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宿題「1週間で70個の英単語を覚えなさい」…普通の受験生は1日10個ずつ暗記する、では東大生はどうする?

プレジデントオンライン / 2025年1月16日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

頭のいい人はどんな勉強法を実践しているのか。現役東大生の西岡壱誠さんは「記憶に定着させたいなら、丁寧に進めるより大雑把に頭に読み込ませるほうが大事だ。どんどん覚えて、どんどん忘れたほうがいい」という。西岡さんと東大カルペ・ディエムの共著『自分にあった方法が見つかる!勉強法図鑑』(TAC出版)から一部を再編集して紹介する――。

■「なんで忘れたの」と怒るのはNG

中高生や小学生に勉強に関する指導や助言をしていると、親御さんも子供に対して何かしらの指導をする場面を見ることがあります。特に年齢が小さいうちだと、親御さんのお子さんに対する関わり方は非常に重要だと感じますが、中でも「これだけはやってはいけない」という指導があります。それは、「忘れたことを怒る」という指導です。

例えば、「この単語の意味、昨日勉強したよね? どういう意味だった?」と聞いて、「え、忘れちゃった!」と子供から言われた時に、「なんで忘れたの! 覚えておかなきゃダメでしょ?」と怒った経験のある親御さんは多いのではないでしょうか?

特に、親御さんがお子さんの教育に対して熱心であればあるほど、「どうして忘れたの!」と怒る傾向があります。お子さんのテストの結果を見て、一緒に勉強したはずの箇所が間違えていると、「これ一緒にやったじゃん! なんで忘れたの!」と怒っていたり。

中学受験の勉強をしているお子さんが、毎回同じところを間違ってしまっていることに対して「どうして毎回同じところを忘れるんだ! やる気がないから忘れるんだ!」と怒っていたり。

「どうしてこんな簡単なことが覚えられないんだ」と考えたくなる気持ちはわかりますが、「忘れたことを怒る」という指導をしていると、子供はむしろどんどん物事を覚えられなくなっていってしまうのです。

■「覚えて、忘れて、覚えて……」を繰り返すといい

そもそも人間の記憶というのは、忘れるようにできています。今記憶したことでも、24時間経ったら約90%は記憶から消えている場合が多い、なんて話もあるくらいです。でも、本来記憶を定着させるためには、一度忘れたとしても根気よく思い出すということをしなければなりません。覚えて、忘れて、また覚えて、また忘れて……ということを繰り返す中で、人間の記憶は作られていきます。

一度記憶したことを、ずっと覚え続けられる人はいません。復習したり、一度忘れてしまったものを思い出したりしていく中で、記憶が定着していくわけです。

逆に言えば、「一度忘れて、思い出す」ということ自体も、記憶を定着させるためのプロセスの一部なのです。「この単語の意味、どういう意味だった?」と親御さんから聞かれて、「なんだったっけ! 昨日やったはずなのに思い出せない! えーと、えーと」と苦労して思い出そうとするその行為自体も、実は記憶を定着させるために必要なことなのです。

ちょっと話は逸れますが、みなさんは筋肉痛になったことはありますか? 筋肉痛は、一般的には、運動した後日に筋繊維に裂け目ができたりすることで痛みが発生することを言います。

でもこの痛みは決して悪いものではなく、筋繊維の裂け目が修復される中で、以前よりも強い筋肉が出来上がるため、筋肉をつけたい人にとってはむしろ筋肉痛は良いものである、という考え方もあります。

■「忘れる」ことに恐怖心を植え付けてはいけない

これと同じで、一時的に忘れてしまうことは、全く悪いことではないのです。むしろ、覚えるために必要なプロセスを踏むことができているという意味では、良いことだと言えるのです。それにもかかわらず、「なんで忘れたの!」と親御さんが怒ってしまうと、お子さんが「忘れる」ということに対して恐怖心を抱き、暗記に対して臆病になってしまう可能性があります。

「忘れる」ことに対する恐怖心は、実はすごく厄介なものであり、健全な暗記を阻害してしまうことがあります。例えば、東大生は暗記の勉強方法がかなり特殊な場合が多いです。

自分自身を振り返ってもらいたいのですが、みなさんは「70個の単語を1週間で覚えなければならない」と言われたら、どんな覚え方をしますか? おそらくは70個を7日間で割って、1日10単語ずつ勉強し、7日間で70単語を覚えることを想像するでしょう。でも東大生は決してそんな覚え方はしません。

この場合、東大生なら、1日70単語を覚えます。1日目も2日目も、7日目までずっと、70単語ずつ見て覚えようとします。もちろん、1日10単語覚えようと思う時よりもじっくりと見ることができませんから、1日目の時点では70個見て5個も覚えられていないという状態かもしれません。

しかし、2日、3日たって英単語70個をざっと見ていくと、「あ、これって昨日も覚えた単語だな」「これって確か……」と徐々に考える時間が生まれます。毎日毎日実践していくことで、6日目・7日目が訪れる頃には、大体8割くらいの単語は覚えられるようになるのです。

勉強をする学生
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

■「ちょっとずつ」より「一気に全部」がいい理由

なぜこんな覚え方をするのか。毎日10単語ずつ勉強した場合、1日目に覚えた単語を復習する時間がないので、1回覚えた切りで記憶に定着せず、忘れて終わり……となってしまいます。どんなに丁寧に覚えようと頑張ったとしても、10単語中3〜4単語くらいしか記憶には残っていないでしょう。

