これで「緊張・不安・焦り」が一発解消する…和田秀樹が講演会で出した簡単だがほぼ誰も正解しないクイズ
プレジデントオンライン / 2025年1月16日 15時15分
※本稿は、和田秀樹『仕事も対人関係も落ち着けば、うまくいく』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
■他の可能性や選択肢を考える習慣を身につける必要性
緊張したり、不安になるなど、気持ちが落ち着かなくなる原因は、「思考習慣」も大きく関係しています。
自分の思考習慣がバイアス(先入観や偏見)となって、不安や緊張を生み出しているのです。
次のような三つの考え方が、その典型的なパターンといえます。
思考習慣①かくあるべし思考
かくあるべし思考とは、物ごとを「こうあるべき」と決めつけて、それに反することは許さないという偏った考え方を指します。
「いくら体調が悪くても、会社を休むべきではない」とか、「仕事が終わらなければ、残業するのが当たり前」など、自分が「こうあるべき」と考える価値観で自分を縛り、他の人にもそれを強要するのが、この思考習慣の特徴です。
かくあるべし思考の人は、自分が思っている通りに物ごとが進まないと、急に焦り出して、不安な気持ちになります。
世の中は予定調和で回っているわけではありませんから、「この道もあるけど、あの道もある」など、他の可能性や選択肢を考える習慣を身につける必要があります。
■「失敗したら負け」と思うと緊張しがち
思考習慣②二分割思考
二分割思考は、物ごとを白か黒か、善か悪か、成功か失敗かなど、二者択一のどちらかで判断する考え方です。
「会社に行くのは善」で「行かないのは悪」など、あらゆることを二分割で考えてしまうと、選択肢が一つしかなくなるため、自分に我慢を強いることになります。
その我慢がストレスとなって、緊張や不安を誘発するのです。
二分割思考を続けていると、ストレスが蓄積するだけでなく、視野が狭くなるため、仕事もうまくいかず、人生を楽しむことができなくなります。
「この方法がダメだったら、あの方法を試してみよう」など、柔軟な考え方をすることが大切です。
思考習慣③勝ち負け思考
勝ち負け思考とは、「いつも相手に勝っていたい」とか、「何ごとも負けたくない」など、勝ち負けが基準になっている考え方を指します。
勝ち負けで物ごとを考える人は、「失敗したら負け」と思っているため、何をやる場合でも緊張しがちです。
一番の問題点は、人を思いやることができないため、勝てば傲慢になり、負ければ相手を怨んだり、憎んだりして、周囲から孤立することです。
負けることに対する恐怖から、毎日が不安の連続になってしまうこともあります。
これらの三つの思考習慣に共通するのは、考え方が極端な方向に偏ることによって、視野が狭くなっていることです。
「他の選択肢はないか?」という視点を持つことができれば、自然と不安や恐怖から解放され、緊張や焦りを手放すことができるのです。
■人目を気にする人5つの傾向
緊張や不安、焦りというのは、「人目を気にする」ことでも起こります。
人目を気にするとは、周囲の人から、「どう見られているか?」、「どのように評価されているか?」を意識している状態を指します。
「こんなことを言ったら、頭が悪いと思われるのではないか?」とか、「もしかしたら、嫌われるのではないか?」という思いが浮かぶことが、緊張や不安、焦りなどの原因になります。
別の視点から見れば、周囲の人から「頭がいい人」や「優しい人」と思われたい気持ちが強いから、人目を気にしてしまう……ことになるのです。
人目を気にする人には、次のような傾向が見られます。
①自意識が過剰
②自己肯定感が低い
③自分に自信が持てない
④プライドが傷つくことを恐れている
⑤他人から嫌われることが怖い
人目を気にする人というのは、周囲の人の気持ちや考えを優先することで、「いい人」とか「頭のいい人」と思われようとしますが、そうした思惑通りにはいかないことが、緊張や不安を増幅させることになります。
■多くの人が自分のことで精一杯
その原因は、自分が思っているほど、周囲の人はこちらを見ていない……ということに気づいていない点にあります。
つまりは、自意識過剰なことが、大きく関係しているのです。
人というのは、こちらが思っているほど、他の人のことを見ていません。
自分が勝手に「見られている」と思い込んでいるだけで、自分のことで精一杯な人が多いため、見ているようでいて、実は見ていないことがほとんどなのです。
講演会などに呼ばれた際に、私は簡単な実験をすることがあります。
「なぜ人目が気になるのか?」といったテーマについて話しながら、パッとネクタイを上着で隠して、聴衆のみなさんにこう問いかけてみるのです。
「私のネクタイの色を覚えていますか?」
この質問に明確に答えられる人は、滅多にいません。
講演会の「主役」であっても、このくらいの認識ですから、日常的な接触で他の人が自分に関心を持っていると考えるのは、自意識過剰であるだけでなく、自信過剰ともいえます。
