人事は「6秒」しか職務経歴書を見ていない…転職で「書類選考の壁」を突破するために「最初の5行」に書くべき要素
プレジデントオンライン / 2025年1月16日 8時15分
※本稿は、安斎響市『転職する勇気 「強み」がない人のための転職活動攻略マニュアル』(扶桑社)の一部を再編集したものです。
以下は、新卒4年目で転職を考える田中君(26)と、AIアドバイザー「転職デビル」の会話の一コマである。
■職務経歴書の書き始め方
「応募する求人の選び方は、なんとなく分かった気がするんだけどさ」
「何だい、またネガティブ田中かい?」
「もういいよ、それは。問題はさ、職務経歴書だよ」
「何が問題なんだい?」
「転職デビルはさ、僕の自己PRスキルの低さを完全に見くびっているんだよ。僕の職務経歴書はひどいよ?」
「変なところで威張るなよ、ネガティブだなぁ、もう。どれどれ、見せてごらんよ」
そう言われて、僕は作成途中の職務経歴書のPDFファイルを、スマホアプリにアップロードした。
「判定! ジャカジャカジャカジャカジャカ……デデン! 0点! なんだこれは?」
「だから、ひどいって言ったじゃないか」
「ひどいも何もさ、1行も書いてないじゃないか。真っ白だ」
「書いてるだろ? 氏名と連絡先」
「おいおい、ネガティブ田中。これは職務経歴書じゃなくて、『氏名と連絡先』だろ。そりゃ0点が出るよ」
「しょーがないじゃないか! 何を書いていいか、さっぱり分からないんだから! 僕だって書こうとしたよ、したんだけど、全然言葉が出てこないんだよ、ずーーーっと白紙とにらめっこだよ」
「ひどい、なかなかにひどい……」
「いいよ。笑えばいいさ、僕のことを。どうせ僕には無理なんだ、転職なんて」
■職務経歴書は「最初の5行」に魂を込める
「あのねぇ田中君、せっかく応募企業選びのことをいろいろ教えてあげたのに、全然ポジティブになれてないじゃないか」
「ポジティブになんてなれないよ。職務経歴書が白紙なんだから。これじゃ、応募企業が見つかったって応募できないし」
「仕方ない、教えてあげよう、この転職デビルが。職務経歴書はね、最初の5行だ。冒頭5行に魂を込めるんだ」
「悪魔が『魂』って言葉を言うと、なんだか気持ち悪いな。魂を抜き取られそう」
「くだらないことを言ってるんじゃないよ。いいかい? 一番上の『概要』の5行だ。そこでほとんど書類選考の通過は決まる」
■「数秒の流し読み」で不合格が決まってしまう
「概要だけで?」
「そうさ。そもそも、職務経歴書は概要だけでいいんだから」
「どういうこと?」
「面接官や人事担当者は、候補者一人あたり、どの程度の時間をかけて職務経歴書を見ると思う?」
「どの程度って……、僕には全然分からないけど、5分とか? さすがに10分以上かけてじっくり見てくれるとは思わないけど」
「6秒だ」
「は?」
「平均6秒。これは以前、人材業界のベテランの人に聞いた話さ」
「6秒? そんな短い時間でいったい何が分かるんだよ?」
「だから、最初の5行が大事なんだよ。6秒なんて、流し読みでも5行程度が限界だ。つまり、最初のページの一番上の数行を読んで、そこでピンと来なかったら、もうその時点で書類選考の不合格が確定するんだよ」
「そんな……、僕にとっては今後の人生が懸かってるのに、6秒で即終了することがあるの?」
「人事担当者は、1日に何十枚も書類を見ていたりするからね。当然、採用の仕事だけやっているわけでもないし、会議や打ち合わせもあるし、一人ひとりの職務経歴書にそんなに時間をかけていたら日が暮れてしまうのさ」
■冒頭5行に盛り込むべき要素
「冒頭5行に魂を込めるって言ってもさ、そんな短い文章に魂を込めようがなくない?」
「1行も書けなくて白紙で悩んでいるヤツがいったい何を言ってるんだよ? まずは1行でも2行でも何か書かないと、魂もクソもねぇだろ」
「ウッ……、それは……」
相変わらずの毒舌だ。やめてくれ。そのツッコミは、僕に効く。
「平均6秒しか見てもらえないんだからさ、最初の5行で勝負するしかないだろうよ」
「でも、何を書くんだい? 具体的に教えてくれよ、僕でも書けるように!」
「例えばこんな感じだ」
「すごい! なんだか立派! いいね、これをパクろう! このまま全部パクろうっと!」
