紀子さまは「東大卒の天皇」なんて望んでいなかった…悠仁さまの「東大推薦入学説」を週刊誌が見事に外したワケ
プレジデントオンライン / 2024年12月23日 17時15分
■なぜ東大じゃなくて筑波大なのか?
秋篠宮悠仁さんが筑波大に合格したことが12月11日に発表された。
まずは合格おめでとうといいたい。だが、「なぜ東大じゃなくて筑波大なのか」と疑問に思う人も多いのではないか。
メディアは母親の紀子さんが「初めての東大卒天皇」という肩書にこだわっている、東大へ推薦入学させるために着々と手を打っているという報道はいったい何だったのだろう。
週刊文春(8月15・22日号)は「筑附で『異例の成績』悠仁さまの“真実”」というタイトルを付け、筑波大学附属高校の関係者に「じつは高校側は、悠仁さまに頭を悩ませている」「目下の問題は、学業成績についてです。悠仁さまは、率直に申し上げて“異例の成績”なのです」といわせていた。
しかし、同じ発売号の週刊新潮では、「夏休み“大人のお膳立て”で整った悠仁さま『東大合格』」と報じていた。
つまり、多少成績が悪くても悠仁さんの「東大一直線」路線に変更はなく、東大へ推薦入学することは既定路線だというのである。こうした報道を受けてのことだろう、今年の夏には悠仁さんの東大入学に反対する署名活動まで始まったのだ。
■「紀子さんは東大を諦めない」という論調
「大手のオンライン署名サイトで8月に始まった署名活動は、投稿から1カ月ほどで1万2千筆を集め、ネット上で話題になった。
しかし、署名の趣旨を説明する文章には、真偽不明の情報や個人を中傷する内容が含まれていた。
サイトの担当者によると、『未成年者の保護』や『プライバシーの侵害』、『虚偽または誤解を招くような情報』の防止を求めるガイドラインに抵触するとして、投稿者に対応を要請。しかし、改善の動きはなかったといい、最終的に署名のページは削除されることになった」(AERAdot. 09/29/ 10:00)
こうした報道に踊らされたネットの民の軽挙妄動に、紀子さんは9月11日の誕生日会見で、ネット上でのバッシングで心穏やかに過ごすことが難しく悩んでいると、珍しく心の内を吐露した。
しかし、秋になってもメディアは東大以外に筑波大や東京農大なども選択肢としてあり得るとはしながら、紀子さんのことだから東大を諦めることはないという論調が大勢を占めていた。
私は少し前のこのコラムで、悠仁さんは東大よりも、海外留学、それも日本の皇室と長い交流のあるイギリスのオックスフォード大学がいいのではないかと書いた。
11月25日、秋篠宮もトルコ公式訪問前の会見で、悠仁さんのこれからについて、「海外で学ぶ機会を得てほしい」「本人も海外に身を置いて、そこで学ぶことの必要性というものを最近は感じるようになってきたような印象を受けている」と口にしている。
■なぜメディアは「東大進学」と決めつけたのか
明らかに秋篠宮夫妻は東大一辺倒ではなくなっていたにもかかわらず、メディアは自分たちが作り上げた「東大進学神話」に固執し続けたのだ。そのため、悠仁さんが筑波大学で11月28日と29日に実施された推薦入試を受験しに来ることを予想していなかったようだった。
それは皇室情報に強い女性自身(12月17日号)でさえ、当日、悠仁さんが筑波大の推薦入試を受けているという情報が入り、「本誌が茨城県つくば市に急行すると、大学の門の前には複数のテレビ局のカメラをかまえたクルーたちが……」と書いていることからも窺える。
私には、筑波大学附属高校に入学した時点で、筑波大へ進学するほうが自然なような気がしていたのだが、なぜ、メディアはこうまでも「悠仁さんは東大進学」と決めつけてしまったのだろうか。
たしかに筑附には筑波大への内部進学枠はない。そのため入試試験を受けなくてはならないが、それは東大でも同じことだ。
だが、メディア側には、あの紀子さんならそう考えるのではないかという強い思い込みがあったのではないだろうか。
■紀子さんと雅子さんの対比から生まれた?
