首都圏の2倍の料金に目がテン…「青森移住10年」でわかった"日本一の短命県&生活費バカ高"のカラクリ【2024下半期BEST5】
プレジデントオンライン / 2025年1月7日 7時15分
2024年下半期(7月~12月)、プレジデントオンラインで反響の大きかった人気記事ベスト5をお届けします。ライフ部門の第1位は――。
▼第1位 首都圏の2倍の料金に目がテン…「青森移住10年」でわかった"日本一の短命県&生活費バカ高"のカラクリ
▼第2位 日本の「高断熱サッシ」は欧州では違法建築扱い…喘息とアレルギーを引き起こす「日本の住宅は高性能」の大ウソ
▼第3位 せっかくの新築住宅がゴキブリだらけに…プロ建築士が「絶対にやめるべき」という引っ越し方法
▼第4位 「赤い車」と「白い車」ではクラクション率が2倍以上違う…あおり運転から身を守る「科学的に正しい」方法
▼第5位 「開放感あふれるリビングのある家」は絶対に後悔する…建築士が断言する「おすすめできない間取り」のワケ
■青森へ移住して10年、成功だったのか失敗だったのか
筆者が首都圏から青森県に移住したのは10年前のこと。もともと青森県の生まれでしたが、転勤族だった父の都合と自分の進学、就職、結婚などで北日本から関東地方を転々とした後、体が弱ってきた親の住処に近いところで暮らすために西日本出身の夫とともに私が生まれた県に戻ってきた形です。
その後、親は他界しました。移住の決意は容易ではありませんでしたが、最期の時期に寄りそう機会を多くもてたので、よかったと思っています。後悔はありません。
「移住」は今、都市に住む人の重要関心事項のひとつです。内閣官房の調査(2020年、東京県在住者対象)によれば、全体の5割程度が地方移住に関心があると答えています。COVID-19感染拡大以降、リモートワークが普及したことも“移住願望”を後押ししているでしょう。
一方、移住してみたら想定と大きく違う現実に直面したという話もしばしば見聞きします。移住に伴って、仕事や子供の教育環境、人間関係も大きく変化します。移住するにはそれなりの覚悟と費用が必要です。せっかくなら成功させたい。そんな人たちの考え方のヒントとなるべく、「青森移住10年」で筆者が驚いたことをランキング形式で5つ紹介します。
■5位:通勤距離3kmは「遠い」
筆者が10年前に移住して住み始めた場所は、勤務先から約3kmの場所でした。複数の同僚に「どこに住んでるの?」と尋ねられて、「○○X丁目」と答えると、ほぼ全員に「遠いな」と言われました。ありえない、ということでした。
移住前の首都圏の自宅から勤務先までは約20kmで、ドアツードアで電車も利用して約1時間。だから、3kmはすごく近く感じたのですが、感覚が全く異なるようです。筆者は移住後、職と住居も変え、現在は当初の移住先からさらに引っ越しして勤務地までの距離が約2.5km。天候が悪くなければ、自転車か徒歩で通勤するのですが、2.5km歩くと言うと、ほぼ全員が「うそでしょ」と怪訝な顔をします。歩いて移動するという発想がないのです。
■4位:賃貸物件の家賃が意外と高い
地方では持ち家暮らしが主流で、賃貸物件に暮らすのは学生か転勤族がメインです。おそらく家族で暮らせる賃貸物件は借り上げ社宅(法人契約)が多く、そのせいか家賃が周辺の不動産相場より高く感じます。
青森県内の前住地では、新築の建売戸建ては平均2500万円程度と首都圏に比べれば格安でしたが、3LDKの賃貸物件の家賃は新築で平均12万円程度。首都圏などに比べれば安いでしょうが、すごく安いとも思いません。そもそも賃貸物件が少ないことが価格設定の背景にありそうです。賃貸物件検索サイトなどを利用するとわかると思いますが、賃貸物件がほとんどない市町村も少なくありません。
移住先の住居が築ウン10年の古民家級の物件でいいならともかく、ある程度の都市機能のある地域で賃貸暮らしを想定するなら、居住費はある程度見積もっておいたほうがいいと思います。
■3位:お勧めの飲食店を尋ねると9割が「ラーメン屋」
青森県は三方を海に囲まれ、平地も山間部もあり、新鮮でおいしい食材がリーズナブルな値段で手に入ります。カロリーベースの食料自給率が100%を超えます。味噌や醤油メーカーもあり、県産品で食卓を容易に構成できます。
特に魚介類はリーズナブルで、首都圏在住時は切り身を購入して作っていたアクアパッツァは、鯛やメバルといった魚をこちらでは1尾で購入して作るのが当たり前になりました。首都圏の切り身2切れ分の値段でまるごと1尾で買えますし、桃は旬の時期なら無人販売で3個100円です。昨今の物価上昇もあり、月の食費は首都圏時代と変わりませんが、移住後、我が家の食事のクオリティは確実に向上しました。
