日本の職場環境では「14分間集中して1分間休憩を取る」がベスト…生産性が爆上がりする"休憩のはさみ方"
プレジデントオンライン / 2024年12月28日 15時15分
※本稿は、石川和男『要領がいい人が見えないところでやっている50のこと』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
■マルチタスクが得意な人=仕事が出来る人?
マルチタスクをする人が残念すぎる理由!
シングルタスクとマルチタスク、どちらが効率的でしょうか?
多くの人は、ひとつの作業に集中するシングルタスクよりも、複数の作業を同時に進められるマルチタスクのほうが効率的だと思いがちです。
「私はマルチタスクが得意です」と言う人や、「同時にいろいろな仕事をこなせる」と自慢する人もいます。こうした人たちは、周りから「仕事ができる人」という印象を持たれることが多いです。
しかし、実際にはどうでしょうか? 例えば、シングルタスクでは重要な企画書を作成するとき、その作業だけに集中します。その間、チャットの返信や他の仕事は行わず、企画書の内容に集中するので、質が高くミスも少なく、無駄な時間を使わずに短時間で仕上げられます。
一方、マルチタスクの人は、企画書を作りながらコーヒーを淹れたり、同僚と雑談したり、メールやネットニュースを見たりしてしまいます。その結果、集中力が途切れ、生産性が下がってしまいます。
「この企画書を終えるまでは、他のことは一切しない!」と決めて、シングルタスクに集中するだけで、効率よく時間を使えます。
■何かに没頭すると幸せを感じる「フロー体験」
実は、人が最も幸せを感じるのは、何かに没頭しているときだという研究結果もあります。この現象は「フロー体験」と呼ばれ、心理学者のミハイ・チクセントミハイ氏が提唱したものです。あなたもこのような体験をしたことがありませんか?
①完全な集中
仕事や趣味、遊びに夢中になって、他のことが全く気にならない状態のことです。
私はマンガ喫茶に行くと、フリードリンクがあるにもかかわらず、飲み物に手をつけずにマンガに集中してしまいます。気がつくと、グラスの中の氷は溶けてしまい、グラスには水滴、アイスコーヒーは薄くなったまま残っています。
②時間の感覚の変化
あっという間に時間が過ぎてしまっている状態のことです。
私は家族とカラオケを楽しんでいて、室内の電話音が鳴り「延長しますか」と店員さんに言われ、まだ1時間ぐらいしか経っていないと思っていたら2時間も経過していたことに驚いたことが何度もあります。
③自己意識の喪失
目の前のことに集中して、人の目や周りのことが気にならない状態のことです。私は電車で推理小説を読んでいると、物語に夢中になり、周囲の状況が気にならなくなります。その結果、ときどき降りる駅を通り過ぎてしまうことがあります。
■一度に多くのことができるマルチタスクの落とし穴
私のような体験をしたことがある人は、それがまさしくフロー体験です。「他のことが気にならない」「時間があっという間に過ぎる」「周りの状況が入ってこない」など、フロー体験に入ると、人は深い満足感や充実感を感じます。
これが「幸せだ!」と感じる理由です。
チクセントミハイ氏の研究によると、スポーツや音楽、勉強、仕事など様々な分野でフロー体験が見られ、それが人々の幸福感を高めると言われています。
一方、マルチタスクとは、複数の仕事を同時にこなすことを言います。しかし、実際には企画書を作成しながら、チャットやラインを確認したり、部下の相談に乗るのは不可能です。
同時に行っているわけではなく、脳が「企画書作成→チャット確認→ライン確認」と、ひとつの作業から別の作業へスイッチを瞬時に切り替えているだけなのです。
スタンフォード大学の研究では、マルチタスクを頻繁に行う人は、重要な情報を見つけられず、注意散漫になり、作業の正確性が低下して、ミスが増えると報告しています。
一度に多くのことができ、要領がいいと思われているマルチタスク。実は典型的な要領が悪い方法なのです。シングルタスクで一点に集中することが重要です。
■25分間の完全集中で「フロー状態」に入るメリット
14分集中して仕事を効率化する方法
時間効率のテクニックに、フランチェスコ・シリロ氏が大学生時代に考案した「ポモドーロ・テクニック」があります。この方法では、25分間作業に集中し、その後5分間の休憩を取るというサイクルを繰り返します。
