覚えたての「アップデート」という言葉で同世代をマウント…35歳以下が知らない"情弱・昭和人間"の内部抗争
プレジデントオンライン / 2025年1月9日 10時15分
国と国との関係も、客観的に見ると「似た者同士」のほうが、ぶつかったり深刻な対立に発展したりしがちです。人間も同じ。当事者には身に覚えがあるかと存じますが、昭和人間は昭和人間が嫌いです。どんなところが嫌いなのか。5つの理由を挙げてみました。あえて直視することで、嫌いという厄介な感情を手なずける方法を考えてみましょう。
嫌いな理由その1
■〈覚えたての「アップデート」という言葉を得意気に使いたがる〉
世の中の価値観や常識は、昭和の頃に比べて大きく変わりました。自分に染みついた感覚も修正し続けなければなりません。それはそうなのですが、昭和人間の中には、上手に「はやりの考え方」に順応して、同年代の昭和人間を見下したがる人が少なからずいます。そういう人が使いがちなのが「アップデート」という言葉。なんせはやりに乗っかっているだけなので、どうしてアップデートが必要なのかはよくわかっていません。
そういう人が、話題の出来事などにからめて「やっぱり意識をアップデートしないとね」なんて言い出したら、心の中で「まずは、新しめの言葉を使って何かを言った気になっているお前の旧態依然とした了見をアップデートしろよ」と呟きましょう。口に出して言っても、本人はきっと何を言われているのか理解できません。さらに「ま、こいつもケナゲに背伸びしているんだな」と思えば、大らかな気持ちで聞き流せそうです。
嫌いな理由その2
■〈時代に恵まれただけのくせに「過去の栄光」を自慢してくる〉
人は誰しも年齢を重ねると、過去を美化しがち。たまたま時代や環境や運に恵まれただけなのに、過去の成功体験を「自分の手柄」として語る傾向もあります。そのみっともなさに関しては、昭和人間内での年代の違いは関係ありません。いっぽうで、40代50代の昭和人間が、60代70代の昭和人間に向けて根深く抱いている嫌悪感もあります。
「バブル時代」を過ごした(横目で見てきた)年上世代は、世の中も人生も「まあ、どうにかなる」と楽観的に考えてきました。「就職氷河期」などを経験して、世の中も人生も「甘くはない」と悲観的にとらえ続けてきた年下世代は、年上世代の能天気さに反発を覚えずにはいられません。
華やかな時代の武勇伝を語られても、鼻白むばかりです。年上世代としては、そんな見られ方を多少は意識したいところ。年下世代は、年上世代が過去の自慢話を始めたら、「また都合よく盛ってる」と心の中で苦笑いしながら適当に相づちを打っておきましょう。
嫌いな理由その3
■〈他人の失敗に厳しく、自分は「正論」や「建前」しか言わない〉
こちらは逆に、60代70代の昭和人間が、40代50代の昭和人間に対して抱きがちな嫌悪感。いつの頃からか、世の中はずいぶんお行儀がよくなりました。たとえば未成年の飲酒や、あるいは芸能人の不倫に対して、「まあ、そのぐらいいいじゃん」なんてことは言えません。ネットやSNSの発達とも相まって、1億2000万総風紀委員となって、常に「批判の対象(自分を安全圏に置くために容赦なく叩ける生贄)」を探しています。
基本的にフマジメな60代70代の昭和人間は、濡れ衣なのは承知の上で「こんな世の中になったのは、40代50代がクソマジメすぎるせいだ」と言いたくてたまりません。物事を悲観的にとらえがちで、すべては「自己責任」だと思い込まされてきた40代50代は、つい「正論」や「建前」を口にしたがる一面はあるかも。ただ、60代70代としては、40代50代をそんな目に遭わせた責任の一端は自分たちにあることを忘れたくないものです。
嫌いな理由その4
■〈政治問題を熱く語ることで自分が「何者か」であろうとする〉
もちろん、政治に関心を持つことがいけないと言いたいわけではありません。しかし、昭和人間の中には政治問題を熱く語ることで、自分の意識の高さや知性(らしきもの)をアピールしたがる人が少なからずいます。
とくに目立つのが、60代後半以上の現役を引退した男性のみなさん。自分の「すごさ」を示したくて仕方ないのはよくわかりますが、熱く語れば語るほど、うっとうしさだけでなく、もの悲しさを漂わせてしまいます。
ピントがズレたご高説をくどくど話すぐらいは、まだマシ。「何者か」である実感を得たくて、ネットの海をさまよった末に「自分だけが見つけた真実」に出合い、まんまとネトウヨになったり陰謀論にはまったりするケースも少なくありません。いわゆる「左」の方々も、とにかく「ケシカラン」と声を上げることで、「ひと味違う賢い自分」になった気持ちよさを味わいがち。けっしてひとごとではありません。くれぐれも気を付けましょう。
嫌いな理由その5
■〈自分がいつの間にか「老害」になっていることを自覚できない〉
「自分は年をとっても、絶対に『今どきの若いモンは』なんて言わない」――。若かりし頃の昭和人間は、誰もがそう心に決めていました。しかし、なんということでしょう。実際に中高年になった今、昭和人間の大半はスキあらば若者批判をせずにいられません。もっともらしい分析などしつつ、「単純に今どきの若者を批判しているわけではない」という顔をしたがるケースもありますが、往生際が悪い分、むしろ「老害感」が強まります。
そう、昭和人間の世代は、誰もが「老害」になる宿命から逃れられません。時代の変化や自分の役割の変化を踏まえた上で、多少は役に立つ老害になりたいところ。「自分はまだまだ若いモンには負けない」と言い張っていると、ただ迷惑なだけの老害になります。「自分は老害じゃない!」と本気で思っている老害ほど、見ていて痛々しいものはありません。まあ、反面教師になってくれるという意味では、ありがたい存在ではありますが。
このように昭和人間は、昭和人間に対して日々「やれやれ」とか「おいおい」といった気持ちを抱いています。忘れてはならないのは、すべて「お互い様」だということ。自分にも思い当たる節があるからこそ、自分もやってしまいそうだからこそ、マイナスの感情がふくらんでしまうという構図はあるでしょう。
それぞれに至らないところだらけだとしても、微妙な世代差はあるにしても、昭和人間は大きく見れば頼りになる同志であり大切な仲間です。足の引っ張り合いをしている場合ではありません。力を合わせて令和の時代をたくましく生きていきましょう。
何かとややこしい昭和人間が自分自身を振り返るために、また若い世代が彼らを理解・攻略するためにも効果絶大な拙著『昭和人間のトリセツ』(日経プレミアシリーズ)が少しでもお役に立てたら幸いです。ビバ、昭和人間!
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大人系&検定系コラムニスト
1963年三重県生まれ。1993年に『大人養成講座』でデビューして以来、大人の素晴らしさと奥深さを世に訴え続けている。『大人力検定』『父親力検定』『大人の言葉の選び方』など著書多数。最新刊『昭和人間のトリセツ』(日経プレミアシリーズ)と『人生が好転する95の言葉 大人のための“名言ケア”』(創元社)が好評発売中! 郷土の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」を務める。
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(大人系&検定系コラムニスト 石原 壮一郎)
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