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日本の運転免許証が「コスパ最強」と大人気…外国人が運転免許試験場に大行列をつくる「外免切替」の最新事情

プレジデントオンライン / 2025年1月16日 18時15分

東京の府中運転免許試験場に行列を作る外国人ら - 撮影=加藤博人

日本の運転試験場に外国人が殺到していると話題になっている。一体なぜなのか。自動車生活ジャーナリストの加藤久美子さんは「ロシアや中国など、日本で有効な運転免許証を持っていない外国人が、自国の免許証を日本の免許証に切り替える外免切替を利用しているからだ」という――。

■「外免切替」が注目を集めている理由

「ホテルの住所で日本の免許が取れる」
「夜中から試験場前に長い行列が!」
「試験はたった7問正解で合格」

日本国内で外国人ドライバーによる重大事故が続いたことで、昨年9月頃からさまざまなメディアが「外免切替」のイージー過ぎる(と言われる)取得方法について取り上げるようになった。

「外免切替」とは、外国人が自国で取得した運転免許証を日本の免許証に切り替えることである。一度日本の免許を手にすれば、更新などの手続きもすべて日本国内で日本人と同様に行う。また、「切替」といっても外国免許はほとんどの国で返納の必要がないため、自国に戻ればこれまで通り運転免許としてそのまま使うこともできる。

■ロシア人も中国人も日本で運転可能に

一般的に、外国人観光客が日本でレンタカーなどを運転する際には、自国で取得した国際免許で手続きを行う。国際免許証は主にジュネーヴ道路交通条約とウィーン交通条約の様式で発給されるが、日本で有効なのは「ジュネーヴ様式」の国際免許証だけ。

例えばロシアはジュネーヴ条約の締約国ではあるが、ロシアで発行される国際免許証はジュネーヴ様式ではない。となると、日本では「無効な国際免許」となるため、レンタカーなどを借りることはできない。

しかし、ロシアやセルビア、ルワンダなどのようにジュネーヴ条約様式の国際免許を発行できない国や、そもそも締約国ではない中国やベトナムなどから来た外国人でも、日本で合法的に運転できる方法がある。

それは、外免切替制度を使って日本の免許を取得することだ。国際免許は基本的に有効期間が1年だが、日本の免許を取得すれば最初の有効期間は3年となる。頻繁に日本に来る外国人にとってはありがたい制度だろう。

また日本の免許を取得すれば、約100カ国で運転できる国際免許も2400円程度で取得可能だ。

■知識・技能ノーチェックの国もあるが…

なお外免切替の手続きは国によって試験方法や必要な書類などに違いがある。詳細は以下となる。

① 知識確認、技能確認を免除する国等(ジュネーヴ道路交通条約締約国を中心に29カ国)
アイスランド、アイルランド、アメリカ合衆国(オハイオ州、オレゴン州、コロラド州、バージニア州、ハワイ州、メリーランド州及びワシントン州に限る)、イギリス、イタリア、オーストラリア、オーストリア、オランダ、カナダ、韓国、ギリシャ、スイス、スウェ-デン、スペイン、スロベニア、チェコ、デンマーク、ドイツ、ニュージーランド、ノルウェ-、ハンガリー、フィンランド、フランス、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、モナコ、ルクセンブルク、台湾

② 技能確認を免除する国等
アメリカ合衆国(インディアナ州に限る。)

①②以外は、学科/技能のいずれも必須となる。意外なようだがアメリカでも40州以上は学科/技能両方に合格した上で外免切替の手続きを行う。

また、必要となる書類も国によってその厳しさが異なっている。特に厳しい条件が課せられているのは、オーストラリア、中国、フィリピンなど。これらの国では自国での違反や事故の履歴まで提出する必要がある。

中国人が外免切替する際に必要な書類
中国人が外免切替する際に必要な書類(警視庁オフィシャルサイトより)

中国は特に必要書類(左枠)が多く、必要となる可能性がある書類(右枠)まで用意するのが普通だそうだ。

■2024年12月からハードルがちょっと上がった

さて、この外免切替だが、実は昨年12月から少しだけ手続きの手順が厳しくなっている。

2024年11月29日付で警視庁から発表された内容によると、「一時帰国(滞在)証明書」に関して「注記」の数がそれまで1つだったのが、改訂後はなんと注記1~6まで増えていた。注目すべきは、注記3と注記4である。

(注記3)家族・知人宅等に一時帰国(滞在)した場合の証明人は、世帯主である必要があります。併せて世帯主の確認資料(住民票の写しのコピー等)も提出してください。

(注記4)一時帰国(滞在)先の住所が家族・知人宅等の場合は、申請の際、証明人の同行をお願いします(申請者が住民基本台帳法の適用を受ける方は除きます。)。

■「虚偽の記載」をするケースが多かった?

一時帰国(滞在)先として「家族・知人宅等」を選定すると確認が厳格になる。証明人は世帯主である必要があり、世帯主の確認資料として「住民票のコピー等」の提出が必須となった。以前は、証明人は世帯主に限定されておらず提出書類も「運転免許証のコピー等」でよかった。

さらに、外免切替の申請に「証明人の同行」も求められる。いずれも昨年11月末まで必須条件ではなかった要件である。

なぜ、「証明人」に関して厳しくなったのか? おそらくは不正な手段で一時帰国(滞在)証明書を入手するなどして申請を行う外国人が増えたからではないか。実際、11月29日付の改訂では、それまでなかった「虚偽の記載」にも言及している。