「いい人に見られたい」という欲望が、緊張や不安を引き寄せているのです。
■一過性の評価を受けても承認欲求が満たされない
人目を気にする人は、「自分を良く見せたい」とか、「賢く見られたい」という欲望が強い人といえますが、その思惑通りに周囲の人たちが受け取ってくれるとは限りません。
自分が勝手に思い込んでいるだけで、相手は何も感じていなかったりするケースが意外と多いのです。
日本人には、学歴や職業だけで「あの人は賢いに違いない」と考える傾向がありますから、賢いフリを装っていれば、ある程度は勘違いをしてくれるかもしれませんが、そんな一過性の評価を受けたところで、承認欲求が満たされることはありません。
人目を気にして、焦ったり、不安になっても、期待したほどの効果は得られない……と考えることが大切です。
裕福な人に見られたいと思って、高価なブランド品を買ったり、高級車に乗ることにも、同じことがいえます。
本当に裕福な人は、大金持ちに見られる必要がありませんから、好みのバッグを持って、好きなクルマに乗っています。
ほとんどの人は、そうしたことを知っていますから、どんなに見栄を張ったところで、「自己満足」以上の効果は手に入らないと考える必要があります。
■人目を気にすることのメリット、デメリット
周囲の人の受け取り方が、自分が考えている方向に向かうとは限りません。
焦ったり、緊張したりすることが、自分が勝手に満足するためであるならば、それは完全な「独り相撲」であり、虚しい努力ということになります。
社会心理学では、人目を気にすることには、メリットとデメリットの両方があると考えられています。
メリットは、周囲の目を気にすることによって、自分を律することができるため、タスクの遂行が早くなって、作業効率が高まることです。
この効果は「社会的促進」と呼ばれています。
逆にデメリットとなるのは、人目を気にすることによって、失敗を恐れる気持ちが強くなり、過度に緊張してしまうため、より失敗しやすい状況を、自ら作り出してしまうことです。
「人に恥ずかしい姿を見せたくない」という思いが強くなると、自分らしく振る舞うことができなくなって、焦りや不安を抱え込むことになります。
人目を気にすることには、メリットとデメリットがある……と認識した上で、上手に活用すれば、ムダな緊張や不安に悩まされず、前向きな行動を取ることができます。
■算数ができる子の方が「頭がいい」は大間違い
会社や学校などで、周囲の人が自分より優秀だなと感じて焦ったり、不安になったりすることがあります。
中学受験の例でいえば、算数ができて国語ができない子と、国語ができて算数ができない子がいると、算数ができる子の方が「頭がいい」というイメージがあるため、算数ができないと、何となく気後れを感じてしまうものです。
こうした思い込みによる不安は、明らかな勘違いといえます。
受験というのは、各科目の合計点で決まりますから、いくら算数ができたところで、必ず合格するとは限りません。
これは受験だけの話ではなく、私たちの日常でもよくある話です。
何か飛び抜けた成果を出していると、「あの人は優秀だ」と認識されがちですが、たまたま会社の方針と合っていたから出世しただけ……ということもあります。
目立つものだけで判断して、不安になったり、焦る必要はないのです。
■自分の得意・好き・興味関心に目を向けることの効果
相手の優秀さを見て萎縮するくらいならば、自分自身に目を向けて、「何か優れている点はないか?」と探してみることが大切です。
すべての点で劣っているということは意外にありません。
どんなことでもいいから、探せば何か一つは見つかるはずです。
誰よりも企画書の本数が多いとか、アポ取りが上手いでもいいと思います。
仕事面で見つからなければ、誰よりも趣味を楽しんでいるとか、友人の数が多いでもいいのです。
大事なのは、自分の「いい面」に目を向けることによって、自己肯定感を高めるだけでなく、ポジティブな気持ちを手に入れることです。
自分が得意なことや、ものすごく好きなこと、興味や関心が高いものを持っていると、他のことが意外と気にならなくなります。
他の人と比較して、焦ったり、不安になるのではなく、自分のいい面を伸ばしていく工夫をすることが、気持ちを落ち着かせることになるのです。
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精神科医
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学教授(医療福祉学研究科臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。
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(精神科医 和田 秀樹)
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