「ポイ活」に励んでいる人はこれから損をする…金利上昇時代にやってはいけない「お金の使い方」
プレジデントオンライン / 2025年1月13日 8時15分
※本稿は、深野康彦『金利で損しない方法、教えてください! 人気FPが教える金利上昇時代の「お金の新ルール」』(扶桑社)の一部を再編集したものです。
■ポイントより「その場で値引き」がお得
【深野康彦さん】ここからは、金利のある世界において「やってはいけないこと」について見ていきましょう。まず、金利上昇時代とは物価も上がるということです。そのなかで注意したいのは、いろんなポイントを貯める「ポイ活」です。ポイントは今後、不利になっていく可能性が高いと考えています。
【ウエノ記者】僕もいろんな「経済圏」でポイントカードを作って貯めているのですが、なぜ不利になるんでしょうか?
【深野】というのも、物価が上がっていくのにポイントで持ち続けると、物価上昇分だけ損をしてしまうからです。よって、ポイントは貯めずに「その場で値引き」してもらうのがいちばんお得です。
ただし、最近はポイントを運用できるようなシステムもあるので、ポイントで運用を行って物価上昇率を上回る利益を目指したいなら、それはアリだと付け加えておきましょう。最も損なのはポイントを失効してしまうことですね。
■「楽天経済圏」に迫る“改悪”の未来
【ウエノ】なるほど。じゃあ、ポイント還元に惹かれて買い物をするよりも、その場で値引きしてもらえるときに買うほうがお得になるんですね。
【深野】物価の上昇局面ではそうなりますね。ポイ活は今後、お得さが減っていくのではないかと危惧しています。特に「楽天経済圏」は先行きを心配しています。
【ウエノ】それはどういうことですか?
【深野】企業にとってポイントを発行すると、それは「負債」になります。当然、バランスシートは悪化します。そこにお客さんが一斉に「ポイントを変えたい(使いたい)」と申し出たら、一気に負債を返済していかなければいけないのです。「グループ内の経済圏で使ってくれればいい」という考え方でポイントを発行しているかもしれませんが、それにも限度があるような気がしてなりません。
なので、ポイント条件は今後どうしても“改悪”の方向に向かっていく可能性が高いのではないでしょうか。
【ウエノ】そうなのか……。ポイ活で結構貯まっているポイントカードもあるので早めに使ったほうがいいですね。
【深野】ひとまずは「物価上昇下ではポイントは不利」と覚えておくことが重要です。ちなみに、NISAのクレジットカード積み立てや、ふるさと納税のポイントの付与などができなくなるなど、改変のニュースが増えています。今後はしっかりニュースをチェックしたほうがいいと思いますよ。
■「不動産投資で儲ける」も難しくなる
【深野】不労所得を得るのに根強い人気なのが、不動産投資です。ただ不動産投資の場合、低金利がフォローの風となっていた部分があり、これから金利が上昇していくにつれて、儲けるのはどんどん難しくなっていくと思われます。
【ウエノ】それは投資物件を買うのにローンを組むからですか?
【深野】その通り。一般的に不動産投資では手持ち資金に加えて借り入れで物件を購入することになります。これまでは低い金利で資金を調達(借り入れ)することができたため収益を得やすかったのです。しかし、これからの金利上昇局面では借入金利も上昇することになります。
不動産投資の場合の借入金利は住宅ローンと異なり、短期金利ではなく長期金利に連動することになります。しかも、不動産投資用ローンは変動金利タイプが一般的です。このため、不動産投資向け融資の金利は住居用の住宅ローンよりも先に上昇していくことになるでしょう。
■家賃収入は変わらず、支出だけが増えていく
【ウエノ】不動産投資用ローンのほうが金利上昇は早いんですね! しかも、住居用のローンよりも金利が高い……。
【深野】家賃収入と借入金利のみで単純化すれば、家賃収入が5%、借入金利が1.5%であれば3.5%の収益を得ることができました。しかし、家賃収入が変わらず借入金利だけが2.0%、2.5%……と上昇していけば、収益は3.0%、2.5%……と減少していくことになるのです。
収益が減少すればするほど、固定資産税や修繕費などの諸費用を賄うのが難しくなっていき、収支は赤字になる可能性が高くなります。賃借人の管理や募集を不動産会社に任せれば、当然手数料がかかることも付け加えておきましょう。
もちろん、どのような物件に投資するかで話は変わります。高い家賃収入を得られる高収益の物件だったり、現金で買えるような築古物件に投資して、自分でリフォームなどをするなら別です。とはいえ、銀行でローンを組んで投資をするのなら、どうしても利回りが悪くなってしまいます。
■家賃を引き上げるのは簡単なことじゃない
【ウエノ】ただ、それなら所有物件の家賃を上げて収入を高めればいいんじゃないですか?
【深野】それが、そううまくはいきません。家賃収入は景気や物価の変動をあまり受けない傾向にあるからです。景気がよくなろう(物価が上がる)が、悪くなろう(物価が下がる)が、家賃収入はほぼ横ばいか若干の引き上げができる程度のはずです。
そもそも、家賃を大幅に、あるいは小刻みでも何度も引き上げてしまうと、賃貸人は出ていってしまうでしょう。なぜなら日本は家が余っている状況だから、よほど魅力的な物件でない限り、家賃が高くなればさっさと別の物件に引っ越してしまいます。
【ウエノ】たしかにその通りですね……。
【深野】もちろん、そんな状況でも不動産投資がうまくいく人はいるでしょう。かつて「サラリーマン大家」がはやりましたが、私に言わせれば「大家サラリーマン」のような状態の人ですね。ほぼ不動産業者と同じように不動産管理や物件の取捨選択などに励み、空き時間でサラリーマンをやっている感じの人は、金利が上昇しても儲けられるかもしれません。
【ウエノ】やはり「借金をするタイプの投資」はやりづらくなるんですね。
■外貨建て投資には手を出さないほうが無難
【ウエノ】よく「外貨預金で年率10%」とか、「FXで資産○倍」とかって文言を見るとついつい投資したくなっちゃうのですが……。金利がある世界では、外貨資産との向き合い方はどうしたらいいんでしょうか?
