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突如始まった国産SNS「mixi2」はXからの避難先となりえるか…ITライターが1週間使って感じた将来性

プレジデントオンライン / 2024年12月29日 18時15分

mixi2のアイコン(筆者提供)

国内ユーザー数6700万人といわれるSNS「X」(エックス)。そのシステムに似た短文投稿SNS「mixi2」をMIXI社がローンチした。ITライターの山下達也さんは「実際にmixi2を使ってみたところ、Xよりコミュニティが活発など、コミュニケーションの場として機能しそうだ」という――。

■12月16日、国産SNS「mixi2」が突然のローンチ

2000年代後半に一世を風靡した国内SNSの草分けであるmixi(ミクシィ)が復活した。mixi自体は今でも運営中なので「復活した」というと語弊があるが、その名を冠したX(旧Twitter)ライクな短文SNS「mixi2」が、2024年12月16日に突如リリースされたのだ。その登場は、かつてmixiにハマったアラフォー&アラフィフ世代を大いにざわつかせ、1週間足らずで120万人もの新規ユーザーをかき集めてしまった。令和の今、再びmixiの時代がやってくる?のか。

「マイミク」「足あと」「日記」「コミュニティ」など独自の機能で、国内独自のSNS文化を生みだした「mixi」。2010年代にTwitter(現X)やFacebookなどのグローバルSNSに人気を奪われてしまったものの、今でも当時の空気を懐かしむ人は少なくない。

特に昨今、SNSを舞台に繰り広げられる政治的対立や陰謀論、デマ、アダルト要素のある低品質な広告の蔓延は目に余るレベルで、すっかり疲れ果ててしまったという人も多いのではないだろうか。筆者の周りでもSNSと距離を置く人が明確に増えている印象だ。こうした風潮は、特にTwitterがイーロン・マスク氏に買収され(2022年)、Xになって以降、猛烈に加速しているように感じる。

そうした中、まさかのサプライズとなったのが「mixi2」の登場だ。mixi2はそのコンセプトを「SNS=危ない、怖いと言われることがある中、mixi2は楽しい、優しい、ほっこりとした場になればと考えています」(「mixi2」アプリ「よくある質問」より)と説明。ネガティブな情報ばかりが流れてくるSNSへのアンチテーゼ的存在を目指すと謳っている。

■名前は同じだが、mixiとは完全な別サービス

そんなmixi2だが、名前こそ同じものの、現在も運営されているmixiとは別サービスとして提供されており、ユーザーIDも共有されていない。機能的にも全くの別モノで、むしろXをそのまま置き換えたような(言葉を選ばずに言えば、ほぼパクった)サービスとなっている。

昨今、Threads、Misskey.io、Blueskyなど、荒廃するXから逃げ出した人を対象とする短文SNSの立ち上げが流行っているが、mixi2もそうした選択肢のひとつ。ただし、後発ということもあって、機能面では当初からひと通りのものが揃っている。機能アップデートも精力的に行われており、引っ越し先としてはかなり有望な選択肢と言えそうだ。

なお、その開発はmixi創業者にして、現在はMIXI取締役ファウンダー上級執行役員を務める笠原健治氏が主導しているとのこと。機能は大きく異なるものの、そういう意味ではmixiの精神的後継SNSと言って良さそうだ。

■PCからは登録できない、始めるためにはスマホ等が必須

ここからはそんなmixi2の基本的な機能や使い方や、実際に使ってみた感想、乗り換えるべきかなどについて紹介していく。

まず、大前提としてmixi2をするにはスマホアプリをインストールする必要がある。残念ながらPCでの利用にはまだ対応していない。また、初期のmixi同様、招待制を採用しており、18歳未満は登録不可となっている。ただし、招待状の運用はかなりゆるく、Xで「mixi2 招待」と検索するだけで簡単に招待リンクを見つけられる。