(注記6)証明書に虚偽の記載をした場合は、処罰の対象となることがあります。

■住所欄は「ビジネスホテルでOK」のまま

一方、たびたびメディアやSNSで問題視される「ホテルの住所」での申請に変化はあったのか? 色々調べてみたが、こちらは以前とほぼ変わっていない。

ホテルの住所が記載された中国人の運転免許証
筆者提供
ホテルの住所が記載された中国人の運転免許証 - 筆者提供

免許証の住所欄にホテルの住所と名前が掲載される(=免許更新のお知らせはがきなどもホテルに届く)ことを了承して、ホテル側が一時帰国(滞在)証明書にサインしているのであれば特に問題はない。

新しい書式になった一時帰国(滞在)証明書にもその旨が記されており、ホテル支配人の身分証明も不要と書いてある。

一時帰国(滞在)証明書の申請書
一時帰国(滞在)証明書の申請書(警視庁ホームページより)
一時帰国(滞在)証明書の下部分を拡大すると…
一時帰国(滞在)証明書の下部分を拡大すると…(警視庁ホームページより)

■5000円で証明書を発行するホテルも

なお、ホテル等の住所で外免切替の申請ができるのは最近始まった制度ではない。履歴を確認したところ、2021年9月時点の一時帰国(滞在)証明書に「ホテル、旅館等に一時帰国(滞在)した場合」について現在と変わらない内容が記載されている。

証明人を都内のホテルとする一時帰国(滞在)証明書
撮影=加藤博人
証明人を都内のホテルとする一時帰国(滞在)証明書 - 撮影=加藤博人

警察的には、ホテルの住所であってもホテル側が了承して証明書を発行しているなら問題ないということなのだろう。

ちなみに、試験場周辺にある複数のホテルに確認したが証明書を有料(5000円)で出すところもあれば無料のところもある。証明書を出すには最低○泊しないとダメ、といった制限も筆者が確認したところではなかった。

また、深夜から試験場前に長い行列ができる件について。府中試験場では昨年11月より完全予約制となったため行列はなくなっている。鮫洲試験場のみ「先着制」なのでこちらは相変わらず未明~早朝から列ができている。

「並ぶの禁止」と中国語で書かれた府中運転免許試験場の看板
撮影=加藤博人
「並ぶの禁止」と中国語で書かれた府中運転免許試験場の看板 - 撮影=加藤博人

なお、大阪・門真試験場も現在は予約制となっているため、外免切替のための行列はできていない。

■中国人「特別な勉強なしでほぼ合格する」

外免切替は「簡単に日本の免許が取れる! 危険だ!」などと非難の対象になりがちだが、実際はどうなのか?

外免切替で日本の免許を取得した中国人数名に、試験の難易度について聞いてみた結果をまとめてみた。

「確かに学科試験は10問中7問正解で合格となるし問題もシンプルで引っ掛けなどはないから特別な勉強なしでほぼ合格すると思います。技能試験は合格率3割程度なので何回も落ちる人もいます。8回受けて合格したという人も知っていますが、普段自国で日常的に運転をしていて安全運転を心がけている人なら1~2回で合格するはずです」

「左折の時に縁石との距離を詰める(50cm程度)のが難しかったですね。試験車両は不慣れな右ハンドル車ですから車両感覚がつかみにくかったです。縁石との距離を詰めるような確認は中国の技能試験ではありませんから戸惑いました」

「何度も落ちる人は相当にヘタか注意力散漫かでしょう。国籍はわかりませんが、技能試験の時に『止まれ』の標識で全く減速もせず突っ走っていた人も結構いました。確かに日本の『止まれ』は八角形のアメリカや中国とは違う逆三角形ですが、それくらいは覚えて来るべきでしょう」

■国際免許と外免切替、どちらが高リスクか

中国籍のみならず、外国人ドライバーによるレンタカーを中心とした交通事故は増加傾向にある。2024年1年間の訪日外客数は3600万人を超える勢いだ。政府観光局の調査では訪日外客の7~8%が移動にレンタカーを利用することがわかっている。

このことから、2019年時点では約170万人だった外国人のレンタカー利用者は、2024年末時点では250万~290万人に増えていると推測できる。レンタカー利用者だけで絶対数が約3倍に増えているのだから、必然的に事故も増えるだろう。

「外国の方が運転しています」ステッカーが貼られたレンタカー
撮影=加藤博人
「外国の方が運転しています」ステッカーが貼られたレンタカー - 撮影=加藤博人

そして、レンタカー利用者のほとんどは外免切替ではなく、国際免許で運転している。日本人が海外で運転するときと同様、外国人が日本で運転する際には何の審査もなく提出書類も不要だ。

そう考えると、書類審査→学科試験→技能試験の手順を踏んで長ければ半年程度の期間を経て免許を取得する外免切替のほうが、むしろ安全度が高いのではないか? と筆者は思うがいかがだろうか?

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加藤 久美子(かとう・くみこ)
自動車生活ジャーナリスト
山口県下関市生まれ。大学時代は神奈川トヨタのディーラーで納車引き取りのバイトに明け暮れ、卒業後は日刊自動車新聞社に入社。95年よりフリー。2000年に自らの妊娠をきっかけに「妊婦のシートベルト着用を推進する会」を立ち上げ、この活動がきっかけで2008年11月「交通の方法に関する教則」(国家公安委員会告示)においてシートベルト教則が改訂された。育児雑誌や自動車メディア、TVのニュース番組などでチャイルドシートに関わる正しい情報を発信し続けている。「クルマで悲しい目にあった人の声を伝えたい」という思いから、盗難・詐欺・横領・交通事故など物騒なテーマの執筆が近年は急増中。現在の愛車は27万km走行、1998年登録のアルファ・ロメオ916スパイダー。

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(自動車生活ジャーナリスト 加藤 久美子)

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