「そんなことしちゃダメだよ、田中君。職務経歴書に書いた内容は、面接で詳しく突っ込まれるんだ。君自身が、どういう角度から何回質問されても全部答えられる内容にしておかないと、結局は面接でボロが出るだけだよ」
「えー! そんなこと言われても、僕の進捗は『氏名と連絡先』で止まっちゃってるんだよ? もう、例文を丸パクりするくらいしか方法は……」
「行動が極端すぎるだろ、ネガティブ田中」
「だって、書き方が分からないんだよ」
「文言をそのままパクるんじゃない、要素をパクるんだよ」
「要素?」
■概要は「なるべく簡単にわかりやすく」が鉄則
「そうさ。要素分解して考えてみると、だいたいこの程度の内容が5行以内に盛り込まれていればいいんだ」
・所属企業のビジネス規模:売上は業界8位、20XX年実績42億円
・経験年数と職種:約3年間、大口取引先7社向けの法人営業
・組織と役割:10名で構成される営業部の担当者の一人
・主な担当業務:老舗顧客との中長期的な信頼関係の構築
・具体的な実績①:年間販売数量の維持(総需要が大幅縮小する中で対前年+2%)
・具体的な実績②:受発注プロセスの効率化のプロジェクト(DX推進により受注確定の所要時間を2日→24時間以内に短縮)
「なるほど、なるほど?」
「田中君、まだイマイチ分かってないだろ」
「ギクッ!」
やめてくれ。そのツッコミは、僕に効く。
「大事なのは、なるべく簡潔に分かりやすくってことだ。例えば、『食品メーカーABC社』とだけ書かれても、よっぽどの有名な会社じゃない限り、どういう企業なのか分からないだろ? だから、『売上は業界8位、20XX年実績42億円』みたいな情報を足しておくんだ。他の業界の人や、人事部の人にもイメージが付きやすいようにね。仕事の内容だけじゃなく、具体的な実績について数字で複数示しておくのも大事なことだ」
「その数字ってヤツ、苦手なんだよなー」
■数字で示すことでそれっぽく見える
「数字っていうより、言語化の問題なんだ。数字が得意だと自分で自覚している人なんて、実際そんなにいないよ。私だって数字は苦手だ。これは、数字に強いかどうかではなくて、自分の経験を他人にどう見せるかの問題なの」
「数字だろうが言語化だろうが、僕には分からないし、無理だよ」
「簡単にあきらめるなよ。あきらめたら、そこで試合終了なんだぞ」
「どこかの監督みたいなことを……」
「転職したいんだろ?」
「はい、先生。転職がしたいです……」
「じゃあ、やるしかない。数字で実績を語るのって、実は言うほど難しいことじゃないよ。田中君にもできるさ」
「僕にもできる? 本当に?」
「言ったじゃないか。転職できない人なんて、いないんだ。みんな、できる。絶対できる」
「そこまで言うなら、頑張っちゃおうかなー」
「本当にダメ人間だな、田中君……」
「いいから教えてくれよー、数字で実績を語るってやつ」
■客観的でない数字は書かない
「数字で語るって別にすごいことでも何でもなくってさ。ただ『数字を出す』だけなんだ。何でもないことでも数字で示すとそれっぽくなるし、相手に伝わりやすくなる。例えば、これだけど……」
・具体的な実績①:年間販売数量の維持(総需要が大幅縮小する中で対前年+2%)
「なんだか立派な実績に見えるよね……」
「そんなことないだろ? よく見てみなよ」
「え?」
「対前年+2%だぞ? たったの2%しか伸びてないし、この書き方だと、もしかしたら予算達成できてない可能性がある」
「え? 予算達成してないのに実績として書いていいの?」
「むしろ、予算達成とかは書いちゃダメなんだよ」
「なんで?」
「客観的じゃないから」
「予算って客観的だろうよー」
「田中君、なかなかにアホだな」
「な、なんだとー」
「ここで言う客観性というのは、君から見てじゃない、企業の面接官から見たときの話だ」
「え? どういうこと?」
「つまりさ、予算や営業目標って、あくまで社内の話だよね。営業マン一人ひとりの個人ノルマを社外にいちいち公開していないだろ?」
「そりゃ、そうだね」
「つまり、君が本当に予算を達成しているのか、していないのかなんて、面接官は確かめようがない」
「そうか! つまり、いくらでもウソがつけるから、対予算+250%の実績でした! って言えばいいってことだね!」
「そんなわけないだろ!」
「冗談だよ……」
