いつもと違う「オナラの臭い」がしたら要注意…お酒好きの人が意識するべき"腸が求めている意外な栄養素"
プレジデントオンライン / 2025年1月22日 17時15分
※本稿は、『あなたの健康は免疫でできている』(集英社インターナショナル新書)の一部を再編集したものです。
■「腸内環境を整えること」が大切な理由
巷では、「これを食べれば免疫アップ」というような健康情報や、栄養食品が多く出回っています。
前回の記事では、免疫力というのは、本来、何かを食べたり飲んだりしたからといって、簡単に上がったり下がったりするものではない、ということをお話ししました。
では、免疫にとって食べ物は重要ではないのかというと、そんなことはありません。
免疫力をバランスのいい状態で維持するには、まずは規則正しい生活を心がけることが重要です。なかでも過食、過飲をしないこと、適度に運動をすることが大事ですが、同時に、腸の調子を整えておくことが大事です。それが免疫力をいい状態に保つことにつながります。
なぜかというと、全身のリンパ球のうちのかなりが腸管に存在し、腸管自体が立派な免疫組織だからです。
腸管にリンパ球が多く集まっている理由は、腸管が主に食べ物など、外界からものを取り込む場所であり、異物の侵入を防ぐ免疫の最前線でもあるからです。
■腸内環境が悪化すると何が起こるのか
腸管内にはおよそ1000種類、総数100兆個ともいわれる、とんでもない種類と数の腸内細菌が存在します。この腸内細菌を見張っているのが腸管の免疫細胞、特にリンパ球です。
逆に、腸内細菌の一部は腸管のリンパ組織の内部にまで入り込んで、リンパ球が特定の機能を持つように刺激を与えています。つまり、腸内細菌は、腸管リンパ球の働きを調節する役目も持っています。
腸内環境が一定に保たれないと、腸内細菌の組成が安定しません。そうなると、腸管の免疫環境に悪影響が出てきます。
内細菌の集まりを叢に見立てて、「腸内細菌叢」あるいは「腸内フローラ」とよびます。健康な人では腸内細菌叢の組成はだいたい安定していて、個人の中で大きく変化することはありません。
一方で、この腸内細菌叢の組成が異常になった状態のことを「ディスバイオーシス」といいます。腸内細菌叢が乱れた状態です。
■おならの臭いは腸からのサイン
この状態が進むと、腸管内を覆う粘液が薄くなってきて、異物が侵入しやすくなり、炎症が起きやすくなります。
これは、腸管の自然免疫(われわれが生来持っていて病原体の侵入を防ぐために必要な非特異的な免疫のことで、腸管内腔の粘液もその構成成分のひとつ)が腸管の細菌叢によって機能調節を受けているからです。適当な細菌叢が存在すると、自然免疫がうまく刺激され、その結果、自然免疫が訓練されて、悪い働きをする細菌の侵入を防ぐ能力が上がるというわけです。
逆に、細菌叢が乱れると自然免疫がうまく働かず異物が侵入しやすくなり、炎症が起きやすくなります。ということは、腸内細菌と免疫細胞は共生をしていてギブ・アンド・テイクの関係にあるということです。この共生関係が大事なのです。
一方、これが乱れたのが上記のディスバイオーシスです。
この状態になると便秘や下痢、肌荒れなどがみられ、なんとなく体調が良くないという感じが続きます。おならの臭いや便通が変わってきた時にはこのディスバイオーシスになりかけなのかもしれません。注意する必要があります。
■腸内環境を「整える栄養」「荒らす栄養」
この腸内細菌叢の安定化には食べ物が大きく関係します。
繊維分の多い食べ物は、排便活動を盛んにするとともに、繊維分は腸内細菌(特に有用な働きをする細菌)のいいエサとなります。
日本人の腸管には、食物繊維をエサとして発酵反応を促進する細菌が多く、そのような細菌からは「短鎖脂肪酸(※)」とよばれる健康に有用な一群の代謝産物が多く作られます。
筆者註※脂肪酸とは油脂の構成成分で、炭素が数個から数十個つながった構造をしていて、そのうち炭素数が6個以下のものが短鎖脂肪酸です。短鎖脂肪酸には、酢酸、酪酸、プロピオン酸などがあり、抗肥満作用、基礎代謝の向上、免疫細胞の機能的バランスの維持・改善や、腸の蠕動運動促進など、さまざまな作用があるといわれています。最近、健康にいい物質として大きく注目されています。
一方、過剰に脂肪を摂取すると、胆汁酸(脂肪を乳化して分解・吸収を促進する物質)が胆管から腸管内に多量に分泌され、このため細菌叢が不安定化して、ディスバイオーシスが起きる原因となります。