何かと比較される皇后雅子さんはハーバード大学と東大法学部(中退して外務省入省)という経歴で、長女の愛子さんも「東大に合格できる学力がある」といわれていた。紀子さんとしては、対抗意識から長男を東大に入れて「初の東大卒の天皇」にしたいという強い願望を持っているのではないか。
いや、紀子さんならやり遂げるのではないか。そのために東大への進学率が高い筑附に入れたに違いない。それに有識者たちも加わり、東大是非論がメディアで真剣に議論されるようになっていったのである。
だが、秋篠宮も紀子さんも、これまで一度も東大などと口に出してはいなかった。すべて、メディア側の作りだした“虚構”ではなかったのか。
元皇室記者で成城大の森暢平教授は、悠仁さんの「東大志望説」はまったくのフェイクニュースだったと厳しく批判している(サンデー毎日12月29日号)。
森教授によれば、早いうちから東大進学説を唱えたのは悠仁さんがまだ幼稚園生のときの週刊朝日(2012年9月21日号)だったという。タイトルは「『脱・学習院』で目指せ東大⁉」。女性セブン(2013年9月26日号)でも、紀子さんが「学業を究めて東大農学部に進学してほしいなんて夢もお持ち」と報じた。
悠仁さんが筑附に進学してからはさらに“憶測”は強固なものになっていった。
■有識者も“シナリオ”に乗っかった
「東大農学部には応用昆虫学や昆虫遺伝子学などの有名な研修室があるから、紀子妃の『東大計画』はより現実味を帯びることになる」(文春、2022年1月27日号)
トンボ論文発表や今年8月に京都で行われた国際昆虫学会議でポスター発表したことを根拠に、「東大への道のりは、この夏で十分整った」(新潮8月15・22日号)と、憶測は確信に変わっていったのである。
森教授の批判の矛先は有識者にも向けられる。
「例えば、政治学者の原武史は『“東大進学問題”ですが、一般入試で受験して合格すれば何の問題もないでしょう。しかし一般市民が中に入れない赤坂御用地をフィールドにした“トンボ論文”による推薦入学ですと(中略)本当の実力が分かりづらくなる』と論じた」(『AERA』9月9日号)
それ以外にも、森教授のいうように、多くの有識者たちが、「学習院に進むのが筋」「天皇になる人は生物学ではなく日本史を学ぶべきだ」「秋篠宮は帝王学を疎かにしているのではないか」など、東大入学を前提にして、秋篠宮家の教育方針を批判したのだ。こうした風説の流布がメディアを通じてなされ、一般市民たちの民意が形成されていった。
秋篠宮が先の会見の中で、以下のように述べていたのは、こうしたことも頭の中にあったのかもしれない。
■新聞・テレビの記者も気づかなかったのか
「会見で記者会は、宮内庁が4月からインスタグラムを活用して天皇、皇后両陛下のご活動を中心に発信している点に触れつつ、ご一家へのバッシングの『受け止め』を尋ねていたのだが、『秋篠宮さまは「バッシング情報というのは第三者と当事者では意味合いが異なってくると思います」と切り出され、「当事者から見るとバッシングというよりも“いじめ的情報”と感じるのではないかと思います」と述べられたのです』」(宮内庁担当記者=文春12月12日号)
この会見の時点で、悠仁さんの筑波大受験は決まっていたはずだ。筑波大は「併願」を認めないといわれるから、東大という選択肢はなくなっていたのだが、ほとんどのメディアはそれに気づかなかったようだ。
ここでいうメディアは週刊誌のことだが、雑誌の皇室情報の多くは皇室担当記者からである。宮内庁関係者などとして登場する匿名コメントの多くは皇室記者だと思っていいはずである。
悠仁さんの東大進学情報がどのように週刊誌にリークされたかは知らないが、それを否定した新聞は寡聞にして聞いたことがない。テレビも同じである。メディア全体に暗黙の了解のようなものがあったのではないか。
そういう意味ではすべてのメディアの敗北といってもいいだろう。
■「東京ドーム55個分」筑波大はどんなところか
来年4月から、悠仁さんは筑波大学キャンパスでの学生生活が始まる。ここは258ヘクタール、東京ドーム55個分もあるといわれる広大な敷地である。
クラスの移動だけでも大変なようだ。新潮(12月26日号)で、総合学域群の1年生男子は、
「他の学類の授業を受けようとすると、お互いの研究棟が遠い。学内には循環バスが走っていますが、利用者が多くて時間通りに来ないことが多く、満員で乗れない場合もあります。バスのせいで授業に遅れても、遅刻扱いになってしまうのです」と話している。
そのため多くの学生たちは校内を自転車に乗って移動するようだが、キャンパス内の道路が起伏だらけで大変だそうだ。その上、勉強も相当忙しいようだ。悠仁さんの先輩になる生物学類3年の女子生徒はこう話している。
「1年目は基礎生物学実験が金曜の4~6限にまたがっていて、レポートも書かなければならないのでハードでした。進捗次第では、実験は18時以降に延びることもありました。2~3年次は実験に加えて、下田の臨界実験センターで1週間泊りがけの実習があります。3年の終わりまでに4年次の必修以外の単位を取っておき、4年は卒業研究に集中することになります」
■警備の動線も東京→埼玉→千葉→茨城まで…
私は学生時代、大学は遊びに行くものだと考えていたが、そうはいかないようだ。
だが、そうなると心配になるのが警備の問題である。
新潮によると、赤坂御用地から大学キャンパスまでは距離にしておよそ70キロだそうだ。自動車で片道約1時間半を要し、朝の混雑に巻き込まれれば、何時に着くかわからないようだ。それを見越して御用地を出るとすれば朝7時前には出なくてはいけないし、帰りも相当遅くなる。
さらに、警備の管轄の問題がある。最初は警視庁だが、途中から埼玉県警、千葉県警と中継して、最後は茨城県警に引き継ぐということになるそうだ。もちろん、警視庁が警備体制のグランドデザインを描くのだろうが、なかなか厄介なようだ。
さらに筑波大学校内の警備の問題がある。
「現状では、筑波大の承諾を得て構内に『待機所』を設け、皇宮警察と茨城県警にプラスして、ノウハウが豊富な警視庁の警衛課も加わって異例の“三者合同警護”で臨むという案も検討されています」(警察庁関係者)
■将来の天皇という立場に同情したくなる
秋篠宮夫妻は、悠仁さんが親元を離れて筑波で暮らすことを考えているようだから、向こうに一軒家を借りて一人暮らしをすることになると思うが、将来の天皇を迎える筑波大のほうも受け入れ態勢を整えるのは大変なことだろう。
しかも、姉の眞子さんのようにキャンパスで運命の相手に出会う可能性もある。
これからまた、悠仁さんが誰々とお茶を飲んでいた、文化祭である女子学生と親しそうに話していたという「噂」が、週刊誌などで報じられるのだろう。
心静かに研究に取り組むということがなかなか難しいかもしれない。将来の天皇という立場に同情したくなるではないか。
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ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任する。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『編集者の教室』(徳間書店)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)、近著に『野垂れ死に ある講談社・雑誌編集者の回想』(現代書館)などがある。
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(ジャーナリスト 元木 昌彦)
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