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受験直前期の今こそ気をつけたい感染症対策…トイレの後は「アルコール除菌より流水手洗い」が正解のワケ

プレジデントオンライン / 2025年1月7日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Tomwang112

いよいよ入試目前。勉強の追い込みの時期は、風邪をひきやすいときでもあります。感染症医の伊藤健太さんは「マスクも流水手洗いも、ポイントを押さえると押さえないでは対策効果が大きく変わります。例えば、手を洗うべきタイミングは3つあります」といいます――。

※本稿は、『プレジデントFamily2025冬号』の一部を再編集したものです。

■「おこなう対策」は同じ

人が感染症(主には風邪)にかかるときは、新型コロナウイルス感染症しかり、ウイルスがほとんどの原因です。マイコプラズマ肺炎は、ウイルスよりも大きい微生物(細菌)が原因ですが、ウイルスにしろ、細菌にしろ、誰か(人)が持っていて、それを移されることが主な感染経路。なので、おこなう対策は、風邪、新型コロナ、マイコプラズマ肺炎すべて同じです。

感染症対策として取り入れてほしいのは「マスク」「手洗い」「規則正しい生活」「ワクチン」の4つ。

「そんな当たり前のこと?」と思うかもしれませんが、感染症対策は「当たり前のこと」を“押さえるべきポイントを意識して行う”ことがとても大切。

それこそが、日ごろから家庭で、出先で行える有効な策となるのです。

■効果的な「マスク」のつけ方

対策①マスク

ウイルスや細菌は、感染者の口の奥(喉)や鼻の粘膜の細胞にくっついています。

では近くに、ウイルスを抱えているAさんがいるとしましょう。Aさんが咳をしたら何が起こるでしょうか?

●1m先の咳で感染

ミクロな世界で見てみると、咳とともに喉や鼻にあったウイルスが周囲に飛び散ります。つまり飛沫がかかりやすい近距離にいるほど、感染リスクは高まるのです。

また、通学中の電車やバスのような換気の悪い閉鎖空間だと、近くにいなくても感染する可能性があります。換気の悪い閉鎖空間で咳をした場合、ウイルスはつばのしぶきと共に約1メートル先まで届くためです(なかでも新型コロナウイルスは軽く、他のウイルスよりも長い時間、ふわふわと空気中を漂う性質があるため、換気対策が強調されました)。

Aさんから出て、近くで漂うなどしているウイルスは、人の鼻、口、目の粘膜から入ってきます。

それを物理的にシャットアウトするのに役立つのがマスクです。目よりも、鼻・口からの感染率が圧倒的に高いので、そこ(鼻と口)をしっかりと覆うのがポイント。服や体に飛沫がかかっても、感染の入り口をウイルスが突破することを防げばいいのです。

マスクをつけた子供
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

咳などによってウイルスは、机や壁など、いろんなところに飛散します。知らずに触ってしまえば、見た目にはキレイな手でも、実はウイルスや細菌がたっぷり。その手で子供が口や鼻のまわりを触ってしまうと、感染リスクが高まります。

そんな感染の経路をしっかりと断ち切るために重要なのが「手指衛生を保つこと」。つまりは流水やアルコールでしっかり手洗いをしよう!ということです。

■手を洗うべき3つのタイミング

対策②手洗い

人は1分間で、無意識に3回顔を触ると言われています。それだけの頻度でウイルスを口や鼻に運ぶ可能性があるんですね。なのでこまめに手を洗うことが望ましいのですが、「こまめに洗おう」といっても子供はピンと来ず、結局洗わない……となってしまいます。ですから、最低限「帰宅後」「トイレの後」「食事前」の3つのタイミングで洗うように促してください。

泡立て石鹸で腕まで手洗い
写真=iStock.com/cattosus
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/cattosus

・帰宅後

帰宅後に手を洗う理由はもうわかりますね。そうです。電車やバス、換気の悪い教室など、帰宅後は、外からウイルスや細菌をたっぷりと持ち込んでいる、ある意味一番汚染された状態。それをしっかりと洗い流し(もしくは殺菌し)キレイにすることで感染を防ぎます。

