誰にでも優しい人の盲点…精神科医・和田秀樹「みんなに気を遣う人ほど実は嫌われてしまう残念な理由」
プレジデントオンライン / 2025年1月31日 15時15分
※本稿は、和田秀樹『仕事も対人関係も落ち着けば、うまくいく』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
■優先順位を明確化して自分の行動スタイルを決める
人生がうまくいく人に共通するのは、自分にとって重要なものと、どうでもいいものを明確に分けて、大事なものにエネルギーを全集中していることです。
別の視点で見るならば、「割り切る」ことによって、自分の行動スタイルを決めている……ということになります。
本稿では、うまくいく人が実践している「割り切る習慣」に着目して、①「人間関係」②「発想」③「日常生活」の割り切り方を紹介します。
私たちの日常には、「大事そうに見えて、実はムダなもの」と、「ムダに見えて、本当は大事なもの」がたくさんあります。
割り切る習慣を持つことは、曖昧な視界をクリアにして、物ごとの優先順位を明確化することにつながります。
■自分が一番に大事にすべき人は誰か
周囲の人に気を遣っていると、自分が本当にやるべきこと、やりたいことまで手が回らず、気疲れだけが残ります。
会社で考えるならば、自分の直属の上司や、取引先などの利害関係者でもない限り、無理をして気を回す必要はありません。
その理由は、相手がどう思っても、ほとんど自分には影響がないからです。
人間関係は複雑に入り組んでいますから、あちらを立てると、こちらが立たなくなることは、珍しくありません。
うまくやっている人は、「利害関係」や「影響の有無」を物差しにして、割り切った人間関係を意識しています。
これは「打算的」な考え方ではなく、自分が平常心を保つための「合理的」な考え方といえます。
誰にでも親切な人は、周囲から「優しい人」と見てもらえますが、誰にでも優しい人のことを、誰もが好意的に受け取っているとは限りません。
「あの人は八方美人だ」とか、「本心がわからない人だ」などと言い出す人がいますから、誰にでも親切にしても、額面通りには受け取ってもらえないものです。
ここでお伝えしたいのは、「人に気を遣うな」ということではありません。
自分に影響がない人は、「どうでもいい」ということでもありません。
誰にでも気を遣っていると、本当に気を遣わなければならない人まで気が回らず、仕事や人間関係がうまくいかなくなる……ということです。
「自分が一番に大事にすべき人は誰か?」を見極めて、そこに注意を払わなければ、自分を取り巻く状況が好転することはありません。
自分に影響がある人には慎重に接して、そうでない人まで気を回さないことは、自分を大事にするための「危機管理」と考えることが大切です。
■「全方位外交」を目指すことで敵を作っている可能性
仕事やプライベートで「誰からも好かれたい」と考えている人もいると思いますが、みんなに好かれようとしても、思い通りにいかないだけでなく、逆に自分を追い込んでしまうことになります。
人間関係を上手に維持している人は、「みんなに好かれる必要はない」と割り切ることで、周囲との適切な距離感を保っています。
みんなに好かれようとする人には、次のような五つの傾向が見られます。
①自分の存在価値に対する承認欲求が強い
②嫌われないために自分の欲求を抑え込んでいる
③周囲の評価や評判に過敏に反応する
④絶えず相手の要望を気にしている
⑤頑張りすぎて気疲れしている
周囲に気を回しすぎて疲弊することを「忖度疲れ」といいますが、それが原因となって、自分が本当にやりたいことを後回しにしたり、極端な場合には、心身のバランスを崩してメンタルをやられてしまうこともあります。
忖度疲れをするほど、周囲に気を遣っていたのでは、自分の気持ちが休まることがないのです。
嫌われることを恐れて、安全で無難なことしか言わない人を、周囲の人が好きになることはありませんが、相手が嫌うのは、意見が合わないとか、話が面白くないということではなく、相手が嫌がることを言ったときです。
相手が気にしている身体的な特徴などを、軽い気持ちで話題にすると、ほぼ確実に嫌われることになります。
意外に思うかもしれませんが、みんなに気を遣っている人に限って、こうした落とし穴に注意を払わず、「地雷」を踏むことが多いようです。
無難な話題を心がけようとするあまりに、相手の身体的特徴に目が止まって、悪気なく口に出すことで、知らぬ間に相手から嫌われているのです。
誰からも嫌われたくないという「全方位外交」を目指したところで、思ったほどには味方が増えないだけでなく、気づかないうちに敵を作っている可能性がある……と考える必要があります。
■緊張というのは、隠そうとすればするほど、相手に伝わる
プレゼンやスピーチなど、人前で話をするときには、誰でも緊張するものですが、上手にその場を切り抜けている人には、ある共通した特徴があります。
それは、自分が緊張しているのを隠さない……ということです。
「緊張していると思われたくない」とか、「余裕のある態度で臨みたい」と考えてしまうと、余計に緊張してしまいます。
無理して平静を装っても、緊張していることは、すぐ人にバレます。
緊張を隠そうとして、余裕のありそうな態度を取っても、周囲の人の目には、それが痛々しく映ってしまい、思い通りにはいかないものです。
好印象を与える人たちは、話の冒頭にこんなフレーズを用意しています。
「緊張しているため、お聞き苦しいかと存じますが……」
「慣れない場所で、話がまとまらないかもしれませんが……」
自分が緊張していることを最初に伝えてしまえば、少しだけ気が楽になるだけでなく、周囲の人もリラックスして話を聞く準備を整えてくれます。
緊張というのは、隠そうとすればするほど、相手に伝わります。
無理して隠そうとするのではなく、割り切って「私はすごく緊張しています」と口に出してしまえば、意外と腹が据(す)わってくるものです。
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精神科医
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学教授(医療福祉学研究科臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。
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(精神科医 和田 秀樹)
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