それに比べて、1日70単語を毎日勉強すると、すべての英単語を6日連続で6回忘れて、すべての英単語を7日連続で7回思い出すことになります。1単語に対して1回だけ10分眺めるよりも、1単語に対して30秒だけでもいいから毎日見ているほうが、圧倒的に記憶の定着率は高いのです。

ここからわかることは、「覚えるときに重要なのは、忘れることを前提にすることだ」ということです。じっくり丁寧に勉強する必要はなく、あやふやで大雑把でもいいから、どんどん覚えて、どんどん忘れた方が、記憶は定着しやすいのです。

暗記は「一度覚えて、忘れて、思い出す」という行為の繰り返しによって達成されるものであり、暗記が得意な人というのは、このサイクルが早く回る人のなのだと思います。であるならば、忘れることを前提にどんどん前に進んだほうがいいわけです。

■「忘れてもいい」と思って何度も復習する

しかし、「忘れる」ということに恐怖感がある子供は、覚えることに対してもハードルが生まれてしまいます。「忘れないように」と丁寧に覚えようとし過ぎてしまって、なかなか暗記のサイクルが前に進みません。

先ほどもお話しした通り、本当に暗記が得意な人は、「忘れる」ことを前提にしてガンガン前に進んでいきます。「忘れてもいい」と思って勉強して、何度も何度も復習していきます。忘れたことを親から怒られた経験が多い生徒だと、こういうふうに勉強することができないわけです。

僕の周りの東大生は、この「忘れることを前提にした高速回転の勉強」が得意な場合が多いです。例えば、歴史を勉強しようとする場合、「日本史の勉強の際に、スタディサプリ(編集部注:インターネット予備校)の授業動画の講座を2倍速で全部聞いてから、本格的な勉強を始めた」という人もいましたし、「大雑把に流れを教えてくれるような、『10時間でざっくりわかる』本とか、『5時間で大雑把に理解できる』というシリーズのYouTube動画で勉強していた」という人もいました。

彼らは共通して、「1周目の勉強では、年号とか細かい知識はあやふやだった」と述べています。本を読んだり授業の動画を観たりしても、1回きりでは、細かい知識を覚えることはできません。しかし、流れは大雑把に理解することができます。東大生は、「“なんとかかんとか”さんが、“こんなようなこと”をやって、それでこうなった、って流れなんだな」と、知識が曖昧な状態で、流れだけを掴む勉強を心がけていたのです。

■“忘れる前提”が、成績向上の最短ルート

2周目、3周目の勉強をしていくことを前提に、最初はあやふやなまま勉強を進めていくと、2周目、3周目に取り掛かった頃には勉強の質が高まるのです。これは、じっくり丁寧に1周しかしない勉強よりも実は効率が良く、結果的にこちらのほうが成績が上がる最短ルートにもなります。こういう勉強法ができる人はどんな科目でも成績が上がりやすいです。

西岡壱誠、東大カルペ・ディエム『自分にあった方法が見つかる!勉強法図鑑』(TAC出版)
西岡壱誠、東大カルペ・ディエム『自分にあった方法が見つかる!勉強法図鑑』(TAC出版)

しかし「なんで忘れたの!」と怒られた経験がある人だと、どうしても一番最初の段階で「覚える」ことに恐怖感を覚えてしまい、この記憶の定着サイクルが実践できていないことが多いです。こんなに効率の良い勉強法であるにもかかわらず、です。

勉強を頑張っている子供たちに「この単語の意味、昨日やったよね? どういう意味だった?」と聞くことは非常に重要なことです。復習になって記憶が定着することにつながりますし、意味のある質問だと言えます。

しかし、その結果思い出せなかったとしても、決して怒らないでください。「○○だったよね! 思い出した?」「惜しいね! ○○だから、覚えておこうね!」と、優しく答えを教えて、記憶を定着させてあげるようにしましょう。そうしないと、暗記に臆病で暗記が苦手になってしまい、逆効果となってしまうかもしれません。

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西岡 壱誠(にしおか・いっせい)
現役東大生 カルペ・ディエム代表
1996年生まれ。偏差値35から東大を目指すものの、2年連続で不合格に。二浪中に開発した独自の勉強術を駆使して東大合格を果たす。2020年に株式会社カルペ・ディエムを設立。全国の高校で高校生に思考法・勉強法を教え、教師に指導法のコンサルティングを行っている。日曜劇場「ドラゴン桜」の監修や漫画「ドラゴン桜2」の編集も担当。著書はシリーズ45万部となる『東大読書』『東大作文』『東大思考』『東大算数』(いずれも東洋経済新報社)ほか多数。

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東大カルペ・ディエム 東大生集団
2020年6月、西岡壱誠が代表として株式会社カルペ・ディエムを設立。西岡を中心に、貧困家庭で週3日バイトしながら合格した東大生や地方公立高校で東大模試1位になった東大生など、多くの「逆転合格」をした現役東大生が集い、日々教育業界の革新のために活動している。漫画『ドラゴン桜2』(講談社)の編集、TBSドラマ日曜劇場『ドラゴン桜』の監修などを務めるほか、東大生300人以上を調査し、多くの画期的な勉強法を創出した。そのほか「リアルドラゴン桜プロジェクト」と題した教育プログラムを中心に、全国20校以上でワークショップや講演会を実施。年間1000人以上の学生に勉強法を教えている。

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(現役東大生 カルペ・ディエム代表 西岡 壱誠、東大生集団 東大カルペ・ディエム)

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