・トイレのあと

ずばり、他人のうんちからの感染を防ぐためです。本人は体調を悪そうに見えなくても、知らずにウイルスに感染している場合、うんちとともにウイルスが排せつされています。

例えばノロウイルスやロタウイルスが原因でウイルス性胃腸炎になっていた場合、腸の中にはものすごい量のウイルスがいる状態です。受験生以外の家族が無症状で感染していた場合、家のトイレに、それらのウイルスがものすごい量べったりとついている……というふうにイメージいただけたら。

ちなみに風邪を引き起こすウイルスや新型コロナウイルスも腸管をとおって、うんちと共に排泄されていることがまあまあの頻度であります。

■受験生が絶対避けたい「トイレでの感染」

つまり、トイレには危険がいっぱい! そこで感染してしまうのは本人も家族も辛いので、ただでさえピリピリする受験直前期に不要な喧嘩を生まないためにも、トイレから出たらしっかりと手を洗いましょう。

ちなみに、手洗いは流水手洗いでも、アルコール除菌でもどちらでもOKですが、トイレ後は、しっかりと流水手洗いをする方がいいでしょう。

「なぜ?」にお答えする前にクイズです。うんちのあとはトイレットペーパーでお尻をふきますよね。このとき、何枚くらいペーパーを重ねれば、うんちの菌が手にうつらないと思いますか? 検証した研究によると、なんと少なくとも30〜40枚くらいは重ねないとついてしまうそうなんです。なのでみなさん、トイレに行ったら確実にうんちが手についている状態だと思ってください(イヤでしょうが……)。

ここでようやく、なぜアルコール消毒ではダメなのか?への回答です。

実は「手指衛生全体」からの視点で言えば、流水手洗いよりもアルコール手洗いの方が殺菌効果は高いのですが、アルコールの性質上、手にたんぱく質がついている場合には殺菌効果が激減してしまいます。

うんちにもたんぱく質が含まれるので、トイレの後は「流水手洗い」の方が良いのです。

・食事前

食事中は、特に口や鼻に手がいきやすいですよね。その前にしっかりと手をキレイにすることで、ウイルスやそのほかの病原体を直接体の中に取り込むリスクを断ち切ることができます。

■お湯での手洗いは注意を…

僕は職業柄、公共のトイレなどで他の人が手をどう洗うかが気になって見てしまうのですが、ほとんどがササッと流水に手をかざすだけで終わり……という様子で「それでは手洗いの意味がない」と内心頭を抱えています。

今回は、絶対にウイルスに感染したくない大事な中学受験直前期の対策ということで、効果的に手洗いを行うポイントも紹介します。

・ウイルスがつきやすい箇所をしっかり洗う

細菌やウイルスがつきやすい、溜まりやすい場所は大体決まっています。そこをしっかりと洗うことが大切です。具体的には、「指先」「指と指の間の水かき部分」「手のひら」「手の甲」「親指全体」「手首」です。

『プレジデントFamily2025冬号』(プレジデント社)
『プレジデントFamily2025冬号』(プレジデント社)

特に洗うのを忘れがちなのが、「指と指の間の水かき部分」の甲側です。手のひら側からはみんな洗うのですが、手の甲側のくぼみにもウイルスは溜まるので要注意です。

そんなに覚えきれない、と思うかもですが、一度正しい洗い方を実践してみれば、体が覚えるはず。

厚生労働省が1分以内で見られる「正しい手洗い方法」の動画を出しているので、ぜひ一度親子で一緒に見て、まねしてみてください。

・泡をつけて「30秒間」洗う

もうひとつのポイントが、せっけんを泡立てて30秒くらいしっかりと洗うこと。30秒と聞くと長いと感じられるでしょうが、泡が細菌やウイルスを落とすのに必要な時間です。先ほど紹介した箇所をすべて洗うと、それくらいの時間がかかります。