過度のアルコール摂取もディスバイオーシスを起こします。過食、過飲をせずに、ふだんから腸の調子を整えておくこと大事です。
■乳酸飲料は腸に良いのか
前回の記事でも触れましたが、腸内細菌叢を安定化させるものとして、乳酸飲料を含むプロバイオティクスがしばしば使われます。
プロバイオティクスには人体にいい影響を与える細菌が含まれているはずなのですが、細菌自体は胃液で消化されるので、生きた細菌はほんの少ししか腸管には到達しません。
しかし、細菌の分解産物やプロバイオティクス中に含まれるオリゴ糖などが腸内細菌のエサとなって、間接的にいい効果をもたらす可能性があります。
ただし、その効果が現れるまでには時間がかかります。プロバイオティクスを飲んだからすぐに体調が良くなるわけではありません。
■キノコや発酵食品はどうなのか
これは、プロバイオティクスのみならず一般的な食べ物でも同様です。何か特定のものを摂取したから急に免疫力がアップするかというと、そんなことは簡単には起きません。
免疫力を上げる食べ物として、きのこや納豆などの発酵食品がしばしば挙げられますが、普通に口から摂取できるぐらいの量を1回や2回食べても、実際は免疫の力はほとんど変わりません。
これらのものをしばしば摂取することによって、長い目で見ると、有用な腸内細菌を増やし、細菌叢の安定化につながる可能性はあるのかもしれませんが、短期間の効果はほとんど望むことができません。
■「これを食べれば、免疫力アップ」の誤解
いずれにせよ、特定の食べ物にこだわるよりは、いろいろなものをまんべんなく食べることのほうが大事でしょう。免疫の機能を保つのに大事なビタミンやミネラルが補給されるようになるからです。
免疫をサポートする栄養素として、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンC、ビタミンEや亜鉛などがよく挙げられますが、それはこれらの栄養素はすべて免疫の働きに必須だから大事なのです。
不足すると、免疫の働きが落ちてしまうことから、これらの栄養素の重要性がうたわれています。
ところが、新聞やテレビ番組を見ると、これらの栄養素がしばしば「免疫力をアップできる」として挙げられています。
免疫力が落ちている時には回復に役立ちますが、これらの栄養素を多くとればその分、免疫力が上がるかというと、そんなことはありません。どうもこのあたりに安直な理解というか大きな誤解がありそうです。
■食欲がないときはサプリに頼るのもアリ
繰り返しになりますが、これらの栄養素は免疫機能が十分に働くために重要なのです。
単にたくさんとったら免疫力がアップするのではありません。足りないと免疫機能がサポートされずにからだの防御力が下がるのです。
栄養素の摂取が一定程度に保たれていれば、免疫は期待通りに機能するので、無理にたくさん補給する必要はありません。一方、夏バテなどで食事量が減っているような時にはサプリメントなどの形でこれらの栄養素を補給することによって、一度下がった免疫力が回復してきます。
でも健康時よりも免疫力がさらにアップするかというと、そうではないのです。どうも世の中は、物事の原理をよく理解しないまま、手っ取り早い話に飛びついているような気がします。
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大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授、大阪大学名誉教授
1947年、長野県生まれ。京都大学医学部卒業、オーストラリア国立大学大学院博士課程修了。金沢医科大学血液免疫内科、スイス・バーゼル免疫学研究所、東京都臨床医学総合研究所を経て、大阪大学医学部教授、同大学大学院医学系研究科教授を歴任。著書に『ウイルスはそこにいる』(共著・講談社現代新書)などがある。
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(大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授、大阪大学名誉教授 宮坂 昌之)
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