純物と透過水を分離させる逆浸透膜浄水器というものが、一番性能がよく、しっかりと除去してくれますが、工場などで使われるものが多く、残念ながら家庭用で取り扱っているところはほとんどありませんし、高額です。

■カートリッジは「3カ月で交換」なら2カ月に

どのような浄水器を使う場合でも最も大切なのは小まめなカートリッジの交換などのメンテナンスです。水に溶けやすいPFASを除去しようとすると、他の物質より浄水器の性能も落ちやすく、効果がなくなるのが早くなりがちです。

多くの活性炭のカートリッジだと、1日2Lの水を使うなら、カートリッジは3~5カ月で交換するように推奨されています。

メーカーサイドで「3カ月で交換」と書かれているものでしたら、1カ月早めた2カ月ぐらいで交換することをおすすめします。これは他の有機物に比べて、PFASは取れにくいという性質のためです。

■「長持ち」をうたう商品もあるが…

浄水器のPFAS除去性能を示している製品もあります。その中には、かなりの水を通水したあとでも除去性能が高いとうたっているものもあります。

しかし、性能を試験している条件として、「他の不純物をあらかじめ除去した『きれいな水』にPFASを加えて」いるというものが多いです。

PFASしかない場合には除去性能が高く、長持ちするということは間違いではないと思います。しかし、実際の水道水には様々の成分が含まれるために、表示されているほどの性能があるとは限りませんし、効果がなくなるまでに期間が短くなることもありえます。そのため、表示されている除去性能が高くても、早めに交換することが効果的にもなります。

基本的には飲み水や料理に使う水に、浄水器を使えば、水からの摂取を減らすことには十分と考えられます。

シャワーや風呂で仮に身体の外側にPFASがついても、すぐにタオルなどで拭き取ることとなるので、除くことができます。肌を通して入る割合は少ないため、神経質になる必要はありません。

■あくまでも対症療法でしかない

小まめなカートリッジの交換は長い目でみると、家計の負担となってきます。水道水の濃度が高い場合にPFASから身を守れるということから選択肢となりますが、やはり大本の浄水場での対策を行政などに要望することが重要と考えます。

市内の地下水を使用した水道水が国の目標値を超した岐阜県各務原(かかみがはら)市では、対象区域内の小中高校、特別支援校の蛇口に浄水器を設置しました。濃度が66ng/Lだった小学校では5ng/L未満に下がったようです。

同じように、東京多摩地域の府中市と小金井市にキャンパスを構える東京農工大学では、地下水の専用水道は使い続けながら、飲み水用には浄水器を取りつけています。

■水の安全性も「住みやすさ」の評価に入れるべき

住む家を選ぶ際、駅に近くて便利とか、緑が多くて静かという立地が重要な条件になっていましたが、こうした飲み水の問題も出てきていることから、「飲み水の水質」も評価される必要があるのではないでしょうか。

生活環境にとって、水はとても重要です。これまでは「地下水なので水が美味しい」「料理も一段と美味しく感じる」と五感に訴えることがありましたが、健康への影響も考えていくべきです。

各種の汚染物濃度が低く、安心して飲める水を確保できる。そういうことを含めた「暮らしやすさ」をしっかりと考えていく必要があると私は思います。それが地域の環境の良さをアピールすることになると考えます。その基本はしっかり調査をした結果に基づく必要があります。

■「水が美味しい」と言われた東京・多摩でも…

原田浩二『水が危ない!消えない化学物質「PFAS」から命を守る方法』(河出書房新社)
原田浩二『水が危ない!消えない化学物質「PFAS」から命を守る方法』(河出書房新社)

水が美味しいと言われた東京・多摩地域は、濃度が高い地下水の使用を止めて、利根川や荒川からの水を引き込んでいます。

おそらく川の水が主となるので、昔ほど多摩の水は美味しくなくなっているかもしれません。健康へのリスクを下げるためですが、地域の資源が損なわれたことは残念であると思います。

沖縄でも湧き水が豊富ですが、いくつかの場所ではPFASの汚染のために利用できなくなりました。湧き水は歴史的にも地域で利用されてきたものであり、飲めなくなった事自体が地域にとって大きな問題ではないでしょうか。

地域の水道水のPFAS検査の結果はどうすればわかる?
出所=『水が危ない!消えない化学物質「PFAS」から命を守る方法』

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原田 浩二(はらだ・こうじ)
京都大学大学院医学研究科准教授
専門は環境衛生学。京都大学大学院医学研究科助教、講師をへて2009年から現職。2002年に京都大学で小泉昭夫教授(現・名誉教授)の調査チームの一員としてPFAS汚染問題に取り組み、近年は国内各地の市民団体と協力しながらPFAS汚染の調査・研究に取り組む。

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(京都大学大学院医学研究科准教授 原田 浩二)

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