登録すると招待者が自動的にフォローされるため、全く知らない人の招待リンクを利用する際は要注意だが、招待リンクを自由に使っていいと表明している人もたくさんいるので、友人にまだmixi2利用者がいない場合は、何が起きても自己責任という前提となるが、そこから登録することも可能だ。

その後、アプリ上でメールアドレスとパスワード、希望するIDを入力すれば登録完了。IDは早いもの勝ちなので、今はmixi2に興味がないという人も(交流関係をリセットしたいのでないかぎり)Xなどで使っているIDを押さえておくことを強くおすすめする。

■見た目は似ているが…、Xとは全く異なるサービス体験

図版1の画面は、mixi2のホーム画面。先に説明したよう、mixiよりもXに近い、いわゆる短文SNSとなった。画面中央にはフォローしている友人たちのポストが時系列に沿って表示されるほか、タブを「発見」に切り換えることで、mixi2がピックアップした話題のポストを見ることができる。

ホーム画面
【図版1】ホーム画面(筆者提供)

昨今のXは後者(「おすすめ」タブ)を前面に押し出した、発信型の「メディア」的なサービスになっているが、mixi2は、黄金期のTwitterのように、友人が今何をしているのかをひと目で確認できる「コミュニケーション」志向のサービスとなっている。そのため、見た目はほとんど変わらないものの、体験は大きく異なっていると感じた。

■仲間を募るコミュニティ機能は「X」より明らかに活発

また、X同様「コミュニティ」機能も搭載されており、趣味や地域情報などで仲間を探し繫がることができる。掲示板ライクだったmixiの同名機能とは異なり、コミュニティでのやり取りはタイムライン形式で行われるため、込み入ったやり取りには不向きな面もあるのだが、あまり活用がされていないXのコミュニティ機能と比べて明らかに活発だ。すでに多くのコミュニティが立ち上げられており、特に職業や地域情報コミュニティが盛り上がっているのは極めてmixi的と言えるだろう。

【図版2】コミュニティ画面
【図版2】コミュニティ画面(筆者提供)

かつてmixiを愛用し日記などを書いていた中高年のユーザーが集う「インターネット老人会」もいくつか立ち上がっている。

なお、コミュニティでは「イベント」の作成も可能。コミュニティ内で参加メンバーを募って特定の話題で盛り上がったり、mixi時代に大流行したオフ会への参加を募ったりといった使い方ができそうだ。

【図版3】イベント作成画面
【図版3】イベント作成画面(筆者提供)

■エモテキ&リアクションで楽しむ「やさしい」コミュニケーション

肝心のポスト機能についても後発ならではの工夫が施されている。とりわけユニークなのが、mixi2独自のエモテキ(エモーションテキストの略?)とリアクション機能。エモテキはポストするテキストの文字を大きくしたり、動きを付けたりするというもの。目立たせたい時に便利な機能だが、あまりやりすぎると嫌われるかもしれない。

【図版4】エモテキ
【図版4】エモテキ(筆者提供)

対するリアクションはポストに対してさまざまな絵文字で返答できるというもの。いわゆる「いいね!」と比べて、より心情に沿った返答ができるようになった。すでに多くのSNSやSlackなどのビジネスツールで実装済みの機能だが、国産SNSということで、「おつかれ」「どんまい」などの日本語リアクションが充実しており、使いやすそうだ。

【図版5】リアクション画面
【図版5】リアクション画面(筆者提供)

なお、mixi2でタイムラインやコミュニティに投稿できる文字数はXの140文字に対して、mixi2は149.3文字。なぜ150文字ではないのか、端数の0.3文字にどういう意味があるのかちょっと考えてしまったのだが、逆から読むと3.941、つまりミクシィという遊び心のようだ。

また、誰かのコメントに返信する際、フォームに「やさしいことばで返信しよう」と表示されるのも特徴的。なんら強制力のないメッセージではあるものの、こういうところからもmixi2がどんなサービスを志向しているのかが伝わってくる。