作業中の25分間は、雑談やメールの確認はもちろん、お茶やコーヒーを飲むことも禁止し、余計なことをせずに完全に集中します。これにより、作業に没頭し「フロー状態」に入ることができるのです。
前述したようにフロー状態とは、ある作業に完全に没頭し、集中している状態のことを指し、次のような効果があります。
高いパフォーマンスの発揮
フロー状態に入ると、作業の効率と質が向上します。これは、集中力が高まり注意散漫になりにくくなるためです。スポーツ選手やミュージシャンを対象とした研究でも、フロー状態に入ることでパフォーマンスが向上することが確認されています。
創造性が向上
フロー状態に入ると、創造力が高まり、新しいアイデアや解決策が生まれやすくなります。
満足感と幸福感が増加
フロー状態に入ると、人は達成感や自己実現能力が高まり、強い満足感と幸福感を感じることができます。
■日本の職場環境では「14分間集中して1分間休憩を取る」
ポモドーロ・テクニックはひとつのことに集中するための方法で、フロー状態に入りやすいとされています。
欧米の企業では、社員が自分のペースで仕事を進められる環境が整っており、自己管理が重要視されています。ハリウッド映画でよく見る、仕切りのあるオフィスレイアウトがその一例です。
このような環境である欧米企業では、ポモドーロ・テクニックを取り入れやすいですが、日本の職場環境では実践するのが難しい場合もあります。
なぜなら、日本では全体のペースや周囲との連携を重んじる文化があるからです。
多くの職場がオープンなオフィス環境で、上司からの指示や部下からの質問、同僚とのやりとり、電話やお客様対応が頻繁にあります。
そのため、25分間集中して作業し、5分間休憩を取るポモドーロ・テクニックを実践するのが難しいのです。特に、5分間の休憩を取っていると「さぼっている」と思われます。
そこで私は、ポモドーロ・テクニックの考え方を取り入れつつ、日本の職場環境に適した方法に変えてみました。いろいろな時間配分や休憩を試した結果、最適なサイクルは「14分間集中して1分間休憩を取る」というものです。
このサイクルなら、日本のオフィスでも無理なく実行できます。1分間の休憩時間に、メールなどのSNSの確認や「やることノート」を見て次の仕事の計画を立てるなど、細かいタスクをこなすことが可能です。
■1時間に1~2回、目を閉じるだけでも効果あり
もちろん、会社の理解があれば「30分集中して5分間休憩を取る」や「1時間頑張って10分間休憩する」といった方法も問題なく実行できます。
当社では通常は「14分間集中して1分間休憩を取る」サイクルで仕事をしていますが、午前中の1時間だけ全員が集中して取り組む時間を設けており、その間は話しかけないというルールを導入しています。
この方法で、仕事の効率がさらに上がっています。
さらに、1時間に1~2回、目を閉じて休憩を取ることも取り入れています。パソコン作業が多いため、目の疲れをリセットし、次の仕事に集中する準備をすることが大切だからです。何度も5分間休憩を取るより、この方法が日本の職場環境では実践しやすく、効果的です。
14分という短い集中時間を設けることで、効率よく仕事が進められるようになります。
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建設会社総務経理担当役員、税理士、作家
建設会社総務経理担当役員を本業に、税理士、明治大学客員研究員、ビジネス書著者、人材開発支援会社役員COO、一般社団法人 国際キャリア教育協会理事、時間管理コンサルタント、セミナー講師、オンラインサロン石川塾主宰(受講者数250名)と9つの肩書で複数の仕事を同時にこなす。 著書に累計35万部突破で、『仕事が速い人は、「これ」しかやらない』(PHP研究所)、『仕事が「速いリーダー」と「遅いリーダー」の習慣』(明日香出版社)、『Outlook最強の仕事術』(SBクリエイティブ)など。
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(建設会社総務経理担当役員、税理士、作家 石川 和男 イラストレーション=末吉喜美)
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