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千葉、埼玉はすでに下落に転じた…「マンション価格の上昇率」東京都に次ぐ2位と3位の意外な県の名前

プレジデントオンライン / 2025年1月16日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/wat

大都市を中心にマンション価格が高騰している。手が届く価格で資産価値の向上が期待できるエリアはないか。住宅ジャーナリスト山下和之さんは「魅力的な物件は高額で手が届かないと思いがちだが、大都市圏の価格の高いエリアではなく、比較的安価に手に入るエリアにも資産価値向上が期待できそうな場所がある」という――。

■東京都心の物件はまだまだ上がり続けている

マンション市場の動向をみると、首都圏の都心エリアの価格が格段に高く、上昇率も高い。郊外や地方などでは、価格上昇にストップがかかり、地域によっては下落傾向がみられるようになってきたが、都心はまだまだ上がり続けているのだ。

マンション情報の「マンションレビュー」を運営するワンノブアカインドでは、都道府県別のマンション価格騰落率(変動率)をまとめているが、1年前との騰落率をみると、一都三県の平均は7.7%の上昇だが、上がっているのは東京23区が中心で、周辺の三県では下落しているエリアもみられるようになっている。

2024年10月のデータをみると、都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)は31.0%も上がっているが、23区でも城東エリア(台東区、墨田区、江東区、葛飾区、江戸川区)は上昇率が16.4%に下がり、城南(品川区、目黒区、大田区、世田谷区)は8.2%、城北(文京区、豊島区、北区、荒川区、板橋区、足立区)は5.2%、城西(中野区、杉並区、練馬区)は3.3%と一桁台の上昇にとどまっている。

■都下や埼玉県、千葉県では下落傾向に

首都圏の周辺三県を見ると、神奈川県は1.2%の上昇だが、東京23区以外の都下になると、-3.4%と下落しており、埼玉県も-1.9%、千葉県も-3.2%となっている。

つまり、東京の都心はまだまだ大幅な上昇が続いているが、都心周辺では上昇率が鈍化し、その外側の都下や埼玉県、千葉県では下落が始まっているわけで、エリアによる優勝劣敗が明確になりつつある。

それだけに、資産価値の維持・向上を期待するなら、できれば都心のマンションを手に入れたいものだが、価格が高すぎて、平均的な会社員では簡単に買えそうもない。都心5区の70m2換算価格は1億2463万円で、都心5区に次いで上昇率が高い城東エリアは6135万円となっている。

それに対して、埼玉県の70m2換算価格は2734万円で、千葉県は2438万円になっていて、これなら何とか手が届きそうだが、残念ながらいずれも価格の下落が始まっていて、資産価値の向上は期待しにくいのが現実だ。

■2000万円以下でも上昇率の高いエリアがある

それでは、比較的リーズナブルな価格帯で手に入るエリアに、資産価値の向上が期待できるエリアがないのかといえば、決してそんなことはない。図表1をご覧いただきたい。これは、47都道府県の1年前との価格騰落率のベスト10をグラフにしているが、トップは東京都の17.6%で、70m2換算価格が7009万円になっている。やはり東京都が断然強いわけだが、2位以下には意外な県が入っている。

上昇率の2位には徳島県が16.2%で入り、3位には香川県が10.5%で続いている。どちらも価格帯は1000万円台の前半だから、まだまだ年収の少ない若い世代でも十分に手が届く価格帯ではないだろうか。

さらに、4位の佐賀県も70m2換算価格が1528万円で、上昇率は8.9%となっていて、5位の岐阜県も1610万円で、7.8%の上昇率だ。

徳島県、香川県の2県は、大都市圏からあまりに遠く、購入は現実的ではないと見られてきたが、コロナ禍を経て、テレワークが当たり前になってきた現在では、地方への移住や二拠点居住も珍しいことではなくなりつつある。

先進的な企業のなかには、テレワークを前提に地方への移住を認めた上で、稀に出社が必要なときには、飛行機代や新幹線代を出す企業も登場している。そうした企業への転職や地元企業への転職などをはかりながらマンションを取得し、将来的な値上がりを期待するのも現実的な選択肢になりつつある。

【図表1】1年前との騰落率トップ10

■10年前と比較し上昇率が60~70%台の注目県

1年前との騰落率では、この先どうなるのかやや不安なので、中長期的な視点からみてみたいという人もいるだろう。そこで、10年前との騰落率の上位をみてみよう。

図表2にあるように、騰落率のトップはやはり東京都の77.0%だった。長い目でみても、やはり東京都は強いことが、改めて認識されるが、2位以下には、比較的リーズナブルな価格帯の県が少なくない。