【深野】金利のある世界では「外貨建ての投資」もあまりオススメできませんね。基本的にはリスクが高くなるのでやらないほうが無難です。例えば、仮に外貨預金で年10%の利回りがついたとしても、常に為替リスクが発生します。
【ウエノ】為替レートがどうなるのかわからない、ということですよね。
【深野】その通りです。2024年の米ドル/円は一時160円台まで円安ドル高が進行しました。一方で日銀の利上げやアメリカ経済の先行き不透明感から利下げが行われ、瞬間的に140円割れまで円高が進んだタイミングもあります。
利回りで得をしても、この為替差で損をするリスクが出てきます。為替はいつどんなかたちで円安/円高に振れるかわかりません。それに、日本の金利が上がれば、為替リスクのない国内資産に機関投資家の運用資金などお金が集まることになります。
■絶対に買ってはいけない金融商品は…
【ウエノ】そもそも、日本が金利のある世界になるから、無理をして海外の高い利回りの通貨を買う必要性がなくなってしまうのですね。
【深野】その通り。外貨建て資産に目が向いていたのは、日本の金利が低かったからですよね。今後は日本の金利が上がっていくのですから、全般的に外貨建ての商品も旨味が減るでしょう。外貨建ての保険などは為替リスクもさることながら、そもそも手数料が高いので「絶対にやっちゃダメな金融商品」です。
【ウエノ】そもそも日本の金利が上がると、為替市場はどうなっていくと思いますか?
【深野】為替は各国の金利差によってレートがある程度決まっていきます。基本的には金利が低いところから高いところへとお金は流れていきます。2024年後半時点では日本の金利が上がるなかでアメリカやユーロは利下げの状況です。
【ウエノ】つまり、円高/米ドル安・ユーロ安になる、というわけですね。
■「最強通貨」と言われたメキシコペソの未来
【深野】これから日本の金利が上がっていくなかでは、外貨を持つことは不利になっていきます。簡単にいえば、株式投資と同じようにアクセルをゆるめて、全力で投資するのはやめたほうがいいですね。昨今の為替市場では、金利差を狙った新興国通貨への投資、特にメキシコペソが人気ですよね?
メキシコペソと日本円との金利差が大きいので、メキシコペソで保有すればそのぶんの金利スワップ(2通貨間の金利差の差額を受け取れる取引)で儲かるという投資ですよね。
仮にFX投資でメキシコペソを1万通貨(日本円で約7万3450円/2024年12月2日時点)保有すれば、一日あたり23円のスワップ金利がついてきます。このスワップ金利を求めてメキシコペソを買う人が多いですが、今後は金利差が縮まるのでリスクが高まると思います。
【ウエノ】僕の知人もこの投資で「1カ月に数万円儲かった」と喜んでいましたが、これからはリスクが上がるのか……。
■新興国の投資リスクを忘れてはいけない
【深野】そもそも、為替の取引は実需があるから行うものです。米ドルは貿易の決済通貨として活用できますが、メキシコペソは実質的にメキシコでしか使えません。国の信用力を考えれば、メキシコは新興国です。
新興国が怖いのはいつ経済が停滞するかわからないこと。メキシコも大統領選挙で政治が不安定になったり、そもそも日本で取引する際にはメキシコの情報が入手しづらいことがリスクです。つまり、新興国には先進国では考えにくいカントリーリスクがあるということを忘れてはならないのです。
【ウエノ】たしかに。日本ではメキシコ経済のニュースなんてほぼ流れていませんよね。
■「金利がある世界」の投資の正解とは
【深野】仮に日本の金利が3〜4%台になれば、一気に円高に振れてみんな日本円を買うようになります。そうなればスワップの利益よりも為替差損のほうが大きく上回ります。日本の金利が上がれば、これまで海外資産に投資されていたお金は自国に戻ってくると考えられるのです。
これまでは日本が超低金利だったから、収益を上げるためにはリスクを取ってでも海外に投資して儲けたほうがよかったけれど……それが変わるわけですね。
これからは日本に金利がある状況になるので、単純に「日本に投資すればいい」ということになります。脆弱性があるところの資産からお金は逃げるスピードが速いもの。新興国のマーケットは小さいから、一方通行になるとあっという間にお金が逃げていくので気をつけたほうがいいですよ。
【ウエノ】やはり金利の影響は広いし、大きいですね。
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ファイナンシャルプランナー
ファイナンシャルリサーチ代表。1962年生まれ。中堅クレジット会社勤務などを経て、独立。完全独立系ファイナンシャルプランナーとして、個人のコンサルティングを行いながら、テレビ・ラジオ番組への出演、新聞・マネー雑誌・各種メールマガジンへの執筆など、さまざまなメディアを通じて投資の啓蒙や家計管理の重要性を説いている。
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(ファイナンシャルプランナー 深野 康彦)
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