■面接で深掘りされたくないことは書かない
「ふー、まったく! そもそも予算ってさ、個々の会社や営業部の方針などによって、無理難題の高すぎるノルマを突きつけてくる職場もあれば、ゆるゆるで超イージーな目標の部署も実際にあるだろ?」
「たしかに、僕の会社でも、調味料部門は競合他社に負けまくってるから予算達成がかなり厳しいけど、エナジードリンク部門は昔からブランドが強くて放っておいても売れるから、誰が担当しても予算達成できる、みたいな部分が一応ある」
「そう。予算って会社が自分たちで立てた『目標』だからさ、自分で作ったノルマより上か下かなんて本来、社外の人から見たらどうでもいいことだろ? それを、『客観性がない』って言うの」
「そういうことか……」
「逆に言うと、前年実績との比較ならまだ一応客観的だ。総需要が大幅縮小する中で対前年+2%っていうのは、マーケットの傾向に対して多少はプラスって話になるから、一応誰が見てもポジティブ要素だろ? だから実績って言っていいんだよ。総需要の推移は調べたら分かるから、そう勝手にウソもつけないしね。もちろん、対前年比較の数字を出しても、それが果たしてどの程度すごいのかは書類だけじゃ分からないから、面接で詳しく聞くことになるよ」
「面接で聞かれちゃうの? 怖いなー」
「自分で書類に書いたことを面接で聞かれるのは当たり前だろ? もし聞かれたくない内容なら、最初から書かなきゃいいんだよ。それに、職務経歴書作成の最大の目的は『とりあえず面接に呼んで、詳しく聞いてみよう』と思わせることなんだから、これで十分役割を果たしているんだ」
■ウソはNGだが、言い換えは問題ない
「なるほどー。ちなみに、こっちの方は?」
・具体的な実績②:受発注プロセスの効率化のプロジェクト(DX推進により受注確定の所要時間を2日→24時間以内に短縮)
「これも、イイ感じに数字を使って書いているだけだよ。『DX推進』って書いているけど、実際には『いい加減、そろそろFAXで注文書を送るのやめませんか?』とFAXからEメールに切り替えたら、注文確定までの時間が早くなったよねって話」
「なにそれ? 全然すごくない!」
「いいんだよ。『DX推進により受注確定の所要時間を2日→24時間以内に短縮』だろ? まぎれもない事実じゃないか。『FAXやめました』って書くだけだと何の実績にも見えないけど、具体的な数字を使えば印象が変わる」
「なるほど」
「取引先からFAXで発注書を送ってこられてもすぐには気づかないし、オフィスにいないと受け取れない。そのため翌日までに発注書を確認して翌々日に受注確定だったのが、Eメールならスマホで受け取ってそのまま返事をすればいいから、基本24時間以内だ。それに、これは紙からデジタルへの切り替えだから、DXと呼んでもウソではないだろ?」
「なんだかハッタリっぽいなぁ」
「もう一度言うぞ? 職務経歴書作成の最大の目的は『とりあえず面接に呼んで、詳しく聞いてみよう』と企業側に思わせることなんだ。だから、面接に呼ばれたらこっちのもんなんだよ。あからさまなウソをつくのはダメだけど、ハッタリや言い換えは問題ない。それが事実であるかぎり、どんな言葉を使って表現するかは、こっちの自由なんだからね」
「悪魔……さすがはデビル」
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転職ライター
1987年生まれ。日系大手メーカー海外営業部、外資系メーカーなどを経て、2020年より外資系大手IT企業のシニアマネージャー。「転職とキャリア」をテーマに、ブログ、Twitterなどで情報発信を続け、日経BP『日経トレンディ』、東洋経済新報社「東洋経済オンライン」、マネーフォワード「MONEY PLUS」など、多くのメディアで取り上げられている。著書に『私にも転職って、できますか?~はじめての転職活動のときに知りたかった本音の話~』(ソーテック社)、『転職の最終兵器 未来を変える転職のための21のヒント』(かんき出版)などがある。
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(転職ライター 安斎 響市)
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