・手が乾燥するなら冷水洗いを

冬場はお湯で手を洗う人が多いですが、湯洗いは手の油脂を落とし過ぎるので「手荒れ」の原因になります。手が荒れて痛むと勉強への集中力も落ちますし、手洗いも甘くなるので、手はなるべく冷水で洗う、もしくはしっかりと保湿をしましょう。

しっかりと洗い流したらハンドドライヤーやタオルで水気をとれば完了です。

Point! 「アルコール手洗い」のやり方も基本的に流水手洗いと同じ! たっぷりのせて約15秒洗おう。

■景気づけに「焼肉!」が危険なワケ

対策③規則正しい生活

風邪をひきにくい状態を保つためには、睡眠と食事、この2つの管理に尽きます。この二つがおろそかになると子供の「体力」が落ちて、感染リスクが高まります。

・睡眠

国際的に、小学生の子供に推奨されている睡眠時間は9~12時間です。しかし、日本の生活スタイルでそれだけの睡眠時間を確保するのは不可能に近いでしょう。受験生だと、特に直前期は睡眠時間の確保がなかなか難しくなると思います。とはいえ、ウイルス感染を防ぐ観点で、睡眠で心身をリフレッシュすることは重要です。

毎日確保できる・できないは別にしても、本来であれば8時間以上は寝た方がいいということを親が知っておくのは大切でしょう。勉強面でも寝不足の状態は、酩酊状態と同じくらい、判断能力がいちじるしく下がるといわれています(17時間つづけて起きていると酒気帯びと同等まで低下するようです)。

大事な日のケアレスミスを防ぐ意味でも、勉強とのバランスを見ながら睡眠時間をいかに確保するかが、子供にとってかけがえのないサポートになると思います。

・食事

子供がしっかりと栄養をとれる食事のサポートが大切です。感染症対策の視点で言えば、受験直前期は「生焼けのお肉」は食べないようにしてください。

火がしっかりと通っていれば問題ありませんが、レアのお肉は食中毒になるリスクがものすごく高いです。「体力をつけるのに家族で焼肉へ!」などという場合は、十分に注意が必要。

休日の家族の焼肉
写真=iStock.com/Dekdoyjaidee
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Dekdoyjaidee

また、家庭でも、生肉を切った包丁やまな板をそのまま使って、野菜を切ることなどがないように気をつけていただければと思います。

■ワクチンで「重症化リスク」は8~9割減

対策④ワクチン

インフルエンザのワクチンなど、打てるものは打っておくことをおすすめしています。例えばインフルエンザワクチンを打ったときに得られる効果は感染する確率が約60%減る程度。

「お金を出して痛い思いもしたのに、かかってしまうなら打ちたくない」――そう思う方もいるかもしれませんが、万が一感染したときに「入院する」「重篤になる」といった重症化リスクを約8~9割も下げてくれます。感染リスクを減らす意味では、家族も打った方がいいでしょう。

ただ無料ではないので、経済的に余裕があれば打ってはいかがでしょうか?という提案です。

■直前期は取り入れたい! 家・外で「有効な感染症対策」

●家

本人のタオルは家族と分ける

家族も風邪をひきやすい時期です。家族が効果的ではない手洗いをしていた場合、特に胃腸炎など、タオルを通して感染する率が高いので分けるのがおすすめ。使い捨てタオルにしても良し。

手を拭く
写真=iStock.com/masa44
家族全員、受験が終わるまでは「使い捨てタオル」に統一するも◎ - 写真=iStock.com/masa44
●外

アルコールジェルを常備

流水手洗いができない場合も、これがあれば安心。食事の前にアルコール手洗いの徹底を。

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伊藤 健太(いとう・けんた)
あいち小児保健医療総合センター総合診療科医長
東京都立小児総合医療センター感染症科を経て現職。著書に『子どものカゼのトリセツ』(金原出版)など。

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(あいち小児保健医療総合センター総合診療科医長 伊藤 健太)

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