筆者は調理好きですが、たまに外食したくなります。そこで、おすすめの飲食店を同僚などに尋ねると、答えは「ラーメン屋」が9割超でした。にぼしベースの出汁が効いたものや、みそカレー牛乳ラーメンという名物などがあり、とてもおいしいのです。ただ、せっかく食の宝庫なのにラーメン以外のお店が挙がらないのは不思議です。
では、とネットで検索してみると、コースディナーを3000円以下で提供するフレンチや、地元の素材にこだわったピザ店、近隣の漁港の魚を使った居酒屋など、実はいいお店がたくさんあることがわかりました。ところが、地元の人の回答は「知らない」「行ったことない」。食材に恵まれると、かえって外食のバラエティを求めなくなるのでしょうか。10年経っても謎です。
■2位:カップ麺愛がすごい
3位と関係があると思いますが、「カップ麺ラバー」が本当に多いです。移住後、近所のスーパーのチラシに載っていた特売のカップ麺に「お一人様5個まで」とあり、「何で?」と首をひねったのですが、理由はすぐわかりました。個数制限しないと、10個でも20個でも、中には箱単位で買い占めてしまう人も珍しくないからです。
スーパーの「カップ麺売り場」の棚面積も首都圏に比べても大きいです。右から左まで、ずらずらずらずらずら……と並んでいて、それはちょっとギョッとする光景です。勤務先での昼休みには誰かが必ずカップ麺を食べていますし、デスクに常にストックしている人もいます。総じてみな新商品に詳しく、新しい商品に飛びつく傾向にあります。カップ麺が雑談の話題になることもしばしばです。私が知る限りですが、トムヤムクン味やみそ味をこちらの人は特に好みます。
ちなみに、青森県は短命県です。2020年の都道府県別生命表(厚生労働省)で、青森県の平均寿命は男性79.27歳、女性86.33歳と、いずれも最下位。男性は1975年から10回連続、女性は95年から6回連続の最下位とのことです。相対的に炭水化物と塩分が高めになりがちなカップ麺を多食する食文化と無関係ではないと指摘する声も少なくありません。
■1位:水道料金が高い
10年前に移住して、カップ麺愛にもドカ雪にも驚かされましたが、その比でないくらいにびっくりしたのが水道料金でした。首都圏時代は2カ月に1回、6500円ぐらいの請求が来ていましたが、移住後最初に届いた請求はおよそ月5500円。ざっくり2倍近い。夫と2人暮らしは変わりませんでしたので、水の使用量が多くなったわけではありません。基本料金も従量料金も高いのです。
水道インフラは面積が同じなら、整備するインフラはほとんど違わないでしょう。しかし、そのインフラを利用する人口が相対的に少なければ、インフラを維持する費用を負担する人口が少ないことになりますから、1世帯当たりの負担額が大きくなるのだと理解しています。と、ここまで書いたところで、衝撃のニュースが飛び込んできました。
東京新聞(6月27日付)の一面に「水道代上昇 全国で不可避 2046年度 平均1.5倍に」との大見出しが載りました。民間研究グループの試算を基にした記事で、人口減・老朽化により水道を経営する市区町村の96%が値上げをするのは必至で、約20年後には現状よりも平均1.5倍の価格になるという内容でした。
つまり、青森の筆者の移住先では少なくとも月8000円超になる可能性があるということです。人口がもっと減れば月1万円もありえるかもしれません。前出の記事によれば、首都圏でも茨城・千葉・埼玉の人口密度が比較的低いエリアでは、料金は2.5倍で月8000~9000円台になると予想されています。予想最高額は月2万5837円(福島県鏡石町)でした。
光熱水費に関しては、高額になるのは水道料金だけではありません。地元の都市ガスの費用も、東京ガスの約2倍で、新車の値段(冬を乗り切るため寒冷地仕様車かつ4WDがほぼスタンダード)も公共交通(バス・電車)も総じて、首都圏よりも高額です。
地方は豊かな自然があり、子育てもしやすく、人間関係もおおらか。また、都市部より物価が安い。そんなポジティブなイメージもあります。しかし、住んでみないとわからないことや、首都圏より割高なモノなどネガティブな側面もしっかりあるということも覚悟しなければならないのです。
(初公開日:2024年7月17日)
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大学教員
1970年青森県生まれ。北海道大学卒業後、システムエンジニア、証券アナリスト、地方公務員、シンクタンク勤務を経て、青森中央学院大学講師兼ライター。CFP、FP1級、日本証券アナリスト協会認定CMA。2014年に首都圏から青森県へ移住。人生で19回引っ越しをしている。
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(大学教員 榮田 いくこ)
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