2位に入ったのは福井県の75.2%で、3位は沖縄県の65.7%、4位が石川県の61.6%、5位が群馬県の59.9%となっている。

3位の沖縄県は温暖な気候などから地元の人たちだけではなく、東京圏、大阪圏などの人たちや海外からの購入も増えているため、大都市圏価格になっていて、70m2換算価格は3499万円とやや高めになっている。それに対して、2位の福井県は1641万円、4位の石川県は1520万円で、5位の群馬県は1202万円だ。これなら、十分に購入が可能になるという人が多いのではないだろうか。

【図表2】10年前との騰落率トップ10

■もう一段の上昇も期待できる北陸新幹線の沿線県

2位の福井県、4位の石川県、5位の群馬県はいずれも24年3月に北陸新幹線が敦賀まで延伸開業した沿線の県であることにお気づきではないだろうか。

鉄道の新線・新駅の開業は、不動産市場、マンション市場に大きな影響を与えるが、そのインパクトは、何段階かに分けてやってくる。第1段階は計画が話題になり始めたころで、第2段階は計画が本決まりになって、事業が動き出すころで、第3段階が計画の実現が目前に迫って、延伸地域での再開発などが明確になってくる時期だ。

そして、第4段階が、新線・新駅が実現して、利便性の高まりを実感できるようになって、人の動きが活発化してくる時期で、周辺の開発がうまく行けば、もう一段の上昇が期待できる。その点、2024年3月に延伸が実現した福井県がまさにそうで、さまざまな再開発事業が完成しつつあるため、騰落率が高くなっているのではないかと考えられる。

たとえば、福井駅の駅前では、「ふくまちブロック」として、ホテル、商業施設、マンションなどが一体開発され、2024年に竣工、様相が一変した。

福井駅
写真=iStock.com/Kimichan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Kimichan

■コンパクトシティとして注目される「ふくまちブロック」

地方の県庁所在地が駅名になっている駅では、都市の中心部が駅前から離れていることが多い上、郊外などに大規模商業施設が誕生し、そちらに集客力を奪われ、駅前エリアはどちらかといえば、発展から取り残され、活気の乏しい駅が多い。

しかし、幸いなことに、福井駅は多くの県庁所在地と異なり、駅前から市街地が始まり、もともと大規模商業施設が揃っていて、市役所、県庁などの官公庁、金融機関、全国企業の支社・営業所などのオフィスの集積も進んでいる。

その上で、北陸新幹線の延伸に合わせて駅前の再開発が行われ、「ふくまちブロック」には地上28階、高さ120メートルのホテル・オフィス棟、地上28階、高さ100メートルの住宅棟、駐車場棟が登場し、福井市の都市機能が強化された。あわせて、駅前の電車通り沿道などに歩行者空間を確保、歩行者ネットワークが形成された。

再開発によって新たな機能が加わり、まさにコンパクトシティとして、快適な都市機能を享受できるようになっている。

■いま買えば10年、20年先に値上がりが期待できる地域

しかも、開業年次は明確ではないものの、北陸新幹線は、最終的には大阪までつながることになっている。東京から敦賀まで延伸し、東京~福井・敦賀間は便利になったものの、大阪から福井や金沢に向かうには、乗換えが必要になり、逆に不便になってしまったという声が強い。

そのため、大阪までの早期の延伸を求める声が強まっている。すでに、敦賀~新大阪間について駅や位置に関する3つのルート案が示されており、今後はその計画の具体化が話題になってくるはずだ。

先に触れたように、新線・新駅の効果は4段階にわたって影響するが、敦賀・新大阪間の延伸については、まさにいま第1段階を迎えようとしている。今後は、第2段階、第3段階、第4段階のステップごとに資産価値の上昇が期待できるかもしれない。

完成までには、まだ10年、20年といった長い年月がかかりそうだが、逆にいえば、長い目でみて、地域の活性化、マンションの資産価値の向上が期待できるエリアという見方ができるのではないだろうか。

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山下 和之(やました・かずゆき)
住宅ジャーナリスト
1952年生まれ。住宅・不動産分野を中心に新聞・雑誌・単行本の取材、執筆、講演、セミナー講師など幅広く活動。著書に『2017-2018年度版 住宅ローン相談ハンドブック』『よくわかる不動産業界』など。

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(住宅ジャーナリスト 山下 和之)

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