■タイムラインは平和だが…、120万ユーザーはまだ「様子見」

ここまでmixi2の基本的な機能を紹介してきた。他のSNSと比べ、必要な機能が最初からひと通り揃っており、細かな不満点もどんどんアップデートで解消されていっているのが好印象。オープン直後から約1週間使ってみたが、紹介制かつ18禁ということもあってか参加者の質も高く、牧歌的で過ごしやすいと感じることが多かった。

Xで苦痛に感じる過剰で押しつけがましい広告もなく、外部サイトに誘導するアフィリエイトやインプレゾンビが会話に割り込んでくることもない。まだサービスが始まったばかりで、悪意あるユーザーの“狩り場”になっていないというのが正確なところなのだろうが、現状、規約違反投稿への対応も早い。アダルト表現についても「性描写」表現が明確に禁止されており、そういったポストが苦手だという人にはかなり魅力的な選択肢となりそうだ(実はアダルト描写に関してはXが最もゆるいSNSと言われている)。

■今後は「ちいかわ」ナガノ氏の移籍がカギか?

現状、mixi2は目指している「楽しい、優しい、ほっこりとした場」へと順調に育っていっているように感じる。少なくとも、ギスギスした雰囲気は一切感じられなかった。友人を積極的に招待して、仲間内のコミュニケーションの場として育てていけば、かつてのmixiのような空間を再現できるかもしれない。

【図版6】「やさしいことばで返信しよう」
【図版6】「やさしいことばで返信しよう」(筆者提供)

反面、120万ユーザーのほとんどがまだ「様子見」で、積極的にポストしているユーザーの数は、Xなどと比べるべくもない。アクティブにコミュニケーション、情報収集したいという人にはまだまだ物足りなさがある。企業アカウント、有名人アカウントの獲得なども含め、これからの1年でどこまでサービスを盛り上げられるかで大きく明暗が分かれることになるだろう。なお、Xでは半ば冗談交じりながら、「ちいかわのナガノ氏(365万フォロワー)が移籍したSNSが次の本命SNSになる」などと言われているが、記事執筆時点でナガノ氏がmixi2にアカウントを作ったという情報は、ない。

■SNS使い分けの時代、mixi2をどう活用する?

さらに長期的にはマネタイズをどうするのかという課題もある。運営元のMIXIは現在、「モンスターストライク」や「コトダマン」といったゲームアプリを中心とするデジタルエンタテインメント事業が売上のほとんどを占めており、当面、運営費用に困ることはなさそうだが、将来的にタイムラインに広告などが挿入されていくことは避けられないだろう。また、それをやったとしても、かつてのTwitterが赤字続きだったように、短文SNSの黒字化はハードルが高いと言われている。

短期的にはユーザーの獲得と活性化が、長期的にはマネタイズが課題となりそうなmixi2。しかし、Xからの離脱を決意する人が増えている中、ポストXの有望な選択肢が生まれたことは素直に歓迎したい。

SNSアイコン
筆者提供

Xの“変節”によって、2010年代から続いてきたSNSの枠組みが大きく変わり始めている。そうした中、今後はこれまで以上にSNSを使い分けしていくことになるだろう。mixiはその中で、Xが果たせなくなりつつある友人とのコミュニケーションの場として機能していくことになりそうだ。すでに仲の良い友人を集めてちょっとした近況を報告しあったり、コミュニティを通じて新たな友人(マイミク?)を作ったり。最初期のSNSが果たしていた役割を、古くて新しいSNS、mixi2が今、改めて担ってくれることに期待したい。

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山下 達也(やました・たつや)
ITライター
1975年東京都生まれ。AIやVRなどの最新のITや、PC、スマートフォン、デジタルカメラ、AV機器など、幅広くデジタル機器を愛好。一般誌から専門誌、企業オウンドメディアまで幅広く解説記事を執筆する。

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(ITライター 山下 達也)

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