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「やっぱりウチはミールが主人だったから」秋田・佐竹知事が語る「プーチン氏から贈られたネコ」の一番の思い出

プレジデントオンライン / 2024年12月27日 9時15分

ロシアのプーチン大統領からプレゼントされたシベリア猫「ミール」を抱く秋田県の佐竹敬久知事=2013年2月5日午後、秋田県庁(代表撮影) - 写真提供=共同通信社

12月3日、2013年にロシアのプーチン大統領から秋田県の佐竹敬久知事に贈られたシベリア猫の「ミール」が病気で死んだ。ウクライナ戦争が始まった直後には、佐竹知事が「うちのミールはプーチン大統領と違って非常に優しいし、おとなしい。大変皮肉ですね」と非難したことでも話題になった。「ミール」はどんな猫だったのか。ライターの伊藤秀倫さんが佐竹知事に聞いた――。

■プーチン大統領から贈られたシベリア猫

2024年12月9日、秋田県庁で「知事臨時記者会見」が開かれた。集まった記者を前に、佐竹敬久知事(77)はこう切り出した。

「シベリア猫のミール君が亡くなりました」

「ミール君」とは2012年にロシアのプーチン大統領から秋田県に贈られたシベリア猫である。もともとは前年に起きた東日本大震災におけるロシアからの援助に対するお礼として、犬好きのプーチン大統領に外務省を通じて秋田犬「ゆめ」を贈ったことが最初のきっかけだ。そのゆめへの“返礼”として秋田県にやってきた猫を、愛猫家として知られ、すでに家で他の猫を飼っていた佐竹知事が引き取り、ロシア語で「平和」を意味する“ミール”と名付けたのである。

秋田県庁のホームページにはミール君の動画が定期的に掲載されるほど、知事は特別な思い入れを持って接してきた。そのミール君が12月3日に12歳と10カ月の生涯を閉じたことを受け、知事は会見で「私も長い間ミール君と一緒に過ごしましたんで、大変悲しい思いをしてます」とその胸中を率直に語った。

■「私のベッドには来ないんですね」

さらに記者からミール君との一番の思い出を問われると、こう応じた。

「ミール君、臆病なんです。で、あの動物愛護センター、あそこに行って、あのタワーで遊ばせようと思ったら、怖くて引っ込むんですよ。で、あのタワーに何となく上がらないんですよ。で、ほかの猫は上がるんだよ。で、最後は一番奥に入っちゃって、出すに大変難儀したっていう、そんな思いがあります。

あと何回か、うちの広報のほうでも映像を撮ろうとしていきますと、黒いスーツを着た人からは逃げるんですよ。明るいスーツはいいけど黒いスーツは嫌うんです。で、私もダークスーツが多いもんですから、私には余りつかなかった。うちの妻と娘、大変妻が悲しんでますが、ミール君が夏頃からだんだん弱ってきてからは、うちの妻のベッドの上で寝るんですよ。私のベッドには来ないんですね」

ロシアとの友好の証であるという側面はあるにせよ、知事の愛猫の死について臨時記者会見が開かれ、記者との間でこういうやりとりがなされたことに新鮮な感動を覚えた私は改めて、佐竹知事にミール君について話を聞いた――。

■家族に見守られて眠るように息を引き取った

昨日もね、県庁のほうに(お悔やみの)お花が届いたんだ。これで9人目です。全国的にファンの多い猫だったですからね。

年に2回ほど獣医さんのところで健康診断をしていたんですが、今年の春までは何の異常もなかった。ところが6月ごろ、下痢をしたりちょっとおかしかったんで、いろいろ精密検査してもらったら、消化器系のリンパ腫、つまりガンと診断されました。

で、抗がん剤の治療をやって10月ごろまでは小康状態を保っていました。けれど11月ごろからだんだん弱ってきて、食欲もなくなってきたので、週に何回も獣医さんのところに連れて行って点滴してもらって。家族総出でね。先生方もチームを組んで相当やってくれました。

でもついに12月3日午前4時に、家族に見守られて眠るように息を引き取ったという、そういうことです。うーん、まあ7、8キログラムぐらいあった体重が最後は半分ぐらいになっちゃってたからね。それでも火葬場でお骨になったミール君の頭の骨が大きいんだよ。シベリア猫って頭が大きいから。普通の猫より大きめの骨壺に収まっています。

それでうちに連れ帰って、祭壇において、写真もいっぱい飾ってね。ウチにはミール君以外に3匹の猫がいるんだけど、やっぱりわかるんだな。朝、猫たちをふと見るとじーっとこのミール君の写真を見ているんだよ。

■心にぽっかり大きな穴が空いた

図体は大きいけど、非常に穏やかな性格でね。頭がよくて、ドアノブなんかも器用に開けてましたね。やっぱりウチはミールが主人だったから。毎朝起きて、居間にいくと、ドンという感じでミール君が鎮座していて「おはよう」という感じで挨拶してくれていたのに、それが今はいないわけだ。帰宅したときに出迎えてくれることもない。

……やっぱり何か心にぽっかり大きな穴が空いたような感じで、家族も大変寂しい思いをしていますね。

12月3日に12歳と10カ月の生涯を閉じた「ミール」君。名前の由来はロシア語で「平和」
写真提供=秋田県
12月3日に12歳と10カ月の生涯を閉じた「ミール」君。名前の由来はロシア語で「平和」 - 写真提供=秋田県

ミールが亡くなったことは一応、すぐにロシア大使館には知らせました。今のところとくに返信はないですね。

返信がないといえば、今、一番気になっているのは、秋田犬の「ゆめ」のことなんです。たぶん確認された最後の映像は、雪の中でプーチン大統領と戯れている場面だったと思うんですが、あれが10年以上前で、それ以降の消息がまったくわからない。情報がないので、そこは一番気にかけています。

■秋田犬「ゆめ」の消息が…

ミールがウチに来た年の秋に、私はロシア大使館に招かれて、駐日大使にこう伝えたんです。

「夢(ゆめ)を叶えるには平和(ミール)でないとならない。どんな夢も平和でなければ叶いません」

大使は「いいメッセージです。本国政府に伝えます」と言ってくれたけど、今のウクライナとの戦争状態は、そうなっていないからね。そういう意味では早く戦争が終結して、平和が訪れて、みんながまた夢を見られる世界になればいいな、と思います。

ミールは今ごろ、天国にいるウチで前飼っていた猫たちと遊んでいるんじゃないかな。本当に穏やかな子だったから……。

「ミール」の死に関する佐竹知事の会見内容が報じられてから約1週間後の12月17日、ロシア大統領府は共同通信の取材に対し、「ゆめ」の消息を次のように明かした。

〈ゆめは高齢にもかかわらず元気にしている。温厚でいたずら好きな性格と忠義深さでプーチン大統領を喜ばせ続けている〉

健在であれば、「ゆめ」は現在12歳となっている。

モスクワ地方を散歩中のプーチン大統領。ブルガリアン・シェパード・ドッグのバフィーと秋田犬のゆめ
モスクワ地方を散歩中のプーチン大統領。ブルガリアン・シェパード・ドッグのバフィーと秋田犬のゆめ(写真=ロシア大統領報道部/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons)

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伊藤 秀倫(いとう・ひでのり)
ライター・編集者
1975年生まれ。東京大学文学部卒。1998年文藝春秋入社。『Sports Graphic Number』『文藝春秋』『週刊文春』編集部などを経て、2019年フリーに。さらに勢いあまって札幌に移住。著書に『ペットロス いつか来る「その日」のために』(文春新書)がある。

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(ライター・編集者 伊藤 秀倫)

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